物語は森の中から始まる。
茶色のネズミが森の中を駆け回っている。
ネズミは沢山運動した後、主人公の上着のポケットに入り込んだ。
ヤンガスが主人公を呼んでいる。
ヤンガは主人公と共に旅をしている男性だ。
「おーい、兄貴ー!」
「こんな所で油を売ってるとすぐに日が暮れちまうでげす。」
「早いとこ、町に行きましょうや。アッシはパーッと飲み明かしたい気分でがすよ。」
「ホント何度も言うようですが、兄貴がこのおかしなおっさんの家来なんてねえ。」
ヤンガスにおかしなおっさんと呼ばれているのは、緑色の魔物の姿をした男性で名前はトロデという。
「ま、アッシにしたところで兄貴の子分になったわけっすから、人のことは言えんでがすが。」
トロデ王は立ち上がるとヤンガスを睨みつける。
「誰がおかしなおっさんじゃ!」
「まあよいわ。下賤の者にはわしの気高さなど到底分からぬということじゃな。」
「そんな事より主人公、姫はどうした?姫の姿が見えぬようじゃが。」
「わしの可愛い一人娘のミーティア姫は無事か?」
1頭の白馬が主人公達に近づいてきた。
「おお、あれにおったか。姫!ミーティア姫!」
トロデ王にミーティア姫と呼ばれているのは白い雌馬だった。
ヤンガスが言う。
「さて、馬姫様もお戻りだし、日が暮れぬうちにそろそろ出発したほうがいいでがすよ。」
主人公達は森を出発し、トラペッタの町に入った。
魔物姿のトロデが馬車を引いていると、町の人々が奇異の眼差しを向けてくる。
馬車から降りたトロデ王が言う。
「ふむ、着いたようじゃな。わしの記憶に間違いがなければ、確かこの町のはずじゃ。」
「この町の何処かにマスター・ライラスと呼ばれる人物が住んでいるはずじゃ。」
それを聞いたヤンガスが驚く。
「ちょっと待ってくれよ、おっさん。アッシらが追っていたのはドルマゲスって奴じゃなかったですか?」
「そうじゃ!憎きはドルマゲス!わしらをこのような姿に変えたとんでもない性悪魔法使いじゃ!」
「一体あやつめは何処に姿をくらませてしまったのか。」
「一刻も早くあやつめを探し出し、この忌々しい呪いを解かねばならん。」
「でなければ、あまりにもミーティア姫が不憫じゃ。」
「せっかくサザンビーク国の王子と婚儀も決まったと言うのに。ドルマゲスのやつめ!」
「というわけで主人公、早速じゃがライラスなる人物を探し出して来てくれぬか?」
武器屋の裏にある酒場へ行き、本棚にある本を読む。
古い記録のようだ。
「放浪の魔法使いは長き旅路の果てにこのトランペッタの地に辿り着いた。」
「偉大なる賢者と呼ばれる方をわが町に迎え入れることが出来るのはこの上もない喜びである。」
「願わくば彼と、彼の子孫とが末永くこの地に留まり、心安らかなる時を送らんことを。」
酒場で働いているバニーガールに話しかける。
「あら?見かけない顔ね。この町の人じゃないでしょ。」
「連れてるネズミみたいな動物はあなたのペットなの?うふふ、可愛いわね。」
「へえ、トーポっていうんだ。トーポちゃん、宜しくね。」
カウンターで飲んでいる男性に話を聞く。
「おや?誰かをお探しですか?」
「なんと、マスター・ライラスを。ではまだ知らないんですね。」
「マスター・ライラスは先日に火事でお亡くなりになったんです。本当にお気の毒なことですが。」
「いえね、ここだけの話ですが、実は誰かに殺された・・あ、今のは聞かなかったことに・・」
カウンターでルイネロという男性が飲んでいる。
「ルイネロさん、もうやめにしないかい?」
「悪いけどこっちも商売なんだ。あんたの当たらない占いなんか一杯の酒代にもなりゃしないよ。」
ルイネロが怒り出す。
「なんだと!わしの占いが当たらないだと!阿呆かお前は。」
「わしが先日の火事を占いで予見し、止めたとしよう。しかしそれが何になる?」
「その事が次の災の種になるかも知れんのだ。」
酒場のマスターが言う。
「ルイネロさん、言ってる意味が分からないよ。」
「もし火事が分かっていたら、少なくともマスター・ライラスを救えたのじゃないのかい?」
「ライラスか。あの老人とはよく喧嘩をしたものだ。まさか死ぬとはな。」
主人公はルイネロに話しかけた。
「なんだ?わしに何か用・・ん!お前さん達、ちょっと顔を見せてみい。むむ、これは・・」
その時、男性の叫ぶ声が聞こえてきた。
「大変だ!怪物が町の中に入り込んだ!」
広場に行くと、トロデ王が町の人達に囲まれていた。
町の人達に石を投げつけられ、うずくまっている。
主人公は人混みをかき分け、トロデ王を連れて一旦町を出た。
トロデ王が言う。
「やれやれ、ひどい目にあったわい。」
「一体わしを誰だと思っているのじゃ。人を見た目だけで判断するとは情けないのう。人は外見ではないと言うに。」
「ときに主人公、マスター・ライラスじゃが見つけることが出来たのか?」
「何と!すでに亡くなっていたじゃと?むむむ。」
「ふむ、亡くなってしまったものは仕方がないの。」
「もともと我等が追っているのは、わしと姫をこのような姿に変えた憎きドルマゲスじゃ。」
「マスター・ライラスに聞けばヤツのことが何か分かるやも知れぬとそう思ったのじゃが。」
「やはりドルマゲスの行方はわしらが自力で探すしかないようじゃな。」
「では行くとするか。ライラスがいない今、こんな町に長居は無用じゃ!」
その時、町から一人の女性がやって来た。
「お待ち下さい。私、夢を見ました。」
「人でも魔物でもない者がやがてこの町を訪れる。」
「その者がそなたの願いを叶えるであろうと。」
「あ、申し遅れました。私は占い師ルイネロの娘、ユリマです。」
「どうか私の家に来てくれませんか?詳しい話はそこで。」
「町の奥の井戸の前が私の家です。待ってますからきっと来て下さいね!」
ユリマは町に戻っていった。
トロデ王が感心している。
「偉い!このわしを見ても怖がらぬとは、さすが我が娘ミーティアと同じ年頃じゃ。」
「ここは一つ、あの娘のためにひと肌脱いでやろうではないか!」
「よし主人公。町の奥の井戸の家じゃったな。お前、行って話を聞いてまいれ。」
「ん?わしか?わしと姫はここで待っておるよ。また騒がれても厄介でな。」
主人公とヤンガスは町へ戻り、井戸のすぐ左の家でユリマに会った。
「あ、本当に来てくれたんですね。」
「なのに私ったらうたた寝なんかしてて、ごめんなさい。」
「実は頼みというのはこの水晶玉のことなんです。」
ユリマの目の前には大きな水晶玉がある。
「・・って、もしかして話が急すぎましたか?」
「かつて私の父ルイネロはもの凄く高名な占い師でした。」
「どんな探し物も尋ね人もルイネロには分からぬことはないと。」
「しかしある日をさかいにその占いは全く当たらなくなってしまったのです。」
「多分それは、この水晶玉がただのガラス玉に・・」
そこへ、ルイネロがやって来た。
「何を話しているんだ、ユリマ。」
「その水晶玉に触るなとあれほど何度も・・」
「ん?あんたは確か酒場で会った人だな?・・まあともかくだ。」
「わしは別に困っていない。娘に何を頼まれたかは知らんが、余計なお世話だぞ。」
「さて、わしはもう寝る。ユリマ!客人には早々にお引取り願うんだぞ。」
ルイネロは何処かへ行ってしまった。
「ごめんなさい、あんな父で。」
「でも、あんなこと言っても占いが当たらなくなって一番悩んでいるのは父本人だと思います。」
「だからお願いです。父本来のチカラが発揮できるほどの大きな水晶玉を見つけて来てくれませんか?」
主人公は頷いた。
「え!引き受けてくれるんですか?やっぱり夢のお告げの通りだわ。そのお告げによると、町の南にある大きな滝の下の洞窟に水晶が眠っているそうです。」
「こんな事が分かるなんて、私はやっぱり偉大なるルイネロの娘ですよね。」
主人公はトラペッタを出て南に進み、滝の洞窟へ向かった。
洞窟の地下3階に行くと滝の中に水晶玉が浮かんでいた。
浮かんでいる水晶玉に手を伸ばすと、突然、ザバンという魔物が現れた。
「ふぁっふぁっふぁ。驚いたじゃろう。わしはこの滝の主ザバンじゃ。」
「わしは長い間待っておった。お前で何人目になるかのう。」
「今度こそ、今度こそ、と思いながらかれこれ10数年。長い歳月であったな。」
「さて、前置きはこのくらいにしておこう。いいか、正直に答えるのだぞ。」
「お前がこの水晶玉の持ち主か?」
主人公は頷いた。
「おお。ついにやって来よったか。このうつけ者の人間めが。」
「嫌というほど懲らしめてくれるわ!」
主人公達は襲いかかってきたザバンを倒した。
「痛い、痛い。頭の古傷が痛むわい。」
「それもこれもお前のせいじゃぞ。」
「なに?何の事だか分からないとな?さてはおぬし、水晶玉の本当の持ち主ではないな。えーい、みなまで言うな。」
「わしの偉大なる攻撃を一つも受け付けぬその体質。お前は水晶使いの占い師ではなかろう。」
「そう言えば水の流れにのって、こんな噂を耳にしたぞ。」
「トロデーンという城が呪いによって一瞬のうちにイバラに包まれた。ただ一人の生き残りを残してな。」
「その一人は、何故か御者を乗せた馬車を連れて旅に出たという。」
「そうか。やはりおぬしがそうであったか。」
「そのおぬしが何故この水晶を求めるか分からぬが。」
「水晶はおぬしにくれてやろう。このわしに勝ったのだからな。」
主人公は水晶玉を手に入れた。
「それから最後に一つ。もしお前が水晶の本当の持ち主に会うことがあったら伝えてくれい。」
「むやみやたらと滝壺に物を投げ捨てるでないとな。」
「さらばじゃ。痛い、痛い。頭の古傷が痛むわい。」
ザバンは滝壺の中に去っていった。
トラペッタに戻り、ルイネロと話をする。
「そろそろ戻る頃と思っていたぞ。」
「どうやらユリマに頼まれた品を見つけて来たようだな。」
「腐ってもこのルイネロ。そのくらいのことは分かるわい。この玉がただのガラス玉でもな。」
「しかしおぬしも大概のおせっかいだのう。」
「だが無駄なことよ。いくら本物の水晶を持って来てもまた捨てるのみ。」
「なに?滝壺には捨てるな?当たると今度は古傷が開くだと?訳が分からんぞ。」
「まあよいわ。いいか、よく聞けよ。わしがどうして水晶を捨てたか。」
「その理由はユリマも知らんことだ。ましてやあんたらなど。」
「その水晶玉をよこせ!今度は二度と拾ってこれぬよう粉々に砕いてくれる!」
そこへユリマがやって来た。
「やめて!お父さん!」
「私、もう知ってるから。ずっと前から私・・」
「何故水晶を捨てたのか知ってたから。」
ルイネロが動揺する。
「ユリマ、お前・・じゃあ、自分の本当の親のことを?」
「うん、でも私はお父さんのせいで両親が死んだなんて思ってないよ。」
「お父さんはただ占いをしただけだもん。」
「私は知らないけど、お父さんの占いってとっても凄かったんでしょ。」
「だから何処に逃げたのか分からなかった私の両親の居場所もあっさりと当ててしまったんだよね。」
ルイネロが言う。
「あの頃、わしに占えないものなどないと思っていた。わしの名は世界中に響き渡り、わしは有頂天じゃったよ。」
「占えることは片っ端から占ったもんじゃ。」
「自分のことばかり考えて頼んでくる連中が善人か悪人か、そんなことすら考えなかった。」
ユリマが言う。
「もういいの。もういいのよ。」
「だってお父さんは一人ぼっちになった赤ちゃんの私を育ててくれたじゃない。」
「私、見てみたいな。高名だった頃の自信に満ちたお父さんを。どんな事でも占えたお父さんを。」
翌朝、目を覚ますとルイネロが水晶玉の前に座っていた。
「やっと起きてきたか。もう昼だぞ。」
「この時間まで寝込むとは。相当に疲れていたのであろう。」
「とにかくおぬしらには礼を言わねばならん。」
「おぬしらの持ち帰った水晶も、ほれ、このように収まる所に収まったぞ。」
「こうやって真剣に占うのは何年ぶりかのう。これもおぬしらのおかげだ。」
水晶玉が光り輝く。
「これは、どうしたことか!」
「見えるぞ!道化師のような男が南の関所を破っていったらしい。」
「むむむ!奴こそがマスター・ライラスを手にかけた犯人じゃ!」
「こいつは確か・・いや、だいぶ感じが違っているが、その昔、ライラスの弟子であった・・ドルマゲス!」
「この水晶は確かに昔、わしが持っていたものに違いないが、ここに小さなキズのようなものがあるぞ。」
「ふむ、相当硬いものにぶつけてしまったようだな。」
「ん?その傷の横に小さな文字で落書きがあるぞ。」
「なになに・・阿呆じゃと?誰が阿呆をじゃ!一体何処の馬鹿がこんな事を。」
「ふむ、何やら事情がありそうだな。聞かせてくれるか?」
「なるほど、おぬし達はドルマゲスの手がかりを求めてマスター・ライラスを訪ねて来たと。」
「そしてそのライラスはすでに亡くなっていたという訳じゃな。」
「しかしわしの占いでは、そのドルマゲスこそがライラスを手にかけた犯人じゃ。」
「自分を知る人物を消したかったのか、それとも他に理由があったのか。」
「そこまでは分からんが、とにかくドルマゲスは関所を破り南に向かったようだ。」
「南にはリーザスという小さな村がある。」
「と、わしが分かるのはここまでじゃ。」
「とにかくおぬし達には世話になった。気をつけてゆくのだぞ。」
町を出てトロデ王に報告する。
「何じゃと!マスター・ライラスを手にかけたのが、わしらが追うドルマゲスだったじゃと!」
「あやつめ、かつての自分の師匠に何ということを。」
「して、南に向かったと言うのじゃな?」
「こういえはおれぬぞ、主人公。わしらもすぐに奴の後を追うのじゃ!」
関所を越えて道なりに進むと、リーザス村が見えてきた。
村に入ると二人の少年が近づいてきた。
「待て、お前達。何者だ!」
「いーや、分かってるぞ。こんな時にこの村に来るってことは、お前らも盗賊団の一味だな。」
「マルク!こいつらサーベルト兄ちゃんのカタキだ!成敗するぞ!」
マルクと呼ばれた少年が頷いた。
「がってん!ポルク!」
そこへ村の老婆がやって来た。
「これ、お前達。ちょっと待たんかい。」
「よく見んかい、この早とちりめが。この方たちは旅のお方じゃろが。」
「お前達、ゼシカお嬢様から頼まれごとをしとったんじゃろう。全く、フラフラしよってからに。」
「ほれほれ、ゼシカお嬢様からお叱りをもらう前に、さっさと行かんか!」
マルクとポルクは老婆に叱られて何処かへ行ってしまった。
「すみませんねえ、旅の方。あの子達も悪い子達じゃないんだけど。」
「最近、村に不幸があったもんで。おっと、まあ詳しい話は村の者にでも聞くといいじゃろう。」
「この村はいい村じゃよ。どうぞゆっくりしていって下され。」
村の教会にいる旅の商人に話を聞く。
「私は西の関所を通ってこの村に来たのですが。」
「関所が恐ろしいチカラでこじ開けられたように壊されてまして。」
「一体何があったんでしょうな。」
シスターに話を聞く。
「アルバート家は先代が亡くなられて、長男のサーベルトさんが若くして家をお継ぎになられたのですが、まさかこんな事になろうとは。」
「残された奥様とゼシカお嬢様のお気持ちを思うと胸がふさがる思いです。」
「特にゼシカお嬢様は落ち込んでいらっしゃるでしょう。仲の良いご兄弟でしたから。」
教会でお祈りをしている老人に話しかける。
「神様。老い先短いじじいの頼みじゃ。今年も無事にリーザス像参りをさせて下され。」
「リーザス像とゼシカ嬢ちゃんのナイスバディを拝む時間だけが、わしの人生のハートフルタイムだったのじゃ。」
墓の前に、先程入り口で会った老婆がいた。
「おや、あんたは。さっきは子供達が迷惑をかけたね。」
「アルバート家の噂は何処かで聞いたかい?この村の高台の家がアルバート家のお屋敷だよ。」
「サーベルト坊っちゃんが亡くなって以来、奥様もゼシカお嬢様も家の中でふさぎ込みっぱなしさ。気の毒でならんよ。」
「まあ今日はもう夜も更けた。興味があるなら明日にでもお屋敷に行ってみるといいじゃろう。」
村を歩いている青年に声を掛ける。
「聞いて下さい。ついさっき、ゼシカお嬢様のフィアンセとかいう奴がお屋敷の中に入っていったんです。」
「あんな見るからにスケベそうな奴がゼシカお嬢様のフィアンセだなんて。嘘だ!僕は絶対に信じないぞ!」
村人の家に入り、青年に話を聞く。
「私たちが東の塔に行くのは年に一度、聖なる日だけ。その日以外は魔物が出るからね。」
「聖なる日はまだずっと先だってのに、父さんすっかり落ち込んじゃってさ。」
家の女性に話を聞く。
「東の塔の扉は、この村の者にしか開けられないはずなのに、一体誰が塔の扉を開き、中に入ったのでしょう。」
「みんなは盗賊の仕業だって言ってるけど、本当にそうなのかしら。」
川辺にいる女性に話を聞く。
「サーベルト坊っちゃんは家柄とかで威張ったりせずに、自分から進んで村の用心棒をしてくれてたのさ。」
「あんないい優しい子が殺されちまうなんてね。世も末だよ。」
村の女性に話を聞く。
「リーザス像の瞳に埋め込まれている宝石、とっても綺麗なんですよ。」
「じっと見てると吸い込まれそうなくらい。」
村の宿で一泊し、翌日アルバート家の屋敷に向かう。
屋敷にいる用心棒に話を聞く。
「以前はこの家に用心棒なんて必要なかったんですが、サーベルト様が亡くなられてしまい、急に私が雇われることになりまして。まだ新米な訳であります。」
「というわけですから、屋敷の中でおかしな真似は絶対にしないで下さいね。」
厨房にいる女性に話を聞く。
「あたしゃ見たんだよ。奥様とゼシカお嬢様が派手に喧嘩してるのをね。」
「え?喧嘩の内容かい?良く分からないけど、確かカタキがどうのこうのって言ってたね。」
厨房にいる男性に話を聞く。
「東の塔の扉は、この村の者にしか開けられない秘密があるんでさ。」
「なのに塔の扉が開いたもんで、サーベルト坊っちゃんは中の様子を見に一人で東の塔に行ったんです。」
「そこを何者かに狙われて・・うう、ちくちょー!」
メイドに話を聞く。
「私ね、ゼシカお嬢様のことあまり好きじゃなかった。って言うか、正直苦手だったの。あ、内緒の話よ。」
「だって私たちメイドとはあんまり仲良くしてくれないし。奥様ともいつも喧嘩ばっかりだし。」
「でも今は同情してるわ。だって、ゼシカお嬢様が本当に懐いてたのは兄であるサーベルト様だけだったもの。」
2階の踊り場にラグサットという男性がいた。
「はっはっは!そうさ!僕こそが、かの有名なラグサットさ。」
「さる王国の大臣の子息にしてゼシカのフィアンセでもある。そうさ、それが僕さ。」
「今日は兄さんを失ったゼシカを慰めに来たんだが、ここで思わぬ恋の障害に突き当たったのさ。」
「部屋の前で子供達が通せんぼしていてね。」
「いつの日も恋路というのは厳しいものだねえ。」
ゼシカの部屋の前にマルクとポルクが立ち塞がっていて中に入れない。
本棚にある本を読む。
アルバート家の由来を語る書物のようだ。
「アルバート家の血筋をさかのぼれば、魔法剣士にして天才彫刻家シャマル・クランバートルにつながる。」
「シャマルは賢者と呼ばれ、数々の歴史に残る業績を成し遂げた偉大なる人物である。」
「その血を引くアルバート家の者は、誇りある血統を自覚し、自らを戒めていかなければならない。」
2階の書斎にゼシカの手紙があったので読んでみる。
「誰がこの手紙を読んでいるのか分からないけど、もし私以外の誰かが読んでいるのならこの手紙は遺書だと思って下さい。」
「きっと今頃、私はこの世にいないでしょう。」
「私は東の塔に行きます。サーベルト兄さんのカタキを討つまで村には戻りません。」
「お母さん、家訓を破っちゃってごめんなさい。だけど家訓よりもきっと大事なことがあると思うの。」
「私は自分の信じた道を行きます。こんな娘で本当にごめんなさい。」
「あとポルクとマルク。嘘ついちゃってごめん。私のこと許してね。 ゼシカ」
ゼシカの部屋の前にいるポルクと話をする。
「あ、お前。さっきは悪かったな。でもここは通させないぞ。」
「誰にも会いたくないから誰も部屋に入れるなっていうゼシカ姉ちゃんの命令だからな。」
「はあ?ゼシカ姉ちゃんは部屋にいないだって?」
「ふん、格好だけかと思ったら、お前ってつく嘘までケチ臭いのな。いないわけないじゃん。」
「もしも本当にいないって言うなら、ゼシカ姉ちゃんがいない証拠でも持ってきてみろっての。」
主人公はポルクにゼシカの手紙を見せた。
「あわわ。やばい。こりゃ本当にゼシカ姉ちゃんの字だ。」
「一人で東の塔にって、そんな事したらゼシカ姉ちゃんもサーベルト兄ちゃんみたく・・」
「とにかくこうしちゃいられない。ゼシカ姉ちゃんを東の塔から連れ戻さないと!」
「お前!お前もこうなった原因の一つなんだからな!」
「おいらが東の塔の扉を開いてやるから、中からゼシカ姉ちゃんを連れ戻してこい!いいな!」
「そし、それじゃ急ぐぞ!東の塔なら村を出て左を向けばもう見えるやつだからな。」
ポルクと一緒に東の塔に向かい、塔の扉の前についた。
「着いた着いた。ゼシカ姉ちゃんはこの中だぞ。」
「よし、じゃあ扉を開くぞ。この扉はな、村の人間にしか開けられないように出来てるんだ。」
「ん?お前今疑っただろ。嘘だと思うなら試してみろよ。」
主人公は塔の扉を開こうと、引いたり押したりするがビクともしない。
「ほら言った通りだろ?この扉には村の人間しか知らない秘密があるんだ。」
「こんな時だからお前の見てる前で開けるけど、この扉の秘密は絶対に誰にも言っちゃ駄目だからな。」
「よし、じゃあ開くぞ。」
ポルクは扉を下から上に押し上げて開いた。
「驚いたか!この扉はなんと上に開くように出来てたんだ。」
「とにかく、おいらに手伝えるのはここまでだ。」
「おいらは村に戻るから、ゼシカ姉ちゃんのこと、頼んだぞ!」
ポルクは村に帰っていった。
主人公が塔の最上階に登ると、そこにはリーザス像があった。
像の両眼には美しい宝石が光り輝いている。
そこへ花束を持ったゼシカがやって来た。
「あんた達・・とうとう現れたわね!リーザス像の瞳を狙って絶対にまた現れると思ってたわ!」
「兄さんを殺した盗賊め!兄さんと同じ目にあわせてやる!」
ゼシカがメラミを連発して放つ。
主人公は間一髪でゼシカの攻撃をかわしたが、リーザス像に当たってしまった。
リーザス像は炎をおび、燃え上がった。
「盗賊だけあって、さすがにすばしっこいわね。だけど今度は逃さないわよ!覚悟しなさい!」
今度はメラゾーマの呪文を唱え、放とうとする。
その時、何処からか声が聞こえた。
「待て。」
声はリーザス像の方から聞こえているようだ。
「私だ、ゼシカ。私の声が分からないか。」
ゼシカが言う。
「サーベルト兄さん?」
「呪文を止めるんだ、ゼシカ。私を殺したのはこの方達ではない。」
「止めろったって、もう止まんないわよ!」
ゼシカのメラゾーマは暴発し、塔の壁を壊した。
なおも燃えているリーザス像に駆け寄るゼシカ。
「サーベルト兄さん!本当にサーベルト兄さんなの?」
「ああ、本当だとも。聞いてくれ、ゼシカ。そして、そこにいる旅の方よ。」
「死の間際、リーザス像は我が魂の欠片を預かって下さった。」
「この声も、その魂の欠片のチカラで放っている。だからもう時間がない。」
「像の瞳を見つめてくれ。そこに真実が刻まれている。さあ、急ぐんだ。」
「あの日、塔の扉が開いていたことを不審に思った私は、一人でこの塔の様子を見に来た。」
リーザス像の瞳を通してサーベルトの記憶が流れ込む。
リーザス像の前にドルマゲスが立っていた。
剣を構えるサーベルト。
「誰だ!貴様は!」
ドルマゲスが言う。
「悲しいなあ。」
「くっくっく。我が名はドルマゲス。ここで人生の儚さについて考えていた。」
「悲しいな・・君のその勇ましさに触れるほど私は悲しくなる。」
ドルマゲスが持っている杖が怪しく光り、サーベルトの身体が拘束された。
「ぐわ!貴様、何をした。身体が・・くそ!動かん!」
ドルマゲスがサーベルトに近づいてくる。
「君の名はたった今より我が魂に永遠に焼き付くことになる。」
「さあ、もうこれ以上私を悲しませないでおくれ。」
ドルマゲスは持っている杖でサーベルトを串刺しにした。
その場に倒れ込むサーベルト。
「君との出会い、語らい、その全てを我が人生の誇りと思おう。」
「君の死は無駄にしないよ。」
「くっくっく。くはは、あはははは!ひゃーはっはっは!」
サーベルトの記憶はそこで終わった。
「旅の方よ、リーザス像の記憶、見届けてくれたか。」
「私にも何故かは分からぬ。だがリーザス像は、そなたが来るのを待っていたようだ。」
「願わくば、このリーザス像の記憶がそなたの旅の助けになれば私も報われる。」
「ゼシカよ。これで我が魂の欠片も役目を終えた。お別れだ。」
「ゼシカ、最後にこれだけは伝えたかった。この先も母さんはお前に手を焼くことだろう。だがそれでいい。」
「お前は自分の信じた道を進め。さよならだ。ゼシカ・・」
リーザス像から光が消えた。
そこへトロデ王がやって来る。
「ふーむ、何たることじゃ。」
「あのサーベルトとやらを殺した奴め、間違いなくドルマゲスじゃ。」
ヤンガスが驚く。
「おっさん!いつの間に?」
驚くヤンガスを無視し、トロデ王が話を続ける。
「何故かは分からんが、サーベルトとやらもまた、わしらにドルマゲスを倒せと言っておるようじゃ。」
「ふむ、彼の思い、決して無駄には出来んな。」
「これでまた一つ、ドルマゲスを追う理由が増えたと言うことじゃ。」
「それじゃ、わしは馬車で待っておるぞ。じゃ。」
トロデ王は一人で馬車まで帰っていった。
ゼシカはリーザス像の前で泣き崩れている。
主人公がその場を立ち去ろうとすると、ゼシカに呼び止められた。
「あ、ねえ・・名前も分からないけど、誤解しちゃってごめん。今度ゆっくり謝るから。」
「だからもうしばらく一人でここにいさせて。ごめん。少ししたら村に戻るから。」
リーザス村に戻って宿屋へ行き、入口にいるポルクと話をする。
「あ、帰ってきたか。遅いから心配してたんだぞ。」
「で、ゼシカ姉ちゃんは?」
「ふんふん、そっか。塔でそんな事が。」
「まだちょっと心配だけど、ゼシカ姉ちゃんが帰ってくるって言ったんならきっと大丈夫だな。」
「主人公、とにかくありがとな。色々あったけど、おいらはお前のことちょっとだけ尊敬したぞ。」
「そうだ、お前達が戻ってきたら宿屋に泊めてもらえるように、ちょうど今お願いしてきたとこだ。」
「マルクと二人で小遣いはたいたんだからな。しっかり感謝して泊まれよ。」
主人公は宿屋で一泊した。
翌日、アルバート家の屋敷に向かい2階に行くと、ゼシカの母親アローザとゼシカが言い争いをしていた。
「もう一度聞きます、ゼシカ。あなたには兄であるサーベルトの死を悼む気持ちはないのですか。」
ゼシカが言い返す。
「またそれ?さっきから何度も言ってるじゃない。悲しいに決まってるでしょ。」
「ただ、家訓家訓って言ってるお母さんとは気持ちの整理のつけ方が違うだけ。私は兄さんの仇を討つの。」
アローザが怒っている。
「仇を討つですって?ゼシカ!馬鹿を言うのもいい加減にしなさい!あなたは女でしょ!」
「サーベルトだって、そんな事を望んではいないはずよ。今は静かに先祖の教えに従って兄の死を悼みなさい!」
ゼシカも母親に負けずに反論する。
「もういい加減にして欲しいのはこっちよ!先祖の教えだの家訓だのって、それが一体何だっての?」
「どうせ信じやしないだろうけど、兄さんは私に言ったわ。自分の信じた道を進めってね。」
「だから私はどんな事があっても、絶対に兄さんの仇を討つわ。それが自分の信じた道だもの。」
アローザがため息をつく。
「分かったわ。それほど言うなら好きなようにすればいいでしょう。」
「ただし、私は今からあなたをアルバート家の一族とは認めません。この家から出てお行きなさい。」
「ええ、出ていきますとも。お母さんはここで気が済むまで思う存分、引きこもってればいいわよ。」
ゼシカは荷物をまとめるため、自分の部屋に入っていった。
しばらくすると、荷物をまとめ終えたゼシカが戻ってきた。
「それじゃあ、言われた通りに出ていくわ!お世話になりました!ごきげんよう!」
ゼシカは屋敷の外に出ていった。
アローザに話しかける。
「本当にあの子は、一体誰に似たのかしら。」
「どうせすぐに音を上げて戻ってくるに決まってるわ。」
屋敷の外で遊んでいるポルクに話を聞く。
「ああ、お前か。ゼシカ姉ちゃんなら港町ポルトリンクに行くって言って出ていったぞ。」
「塔から戻る前にポルトリンクに行ったら怪しい奴の噂を聞いたからそれを突き止めるんだって。」
「ポルトリンクならこの間行った塔のちょっと手前の分かれ道を右に行って、あとは道沿いにずっと行けば着くはずだぞ。」
「でも結構遠いから、行くつもりならちゃんと準備してからにした方がいいぞ。」
主人公は村を出てポルトリンクに向かった。
町の男性に話を聞く。
「定期船でこの大陸に来る途中、立て続けにおかしなことが起こりました。」
「最初に甲板にいた船乗りが、海の上を歩く道化師のような格好の男を発見したのです。」
「みんながそれに驚いていると、すぐに海の中から巨大な魔物が現れ、船の行く手を妨害したのです。」
「どうにかその魔物の目を逃れてこの港町に辿り着きましたが、全く生きた心地がしませんでしたよ。」
町の南東にある船着場に入ると、ゼシカが受付で声を荒げていた。
「もういい加減に待てないわよ!さあ、今すぐ船を出して!私は急いでるんだから!」
「魔物なんて私が退治するって言ってるでしょ!」
受付の男性が言う。
「いやいや、ゼシカお嬢様にそんな事させたら、後でアルバート家から何を言われるか・・」
ゼシカが主人公の姿に気づいて、こちらにやって来くる。
「あ、丁度良かった!塔であった人よね?リーザス村で待っててって言ったのに、どうして待っててくれなかったの?」
「私、ちゃんと謝りたかったのに。でも、それは今はいいわ。」
「ちょっと頼みたいことがあるの。一緒に来てくれる?」
ゼシカに受付まで連れて行かれた。
「ねえねえ、その魔物を倒すのに私が手を出さなきゃいいんでしょ?」
「だったら任せて。魔物退治はこの人が引き受けてくれるわ。ね?これならオッケーよね?」
「じゃあ、決まりね?あなたもそれでいいでしょ?」
「リーザス像が見せてくれた光景を私は一生忘れないわ。」
「あのドルマゲスって男に一体どんな目的があるのか。どうして兄さんをあんな目にあわせたのか。」
「世界の果てまで行っても追い詰めてやるわ。でもそれにはまず、航路の安全を確保しなくっちゃね!」
船に乗り出航すると、巨大なイカの魔物が現れた。
「気に入らねえなあ。いつもいつも断りなく、このオセアーノン様の頭上を通りやがって。」
「なあおい、全く人間って奴は躾がなってねえと思わねえか?」
「そんじゃまあ、海に生きる者を代表してこの俺様が人間喰っちまうか。」
主人公は襲いかかってくるオセアーノンを倒した。
「いやあ、お強いんですねえ。おみそれしました。」
「これ、言い訳っぽいですが今回の件、私のせいじゃないんですよ。そうそう、アイツのせいなんです。」
「いえね、この間、道化師みたいな野郎が海の上をスイスイと歩いてましてね。」
「人間のくせに海の上を歩くなんて生意気な奴だと思って睨んでたら、睨み返されまして。」
「それ以来、私、身も心も奴に乗っ取られちゃったんですねえ。船を襲ったのもそのせいなんですよ。」
「てなわけで悪いのは私じゃなくて、あの道化師野郎なんです。」
「それじゃ、私はこの辺で退散しますね。では皆さん、良い船旅を。」
オセアーノンは海に沈んでいった。
ゼシカが主人公に駆け寄ってくる。
「思ったより強いじゃない!正直あんまり期待してなかったからちょっとビックリしたわ。」
「そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はゼシカ。ゼシカ・アルバートよ。」
「あなた達は何ていうの?」
ヤンガスが自己紹介する。
「アッシはヤンガスでがす。こっちはアッシの親分である、主人公の兄貴でげすよ。」
「主人公にヤンガスね。魔物を倒してくれて、改めてありがと!これでドルマゲスを追えるわ!」
「じゃあ色々準備もあるし、一度さっきの港町に戻りましょう。私、船を戻すように言ってくるわ。」
「あ、そうだ。ねえねえ、主人公とヤンガス。」
「塔での約束、忘れてたわ。盗賊と間違えちゃったこと、ちゃんと謝らなきゃね。」
「すんませんしたー!」
船は一度ポルトリンクに戻った。
「今ね、魔物を倒したお礼に次の出発は、私達の都合に合わせてもらうようお願いしてきたわ。」
「あ、そうだ。主人公達にお願いがあるの。」
「主人公達もドルマゲスを追ってるんでしょ?だったら旅の目的は一緒なんだし、私も主人公達の仲間にしてくれない?」
「こう見えても魔法使いの卵なの。きっと役に立つわ。」
「いい旅になりそう。これから宜しくね!」
ゼシカが仲間に加わった。
主人公達は船に乗り、南の大陸を目指した。
乗船中、主人公とヤンガスが話をしているとゼシカがやって来た。
「あ、いたいた。こんな所にいたのね。男二人で何やってたの?」
「そう言えば聞きたかったんだけどさ、二人は一体どういう関係なの?」
ヤンガスが答える。
「よくぞ聞いてくれたでげす。」
「不肖ヤンガス、主人公の兄貴の旅のお供をしてるのにゃあ、聞くも涙、語るも涙の壮大な物語があるでげすよ。」
「そう、あの日は確か夏の盛り。遠くでセミが鳴いていたでげすよ。」
「それまでのしがない山賊暮らしに嫌気が差したアッシは、足を洗おうと住み慣れた町を捨てたでげす。」
「ところがこの風体のせいか、何処に行っても山賊と恐れられ、人間らしい扱いをされなかったでげすよ。」
「やがて金も底を尽き空腹にも耐えかねたアッシは、結局山賊に戻ることを決めたでがす。」
「主人公の兄貴に出会ったのは丁度そんな頃でがしたね。」
「兄貴を襲おうとオノで斬りかかったんでがすがね、兄貴にあっさりと攻撃をかわされてしまったでげす。」
「アッシのオノは運悪く吊橋を壊してしまって、崖から落ちそうになったでげす。」
「主人公の兄貴はそんなアッシを見捨てることなく、助けてくれたでげすよ。」
「アッシは兄貴の寛大な心に心底感服致しやしたでげす。」
「その日から兄貴と呼ばれせもらって、旅のお供に加えてもらったでがすよ。」
「それからもアッシは真人間としてのいろんな事を兄貴に教わったでげす。」
ゼシカは話に飽きて何処かへ行ってしまった。
主人公は馬車の中にいたトロデ王に話しかけた。
「直った、直った。ようやく直ったわい。」
「おお、主人公。いい所に来た。今ちょうどこいつが直ったところじゃ。」
トロデ王の前には大きな釜があった。
「じゃじゃーん。これじゃ。この釜、一見すると普通の釜のようじゃが、なんと、伝説の錬金釜なんじゃぞ。」
「と言っても、何の事か分かるまい。簡単に説明するぞ。」
「この錬金釜はな、材料となる二つの道具を入れることによって違う道具を生み出す魔法の釜なのじゃ。」
「この釜があれば、なかなか手に入らんような道具でも自分で作り出す事が出来るぞ。」
「旅立つ前に、イバラの呪いに侵された我が城からどうにかこいつだけは持ち出しておいたんじゃ。」
「しかもあちこちガタがきてたのをわしが夜な夜な修理しとったんじゃ。感謝するがよいぞ。」
「とにかくこの釜は馬車に積んでおくから、一度使ってみるのじゃ。操作は簡単じゃからな。」
主人公は錬金釜を使えるようになった。
船は南の大陸の港に着いた。
港から道なりに進むとマイエラ修道院があった。
入口に近づくと門を警備している修道士に止められてしまう。
「なんだ、お前達は。怪しい奴め。この奥に行って何をする気だ?」
「この先は許しを得た者しか入れてはならぬと決められている。」
「この聖堂騎士団の刃にかかって命を落としたくなくば、早々に立ち去るが良い。」
そこへマルチェロという男性が現れた。
「入れるなとは命じたが、手荒な真似をしろとは言っていない。我が聖堂騎士団の評判を落とすな。」
「私の部下が乱暴を働いたようで、すまない。だがよそ者は問題を起こしがちだ。」
「この修道院を守る我々としては、見ず知らずの旅人をやすやすと通すわけにはゆかぬのだよ。」
「ただでさえ内部の問題に手を焼いているというのに。いや、話がそれたな。」
「この建物は修道士の宿舎。君たちには無縁の場所ではないかね?さあ、行くがいい。」
「部下たちは血の気が多い。次は私も止められるかどうか分からんからな。」
マルチェロは去っていった。
門を警備している修道士が言う。
「くそ、お前のせいで団長に怒られたじゃないか。」
「マルチェロ様は我が聖堂騎士団の団長を務めるお方。」
「この修道院きっての切れ者で、院長の補佐として実務のほとんどを取り仕切っておられる。」
マイエラ修道院からさらに進んで行くとドニの町があった。
酒場で話を聞く。
「あいつ、ククールの奴、修道院の聖堂騎士団のくせして酒は飲むはカードはやるわ。その上女にもモテるなんて、最低の男だな。くそー、羨ましい!」
酒場の奥でカードゲームをしているククールに話しかける。
「おっと、今は真剣勝負の最中でね。後にしてくれないか?」
それを聞いたゲーム相手の男性が怒り出す。
「真剣勝負だと?おい、この腐れ僧侶!てめえ、イカサマやりやがったな?」
ヤンガスが怒り出した男性をなだめる。
「まあまあ、あんたもそう興奮すんなよ。負けて悔しいのは分かるけどよ。」
ヤンガスが男性にふっとばされる。
「なんだと?そうか、分かったぞ。」
「てめえら、こいつの仲間だな?」
ヤンガスが起き上がり、再び男性に近づいていく。
「いい加減にしやがれ!妙な言いがかりつけるとタダじゃおかねえ・・」
その時、ゼシカがバケツに入った水を二人にぶっかけた。
「いい加減にして!頭を冷やしなさいよ。この単細胞!」
今度は男性の仲間がゼシカに詰め寄る。
「兄貴に何しやがる。女だからって承知しねえぞ!」
ヤンガスと男性、その子分の3人で大乱闘が始まった。
ククールはゼシカと主人公を連れて酒場の外に出た。
「あんたら何なんだ?ここらへんじゃ見かけない顔だが。」
「ま、いいや。とりあえずイカサマがバレずに済んだ。一応礼を言っとくか。」
主人公と握手をするククール。
「あんまりいいカモだったから、ついやりすぎちまった。」
「おっと、グズグズしてたらあいつらに見つかっちまう。」
ククールがゼシカを見つめる。
「俺のせいで怪我をしなかったかい?」
ゼシカがククールを睨みつける。
「あいにく平気よ。ジロジロ見ないでくれる?」
ククールは全く動じていない。
「助けてもらったお礼と今日の出会いの記念にこれをあげよう。」
ククールはゼシカの手を強引に取り、無理やり指輪をはめた。
「俺の名前はククール。マイエラ修道院に住んでる。」
「その指輪を見せれば俺に会える。会いに来てくれるよな?」
「じゃ、また。マイエラ修道院のククールだ。忘れないでくれよ。」
ククールは帰っていった。
ヤンガスが酒場から出てくる。
「おーい、兄貴!ここにいたんでげすか?ずいぶん探しましたでがすよ。」
「あいつらコテンパンにとっちめてやりましたでがす。へへへ。」
ゼシカがイライラしている。
「いーい?主人公。こんな指輪、受け取らないからね!」
「マイエラ修道院まで行って、あの軽薄男に叩き返してやるんだから!」
町の老人に話を聞く。
「昔、この辺りを治めておった領主は、それはそれはひどい男でのう。」
「奥方になかなか子が生まれぬからと、昔捨てた平民の娘の子供を養子にして跡継ぎにしようとしたのじゃ。」
「ところがしばらく経って、奥方がククール坊っちゃんを生んだもんだから、その子はお払い箱さ。」
「母親はすでに死んでおったから、男の子は無一文でマイエラ修道院に追い出されたとさ。まったく、ひどい話だよ。」
町の男性に話を聞く。
「ククールが役に立つのは、お偉いさんやお金持ちから寄付をせしめる時だけだ。」
「ご自慢の顔に騙されて、下手っぴなお祈りに金を出す。」
「おかげで修道院は大儲けだ。」
「もっとも、招かれた屋敷でお祈りだけしてきてるとは限らないがな。バリ当たりめ。」
主人公は再びマイエラ修道院に向かい、門の警備をしている修道士にククールの指輪を見せた。
「なに?ククールに聖堂騎士団の指輪を返しに来た?」
「ふん、また酒場代の支払いをその指輪でツケにしてくれと頼んだのだな。しょうがない奴め。」
「仕方ない。ククールは奥だ。さっさと通るが良い。」
すぐ右の階段から地下へ降りると、奥の部屋でククールとマルチェロが話をしていたので盗み聞きする。
「またドニの酒場で騒ぎを起こしたようだな。この恥さらしめ。」
「どこまで我がマイエラ修道院の名を落とせば気が済むんだ?まったく、お前は疫病神だ。」
「そう、疫病神だよ。お前さえ生まれてこなければ、誰も不幸になどならなかったのに。」
「顔とイカサマだけが取り柄の出来損ないめ。半分でもこの私にもお前と同じ血が流れているかと思うとゾッとする。」
「ふん、まあいい。聖堂騎士団員ククール、団長の名においてお前に当分の間、謹慎を言い渡す。」
「いかなる理由があろうとも、この修道院から外に出ることは許さん。いいか?一歩たりともだ。」
「それさえ守れぬようなら、いくら院長がかばおうと修道院から追放だ。分かったな。」
マルチェロがいなくなった後、ククールと話をする。
「あんた達・・酒場で会ったあの時の連中だよな?どうしてこんな所に。」
ゼシカが言う。
「何がどうしてこんな所に、よ!あんたが来いって言ったんでしょ!こんな指輪なんていらないわよ!」
ククールは指輪を見て何かを思いついたようだ。
「そうか。まだその手があった!」
「なあ、あんたらに頼みたいことがあるんだ。俺の話を聞いてくれ。のんびり話してる時間はない。」
「感じないか?とんでもなく禍々しい気の持ち主がこの修道院の中に紛れ込んでいるのを。」
「聞いた話じゃ院長の部屋に道化師が入っていったらしい。この最悪な気の持ち主は恐らくそいつだ。」
「そいつの狙いまでは分からないが、とにかくこのままじゃオディロ院長の身が危ない。」
「頼む、修道院長の部屋に行って中で何が起こっているか見てきてくれ。」
「俺だって自分で行けるなら人にこんな事頼んだりしない。ただ、今はちょっと訳ありなんだ。」
「礼なら後で必ずするよ。お願いだ。」
主人公は頷いた。
「ありがとう。恩に着るよ。じゃあ今から俺が言うことをしっかり聞いてくれ。」
「あんたらも見たかも知れないが、院長の部屋へ続く橋は石頭の馬鹿どもが塞いでいる。あそこを通るのは無理だ。」
「だがかなり回り道になるが、あの院長の部屋がある島へ行く方法がもう一つだけ残ってる。」
「一度この修道院をドニ側に出てすぐ川沿いの土手を左手に、つまりこの修道院を見ながら川沿いを進むんだ。」
「そういう風にずっと進んで行くと、大昔に使われていて今は廃墟になった修道院の入り口がある。」
「その廃墟から院長の部屋があるあの島に道が通じているらしい。」
「すまないが院長の部屋へ行くための道はそれしかないんだ。」
「廃墟の入口はあんたらに預けた騎士団員の指輪で開くらしい。だからそいつはもうしばらく持っててくれ。」
「とにかくグズグズして手遅れになったら何にもならねえ。修道院のこと、頼んだぞ。」
ククールに言われた通りの道順でオディロ院長の建物の裏へ向かい、建物の2階のベッド寝ているオディロ院長に話しかける。
「うん?何だ、この禍々しい気は・・」
「君たちは?私に何か用かね?」
そこへマルチェロと修道士達がやって来る。
「オディロ院長。聖堂騎士団長マルチェロ、御前に参りました。」
「修道院長の警護の者たちが次々に侵入者に襲われ深手を負っております。」
「昼の間からこの辺りをうろついていた賊を、今ここに捕らえに来たと言うわけです。」
「どうにか間に合いました。ご無事で何よりです。」
オディロ院長が言う。
「いや、待て。その方は怪しい者ではない。」
「かようにも済んだ目をした賊がいるはずはあるまい。何かの間違いだろう。」
マルチェロが言う。
「分かりました。ただ、どうしてこのような夜更けに院長のもとを訪れたのか。それだけははっきりと聞いておかねばなりません。よろしいでしょうか?」
主人公達はマルチェロに尋問室へと連れて行かれた。
「院長は甘すぎる。お前達が犯人でないなら、部下たちは誰にやられたのだ?」
「私の目は誤魔化せんぞ。白状するまで・・」
そこへククールがやって来た。
「団長殿、お呼びでしょうか?」
「お前に質問がある。だがその前に、修道院長の命を狙い部屋に忍び込んだ賊を私は先程捕らえた。」
「こいつらだ。我が聖堂騎士団の団員たちが6人もやられたよ。」
「我がマイエラ修道院は厳重に警備されている。よそ者が忍び込める隙などない。誰かが手引きをしない限りはな。」
マルチェロは懐から騎士団員の指輪を取り出した。
「こいつらの荷物を調べたところ、この指輪が出てきた。」
「聖堂騎士団員ククール。君の指輪は何処にある?持っているなら見せてくれ。」
ククールが笑っている。
「良かった!団長殿の手に戻っていたとは!」
「酒場でスリに盗まれて困ってたんですよ。良かった、見つかって。」
ゼシカが怒る。
「そんな指輪、どうだっていいわ。あいつは最初っからそういう魂胆だったのよ!」
「大体あんな軽薄男の言うことを素直に聞いたのがそもそも間違いだったのよ!」
「そういう訳です。では俺は部屋に戻ります。」
ククールは尋問室から出ていった。
マルチェロが言う。
「仕方のない奴め。まあいい。あいつの処分はいつでも出来る。」
「それよりも、君たちはどうしてあの部屋にいた?何が目的なんだ。さっさと白状したまえ。」
そこへ一人の騎士団員が入ってきた。
「修道院の外でうろついていた魔物を1匹捕まえて参りました。」
どうやらトロデ王が捕まってしまったようだ。
「おい、ヤンガス!ゼシカ!こんな所で何をしとるんじゃ?主人公、答えんか!」
「あんまり長い間帰ってこんから寂しくなって探しに来てやったぞい。」
主人公達は他人のふりをしている。
マルチェロがトロデ王を見る。
「旅人殿はどうやらこの魔物の仲間らしい。このような済んだ目をした方々が。」
「魔物の手下どもめ。オディロ院長は騙せても、この私はそうはいかんぞ。」
「指輪を盗み忍び込んだのも、その魔物の命令だな?神をも恐れぬ罰当たりどもめ。」
「院長を殺せば信仰の要を失い人々は混乱する。その隙を狙い、勢力拡大を図った。そんな所か。」
「この魔物達を牢屋へ!明日の夜明けとともに拷問して己の罪の重さを思い知らせてやる!」
「明日の夜明けを楽しみにしておくんだな。」
主人公達は牢屋に入れられてしまった。
牢屋の中でゼシカが言う。
「騒いでもしょうがないわ。どうにかしてこの牢屋から出る方法を考えないと。」
「ねえ主人公、何かいい方法は思いつかない?」
「しっ・・待って。誰か来る。」
ククールがやって来た。
「こんばんは、みなさん。お元気そうで何よりだね。」
「おっと、そう怒るなって。さっきは悪かったよ。お詫びに、ほら。」
ククールは牢屋の鍵を開けた。
「ここじゃ上の階に声が聞こえちまうかも知れない。話は後だ。ついて来な。」
ククールについて行き、拷問部屋にやって来た。
「ここまで来れば安心だ。あんた達もしゃべっていいぜ。」
トロデ王がククール詰め寄る。
「おい、貴様!一体何のつもりじゃ!わしらをどうする気なんじゃ!」
「だからさっきは悪かったよ。指輪の件はああでも言わないと俺が疑われるんでね。」
「ここを追い出されたら他に行く所がないんだ。けど、ちゃんと助けに来ただろ?」
トロデ王がそっぽを向く。
「そう怒るなって。それより、ほら。ここに抜け道があって外に出られるんだ。」
「のんびりしてると、あんた達を逃がそうとしたのがバレちまう。急いでくれ。」
ククールの後について行き、抜け道を進んでいく。
抜け道を歩いている途中でヤンガスが言う。
「しかし分からねえ。自分で濡れ衣を着せておいて、何だって助けに来たんだ?」
「悪く思わないでくれ。あいにくここの連中に、俺は信用が無いもんでね。」
「あの場でかばった所であんた達を助けることは出来なかった。むしろ逆効果さ。」
「あんたらを尋問してたマルチェロは俺を目の敵にしてるからな。」
「それでとにかく一度牢屋に入ってもらって、後から助けに来たって訳だ。」
ヤンガスが言う。
「とは言っても、あんたから見りゃアッシらが素性の知れない人間であることに変わりはねえはずだ。」
「この魔物みてえなおっさんが仲間だってのも本当の事だ。それを逃しちまってもいいのか?」
「その場にはいなかったが、あんたらが院長の命を救ってくれた事くらい分かってる。」
「あんたらが尋問室に連れてこられるちょっと前に、あの禍々しい気が修道院の中から消えたからな。」
「こう見えて感謝してるんだ。そんなあんたらを見捨てるほど、俺も薄情な人間じゃない。」
「それにそちらのレディをひどい目にあわせられない。奴の拷問はきついぜ?」
抜け道の出口に着いた。
「この上から外に出られる。」
ミーティアのいる馬小屋に抜け出ることが出来た。
トロデ王が喜ぶ。
「おお、ミーティア!無事じゃったか!」
「わしがいなくて心細かったじゃろう。もう大丈夫じゃ。さ、ここから逃げ出すぞ!」
「わしは姫を連れて、先に外に出ておる。お前達も早く来るのじゃぞ。」
ククールが言う。
「まあいい、俺達も外に出よう。ここまで来りゃ余程のヘマをしない限り逃げられる。ま、あれだ。色々悪かったよ。」
「それじゃここでお別れだ。この先のあんた達の旅に神の祝福がありますように。」
ククールと一緒に外に出ると、修道院が燃えていた。
オディロ院長の住む島へ架かる橋も燃えている。
「橋が・・修道院が燃えている?」
「馬鹿な・・まさかさっきの禍々しい気の奴が再び・・」
「オディロ院長が危ない!」
ククールは一人でオディロ院長の元へ走っていった。
主人公も後を追う。
オディロ院長が住む建物の前に着いた。
「畜生!マルチェロの野郎、何処にもいやしねえ!」
「!!・・禍々しい気・・いや、そんなかわいいもんじゃない。」
「まるで悪魔が・・地の底から悪魔が大群で這い出してきたみてぇな。」
ククールが主人公達の姿に気づく。
「あんたら・・そうか。俺の後を追って来てくれたのか。」
「いいぞ、助かった。悪いがもう一度だけ俺にチカラを貸してくれ!」
「こうなりゃ実力行使だ。これだけ人数がいりゃあどうにかなる。」
「中から鍵がかかってる。さあ、みんなで体当りして扉をぶち壊すぞ!」
扉を壊して中に入った主人公達は、2階のオディロ院長の部屋へ向かった。
2階では道化師の格好をしたドルマゲスとマルチェロが戦っていた。
マルチェロはドルマゲスが放つ闇の波動を受け、壁に叩きつけられた。
「く・・オディロ院長には指一本触れさせん・・」
オディロ院長が言う。
「案ずるな、マルチェロよ。私なら大丈夫だ。」
「私は神に全てを捧げた身。神の御心ならば私はいつでも死のう。」
オディロ院長がドルマゲスを見る。
「だが罪深き子よ。それが神の御心に反するならば、お前が何をしようと私は死なぬ。」
「神のご加護が必ずや私とここにいる者達を悪しき業より守るであろう!」
ドルマゲスは宙に浮いている。
「ほう、ずいぶんな自信だな。ならば試してみるか?」
ドルマゲスがオディロ院長に近づいていく。
その時、何処からともなくトロデ王が現れた。
「待て待て待てーい!」
「久しぶりじゃな、ドルマゲスよ。」
ドルマゲスが不気味に笑っている。
「これは!トロデ王ではございませんか。ずいぶん変わり果てたお姿で。」
トロデ王が怒って飛び跳ねている。
「うるさいわい!姫とわしを元の姿に戻せ!よくもわしの城を!」
ドルマゲスはトロデ王の話を全く聞かず、持っている杖をオディロ院長に投げつけた。
ドルマゲスの杖はオディロ院長の胸を貫いた。
「悲しいなあ。お前達の神も運命も、どうやら私の味方をして下さるようだ。」
「キヒャヒャ!悲しいなあ、オディロ院長よ。」
オディロ院長の命を奪ったドルマゲスの杖が血の色をしたオーラに包まれる。
「そうだ、このチカラだ!クックック。これでここにはもう用はない。」
「さらば皆様。ごきげんよう。」
ドルマゲスは姿を消した。
翌朝、冷たい雨の中、オディロ修道院長の葬儀は行われた。
ドルマゲスは闇の中に消え、再び行方をくらました。
どうにか無事だったマルチェロは、その夜に起きた全てを皆に説明した。
主人公の疑いは晴れたのだ。
しかし、葬儀に立ち会った皆は院長の死を心から嘆き、天も惜しみない涙を流した。
雨は夜更け過ぎまで降り続き、そして夜が明けた。
主人公が目を覚ますと、寝室にククールがやって来た。
「葬式の前にも言ったが、オディロ院長の死のことはあんた達の責任じゃない。」
「むしろあんたらがいなかったら、マルチェロ団長まで死んじまってただろう。礼を言う。」
「さて、その聖堂騎士団長殿がお呼びだ。部屋まで来いとさ。」
「じゃあな、俺は確かに伝えたからな。」
マルチェロがいる団長室に向かう。
団長室に入るとトロデ王も来ていた。
「これはこれは、お目覚めのようですね。」
「話は全てこちらの方から聞きました。あらぬ疑いをかけ、申し訳ない。」
「憎むべきはドルマゲス。あの道化師には神の御名のもと、鉄槌を下さねばなりますまい。」
ククールも部屋にやって来た。
「ですが私には新しい院長として、皆を導くという役目がある。」
「そこでです。こちらのトロデという方のお話では、皆さんもドルマゲスを追って旅しているとか。」
「どうでしょう?ここにいる我が弟、ククールを同行させては頂けませんか?」
「ククール、今修道院を離れても問題ない者はお前しかいないのだ。」
「他の者にはそれぞれこの修道院で果たすべき役目がある。その点、お前は身軽だろう。」
それまで黙って聞いていたククールが言う。
「つまり、役立たずだと、そう言いたいわけだ。」
「なるほど、分かりました。」
「それほどおっしゃるなら、こいつらについて出ていきます。院長の仇討ちはお任せを。」
主人公はククールと共に修道院を出た。
「まあ、そういうわけだ。俺も旅に加えてもらうぜ?」
「マルチェロ団長殿に命令されたからじゃない。オディロ院長は俺の親代わりだったんだ。」
「あいつ、ドルマゲスは絶対に許さない。必ず仇は討つさ。」
「それにこんな所、頼まれたっていたくないね。追い出されてせいせいするさ。」
「約束してたよな?色々世話になった礼はいずれ必ずするって。」
「ゼシカ、これから俺は片時も離れず君を守るよ。君だけを守る騎士になる。」
ゼシカの態度はそっけない。
「はいはい、どうもありがとうございますー。」
ククールが仲間に加わった。
ククールを仲間に加えた主人公達は、マイエラ修道院から道なりに東へ進んでいった。
道中、教会で一晩宿を取る。
なかなか寝付けない様子のククールは一人、教会の外に出ていった。
それに気づいたトロデ王も外に出ていく。
「ククールよ。お前、何やら事情がありそうじゃな。」
「話せば気が楽になる事もあるやも知れんぞ?まあ、無理にとは言わんが。」
ククールが言う。
「なんだろうね。こう、上手くいかねぇんだよな。あいつ、マルチェロとは。」
「いっそ、本当に血がつながってなきゃお互い幸福だったのかもな。」
「死んだオディロ院長は、この辺じゃ名の知れた慈善家でさ。身寄りのないガキを引き取って育てていたんだ。」
「まあ俺もその一人で、あの辺の領主だった両親がいっぺんに死んじまった後、金もない、親戚もいない、そういうガキにはあの修道院しか行く場所がなかったんだ。」
「勉強熱心で将来有望な騎士見習いのマルチェロは、俺にだけ態度が違った。」
「その後、しばらくして俺は初めて知ったんだ。」
「死んだ親父はお袋と結婚する前に付き合っていた平民の恋人がいて、子供も生まれていたのだと。」
「なのに親父はお袋と縁談が出るや、恋人と子供を捨てやがった。」
「ショックを受けた母親はすぐに死んでしまい、その子供は孤児になった。それがあのマルチェロなのさ。」
「その後お袋に子供が出来ないからマルチェロを養子にしようって話になったらしい。」
「でもその頃には俺がお袋の腹にいてな。」
「結局養子の話はなくなり、俺が生まれるとマルチェロは修道院に送られることになった。」
「マルチェロは親父に2度も捨てられたのさ。だからあいつは俺と親父を恨みながら育ってきたんだ。ずっと。」
「ほんと、寝耳に水の話でさ。幼く純真なククール少年の心はこっぴどく傷ついたね。」
「でも、まあね。クソ親父はしたい放題やって、さっさと死んじまった。奴には憎める相手は俺しか残ってないんだ。」
「分からないでもないんだ。だからいい機会だったと思うよ。近くにいるから余計苛立たせる。」
「ちょうどマイエラ修道院の窮屈な暮らしにも飽き飽きしてた頃だったし。」
「ずいぶん長話になっちまった。ほら、そろそろ夜明けだぜ?」
翌朝、主人公達はさらに東へ進んで行き、アスカンタ城に入った。
城下町の人々は皆、喪服を着ている。
「ドルマゲスって名前の道化師を知らないかって?」
「ふん、こんな陰気な国に道化師なんて来るもんかよ。」
「道化師なんてやって来た日にゃ、目立ってしょうがないだろうな。」
女性に話を聞く。
「王様も早くお元気になって下さらないかしら。」
「もう2年間も国中みんな暗い顔をして喪服を着て・・息が詰まりそう!」
民家の本棚で「アスカンタのおとぎ話」という本を見つけたので読んでみる。
「まん丸お月さまが綺麗な夜は、こっそり夜更かししてごらん。」
「何処かにきっとあるはずよ。夜しか見えない秘密の扉。」
「月夜の晩しか開かない扉。」
「かけっこに出かけた丘の上、みんなで木登りした山の上、夜中にこっそり探してごらん。」
「扉をそっと開いてごらん。きっと願いが叶うでしょう。」
アスカンタ城の最上階に行くと、部屋の前にキラという女性がいた。
扉をノックしているが部屋の中からは返事がない。
「おかげんはいかがですか?私です。小間使いのキラです。」
「お昼にお運びしたお食事も召し上がられなかったようですね。夕食は王様の好物を作りますので。」
「王様、お願いです。せめてお返事を。元気かどうかだけでも。」
部屋から返事はない。
「・・失礼致します。」
小間使いのキラは階段を降りていった。
主人公は小間使いのキラを追いかけて階下の玉座の間に行くと、大臣とキラが何やら話をしていた。
「お食事もほとんど手付かず。昨夜も一晩中玉座の間で泣き明かしていらしたご様子。」
「王妃様がご存命の時は、あれほどお優しくて賢い王様でしたのに。」
「お側仕えでありながら何の役にも立てず、申し訳ございません。」
大臣が言う。
「そうか、王は今日も。ご苦労だったな、キラ。」
「だが何としても王に元気を取り戻していただかなければ。このままでは国が傾く。」
「しかし一体どうすればいいのだ。」
小間使いのキラが主人公の姿に気づく。
「まあ、旅のお方?もしや我がアスカンタの王に会いにいらしたのですか?」
「残念ですが我が王はこの2年というもの、どなたにも会おうとはなさいません。」
「夜にはこの玉座の間へ降りていらっしゃいますが、今の王には誰の言葉も耳に入らないのです。」
「信じられぬと言うのなら、日が暮れた後、この玉座の間に来てご自分の目でお確かめ下さい。」
宿で夜更けまで休み、再び玉座の間に向かった。
玉座でパヴァン王が泣き崩れている。
「何故だ・・どうして・・シセル、君は僕を一人置いて天国へ行ってしまったんだ。」
「あれから2年、僕の時計は止まったままだ。何一つ心が動かない。」
「せめてもう一度だけ。夢でもいいんだ。もう一度、君に会いたい。」
下の階に下りるとキラがやって来た。
「あっ!もしや玉座の間で王様とお会いになられたのですか?」
「旅のお方、我がアスカンタ王は今は誰の言葉も耳に入らぬのです。ご無礼はどうぞお許しを。」
「ええ、シセルというのは2年前に亡くなられた王妃様のお名前です。」
「もし死んだ人に会えるなら、シセル王妃が再び目の前に現れたなら、王様も元気になって下さるのに。」
「そういえば私の祖母が昔、沢山お話をしてくれました。不思議な話を沢山。」
「その中にどんな願いも叶える方法があると聞いた気がするけど・・駄目だわ。思い出せない。」
「祖母に会いに行けば簡単に分かるでしょうけど、私にはお城の仕事が。」
「この城より西、橋の側の家に住む私の祖母に願いを叶える昔話の事を詳しく聞いてきて頂きたいのです。」
「ただのおとぎ話かも知れませんが、もしそれが本当なら私は王様の願いを叶えて差し上げたい。」
「自分で聞きに行きたくても私にはお城の仕事があります。勝手に抜け出すわけには参りません。」
「私の祖母の家は、このアスカンタより西の橋の側に。どうかお願いします。」
「私は王様がお元気になられるよう、教会で祈っております。旅の方、どうかお願いします。」
城の外で待っているトロデ王に事情を説明する。
「ふむふむ、そういう事情があったとはな。」
「偉い!なんと主君思いのメイドじゃ!わしは感動したぞ!」
「良い家臣は国の宝。しかもそのメイド、ミーティアと同じ年頃の娘と言うではないか。」
「よし、これは命令じゃ。そのメイドさんのチカラになってやれ!」
「何?寄り道になるじゃと?そんなもん、お前が急いでぱぱっと片付ければ問題ないわい。」
「さあ行くぞ!その優しいメイドさんのためにひと肌脱ぐのじゃ!」
キラのお婆さんの家に行き、話を聞く。
「ええ、お城のメイドのキラなら確かに私の孫娘ですよ。」
「はあ、まあ年寄りですからねえ。アスカンタの古い昔話のことなら何でも知っておりますよ。」
「願いを叶える昔話なら、この家の前を流れる川の上流の不思議な丘の話ですねえ。」
「満月の夜に一晩あの丘の上でじーっと待ってると不思議な世界への扉が開くと言いますがねえ。」
「でもまあ、ただのおとぎ話ですし、本当だかどうだか分かりませんよ。」
「第一、山の夜は冷えますし。あんな高い丘の上で夜明かしする者は誰もいやしませんよ。ほっほっほ。」
主人公は満月の夜に不思議な丘に行き、頂上でしばらく待っていた。
すると廃屋の窓枠の影が伸びていき、壁と窓枠の影が重なる。
窓枠の影に触れると青白く光り輝き、扉が開いた。
扉の中に入ると神殿があり、神殿の中にはイシュマウリという男性がいた。
「私はイシュマウリ。月の光のもとに生きる者。」
「私の世界へようこそ。」
「ここに人間が来るのはずいぶん久しぶりだ。月の世界へようこそ、お客人。」
「さて、いかなる願いが月影の窓を開いたのか。君たちの靴に聞いてみよう。」
イシュマウリがハープを奏でると主人公の靴が青白く輝いた。
「・・アスカンタの王が生きながら死者に会いたいと、そう願っていると?ふむ。」
「おや、驚いた顔をしている。ああ、説明をしていなかったね。」
「昼の光のもと生きる子よ。記憶は人だけのものとお思いか?」
「その服も家々も、家具も、この空も大地も、皆過ぎゆく日々を覚えている。」
「物言わぬ彼等はじっと抱えた思い出を夢見ながらまどろんでいるのだ。」
「その夢、記憶を月の光は形にすることが出来る。」
「死んだ人間を生き返らせることは出来ないが、君たちのチカラにはなれるだろう。」
「さあ、私を城へ。嘆く王のもとへ連れて行っておくれ。」
イシュマウリを連れてアスカンタ城の玉座の間に向かった。
玉座でパヴァン王が泣き崩れている。
「嘆きに沈む者よ。かつてこの部屋に刻まれた面影を月の光のもと、再び蘇らせよう。」
イシュマウリがハープを奏でると、シセル王妃の幻影が現れた。
パヴァン王が驚く。
「これは・・夢?いや、違う。・・覚えている。これは・・君は。」
シセル王妃の幻影がパヴァン王に語りかける。
「どうしたの、あなた?」
パヴァン王がシセル王妃の幻影に近づく。
「会いたかった。あれから2年、ずっと君のことばかり考えていたんだ。君が死んでから・・」
シセル王妃の幻影が言う。
「まだ今朝のおふれの事を気にしているの?大丈夫、あなたの判断は正しいわ。」
「あなたは優しすぎるのね。でも時には厳しい決断も必要。王様なんですもの。ね?」
「みんな、あなたを信じてる。あなたがしゃんとしなくちゃ。アスカンタはあなたの国ですもの。」
「ねえねえ、聞いて。宿屋の犬に仔犬が生まれたのよ。あたし達に名前をつけて欲しいって。」
パヴァン王の幻影も現れた。
パヴァン王の幻影は玉座に座っている。
「あれは・・僕?そうだ、覚えてる。一昨年の春だ。ではこれは過去の記憶?」
パヴァン王の幻影がシセル王妃に言う。
「宿屋に仔犬が?君は?何かいい名前を考えてるんじゃないかい?」
シセル王妃の幻影が言う。
「わたしのは秘密。あなたが決めた名前が世界中で一番いいに決まってるわ。」
「私の王様。自分の思う通りにしていいのよ。あなたは賢くて優しい人。」
「私が考えてたのは、あなたが決めた名前にしようって、それだけよ。」
幻影は消えてしまった。
「・・そうだ。彼女はいつだってああして僕を励ましていてくれた。」
「シセル、君はどうして・・」
再びパヴァン王の幻影が現れた。
「・・シセル。どうして君はそんなに強いんだい?」
シセル王妃の幻影も現れた。
「お母様がいるからよ。」
「私も本当は弱虫で駄目な子だったの。いつもお母様に励まされてた。」
「お母様が亡くなって、悲しくて、寂しくて。」
「でもこう考えたの。私が弱虫に戻ったら、お母様は本当にいなくなってしまう。」
「お母様が最初からいなかったのと同じことになってしまうわって。」
「励まされた言葉、お母様が教えてくれたこと、その示す通りに頑張ろうって。」
「そうすれば私の中にお母様はいつまでも生きているの。ずっと。」
「ねえ、テラスへ出ない?今日はいい天気ですもの。きっと風が気持ちいいわ。ね?」
パヴァン王はシセル王妃の幻影と一緒にテラスへ出た。
「ほら、あなたの国がすっかり見渡せるわ、パヴァン。」
「アスカンタは美しい国ね。」
「私の王様。みんなが笑って暮らせるように、あなたが・・」
シセル王妃の幻影は消えてしまった。
「覚えてるよ。君が教えてくれたこと、すべて僕の胸の中に生きてる。」
「すまない、シセル。やっと目が覚めた。ずっと心配をかけてごめん。」
「長い長い悪夢からようやく目が覚めたんだ・・」
アスカンタ国の喪が明け、主人公達は晩餐会へ招待された。
「シセルが僕に教えてくれたこと、もう二度と忘れはしまい。」
「夢のような出来事だが僕は信じます。ありがとう。」
「皆さんとキラのおかげで僕はようやく長い悪夢から覚めた。」
「これからは王の務めに励みます。」
「本当にありがとう。もしこの先、何か困ったことがあったらいつでも言って下さい。」
「必ずその時は僕があなた方のチカラになります。約束します。必ずお役に立ちましょう。」
「では皆さん。どうぞこれからの旅もお気をつけて。またいつでも遊びに来て下さいね。」
アスカンタから西へ向かい、パルミドの町に入った。
ここは以前ヤンガスが住んでいた町で、知り合いの情報屋がいるという。
不思議なことにパルミドの町の人達はトロデ王の姿を見ても驚かない。
「本当にヤンガスの言う通りじゃな。ここの連中はわしの姿を見ても何も言ってこんぞ。」
「となれば早速酒場じゃ。わしは先に行っておるからな。」
「お前達は情報屋を探し出してから来るが良い。吉報を待っておるぞ。」
情報屋の家に行くが誰もいない。
仕方ないので一旦トロデ王のいる酒場に戻ることにした。
「まったく、どうして酒を飲むのにこんなに苦労をせにゃならんのか。」
「これもすべてあのドルマゲスのせいじゃ。あやつがわしらに呪いをかけたせいで。」
「それにしてもあわれなのは姫じゃ。せっかく婚約も決まったのに、よりによって馬の姿とは。」
主人公の姿に気づくトロデ王。
「なんじゃ、来とったのか。意外に早かったのう。」
「して、ドルマゲスの行方はつかめたのか?」
その時、酒場の外で大きな物音がした。
「何事じゃ?今のは姫の声のようじゃったが。」
トロデ王は慌てて酒場の外へ出ていった。
主人公もトロデ王を追って外に出ると、馬車が無くなっている。
「大変じゃ!姫が、ミーティアの姿が何処にも見当たらん。」
ヤンガスが言う。
「こいつはいけねえ。アッシとしたことがウッカリしてたでがす。」
「この町の連中は人の過去や事情には無関心だけど、人の持ち物には関心ありまくりでがすよ。」
トロデ王が怒っている。
「それはつまり、我が愛しの姫がこの町の住人に拐かされたという意味なのか?」
「今は姫を見つけることが何よりじゃ。」
「主人公よ、一刻も早くさらわれた姫を探し出して犯人の魔の手から救うのじゃ!」
町の人から情報を聞き、南西部にある見張り台の近くの建物に入る。
建物の中にはキントという盗賊がいた。
「オヤジの奴、目が利きやがるぜ。」
「あの馬の品の良さを一発で見抜くたあ、さすがは闇商人ってとこか。」
「まあこのキント様にとっちゃ、馬泥棒くらい朝飯前ってもんさ。」
キントが主人公達の姿に気づく。
「うわあ!誰だお前!あ、まさか、あの馬の持ち主?」
トロデ王がキントに詰め寄る。
「貴様か!わしの可愛い姫を拐かしたのは貴様なんじゃな!」
キントがトロデ王の姿を見て怯える。
「ひゃー!何でこんなとこに魔物がいるんだ?あの馬は魔物の姫だったのか?」
トロデ王が怒る。
「ええい、誰が魔物じゃ!とにかく姫を返せ!今すぐ返せ!返さぬとひどい目にあわせるぞ!」
「あわわ、許してくれ!あの馬が魔物の姫だったなんて知らなかったんだ。」
「この通り、馬を売った金は返すからどうか命ばかりは・・」
ヤンガスが言う。
「おい、お前!馬姫様を売ったってのは、ひょっとして物乞い通りにある闇商人の店か?」
キントが頷く。
「へえ、その通りです。よくご存知で。」
「よし、なら売った金をよこしな。言っとくがごまかしたりしたらタダじゃおかねからな。」
キントはお金の入った袋をヤンガスに差し出した。
「ひいい!どうぞ、1000ゴールドです。本当にこの金額で売ったんです。」
「どうやら一安心でがす。今の話に出てきた闇商人ってのは、実はアッシの知り合いでしてね。」
「アッシがこの金を返して頼めば、きっと馬姫様を返してくれるでがすよ。」
トロデ王が喜ぶ。
「それは本当じゃな?そうと分かればこうしてはおれん!早くその闇商人の店に向かうぞ!」
主人公達は酒場の裏に店をかまえる闇商人の所に向かった。
「お、ヤンガスじゃないか。今日はどうしたんだ?久しぶりに盗品でも売りに来たのか?」
ヤンガスが言う。
「いや、そうじゃねえ。今のアッシはこっちの兄貴と旅をしてて、盗賊家業からは足を洗ったんだ。」
「それよりあんた、最近酔いどれキントって奴から馬と馬車を買わなかったかい?」
「実はその馬と馬車は兄貴の持ち物なんだが、そのキントってのに盗まれちまってな。」
「で、野郎を問い詰めたらこの店に売ったって白状しやがるから慌てて駆けつけたんだよ。」
「キントなんぞに盗まれるたあ、お前さんともあろう者がついていながら油断したもんだな。」
「ま、それはそうとその馬と馬車だが、確かにキントの奴が売りに来たのを買い取ったぜ。」
「買い取ったんだが、その、言いにくいけど、もう売っちまったんだよな。」
「それがなあ、さらに言いにくいんだが、買ってったのはゲルダなんだよ。」
ヤンガスが困った顔をしている。
「ゲルダって、あの女盗賊のゲルダかよ。冗談きついぜ。」
主人公達は馬のミーティアを追ってパルミドの南西にあるゲルダのアジトへ向かった。
「あんたがあたしの所に来るなんて珍しいこともあるもんだ。で、話ってのはなんだい?」
ヤンガスが事情を説明する。
「ゲルダ、お前さんが闇商人の店で買ったって馬のことさ。あの馬を譲ってくれねえかい?」
「あれはもともと俺の旅の仲間の持ち物だったのが盗まれて、闇商人の店に並んでたんだよ。」
「金額についてはお前の言い値でかまわないぜ。正直きついが、何とか用意してみせる。」
ゲルダが言う。
「相変わらず率直な物言いだね。あんたのそういうとこ、嫌いじゃないよ。」
「でもあの馬は売らないよ。毛並みといい、従順そうな性格といい、実にいい馬じゃないか。」
「あたしは本当に良いモノは手元に置いときたくなる性分なのさ。いくら金を積まれても譲れないね。」
ヤンガスが粘り強く交渉する。
「どうしても駄目か?仲間のためなんだ。俺に出来ることなら何だってするぜ。」
「へえ、あんたの口からそんな言葉が聞けるなんて驚いた。よっぽど大切なお仲間らしいね。」
「いいだろう。ただし条件を出させてもらうよ。」
「ここから北にある洞窟のこと、まさか忘れちゃいないだろ?」
「あの洞窟に眠るというビーナスの涙って宝石をあんたに取ってきてもらおうじゃないか。」
ヤンガスの腰が引ける。
「げげ!お前いまだにアレを?だけどよう、あの洞窟は昔俺が・・」
「あんた今、何でもやるって言ったばかりじゃないか!男が一度言ったことをひるがえすのかい?」
「とにかくビーナスの涙を持ってきな。そしたらあの馬のことも考えてやろうじゃないか。」
主人公達はアジトの北にある剣士像の洞窟へ向かい、地下4階の宝箱に入っていたビーナスの涙を手に入れた。
「こいつがビーナスの涙か。とうとう手に入れてやったぜ。」
「兄貴、実はね。アッシが昔この洞窟に挑んだのは、あのゲルダのためだったんでがすよ。」
「今でこそあいつとは単なる商売敵でしかないんでげすがね。あの頃はアッシも青くてね。」
「ゲルダの奴も今みたいにおっかない感じじゃなくて、正直、ちょっと憧れてたんでさあ。」
「それであいつが欲しがってたビーナスの涙を取りに来たんですが、結局怪我して逃げ帰るだけでがしたよ。」
「まさか今になってこんな形で手に入れることになるたあ、思いもよらなかったでげすよ。」
「もしあの時、首尾よくこの石っころを手に入れてたらどうなってたんでがしょうねえ。」
「おっと、今の話は他言無用でがすよ。アッシの苦い青春のメモリーでげす。」
ビーナスの涙を手に入れた主人公達は、洞窟を出てゲルダのアジトへ戻った。
「この美しさ。どうやら本物のビーナスの涙みたいだね。さすがはヤンガスってところか。」
「・・あたしがした約束は確か、ビーナスの涙を持って来たら馬を返すのを考えるってことだったね。」
「じゃあ今考えた。やっぱりあの馬は返せないね。この石コロはあんた達に返すよ。」
ヤンガスが動揺する。
「約束が違うぞ!女盗賊ゲルダともあろう者が、そんなガキみたいな理屈言うなよ!」
「約束ね。そう言えばあんた、以前あたしにこの宝石をくれるって約束してなかったかい?」
「自分だって約束破っといてよく言うよ。とにかくあたしはあの馬を手放す気はないからね。」
ヤンガスが言う。
「お前の言う通り、あの時約束を破ったのは悪かった。お前が俺に腹をたてるのも無理はねえ。」
「でも今回のことは俺一人の問題じゃねえんだ。仲間のためにも引くわけにはいかねえ。」
ヤンガスが土下座をする。
「この通りだ。俺はどうなってもいいから、頼むからあの馬を返してくれ!」
それを見たゲルダが驚く。
「分かったからもうやめな。」
「大の男が簡単に頭なんか下げるもんじゃないよ。」
「あんたを困らせてやろうと思ってたけど、バカバカしくなってきたよ。あの馬のことは好きにすればいいさ。」
「でもそのかわり、ビーナスの涙はやっぱり貰っておくよ。それが約束だったんだからね。」
「これでもう用は済んだろ?何処へなりと行っちまいな!」
外に出ると馬車が用意されていた。
ミーティアにトロデ王が駆け寄る。
「姫や。怖い思いをさせてすまんかったのう。これからはいつでもわしが一緒にいてやるからな。」
「もうお前を残して酒場に飲みに行ったりはしないと約束するぞ。」
「さて、主人公よ。こっちはいつでも出発出来るぞ。次は何処を目指すのじゃ?」
ヤンガスが言う。
「そういやいい加減、留守にしてた情報屋のダンナが帰って来てもいい頃だな。」
「おっさん、とりあえずもう一度パルミドへ戻ろうぜ。」
「どこへ向かうにしてもドルマゲスの野郎の行先を知らなきゃ話になんねえだろ?」
一旦パルミドへ戻り、情報屋の家で話を聞く。
「おや?ヤンガス君じゃないですか。留守の間に来てたんですか?それは悪いことをしました。」
「でもわざわざもう一度訪ねて来たってことは、何か私に聞きたいことがあるんですね?」
「道化師姿の男の話なら聞いてますよ。」
「なんでもマイエラ修道院の院長を殺害した犯人だとか。」
「私が得た情報ではそのドルマゲスはなんと、海の上を歩いて渡り西の大陸の方へ向かったそうですよ。」
「このところ海の魔物が凶暴化しているため、この大陸やトロデーン国の大陸からは西の大陸への定期船は出てません。」
「自分の船でも持っていれば話は別ですが、君、船なんて持ってないでしょう?」
「さて、そんな君のために一つ耳寄りな情報を教えてあげましょう。」
「港町ポルトリンクから崖づたいに西へ進むと、そこに広がる荒野に打ち捨てられた古い船があるそうです。」
「どうしてそんな水もない場所に船があるかは分かりませんが、噂ではそれは古代の魔法船だとか。」
「もしその船を復活させることが出来たら、きっと世界中の海を自由に渡ることが出来るのでしょうね。」
「そうそう。ポルトリンクの西と言えば、少し前まで崖崩れで進めなかったのが最近ようやく道が開通したそうですよ。」
ポルトリンクの西にある砂漠に向かうと、打ち捨てられた魔法船があった。
それを見たトロデ王が言う。
「この船を我がものとすれば、憎きドルマゲスの奴めを追うことも出来ようぞ。」
「しかしどうやって海までこの巨大な船を運べばいいのじゃ。わしには見当もつかん。」
「せめてもう少し海の側ならどうにかなるものを。」
「そうじゃ、主人公。ちょっと地図を見せてみい!」
「ふむふむ、つまりこの船はトロデーン城の南にあると言うわけか。意外とそばにあったんじゃな。」
「これは一旦城に戻って、図書室で古い記録を調べれば何か分かるかも知れんぞ。」
「主人公よ、城じゃ!トロデーン城に戻るぞ!さあ、支度をせい!」
魔法船からさらに西へ行き、北の洞窟を抜けてトロデーン城へ向かった。
トロデーン城はドルマゲスの呪いによりイバラに覆われ、荒れ果てている。
「美しかった我が城の、何と荒れ果ててしまったことか。」
「これも全てあのドルマゲスによる呪いのせいじゃ。」
「わしらの旅は、あの日、我が城の秘宝が奪われたことから始まったのじゃったな。」
トロデ王が秘宝が奪われた時のことを思い出す。
「貴様!この封印の間で何をしておる!その杖に触れてはならぬ!」
封印の間にはドルマゲスがいる。
「これはトロデ王にミーティア姫。よもやあなた方に見つかってしまうとは。」
「しかしその慌てよう。やはりこの杖は噂通りのチカラを持っているのですね?」
「お前は道化師の・・貴様!我が城に近づいたのはその杖が目的だったのか!」
ドルマゲスが言う。
「さすがは王様。話が早くて助かりますよ。」
「このトロデーン城の奥深くに封印されし伝説の魔法の杖は、持ち主に絶大なる魔力を与えるとか。」
「私はこれを手に入れて究極の魔術師となる。」
「そして私のことを馬鹿にしてきた愚民どもを見返してやるのだ!」
「くっくっく、止めても無駄です。」
「さて、それでは早速この杖のチカラを試させて頂きましょうか。」
「トロデ王、まずはあなたに実験台になってもらいましょう。」
ドルマゲスが杖を振り上げ、トロデ王に魔法を放つ。
ミーティアがトロデ王を庇い、ドルマゲスの魔法をまともに受けてしまった。
トロデ王も一緒に魔法を受けてしまったようだ。
「おや?もっと凄いチカラを発揮するかと思ったのに。」
「姿を魔物や馬に変えただけか。この程度の呪いしか使えないとは期待外れだな。」
ドルマゲスが足元描かれた結界を見る。
「なるほど、この結界が杖の魔力を抑えているのですね。」
「ならここを出て結界の外で杖のチカラを試してみるまでです。」
ドルマゲスは城のテラスに出て杖を振り上げた。
「さあ、杖よ。お前の真の力を我が前に示して見せろ!」
ドルマゲスの身体が赤いオーラに包まれる。
「おお、このあふれんばかりの魔力。なんと素晴らしい!」
「こ、これは?このチカラは・・抑えきれない・・おおおお・・」
杖の魔力が暴発し、トロデーン城は呪いでイバラに覆われた。
城の兵士や使用人たちは皆、植物に変えられてしまった。
そして城の兵士として仕えていた主人公だけが、何故か呪いを受けず生き残った。
「あの時、結界の中にいたわしらはともかく、どうしてお前が無事だったのかのう。」
「ふむ、分からんか。まあ運が良かったのじゃろうな。お前は昔からそうじゃったし。」
荒廃したトロデーン城の図書室へ行き、魔法船について調べる。
とある貴族の日記を読む。
「ついに主人公が近衛兵に任命された。確か彼に与えられた最初の仕事は住み込みの小間使いだったはずだ。」
「素性の分からぬよそ者の彼が、いつか近衛に取り立てられるとは当時は夢にも思わなかった。」
「ミーティア姫も主人公を気に入っているようだし、この人事はきっと上手くいくだろう。」
「荒野に忘れられた船」という本を見つけた。
主人公達は見つけた本を読みふけった。
「結局分かったのはあの船がある荒野の辺りが大昔は海であったということくらいか。」
「これではどうしようもないな。今現在もあそこが海だったなら何の苦労もなかったのじゃが。」
その時、満月の光に照らされた窓の影が壁まで伸びていき、イシュマウリが住む神殿へと繋がる月影の窓が現れた。
主人公は月影の窓を開き、イシュマウリと会った。
「おや?月の世界へようこそ、お客人。」
「月影の窓が人の子に叶えられる願いは生涯で一度きり。再び窓が開くとは珍しい。」
「さて、いかなる願いが君たちをここへ導いたのか。さあ、話してごらん。」
主人公はイシュマウリに荒野の船の事を説明した。
「あの船なら知っている。かつては月の光の導くもと、大海原を自在に旅した。覚えているよ。」
「再び海の腕(かいな)へとあの船を抱かせたいと言うのだね。それなら容易い事だ。」
「君たちも知っての通り、あの地はかつては海だった。その太古の記憶を呼び覚ませばいい。」
「君たちにアスカンタで見せたのと同じように、大地に眠る海の記憶を形にするのだ。」
「しかしこの竪琴では無理のようだ。」
「これほど大きな仕事にはそれにふさわしい大いなる楽器が必要だ。」
「さて、どうしたものか。」
「いや、待て。君たちを取り巻くその気配。かすかだが確かに感じる。」
「そうか、月影のハープが昼の世界に残っていたとは。あれならば大役も立派に務めるだろう。」
「よく聞くがいい。大いなる楽器は地上の何処かにある。」
「君たちが歩いてきた道、その何処かに。」
「深く縁を結びし者がハープを探す導き手となるだろう。」
「人の子よ、船を動かしたいと望むのなら月影のハープを見つけ出すといい。」
「そうすればすぐにでも荒れ野の船を大海原へと私が運んであげよう。」
主人公はアスカンタ国のパヴァン王に会いに行った。
「ああ皆さん。よくこの城に立ち寄ってくれました。」
「あの時シセルの幻を見せてくれたこと、なんと感謝すれば良いものか。」
「それでアスカンタへはどんなご用でいらしたのですか?」
主人公は事情を説明した。
「なるほど、月影のハープならちょうど我が国にあります。」
「古来より我がアスカンタに伝えられてきた国の宝なのです。」
「だが他ならぬ皆さんの頼みとあらば。いいでしょう。ハープは差し上げます。」
「月影のハープは城の地下の宝物庫の中に厳重に保管されています。僕についてきて下さい。」
宝物庫に移動すると壁に大きな穴が空いており、宝が全て盗まれていた。
「何てことだ。これは一体・・」
「盗人の仕業か!いや、こうしてはいられない。」
「どうやら月影のハープは盗賊たちに盗まれてしまったようです。」
「多分奴らはこの抜け穴を通った先にいるはずです。」
「この先は危険です。皆さん、決して抜け穴の奥へは行かないで下さい。」
「これから城の兵を集め、必ずやハープを取り戻してみせます。ええ、必ず!」
主人公達は抜け穴の奥へ入っていった。
洞窟の奥まで進むと、月影のハープを持ったドン・モグーラがいた。
「ん?おお、そこのお前ら。見かけない顔モグがワシの歌を聞きに来たモグか?」
「よし、ならば人間にも特別にワシの幻術スペシャルをたっぷり聞かせてやるモグ。」
「何?違う?ワシの芸術の友、月影のハープを奪いに来たモグか?」
「モグググ・・許さーん!」
主人公は襲いかかってきたドン・モグーラを倒した。
「もぐふ・・やられた・・」
主人公は月影のハープを手に入れた。
アスカンタ城に戻り、パヴァン王に報告する。
「お待たせしました!これより討伐隊を・・」
「ええ!宝物庫を荒らした盗賊を退治し、月影のハープを取り戻したのですか?」
「どうしてそんな危ない真似を・・いや、しかし、さすがと言うべきですね。まさか我々より先に月影のハープを取り戻すとは。」
「どうかこの先の旅もお気をつけて。皆さんのご無事を祈っています。」
トロデーン城へ戻り、図書室から月影の窓を通ってイシュマウリに会いにいった。
「あまたの月夜を数えたが、これほど時の流れを遅く感じたことはなかった。」
「その輝く顔で分かる。見事月影のハープを見つけてきた。そうだろう?」
「さあ、見せておくれ。海の記憶を呼び覚ますに相応しい大いなる楽器を。」
主人公はイシュマウリに月影のハープを渡した。
「この月影のハープはずいぶん長い旅をしてきたようだ。そう、君たちのように。」
「よもや再び私の手に戻る時が来るとは。いや、これ以上はやめておこう。」
「さあ荒れ野の船の元へ。まどろむ船を起こし、旅立たせるため歌を奏でよう。」
主人公達はイシュマウリを連れて魔法船がある砂漠へ向かった。
「この船も月影のハープも、そしてこの私も、皆旧き世界に属するもの。」
「礼を言おう。懐かしいもの達にこうして巡り合わせてくれた事に。」
イシュマウリが月影のハープを奏でる。
「さあ、おいで。過ぎ去りし時よ、海よ。今一度戻って来ておくれ。」
砂漠が海の幻影に包まれた。
魔法船が浮上し、幻影の海に浮かんでいる。
主人公達は幻影の海を泳ぎ、魔法船に乗船した。
「さあ、別れの時だ。旧き海より旅立つ子らに船出を祝う歌を歌おう。」
主人公達は魔法船を手に入れた。
魔法船で西の大陸に向かうと、ベルガラックの町に着いた。
「ここはカジノで有名なベルガラック!と言いたいところなんだけど、今は訳あってカジノは休業中なんだよ。とほほー。」
町の女性に話を聞く。
「あれはカジノが閉鎖する前日だったね。」
「ギャリングさんのお屋敷にね、なんと、強盗が押し入ったんだよ。」
「以来ギャリングさんは屋敷に閉じこもったままでさ。あの時強盗と争って怪我でもしちまったのかねえ。」
宿屋にいる女性に話を聞く。
「ねえ、あなた知ってる?ギャリングさんのお屋敷のこと。」
「ギャリングさんはカジノのオーナーでベルガラックいちのお金持ちだから、強盗や泥棒に狙われやすいのかも。」
「屋敷に押し入ってきた強盗と戦うなんて勇敢よね。ギャリングさんて、まさに父親の鑑だよね。」
宿屋の2階に行くと酒場のマスターの話し声が聞こえてきた。
「さあ、そろそろ話して下さいよ。あの日、本当は何があったのかを。」
「仕方がないな。絶対に誰にも言わないでくれよ。俺が洩らしたなんて知れたら・・」
「あの日、ギャリング様の屋敷に強盗が押し入ったのは知ってるな?」
「実はな、あの時の強盗にギャリング様は殺されてしまったんだ。」
「ギャリング様が屋敷から出てこないのは、もう死んでこの世にいないからだよ。」
「俺もその場にいたわけじゃないから詳しいことは分からんが、その強盗は道化師の格好をしていたそうだ。」
「でも変なんだよ、その強盗。金目の物には一切手を付けず、ギャリング様を殺して出ていったそうだ。」
「まるで最初からギャリング様を殺すのが目的だったみたいだぜ。」
「そんでよ、フォーグ様とユッケ様がギャリング様の仇を討つために追手を放ったらしいんだ。」
町の男性に話を聞く。
「ギャリングさんとこの息子と娘はとっても仲が悪くてね。しょっちゅう喧嘩ばかりさ。」
「もしギャリングさんが亡くなったら、二人の子供がどっちが跡目を継ぐかで揉めるんじゃないかな。」
町の女性に話を聞く。
「フォーグとユッケはギャリングさんの実の子供ではないんだよ。」
「昔、教会前で拾われたとか。」
「幼い頃は仲のいい兄妹だったけど、いつからかお互いをライバル視して喧嘩ばかりするようになってね。」
「実の子でない負い目から、少しでもギャリングさんに愛されようとお互い必死だったのかもね。」
酒場のマスターに話を聞く。
「ふむふむ、上の廊下で立ち話を聞いていたと・・え!」
「あわわ、お願いです。あのことは誰にも言わないで下さい。もしバレたら私は・・」
「黙っていてくれれば私がいろんな筋から集めた情報をお教えしますから。ね、いいでしょ?」
「殺害されたギャリング様の仇を討つため、フォーグ様とユッケ様が追手を放ったそうでして。」
「追手が向かったのはベルガラックの北にある島だそうです。」
「確かその島には身を隠すのにうってつけな遺跡があるって聞きましたよ。」
主人公達は船でベルガラック北の島に上陸し、遺跡に入った。
遺跡を進んで行くと、やがて外へ出た。
遺跡のさらに奥には闇の結界が張られており、これ以上進むことが出来ない。
結界の前にいる人達に話を聞く。
「共にあの道化師を追う君達になら言っても構わないだろう。」
「実は私達はベルガラックにあるカジノのオーナー、ギャリング様の部下なんだ。」
「いや、部下だったと言うべきかな?ギャリング様はあの道化師の手にかかって殺されてしまったんだよ。」
「私達はギャリング様の仇討ちを命じられてこの闇の遺跡までやって来たと言う訳さ。」
「あの道化師は私達が追っている途中で時々胸を押さえて苦しんでいた。」
「そう言えばギャリング様を杖で刺した直後から急に苦しみだしたような。」
「その時奴が、この身体は限界か、新しい身体が必要だなってつぶやくのを聞いたんだ。」
主人公もこの遺跡に来た事情を説明した。
「なるほど、遺跡の中からあふれ出す闇は、あの道化師、ドルマゲスが張った暗闇の結界なのか。」
「この結界を破らなければ先に進めないとは厄介だな。」
「暗闇の結界・・闇・・」
「そう言えばサザンビーク王家には闇を払う魔法の鏡が伝わっていると聞いたことがあるな。」
「その鏡を使えば、あるいは・・」
「確かサザンビーク城はベルガラックからはるか南東の方角だったか。」
遺跡を出てトロデ王に報告する。
「なんと、サザンビークとな。」
「サザンビークと言えば姫の許嫁がおる国じゃぞ。」
「魔法の鏡を借りるとなると、許嫁のチャゴス王子や王様に必ずや会うことになるだろう。」
「その時はくれぐれも、わしと姫がこんな姿に変えられて旅をしているなどと口にするなよ。」
「旅の経緯を聞かれても、ドルマゲスという悪党を追っているとだけ答えて余計なことは言うでないぞ。」
主人公はベルガラックから南東へ進み、サザンビーク城へ向かった。
城下町の女性に話を聞く。
「何故チャゴス王子とミーティア姫の結婚が二人の生まれる前から決まっているか知ってるかい?」
「事の起こりを説明するにはまず王子と姫の祖父母の代にまでさかのぼらないとね。」
「昔チャゴス王子のお祖父様がまだ王子だった頃、身分を隠して諸国漫遊の旅に出ておられたんだよ。」
「旅の途中、お祖父様はトロデーン国の姫様と恋に落ちるんだけど、サザンビークとトロデーンは当時は犬猿の仲でさ。」
「トロデーンの姫を妻に迎えたいというお祖父様の願いは、周囲の猛反対で結局叶わなかったのさ。」
「残念なことにお祖父様の子供もトロデーンの姫様の子も男ばっかでさ。二人共約束をはたせず亡くなってね。」
「自分たちの子供を結婚させることで親同士がはたせなかった約束をはたそうって、トロデ王に申し出たのさ。」
「トロデ王も子供の結婚に賛成し、やがてクラビウス王にはチャゴス王子が、トロデ王にはミーティア姫が出来てね。」
「祖父母同士のはたせなかった約束が晴れて孫の代で叶うってわけさ。」
城下町の老人に話を聞く。
「この国には王子が父である王に国を継ぐだけの器があることを示す古いしきたりがあってのう。」
「そのしきたりではアルゴリザードという魔物を倒した証である宝石を持ち帰らねばならんのじゃ。」
「見事宝石を持ち帰れば将来国を継ぐことを認められる。まあ、王子の成人式みたいなもんじゃな。」
城の2階の玉座の間に行く。
クラビウス王は主人公の顔を見た途端、驚いて立ち上がった。
「・・いや、違うか。他人の空似だ。よく見れば全然似ていないではないか。」
主人公はクラビウス王に事情を説明した。
「何?魔法の鏡だと?事情は分かったが、魔法の鏡は王家の宝である。持ち出すことはならん。」
「ところでそなたの話では、旅の間は幾度となく危険をくぐり抜けて来たとのことだったな。」
「ならばやはり腕っぷしの方も我が国の兵士に劣らぬほど強いのか?」
「よく聞け、主人公よ。我が国は広く民衆に開かれてはいるが、何でも聞いてやるほど親切ではない。」
「だが何事にも例外はある。王家にとって恩義のある人間の頼みなら良きに計らうよう務めるだろう。」
「魔法の鏡が欲しいのだろう?ならばわしの依頼を引き受けてくれ。さすれば魔法の鏡はくれてやろう。」
クラビウス王は大臣に命令した。
「チャゴスを読んでまいれ。」
「頼みというのは我が息子、チャゴス王子のことなのだ。」
「我が国には王者の儀式という命を落としかねないしきたりがあるのだ。」
「チャゴスはこの儀式を嫌がってな。」
「出来る事なら息子を危険な目に合わせたくないのだが、次代の王となる者は必ず通過しなければならない儀式なのだ。」
「わしは迷いに迷い、城の兵士を護衛につけることも考えたのだが、やはりそれでは王族としてのメンツが立たん。」
「そこでこの国の者ではないそなたに秘密裏に護衛を頼みたいのだ。護衛のことは決して口外してはならん。」
「表向きにはチャゴス一人で儀式に出発した事にしたいのでな。」
大臣が戻ってきた。
「申し訳ございません。ここへお連れする途中、王子に逃げられてしまい見失いました。」
「見つけ次第、大至急お連れしますのでもう少々お時間を頂戴したく・・」
「ええい、馬鹿者が!」
「主人公よ。すまぬが続きは後にしてくれ。王子がいないことには話にならんのでな。」
主人公は一旦玉座の間を出て、3階のチャゴス王子が立てこもっている部屋をノックした。
「ん?誰か来たのか?」
「よく聞け!誰が来ようが絶対にここから出るつもりはない。かといって無理やり扉を開けようなんて思うな。」
「もしそんな事をすれば舌を噛み切るからな!」
4階南西の部屋で壺の裏にある壁の割れ目からトーポを入れる。
天井から落ちてきたトーポに驚いたチャゴス王子は慌てて部屋を飛び出した。
部屋を飛び出したチャゴス王子は大臣につかまり、玉座の間に連れて行かれたようだ。
主人公も玉座の間に向かう。
「おお、丁度いいところに来てくれたな、主人公よ。」
「一応紹介しておくべきかな。」
「この者が我が息子にしてサザンビークの次代の王となる者、チャゴス王子であるぞ。」
そこには頼りない小太りのチャゴス王子がいた。
「お待ち下さい、父上!」
「何故この様な見るからに身分の低そうな輩にこの僕を紹介するのですか。」
クラビウス王が言う。
「身分なぞ問題ではない。お前の儀式を補佐してくれる者達にお前を紹介するのは当然のことであろう。」
「どんなに嫌でも儀式を済ませ、強い王になれるとわしらに示さねばミーティア姫と結婚出来んのだぞ。」
「チャゴスよ、城の者が陰でお前を何と言ってるか、ここでわざわざ言うまでもないだろう。」
「少しでも悔しいと思うのなら儀式を済ませ、男を上げてみせろ。」
「そこにいる主人公達も陰ながらお前のチカラとなってくれよう。」
「表向き、お前は一人で王者の儀式へ出発したことにするからな。」
「一足先に城下町を出て、門のそばにある主人公の馬車に乗り込んで待っていろ。良いな?」
大臣に引きずられ、チャゴス王子は玉座の間を出ていった。
「ふう、やっと行きおったか。主人公よ、くれぐれも護衛のことは誰にも口外しないでくれよ。」
「あと王者の儀式に関しては城の外でチャゴスにでも聞いてくれ。」
「そなたが見事この任を成し遂げてくれれば、約束していた魔法の鏡はくれてやる。」
チャゴス王子を連れてサザンビークの東にある王家の山に向かい、アルゴリザードよりも大きなアルゴグレートを倒し、大きなアルゴンハートを手に入れた。
「持ち帰ったアルゴンハートが大きければ大きいほど、次代の王として優れていることの証になるんだ。」
「この大きさなら僕を見下していた奴らをあっと言わせることが出来る。」
「皆の驚く顔が目に浮かぶ。きっと僕を褒めちぎるだろうな。まあ、苦労したんだから当然だな。うん。」
「さあお前達、城へ帰るぞ。」
サザンビークに戻ると、チャゴス王子が一人でバザーの方へ走っていった。
チャゴス王子を追いかける主人公。
「丁度いい所に来た。主人公、これが何だか分かるか?」
チャゴス王子は手に入れたアルゴンハートよりも大きなアルゴンハートを手に持っていた。
「信じられんだろう?これほど大きなアルゴンハートがあるなんて。」
「お前もアルゴンハートの実物を見てきたならこれが偽物でないことくらい分かるだろ?」
「何故こんな物を持ってるのか疑問に思うか?実はな、そこにいるバザーの商人から買い取ったのだ。」
「ところで主人公。手に入れたアルゴンハートはお前にくれてやる。」
「僕はこれを持って城へ戻る。もちろんこのことは内密にな。」
「この商人もバザーが終わればやがて国を出るだろうから、秘密が洩れる心配は一切ない。ぶわっはっは。」
「ではここでお別れだ。皆の称賛を浴びる僕の晴れ姿を見たければお前も城へ来るがいい。」
この様子をクラビウス王は望遠鏡を使って見ていた。
「チャゴス、お前は何ということを・・」
主人公は玉座の間に向かった。
ちょうどチャゴス王子がバザーで買ったアルゴンハートを誇らしげに披露しているところだった。
クラビウス王がチャゴスの元へ行く。
「チャゴスよ。これはお前が倒したリザードから得たものであると神に誓えるだろうな?」
チャゴス王子が自信たっぷりに答える。
「勿論です、父上。」
クラビウス王が言う。
「仮に協力者がいたとしても、お前が戦ってこれを手に入れたのならわしはお前のチカラを認めるだろう。」
「だがそれ以外の方法で手に入れたのなら、わしはお前を認めん。」
「今一度問う。戦って得たのだな?」
チャゴスが元気よく答える。
「はい、その通りです!これは僕がアルゴリザードと戦って勝ち得た物です。」
「・・そうか、大儀であった。お前のチカラの証、しかと受け取ったぞ。」
クラビウス王は残念そうにその場を去っていった。
テラスでたそがれているクラビウス王と話をする。
「待っておったぞ、主人公。一体どういうことか説明しろ。わしは屋上から見ておったのだぞ。チャゴスがバザーの行商からアルゴンハートを受け取るのをな。あやつは王家の山へ行かなかったのか?」
主人公は手に入れたアルゴンハートを渡し、事情を説明した。
「そうだったのか。自分ひとりのチカラでなくとも己で戦ってこれを手にしたか。」
「ならば素直にこれを差し出せば良いものを。未熟者めが。大きさなどわしは気にせんのに。」
「こんな有様では王位を継ぐのはおろか、妻をめとることすらまだまだ早いようだな。」
「だがこれはチャゴスの問題だ。そなたは見事依頼を果たしてくれた。約束通り魔法の鏡はくれてやろう。」
「魔法の鏡は4階の宝物庫にしまってある。話はつけてあるから好きな時に持っていくがいい。」
「その代わりチャゴスが取った、このアルゴンハートは貰っておくぞ。」
「チャゴスが忘れた頃にこれをネタにして叱ってやるのだよ。いつになるか分からんがな。」
手に入れた魔法の鏡には何故か魔力が宿っていなかった。
城の学者から情報を聞き、サザンビークの西にある泉に向かった。
泉には老魔術師がいた。
「ほう、こんな場所に人が来るとは珍しい。」
「やや、これはこれは、何とお美しい。」
「わしも城で多くの姫君を目にしてきたが、あなたほど美しい姫君は見たことがない。」
「まわりの方々はこの美しい姫君を守り、旅をしておられる訳ですな。」
ヤンガスが言う。
「何だって?爺さん。お前さんにはこの馬姫様がちゃんと姫様に見えるんでがすか?」
老魔術師が驚く。
「馬だと?それはまことか!」
「姫君、少々失礼をば。」
老魔術師はミーティアの身体を触った。
「このたてがみは!この毛並み・・確かにお主らの言う通り、馬だな。」
「この通り、わしの目は何もうつさん。わしは心の目、すなわち心眼を通してまわりを見ているのだ。」
「わしの心眼がうつすこの方のお姿は、姫と呼ぶのに相応しい方なのに。」
「旅のお方、一体何があったのだ?差し支えなければお聞かせ願いたい。」
主人公は旅の経緯を説明した。
「おいたわしや。呪いのせいでこの様な姿に変えられてしまったのか。」
「おお、そうだ。もしかしたら元の姿に戻れるかも知れん。ひとつ試してみてはいかがかな。」
「効くかどうかは分からぬが、そこの泉の水を口になさるがいい。」
「その泉の水には呪いを解く不思議なチカラがあるのだよ。必ずしも効くとは断言できんがの。」
ミーティアは泉の水を飲んだ。
すると呪いが解け、ミーティアは人間の姿に戻った。
「・・お父様、見て下さい!ミーティアは人間の姿に戻りましたのよ。」
「どうしたの、お父様?まさかミーティアは人間の姿に戻った夢でも見てると言うの?これは幻なの?」
トロデ王は涙ぐんでいる。
「おお・・あまりに突然の事で思わず言葉を失ってしまったわい・・ちゃんと見えているぞ、姫よ。」
「さあ、もっと近くに来てその愛しい姿を見せておくれ。」
「今まで馬車なんか引かせてすまなかった。辛かったろう?これからは楽させてやるからのう。」
ミーティアがトロデ王のそばに寄り添う。
「いえいえ、お父様。辛いのはミーティア一人だけじゃありませんもの。」
「それにミーティアは主人公達のお役に立てて嬉しゅうございましたのよ。」
トロデ王が言う。
「姫は健気じゃのう。どれ、わしも泉の水を飲んでちゃちゃっと元の凛々しい姿に戻るとするか。」
トロデ王が泉の水を飲もうとした時・・
「お父様・・きゃ!」
ミーティアは馬の姿に戻ってしまった。
老魔術師が言う。
「うーむ、泉の癒やしのチカラすらも効かぬとは。姫君にかけられた呪いはよほど強力なものらしいな。」
「泉が駄目なら残された手段は唯一つ。姫をこのような姿に変えたドルマゲスという道化師を探し出し、倒すしかあるまい。」
「呪われし姫君を救えるのはお主たちだけじゃ。辛いだろうが希望を失わず頑張るのだぞ。」
トロデ王が老魔術師に魔法の鏡を見せる。
「ご老人、サザンビークであなたの事を聞きここまで来たのです。」
「この魔法の鏡に魔力を宿す方法を御存知ないか。」
「おお、これは。まさに太陽の鏡。」
「わしがサザンビークで触れたものと同じ物ではないか。」
「しかしどうしたことだ。すっかり魔力を失っているようだな。」
「おっと、説明がまだだったな。そなたが魔法の鏡と呼ぶこの鏡の真の名は太陽の鏡というのだよ。」
「だが魔力を失っている今の状態では魔法の鏡とさえ呼べないがな。」
「うーむ、鏡に魔力を宿す方法か。」
「確か太陽の鏡は強い光を放つ呪文を受けてその輝きを増したとかつて聞いたことがある。」
「どういう理由かは知らぬが鏡から魔力が失われたのであれば、もう一度太陽の鏡である呪文を受けさえすれば鏡は再び魔力を宿し、その輝きを取り戻すかも知れん。」
「問題なのは鏡を復活させる呪文がどんな呪文であったのかだな。輝きを増す呪文・・」
「おお、そうじゃ。海竜が放つあの呪文があったか。」
「この地の北に岩のアーチがかかった海峡があってな。そこに巨大な海竜が現れると船乗りに聞いたことがある。」
「海竜の放つ呪文を受けた船乗りは、あまりの眩さにしばらくの間、目が見えなくなったそうだ。」
「それほど強力な輝きを放つ呪文なら鏡に再び魔力を宿せるかも知れんぞ。」
「しかし成功するか失敗するかは鏡を使って、実際に海竜の呪文を受け止めてみないと分からんがな。」
一度宿屋に行き寝ていると、主人公はミーティアの夢を見た。
「まあ、何てこと。まさか主人公に会えるなんて。」
「何となく主人公とお話したいなあって思いながら眠ったらあなたの姿が見えました。」
「ここは多分、夢の世界?きっとそうよね。」
「こうして夢であなたと会えるのも、あの泉の水のおかげなのかしら。」
「あなたに聞いて欲しかったのは婚約者のチャゴス王子のこと。」
「今はあんなでも、結婚すれば変わってくれるのかしら。」
「そうだわよね、ミーティアも小さい頃はすごくワガママだったし。」
「チャゴス王子はまだ子供っぽいだけかも。」
翌日、主人公は船で老魔術師に教えてもらった海峡に向かった。
そこで現れた海竜の呪文「ジゴフラッシュ」を魔法の鏡に受けてから倒すと、魔法の鏡は魔力を宿し、太陽の鏡になった。
闇の遺跡前にある塔のくぼみに太陽の鏡をはめると、遺跡に張られた闇の結界が解け、中に入れるようになった。
遺跡の一番奥に進むと、そこにドルマゲスがいた。
「おやおや、こんな所まで追ってくる者がいようとは。」
「確かあなた方は以前、マイエラ修道院で出会ったトロデ王の従者たちでしたね。」
「なるほど。この私を倒し、主の呪いを解こうと言うわけですか。」
「くっくっく、見上げた忠誠心だ。しかし今の私には迷惑極まりない。」
「身に余る魔力に身体が耐えきれなくなったので、ここでこうして癒やしていたというのに。」
「これも絶大なるチカラを手に入れた代償なんでしょうかねえ。」
「まあ、いいでしょう。けれど、悲しいなあ。」
「だって、折角こんな所まで来たというのにその願いも叶わぬまま。」
「みんなこの私に殺されてしまうのですから!」
主人公達は襲いかかってきたドルマゲスを倒した。
「くっくっく、やりますね。あなた方がここまで戦えるとはちょっと意外でしたよ。」
「もし私が身体を癒やしている最中でなければ、もう少し楽に殺して差し上げたのに。」
ドルマゲスは杖を振り上げた。
「仕方ありませんね。さあ、もう終わりにしましょう。」
「悲しい、悲しいなあ。」
「あなた達ともこれでお別れかと思うと、悲しくって仕方がありません。」
「これでも食らえ!いーひっひ!未来永劫、イバラの中で悶え苦しむがいい!」
ドルマゲスはイバラの呪いを繰り出した。
イバラの呪いは主人公を直撃するが、バリアでそれを跳ね返す。
「何故だ?何故効かない!お前は一体・・」
「面倒だが、どうやら全力を出さねばならないようだな。」
ドルマゲスは杖を振り上げ、魔物に変身した。
「ぐおおお・・あひゃ!あーひゃひゃひゃ!」
「この虫けらどもめ!二度とうろちょろ出来ないようにバラバラに引き裂いてくれるわ!」
主人公達は襲いかかってくるドルマゲスを再び倒した。
「ぐがああ・・・まだ足りぬ。こんな所で朽ち果てるには・・」
ドルマゲスの身体は石化し、粉々に砕け散った。
ヤンガスが喜ぶ。
「やったでがすよ、兄貴!アッシ達はついにドルマゲスの野郎を倒したんでがすよ!」
「思えば長い旅路だったでがすなあ。」
「きっと今頃はおっさんと馬姫様も呪いが解けて喜んでることでしょうよ。」
ククールが言う。
「さてと、俺はこれで修道院長の仇を討てたわけだし、晴れて自由の身ってことかな。」
「ゼシカも嬉しいだろ。どうだ?兄の仇を討った感想は?」
「ん?なんだよ。どうしたんだ。浮かない顔して。」
ゼシカが言う。
「あいつを倒した所で兄さんは生き返らないのよ。所詮、仇討ちなんて。」
そこへトロデ王が走ってやって来た。
しかしトロデ王はまだ魔物の姿のままだった。
「ヤツを倒しただと?馬鹿な!ならば何故わしの呪いが解けん?」
「何故じゃ?何故呪いが解けん・・」
「元はと言えば奴めが我が城の秘宝の杖を盗み出し、それを振り回したせいで・・」
「おお、そうじゃった。杖じゃ。杖はどうなった?」
ドルマゲスがいた場所に落ちていた秘宝の杖をゼシカが拾う。
「杖ってこれのことかな?」
「おお、それじゃ、その杖じゃ。」
「ふむ、こんな所で考えておって埒が明かぬわ。」
「ここはひとまずサザンビークへ戻るとしようかの。」
秘宝の杖はゼシカがそのまま持ち、サザンビークの宿屋に向かった。
「みんなよくやってくれたわい。が、今後のことを考えると頭が痛いのう。まあ、今日ぐらいはゆっくり休んでくれ。」
「わしは姫のことが気になるゆえ馬車で過ごすぞい。それじゃ、また明日な。」
翌朝、主人公がベッドで寝ているとヤンガスが慌てて部屋に入ってきた。
「てえへんでがすよ、兄貴!」
「ゼシカがいねえでげす!朝起きたらベッドはもぬけの殻で荷物も見当たらねえんでげすよ!」
町の人達にゼシカの情報を聞き、サザンビークの北にあるリブルアーチに向かった。
教会のすぐ左にある呪術師ハワードの屋敷に入ると秘宝の杖を持ったゼシカがいた。
ゼシカは呪われていて正気を失っているようだ。
呪われしゼシカと対峙している呪術師ハワードが言う。
「女よ、わしを大呪術師ハワードと知っての狼藉じゃろうな?」
「だがあいにくだったな。わしはお前さんが来ることぐらい占星術でとっくに予知しとったのじゃ。」
「ゆえにわしを殺そうとする杖使い女を退治するまじないも、すでに会得済みというわけじゃ。」
「今回は残念じゃったな!さあ、尻尾を巻いて退散するがいい!せりゃ!」
呪術師ハワードが足元に結界を張る。
そばにいた使用人のチェルスも結界の中に入った。
呪われしゼシカが言う。
「悲しいわ。4人の賢者の魂を得たこの杖の前ではそんな結界が何の意味もないことが分からないのね。」
秘宝の杖の魔力であっさりと結界が破られた。
「さあ、もう終わりにしましょう。あがき続ける姿を見ているのは悲しいの。」
呪われしゼシカが主人公の姿に気づく。
「あら?うふふ、もう来たの?思ったより早かったわね。」
「結界が役に立ったわね。今の茶番がなければとっくに死んでいたはずなのに。」
「今日のところは退散してあげるわ。この人達を相手にしながらじゃ、さすがに私も分が悪いもの。」
「今度来る時までにはもっと守りを万全にしておくといいわ。それじゃあね。」
呪われしゼシカは姿を消した。
呪術師ハワードと話をする。
「どうやらわしはお前さんに助けられたようじゃな。」
「何処の誰か知らんが、勿論わしが誰かは知っておるじゃろう。」
「わしが偉大なる大呪術師ハワードじゃ。」
「わしの命を助けたとあらば、お前さん、これは名誉なことじゃぞ。よかったな。」
「それにしてもあの杖使い女め。また来るような不吉なことを言い残していきよったな。」
「そこでじゃ。助けてもらった礼も兼ねて、お前さん達に仕事をやろう。」
「ふむ、実はこの町にクランバートル家という古くからの彫刻家の家系があってじゃな。」
「その家に代々伝わるクラン・スピネルという二つの宝石には強力な魔の力が宿っておるのじゃ。」
「わしも以前から譲ってくれと頼んできたのじゃが、何しろ先代が頑固者でな。聞く耳もたんのじゃ。」
「そこでお前さんにクラン・スピネルを譲ってくれるよう、クランバートル家に頼んで欲しいのじゃ。」
「いくら頑固者とは言え、誠心誠意頼めば気持ちは伝わるじゃろ。」
「あの宝石なくしては杖使い女に対抗できる結界は作れん。急いで頼むぞ。」
「おっと忘れておった。クランバートル家は、我が敷地の噴水の下に住んでおるからな。」
クランバートル家に住む男性に話しかける。
「む?何ですかあんたは。いかにも。クランバートル家は我が家ですが。」
「クラン・スピネル?ああ、そういう話なら父さんにして下さい。と言ってもこの町にはいませんけどね。」
「父さんはこの町の東で塔を作っています。塔に入りたいのならこれを持っていくといいでしょう。」
主人公は石の剣を受け取った。
「その剣を塔の扉の穴に突き刺せば扉が開くはずです。」
「父さんはライドンと言います。もし塔で父さんに会ったら、たまには家に帰れと伝えて下さい。」
酒場の隣にある家にいる老人と話をする。
「わしも若い頃、この町で石像作りの修行をして、さる王国のお城付きの彫刻家になったんじゃよ。」
「だが何年か前、その仕事もやめてこの町に戻ってきた。今は若い石像作りの支援者をしておるよ。」
「わしも若い頃は天才彫刻家として鳴らしたもんじゃが、一人だけどうしても勝てない相手がおったんじゃ。」
「それがクランバートル家のライドンじゃ。今はもういい加減、ジジイじゃけどな。」
「しかしあやつは若い頃からずっと悩んでおったのじゃ。自分の才能は先祖の足元にも及ばないとな。」
「伝え聞いた話ではクランバートル家の先祖の中には、聖地ゴルドの女神像作りの総指揮を執った者もおるそうじゃ。」
「ライドンはそうした偉大な先祖たちを何とか追い越そうと、今でも現役で石を彫り続けておるんじゃよ。」
「さあ、わしの話は以上じゃ。わしは技術だけじゃなく執念でもライドンには勝てなかったという虚しい話じゃな。」
主人公はリブルアーチから東へ進み、ライドンの塔に向かった。
塔の入口で石の剣を使って中に入り、数々の謎を解きながら最上階まで登っていくとライドンがいた。
「ぬお!何だおめえ!ここまで登ってきやがったか!」
「うははは!お前みたいな青二才に制覇されるってことは、この塔もまだまだ低すぎるってこったな!」
「やい小僧、気に入ったぞ。わしは彫刻家のライドンだ。お前さん、このわしに用があって来たんだろ?」
主人公は事情を説明した。
「何?クラン・スピネル?ああ、あの二つの宝石のことか。」
「残念だがそんな物は、もうとっくの大昔からうちにはねえよ。何しろわしも見たことねえんだ。」
「わしの大昔の先祖が自分で作った像にそのクラン・スピネルを埋め込んだって話は聞いたことがある。」
「その先祖ってのは女なんだがな。何でも生涯最高の出来の像にその宝石を埋め込んだらしい。」
「その像が何処にあるかって?さあな。さすがにそこまでは知らん。あとは自力で探すこったな。」
「手がかりと言えば名前くらいか。確かあの先祖はリーザスとかって名前だったか。」
「さあもういいだろう。まだ他に用があるのか?」
「何?倅がたまには家に帰れと言ってただと?うはは!残念ながらそうはいかん。」
「お前みたいな青二才に塔を制覇されたとあってはまだまだ帰れん。」
「わしはこの塔をもっと高くするのだ!」
主人公はルーラでリーザス像の塔へ行き、塔の最上階に登った。
リーザスの像から声が聞こえる。
「勇気ある旅人よ。私の名はリーザス。」
「遥か遠き昔にこの世界を生き、この像を生み出した者です。」
「あなた達にお伝えしましょう。長き歴史の狭間に忘れられた賢者の血の話を。」
「私が生まれたクランバートル家は、伝説の七賢者の血を受け継ぐ由緒正しき家系でした。」
「しかしある代でクランバートル家は賢者の血を失いました。継承者である私がアルバート家に嫁いだためです。」
「以来賢者の血はアルバート家に受け継がれていきました。」
「ですがその賢者の血も憎き魔の力により断たれたのです。継承者であるサーベルトの命と共に。」
「賢者の血が絶えたとは言えアルバート家が私の血筋であることに変わりはありません。」
「アルバート家の血を絶やさぬためなら出来る限りのチカラは貸しましょう。」
「像に埋められたクラン・スピネルを持っておゆきなさい。きっと助けとなるでしょう。」
「アルバート家の血を持つ最後の一人、ゼシカの事を宜しく頼みましたよ。」
リーザス像の周りを調べると、美しく輝く二つの宝石が落ちていた。
主人公はクラン・スピネルを手に入れた。
リブルアーチに戻り、ハワードに報告する。
「おお、来たか。で、どうなんじゃ?クラン・スピネルは手に入ったのか?」
主人公はハワードにクラン・スピネルを渡した。
「おお、手に持っただけで感じるこの魔力の波動は間違いない!これぞクラン・スピネルじゃ!」
「これさえあれば強力な結界も容易に作れるじゃろう。杖使い女などもはや恐れるものではないわい。」
「それにしてもお前さんも嬉しいじゃろう。何しろ大呪術師たるこのわしの役に立てたのじゃからな。」
「よし、折角じゃ。次にあの杖使い女が来るまでわしの屋敷の衛兵として雇ってやろう。」
「さっそく仕事を与えてやる。さあ、こっちに来るのじゃ。」
「この先にはわしの秘密の資料室がある。そこからある本を探してきて欲しいのじゃ。」
「本のタイトルは世界結界全集じゃ。その本に強力な結界のレシピが載っておる。宜しく頼むぞ。」
主人公は資料室の本棚にあった「ハワード一族の歴史」という本を手に取って読んだ。
「我が名はハワード。偉大なる大呪術師クーパスより呪術の教えを乞う者なり。」
「我が師にして偉大なる大呪術師クーパスは強力な呪術のチカラを持つばかりでなく、何より聡明な人物であった。」
「師クーパスは気づいていた。いずれ世界に魔の力蘇りし時、己の持つ呪術のチカラが自分の一族こそ賢者の血筋であると魔の存在に示してしまうだろう、と。」
「師クーパスは賢者の血を魔の力に悟られぬように自らの呪術のチカラを我がハワード一族に譲り渡した。」
「呪術のチカラを失った師クーパスは、最後の言葉もなく突然に私の前から姿を消してしまった。」
「師クーパスより呪術のチカラを託された私は、我が一族に因縁の呪いをかけることにした。」
「この因縁の呪いがあれば、どれほど時が流れ、どれほど人の記憶が薄れゆこうとも、魔のチカラが真に迫りし時には師クーパスの末裔と我がハワード一族の末裔は必ず導かれ、出会うだろう。」
「そして我が一族の末裔が命を賭して、師クーパスの末裔をお守りすることを、ただひたすらに願うばかりである。」
主人公は別の本棚から「世界結界全集」を見つけ、ハワードの元に持っていった。
その時、庭から叫び声が聞こえてきた。
ハワードが主人公に言う。
「わしは今から大急ぎで結界を調合するゆえ、お前は外であの杖使い女を食い止めておれ!」
「何、心配せんでもすぐに出来るわい。何しろわしは偉大な大呪術師じゃからな!」
庭に行くと、呪われしゼシカがいた。
「折角守りは万全にしておきなさいって言ったのに、ずいぶんと無防備なのね。」
使用人のチェルスが言う。
「黙れ!ここから先へは一歩も行かせないぞ!ハワード様に指一本触れさせるものか!」
呪われしゼシカが笑っている。
「ハワード?悲しいわ。自分の血に刻みつけられた大いなる運命をあなたはまだ何も知らないのね。」
「私が狙っていたのは初めからあんな見せかけだけの男じゃないわ。この杖が全て知っているの。」
「私の狙いは、かつて暗黒神ラプソーンを封印した七賢者の一人、大呪術師クーパスの末裔、チェルス、あなたのことよ。」
「悲しいわね。あなたの命を守るべきはずの男がその事をまるで覚えていないなんて。」
呪われしゼシカが主人公の姿に気がついた。
「うふふ、やっぱりまだいたのね。」
「いいわ。どうせあなた達と戦うのは避けて通れないと思ってたもの。」
「ただこんなふうにあなた達を死なせてしまうなんて少し悲しいわね。」
主人公達は襲いかかってきた呪われしゼシカを倒した。
「そんな、信じられない。この杖のチカラを超える人間がいただなんて。」
「許さないわ。絶対に許さない。」
「見せてあげるわ。4人の賢者の魂を得たこの杖の本当の威力を。」
その時、庭に呪術師ハワードがやって来た。
「ぶわっはっは!どうやら間一髪だったようなじゃな!結界がようやく完成したわい。」
「このわしの命を狙う不届き者めが!わしの超強力な退魔の結界を食らえい!どりゃあ!」
呪術師ハワードが放った退魔の結界を受けた呪われしゼシカはチカラを失い、その場に倒れ込んでしまった。
「どわはは!こいつは相当効いたようじゃな。」
「主人公よ。よくぞわしが結界を完成させるまでの間、持ちこたえたな。」
「褒美としてお前に名誉な仕事を与えてやろう。あの女にトドメを刺してくるのじゃ。」
主人公は首を横に振った。
「何?それは出来んじゃと?どういう事じゃ。一応聞いてやるゆえ話してみよ。」
主人公は呪術師ハワードに事情を話した。
「ほほう。つまりあの女はもともとお前達の仲間というわけか。」
「そしてそのドルマゲスとかいうのを倒したことにより、何らかの呪いをかけられてしまったと。」
「ふん、釈然としない話じゃがまあいいじゃろう。あの女の命はお前さんに預けてやろう。」
「お前が必死でわしの命を守ろうとしたのは事実じゃしな。その褒美と思うが良い。」
呪術師ハワードが飼い犬のレオパルドが見当たらない事に気づく。
「・・む?そう言えばわしの可愛いレオパルドちゃんは何処へ行った?」
「いないではないか。さては今の騒ぎで恐ろしくなって何処かへ逃げてしまったのか?」
「チェルスよ!今すぐレオパルドちゃんを探して連れ戻してまいれ!」
主人公達は意識を失ったゼシカを宿屋へと運んだ。
ゼシカは時折うなされるものの、なかなか目を覚ます気配はなかった。
意識を失っているゼシカはサーベルトの夢を見た。
「俺は曾祖母様からこんな話を聞いたことがある。」
「西の地から嫁いできた曾祖母様のそのまた曾祖母様は高名な賢者だったそうだ。」
「その方は女性でありながら、剣術、魔術とも知り尽くしていて大変な能力の持ち主だったらしい。」
「俺は剣術こそ磨けばまだ向上する余地があるかも知れないが、魔法は子供騙しだ。」
「だから俺はこう思ってるんだ。」
「ご先祖様の魔法のチカラは俺ではなくゼシカ、お前に受け継がれたんではないか、とな。」
「きっとお前には自分でも気づかない能力が眠っていて、いつかそのチカラが目覚める日が来るだろう。」
「俺は結構本気でその日が来るのを楽しみにしてるんだぜ。」
ゼシカは目を覚ました。
「・・主人公。私どうしてたの?何だかずいぶん長い夢を見てたような気がするけど。」
主人公と一緒に看病していたトロデ王が言う。
「ふむ、どうやら正気を取り戻しているようじゃな。」
「覚えておらんか。わしらはドルマゲスを倒してその翌日、お前さんが姿を消したんじゃ。」
「ううん、覚えてるわ。だけどひょっとしたらあれは夢だったのかと思って。」
「私、禍々しい魔のチカラに完全に身も心も支配されてた。そう、ドルマゲスと同じように。」
「私を支配した強大な魔のチカラの持ち主の名前は、暗黒神ラプソーン。」
「だけどそのおかげでいろんな事が分かったわ。聞いて。話したいことが沢山あるの。」
「私の心にラプソーンはこう命令したわ。世界に散った七賢者の末裔を殺し、我が封印を解けって。」
「七賢者っていうのはかつて地上を荒らした暗黒神ラプソーンの魂を封印した存在らしいの。」
「賢者たちはラプソーンを完全には滅ぼせなかったけど、その魂を杖に閉じ込めて自分たちの血で封印したのね。」
「暗黒神ラプソーンの呪いがその七賢者を狙っていて。」
「マスター・ライラス、サーベルト兄さん、オディロン院長、あとベルガラックのオーナーも。」
「今までに殺された人達はみんな、七賢者の末裔だったのよ。」
トロデ王が言う。
「ふーむ、ややこしい話になってきたのう。」
「つまりわしとミーティアが人間に戻れなかったのも、その暗黒神と関係があるということか?」
「それは分からないけど、残る七賢者はあと3人よ。私が狙ったチェルスと、他にもう二人。」
「七賢者の血筋が全て断たれると、杖にかけられた封印が解けてラプソーンの魂があの杖から・・杖・・」
「ねえ、トロデ王!杖は?私が持ってたあの杖はどこ?」
「・・いけない!チェルスが危ないわ!」
「あの杖は持った者が暗黒神に心を支配されてしまうの!」
「すぐに杖を探し出して!早くしないと杖を持った誰かがまたチェルスを狙うわ!」
屋敷の奥の部屋でハワードにと話をする。
「おお、お前か。あの杖使い女を退治してからというもの、どうにも身体の調子が悪くてな。」
「上手く言えんのだが自分がとんでもない失敗をしてしまったような、妙な気持ちにとらわれておってな。」
「わしともあろう者がこの心の迷いはどういうわけか。」
庭で叫び声が聞こえたので駆けつけると、杖を咥えた飼い犬のレオパルドがチェルスを襲っていた。
「ぐわあ!」
レオパルドから声が聞こえる。
「あと二人・・これ以上邪魔はさせぬぞ・・」
レオパルドは杖を咥えたまま消え去った。
ハワードが庭にやって来てチェルスに駆け寄る。
「これはどういうわけじゃ・・」
「チェルス、いや、偉大なる賢者クーパス様の末裔・・」
「・・そうか。ようやく分かったぞ。」
「わしは守り通すことが出来んかったのか。代々の悲願である因縁の呪いを。」
「折角ご先祖様がわしとクーパス様の末裔を導いてくれたというのに・・わしは・・」
「うう・・頭が割れそうに痛む・・」
「主人公よ。チェルスの亡骸を見た瞬間、いろいろな疑問が氷解した。わしは全てを悟ったのじゃ。」
「わしはご先祖様の因縁の呪いにより、生まれながらにこう運命づけられておったようじゃ。」
「偉大な賢者の一族、つまりはその末裔であるチェルスの命を守るように、とな。」
「だが強力な呪術のチカラにおごった我が一族はいつからか先祖の呪いをも消しかけてしまった。」
「せめてあと少し早くその事に気づいていればこうはならんかったのかも知れん。」
「チェルス、いや、偉大な賢者の亡骸は手厚く葬るよう部下たちに命じておいたが、わしは取り返しのつかないことをしてしまったな。もう誰にも顔向けが出来ん。」
「すまんがわしの最後の頼みを聞いてくれんか。」
「チェルスを殺したのがレオパルドであることは知っておる。それを承知で頼むが、レオパルドを退治してくれ。」
「そして賢者一族の仇をお前の手で討って欲しいのじゃ。」
「わしには分かるのじゃ。やつはもうレオパルドではない。強大な魔の力に支配されておる。」
「これが罪滅ぼしになるとは思っておらんが、今のわしに出来るのはこれくらいじゃ。」
「そうじゃ、お前さん達にも色々迷惑をかけた。何か礼をせねばならんな。」
「どうやらそっちの娘さんは魔法使いの天分がまだ半分ばかり眠ったままのようじゃな。」
「よし。わしのチカラで眠っている天分を軽く揺り起こしてやろう。」
呪術師ハワードがゼシカにまじないをかける。
なんとゼシカはベギラゴンとマヒャドの呪文を覚えた。
「主人公よ。レオパルドはこの町から北へ逃げていったと聞く。まずは北に向かうと良いじゃろう。」
「それではくれぐれも頼んだぞ。お前達の旅の無事を祈っておる。」
リブルアーチを出ようとした主人公にゼシカが言う。
「ねえ、主人公。ちょっと待って。」
「えっと、大した用じゃないんだけど、ドルマゲスを倒して杖を持った瞬間から私、自分の意志で話すことが出来なかったから。」
「だから今言っておくわ。私、兄さんの仇を討ったなんてまだちっとも思えてないの。」
「暗黒神ラプソーンっていうのが何者なのかはよく分からないけど、あの杖をこのままにしておけないわ。」
「あの杖をもう一度封印するまで私、まだ旅を続けるから。これからも宜しくお願いします。」
「何だか改まっちゃって私、ちょっと変だったかな?」
主人公は一度ベルガラックにあるギャリングの屋敷に向かった。
兄のフォーグと妹のユッケが喧嘩をしている。
「なによ、お兄ちゃんの馬鹿!」
「いい?あたし達はパパに拾われた子供なんだよ。」
「どっちが先に生まれてきたのか分かんないでしょ。本当はあたしが姉でお兄ちゃんが弟かも知れないんだよ。」
フォーグが言う。
「ああ、妹よ。話を蒸し返すな。お前がそう主張するから妹のお前にも家を継ぐチャンスを与えたんだろ。」
「ギャリング家の継承の試練をどちらが早く終わらせるかで競い合い、勝った方が家を継ぐ。」
「妹よ。お前もこの事には賛成しただろ。それとも何か?護衛付きとは言え竜骨の迷宮へ行くのが怖くなったか?」
その時、兄妹が主人公の姿に気づいた。
「おっと、これはこれはお見苦しい所をお見せして申し訳ない。ようこそ、我が屋敷へ。」
ユッケが言う。
「強そうな人は大歓迎よ。え?何の事か知らないで来ちゃったの?」
「なら説明したげるから、あたしとお兄ちゃんの話、聞いていってよ。」
兄妹が説明を始める。
「私達の育ての親が死んでね。父の跡を私と妹のどちらが継ぐかで揉めているんだ。」
「私達は仲が悪い。話し合っても全然決着がつかない。」
「そこであたしとお兄ちゃんで恨みっこなしの勝負をすることにしたの。」
「継承の試練を終えて早く町に戻ってきた方が勝ち。」
「継承の試練とは古くからギャリング一族に伝わってきた家督を継ぐ際の肝試しみたいなものさ。」
「竜骨の迷宮の奥まで行って家長の印を手に刻んでくるだけなんだが、その竜骨の迷宮が曲者でね。」
「魔物がいっぱいで下手すりゃ命を落としちゃうかも知れないのよ。」
「だから護衛を雇うってわけ。」
「でもなかなか私と妹が納得できる人材が来てくれなくてね。ほとほと困っていたのだよ。」
「私は彼等になら護衛を任せてもいいと思うが。妹よ、お前の方はどうだね?」
「うん、この人達、気に入った。あら、珍しく意見があったわね。」
「よし決まりだ。私か妹、どちらの護衛につくかは君達で選んで欲しい。」
「彼等に選ばれなかった方は屋敷の部下を護衛に連れて行く。これでいいよな、妹よ。」
「文句ないよ。どっちみち吠え面かくのはお兄ちゃんだからね。」
「そうそう、君らが護衛した方が負けてもちゃんと報酬は支払うから。その点だけは安心してくれたまえ。」
主人公はユッケの護衛につくことにした。
その夜、主人公達はテーブルに並んだ美味しい料理を腹いっぱい食べた。
そして強い眠気に襲われ、眠りについた。
翌朝、ユッケに起こされて目が覚める。
「起きろー、起きなさーい!」
「ようやくお目覚めね。お日さまはとっくに昇ってて、お兄ちゃんはもう出発した後なのよ。」
「あーもう、ムカつくわね。早速だけど眠ってる仲間を起こすの手伝ってよ。」
「寝坊したのは責めないわ。あたしだって寝坊したんだしね。」
「悪いのはみんなお兄ちゃんよ。」
「メイドを締め上げてやったら、お兄ちゃんの命令で昨日の料理に眠り薬を混ぜたって白状したのよ。」
「過ぎたことはしょうがないわ。遅れを取り戻すためにも急ぐわよ。」
主人公達はユッケと共にベルガラックの南にある竜骨の迷宮へ向かった。
竜骨の迷宮の最奥に進むと、フォーグがレッドオーガとブルファングに襲われていた。
それを見たユッケがフォーグを助けに行くが、吹っ飛ばされてしまう。
主人公はレッドオーガとブルファングを倒し、兄妹を救出した。
「ああ、妹よ。この兄のために尊い命を投げ出してくれたこと、私は一生忘れない。」
「だが安心してくれ。父さんの跡は私が立派に継いでみせるからな。」
「お前も天国で父さんと一緒に見守っておくれ。」
ユッケが意識を取り戻した。
「冗談じゃないわ。勝手に殺さないでよ。」
「眠り薬なんかであたしを出し抜いて。こんな勝負、無効よ。」
「それに、間に合ったから良かったものの、お兄ちゃん、もう少しで死ぬとこだったんだよ。」
フォーグが言う。
「どうしてもお前に勝って兄の威厳を示したかったんだ。だがそれももういい。」
「卑怯な手を使った私を体を張ってまで守ってくれた。お前こそ跡継ぎとして相応しい。」
「家長の座は譲るよ。子供じみた意地の張り合いはこれで最後にしようじゃないか。」
「さて、ここから試練の扉まであと少しのはずだ。護衛の君達もついてきてくれたまえ。」
試練の扉の前にやって来た。
「ふーん、この扉を開けば家長の印が手のひらに刻まれるってわけね。」
扉のドアノブは2つあり、熱くなっている。
「なんなのよこの扉。こんなの熱くて開けられないよ。てゆーか絶対火傷するし。」
フォーグが言う。
「この扉を開くことによって出来た火傷の痕こそ家長の証さ。きっと痛みに耐えるのが試練なんだ。」
「そんな・・これって両開きでしょ?片方開けるだけでも精一杯だよ。一人で両方開けるなんて無理だよ。」
「しょうがないなあ、もう!こうなったら仕方ないか。」
「ねえお兄ちゃん。あたしを出し抜いたこと悪いと思ってるなら、この扉を開けるの手伝ってよ。」
「手伝ってくれたら家長の座を半分あげる。つまりカジノのオーナーは二人でやるってのはどう?」
フォーグが頷く。
「ふむ、悪くない条件だな。だが後で悔やんでも知らんぞ。」
兄妹二人で片方ずつ熱くなっているドアノブを掴み、扉を開いた。
扉の奥あった水晶を調べるとギャリング一族の先祖の幻影が現れた。
「よくぞここまでたどり着いた。我が血をひきし者よ。」
「見事継承の試練を果たしたそなたに我が一族の伝承を聞かせる。心して聞くがいい。」
「そなたの身体には古の暗黒神を封印した七賢者の尊い血が流れている。」
「一族の血をけして絶やすな。我等大いなる使命を受け継ぐ者。」
「我等一族の血が続く限り世界の平和は保たれるであろう。」
ギャリング一族の先祖の幻影が消えた。
「一族の血を絶やすなって言われても、あたしらは拾われた子だからどだい無理な話よね。」
「パパが殺された時点でギャリング一族の血はぷっつり途絶えちゃったわけだしさ。」
フォーグが言う。
「まあ私達に出来ることをしようじゃないか。カジノをもっと大きくするとか。」
「とにかくご先祖様の言葉も聞けたことだし、あとは町へ帰るだけだ。帰りもしっかり護衛を頼むよ。」
ベルガラックへ帰り、フォーグとユッケの屋敷で身体の疲れを癒やした。
そして夜が明けた。
「無事に戻ってこれたのも諸君らのおかげだ。ありがとう。」
「まあ危ない目にあったからこそお互いの大切さに気づいたんだがな。」
「これからは兄妹仲良くやってくよ。」
この日からベルガラックのカジノが再開された。
リブルアーチから北へ進み、雪道をさらに北へ向かうと山小屋に着いた。
「ようこそ我が家へ。わしはメディというこの山小屋に暮らすしがない薬師の婆さんですじゃ。」
「薬湯を作ってあげるから待ってて下され。飲むと身体が温まりますからな。」
本棚に「その後の賢者」という本があった。
「七賢者の一人、大学者カッティードは暗黒神との戦いの後、故郷である雪国へと帰っていった。」
「伝承によると故郷へ戻った彼は、暗黒神との戦いの全てを後世に伝えることを志したという。」
「もしカッティードの遺した何らかの資料が見つかれば、それは歴史的発見となるだろう。」
薬湯を持ったメディがやって来た。
「さあ飲んで下され。このヌーク草の薬湯さえ飲んでおけば雪国の寒さも気にならなくなりますぞ。」
ゼシカが聞く。
「どうしてお婆さんは山奥に一人で暮らしてるんですか?」
メディが答える。
「この家の裏手には古い遺跡がありましてな。先祖代々わしの家系はそれをお守りしてきたのですじゃ。」
「しかしその役目もわしの代で終わることになるでしょうな。跡を継ぐ者もおりませんでのう。」
ククールが聞く。
「ところでメディさん。実は一つ聞きたいことがあるんだよ。」
「俺達は大きな黒犬がこの雪国の方へ逃げたという噂を聞きつけて追ってきたんだ。」
「もしかしたら奴はこの近くを通ったかも知れない。何か心当たりはないもんかな?」
メディが答える。
「はて、大きな犬と言えばうちで飼っているバフくらいしか思い当たりませんのう。」
「お役に立てず申し訳ない。しかし探しものなら人の多い所で聞き込みされるのがよいでしょうな。」
「この山を下って北へ向かうとオークニスという町がありますのじゃ。犬探しはそこでしてはどうですかな?」
「それと皆さん、申し訳ありませんが一つ頼まれてくれませんかな?」
「オークニスに行ってグラッドという男に会ったらこれを渡して欲しいのですじゃ。」
主人公はメディから小袋を渡された。
「グラッドはおそらくわしと同じ薬師をしているはずですじゃ。くれぐれも頼みましたぞ。」
山小屋から北へ進みオークニスへ行くと、グラッドが北の薬草園へ行ったという情報を聞いた。
薬草園に向かい奥へ進んでいくと、グラッドが倒れていた。
「私はオークニスの薬師グラッド。この洞窟で薬草の採取をしていたら突然狼に襲われて。」
「慌てて奥に逃げ込んだら落ちてきたつららに閉じ込められて出られなくなってしまったんだ。」
「うう、寒い。とにかく何とかしてまず身体を温めなくては。」
主人公はメディから預かった小袋をグラッドに渡した。
「その袋はまさか・・君達!もしかしてその袋はメディという人から預かったものじゃないのか?」
「なるほど。薬師メディがこの私に渡すようにと君達に託したものなのか。」
「君達、その袋を開けてくれないか?」
メディの袋の中には見慣れない薬草が入っていた。
「やっぱりヌーク草か。丁度いい。本来なら薬湯にして飲むものだが、生のままでも・・」
グラッドは袋の中から取り出したヌーク草をそのまま食べてしまった。
「やっぱりヌーク草は生で食べるものじゃないな・・」
「とにかく身体は温まった。ありがとう。君達のおかげだよ。」
「それとあの人のおかげか。まさかこんな事が起こるのを察していた訳じゃなかろうが。」
「ところで君達。オークニスに戻るつもりなら私も一緒に連れて行ってくれないか?」
「身体は動くようになったが帰り道にまたあの狼に襲われたら危ないからね。」
薬草園の出口に着くと、狼達が待ち構えていた。
主人公達が狼を倒していくがキリがない。
狼達は何故かグラッドを狙っているように見える。
「くそ!こいつら何で私ばかり狙うんだ。」
何処からか不気味な声が聞こえる。
「待て・・その者ではない・・」
「確かに賢者の血を感じるが、違う。」
「本物は別にいるはず・・真の賢者を探すのだ。」
狼達は何処かへ行ってしまった。
謎の不気味な声を聞いたグラッドが考えている。
「今の声は一体・・それに真の賢者だって?」
「いや、まさかな。そんな事あるはずが・・」
「ふう、あの狼達、私を待ち伏せしていたんだな。」
「やはり君達に同行してもらうことにして正解だったよ。さあ、オークニスへ帰ろう。」
主人公はグラッドを部屋まで送っていった。
「さて、まずは私と薬師メディの関係について話しておかなくてはならないね。」
「隠していたわけではないんだが、実はあの人は私の母親なんだ。」
「あの山小屋の裏にある遺跡。本当なら私は母の跡を継いであれの守り人になるはずだったんだよ。」
「それがどうしてこの町で暮らしているのか・・私は家を、母を捨てた人間なんだ。」
「私は母から学んだ薬草の知識を人々の役に立てたかった。だがあの山奥にいたのではそれは難しい。」
「そこで私は家を出て、このオークニスで薬師として人々のために尽くす道を選んだんだよ。」
「しかし夢を叶えても私の心は晴れなかった。母一人を残して家を出た事が後ろめたかった。」
「そして今日、君達が母からあの袋を託されて私の前に現れたんだ。」
「本当に嬉しかったよ。母が私の生き方を認めてくれたような気がしたからね。」
「実は母に関わることでどうしても気になることがあるんだ。」
「君達も聞いただろう?狼に襲われた時に聞こえたあの不気味な声を。」
「あの声は私のことを指して賢者の血は感じるが違うと言っていた。」
「真の賢者を探しているとも。」
「実は私の家系にはかつて暗黒神を封じた賢者の一人の血が流れているんだ。」
「そして同じ血を引く者は私以外には母しかいないはず。ならば真の賢者というのは・・」
「そう考え始めたら母のことが心配になってきてね。とにかく様子を見に行こうと思うんだ。」
「そこでどうだろう。君達も一緒に行ってくれないか?正直私一人では心細いんだよ。」
主人公は頷いた。
「そうか、行ってくれるか。それじゃあ善は急げだ。早速出発しようじゃないか。」
「私は支度があるので君達は先に向かっていてくれ。すぐに追いつくから。」
メディの住む山小屋へ向かうと、狼達が小屋を取り囲んでいた。
狼達を倒しながら小屋の中に入るが、メディの姿が見当たらない。
山小屋の裏にある遺跡に行くとメディがいた。
「あのような悪しき者はこの中へは入ってこれませんからのう。」
「わしがいつも通り地下室で薬草を煎じておりましたら突然上でバフが吠えだしましてのう。」
「何事かと思い外に出てみると、小屋が狼の大群に囲まれていたので慌ててここに逃げ込んだのですじゃ。」
「しかしひと目見て感じましたが、あれはただの飢えた狼ではありませんな。」
「何かもっと邪悪なものに操られているような、そんな気がしますわい。」
遺跡にある石碑に書かれた文字を読む。
「我は七賢者の一人。暗黒神ラプソーンは我等と神鳥レティスの手により封印された。」
「しかし長き時の果て、再びこの世に邪悪が現れることもあるだろう。」
「そこで未来に希望を残すべく、我が盟友たるレティスの伝承をこの地に刻み記そう。」
「世界の危機を告げるレティスの声に七人の賢者が立ち上がり、共に戦うことを約束した。」
「我等はレティスの知恵を借りて一振りの杖を生み出した。それは邪悪なる魂を封印する杖。」
「そしてラプソーンとの戦いが始まり、封印の杖は我等の血の呪縛によって暗黒神の魂を捕らえたのである。」
「神鳥レティスは無数の世界を旅する者。」
「世界の調和を乱さんとする暗黒神の脅威を伝えるためレティスはこの世界へと現れた。」
「レティスは大空を舞う者。この世に邪悪の現れし時はレティスに助力を求めることだ。」
「神鳥の島と呼ばれし島は断崖に囲まれ、人を寄せ付けぬ未開の大地である。」
「翼を持たぬ人の身で至らんとするならば、まず正しき道の記されし海図を手に入れることから始めよ。」
「願わくば光の道がこの世界の未来をも正しき方向へと導かんことを。」
外からグラッドの叫び声が聞こえた。
主人公が駆けつけると、グラッドがレオパルドにつかまっていた。
「また貴様たちか。どこまでもしつこい奴らよ。」
「だが今は貴様たちの相手をしている暇はない。」
「賢者の血を引きし者よ。観念して出てくるがいい。」
「さもなくばお前の血を引く者、この男の命はないと思え。」
メディが遺跡から出てきた。
「ほう、これは驚いたね。わしを呼んでるようだから出てきてみれば、なんと相手が犬だったとは。」
「じゃがただの犬ではないね。臭う・・この邪悪な臭気がお前さんの正体を教えてくれるよ。」
レオパルドが言う。
「そこまで分かっているなら我が望みも知っていよう。大人しくその命、我に捧げよ。」
「お前には何一つ要求する自由はない。黙ってこちらへ来るのだ。」
メディが言う。
「やれやれ。さすが獣の姿をしているだけあって聞き分けのない奴だね。」
「いいだろう。今そっちに行ってあげるよ。」
主人公はメディに最後の鍵を渡された。
「主人公さんや。後のことは頼みましたぞ。」
メディがレオパルドに近づいていく。
「よくぞ来た、賢者の末裔よ。今その命、刈り取ってくれよう。」
「だが何も怯えることはない。すぐにお前の息子にも後を追わせてやるのだからな。」
メディが言う。
「やはりそういうことかい。でも婆さんが相手だからって何でも思い通りになるとは思わないことだね。」
メディはヌーク草が入った小袋をレオパルドの顔に投げつけた。
「がああ!貴様、何を!」
レオパルドがもがいている隙に主人公はグラッドを助け出した。
「ぐおお!おのれ!おのれ!」
レオパルドはもの凄いスピードでメディ婆さんに杖を突き刺した。
「老いぼれがふざけた真似を。これでは目も鼻も効かぬ。」
「だが残る封印はあと一つ。あと一人、最後の賢者を葬れば我が魂はこの忌まわしき杖より抜け出せる。」
レオパルドは背中に大きな翼を生やし、飛び去っていった。
グラッドがメディに駆け寄る。
「母さん・・何てことだ。俺があの黒犬につかまったばかりに・・」
「ようやく謝ることが出来ると思ってたのに・・俺のせいで・・」
遺跡にあった石碑のヒントを頼りに、主人公は船で海賊の洞窟に入った。
すると女盗賊のゲルダがやって来た。
「どこかで見た顔だと思ったらビーナスの涙をプレゼントしてくれた親切な御一行じゃないか。」
「それにしてもずいぶん珍しい所で再会したもんだね。」
「何でも噂によると、ここにはあの大海賊キャプテン・クロウのお宝が眠ってるって話じゃないか。」
「あたしはお宝って言葉に目がなくてね。こうしてわざわざ船を仕立ててやって来たって訳さ。」
「見たところあんた達も目的は同じみたいだね。」
「ふん、面白いじゃないか。それじゃあ海賊のお宝を手に入れるのは早い者勝ちってとこだね。」
「そうと決まったらノンビリはしてられない。あたしは一足先に行かせてもらうよ。」
ヤンガスが言う。
「おい、待てよ。勝手なことばかり言いやがって。」
「それにここにゃ魔物も出るんだろ?お前一人でお宝がある場所まで辿り着けるもんかよ。」
「見くびってくれるじゃない。あたしの忍び足の実力はあんたも知ってるだろ?」
「魔物共なんかに見つかるようなヘマはしないさ。動きの鈍いあんたとは違ってね。」
ゲルダは洞窟の奥に一人で行ってしまった。
海賊の洞窟の奥に行くと、宝箱の前にゲルダがいた。
「遅かったじゃないか。勝負はあたしの勝ちみたいだね。約束通りお宝は貰っていくよ。」
ゲルダが宝箱を開けようとすると、キャプテン・クロウの亡霊が現れた。
「我が名はキャプテン・クロウ。かつて世界の海を股にかけし海賊の中の海賊。」
「我が財宝を狙うものよ。汝はそれを手にする資格のある者か?」
「あると言うならば我と戦い、そのチカラを示せ。」
「資格なき者ならば悪いことは言わぬ。早々に立ち去るがよい。」
ゲルダは短剣を抜いた。
「あたしは戦うのはあんまり得意じゃないんだけどね。」
キャプテン・クロウの剣圧に押されて吹っ飛ばされてしまうゲルダ。
主人公達はキャプテン・クロウに挑み、見事勝利した。
「我を倒すとは見事な戦いぶりよ。汝らを資格を持つ者と認めよう。」
「勇者たちよ。我が財宝を引き継ぎ、我の果たせなかった夢を叶えてくれ。」
キャプテン・クロウの亡霊は消え去った。
宝箱を開けると、中に「光の海図」が入っていた。
ゲルダが起き上がり、こちらへ近づいてくる。
「みっともない所を見せちまったようだね。おまけにお宝まで先に取られちまうし。」
「でも何だい?お宝ってのはその紙切れなのかい?うわー、しょぼい。」
「そんなつまらないものだと知ってたら、あたしゃこんな所までやって来なかったよ。」
「ま、今回は途中で手に入れた10000ゴールドで我慢しておくことにするさ。」
主人公達が帰ろうとすると、ゲルダに呼び止められた。
「待ちな!あたしもあんたらについてくよ。」
「あんたらからはお宝の匂いがプンプンするのさ。」
トロデ王がどこからともなく現れた。
「うむ、まあいいんじゃないか。」
「旅は道連れとも言うじゃろ?それに仲間は一人でも多い方がわしとしても心強いしな。」
「なら決まりだね。それじゃあしばらく厄介になるよ。」
ゲルダが仲間に加わった。
洞窟の外に出て光の海図を使うと、世界地図の上に光が出た。
主人公は船で光の道の先端にある岩場に向かった。
岩場を貫くように光の道が続いていたのでそのまま船を進めていくと、そこが隠された入口になっていた。
岩場の洞窟を抜けるとそこには島があり、上陸して道なりに東の方へ進みレティシアの村に入った。
「あんた、もしかしなくても島の外から来た人だよな?」
「いやー、断崖絶壁に囲まれたこの島に外から人が来るなんて驚きだぜ。」
「ここはレティシアの村だ。レティシアってのは神鳥レティスを崇める者って意味さ。」
村の女性に話を聞く。
「あなた、大きな鳥の影を見た?もし見たならそれは神鳥レティスの影よ。」
「レティスは影しか見えない不思議な鳥なの。」
「以前はこの島に住む私達でさえめったに見られなかったのに、どういうわけか最近よく現れるらしいわ。」
村の男性に話を聞く。
「我等が崇める神鳥レティスは、この世界とは異なる別の世界に実体を持っているのだそうだ。」
「だからこの世界においては影だけしか見えないのだが、その真の姿はたいそう美しいらしいぞ。」
「まあ全部長老から聞いた話だから、どこまで本当のことかは分からんがね。」
村の長老と話をする。
「うん?なんだあんたは。見たところよそ者のようだが。」
「ほほう。神鳥レティスについて聞きたいとな?それはよい心がけじゃ。」
「伝説によればレティスはこの世界と異世界とを行き来するチカラを持っておったと言うな。」
「このチカラはただレティスのみが持つことを許された特別なチカラだと言うことじゃ。」
「だがある時、異世界の邪悪な存在がこの世界を狙って二つの世界をつなぐ巨大な門を生み出したそうじゃ。」
「レティスはこの企みを阻止するため、異世界へと旅立ち自らのチカラを振り絞り開かれた門を閉ざしたのじゃ。」
「しかしチカラを使いすぎたレティスは己の影のみをこの世界に残したまま、ついに異世界より戻らなかったそうじゃ。」
「ああ、それとレティスのチカラは完全に失われた訳でなく、まれにあの影が異世界への破れ目を作るという話もあるな。」
「破れ目というのがどういうものかはわしも知らんが、そいつに入ると異世界に迷い込んでしまうそうじゃ。」
「まああんたもいたずらにレティスの後を追ったりして破れ目に入り込んだりせんよう気をつけるんじゃな。」
レティシアを出て西へ進み、島の中央にある岩へ行くとレティスの影が出現した。
レティスの影を追い続けると西の高台に着き、そこに異世界への破れ目があった。
主人公達は異世界への破れ目をくぐるり、闇のレティシアにワープした。
闇のレティシアは色がなく、一面灰色の世界だ。
闇のレシティアにある村へ入ると、村人達は皆、真っ黒の見た目で色がない。
主人公だけが色を持っていて、村人達は好奇な目で主人公を見る。
村の長老がやって来た。
「おお、その姿、もしや・・」
「おぬし達はひょっとして世界の破れ目を通ってこちらへ来た光の世界の住人ではないのかね?」
「やはりそうじゃったか。ならば今この時、おぬし達が来たのは天の意志なのかも知れんな。」
「この村は荒れ果てておるじゃろ。それをやったのは神鳥レティスなのじゃ。」
「しかしわしにはどうしてもレティスがそれを望んでしたとは思えんのじゃ。」
「レティスが崇められてきたのは、ただその姿の優美さゆえだけではない。かの神鳥が人の味方であるゆえなのじゃ。」
「そこで頼みがある。おぬし達にはこの村を襲ってきたレティスの真意を問うてもらいたいのじゃ。」
「わしはおぬし達が光の世界からこの地に迷い込んできたことを偶然とは思っておらん。」
「なればレティスはおぬし達を呼び寄せた訳があるはずじゃ。きっとおぬし達にならば真実を語ろう。」
「身勝手な願いだとは分かっておるが、このままでは村人とレティスが戦うことになってしまう。」
「そうならんうちに何とかしてレティスの真意を確かめたいのじゃ。」
「レティスの姿は草原に置かれているレティスの止まり木という大岩の辺りでよく見かけられる。」
「とりあえずそこに行ってレティスを探してみておくれ。」
闇のレティシアを出て丘の上にある石門へ行くと、レティスがいきなり襲いかかってきた。
主人公達は襲いかかってくるレティスに勝利した。
「さすがは我が影を追って光の世界より訪れし勇気ある者達。見事な戦いぶりでした。」
「もうお気づきかも知れませんが、今の戦いはあなた方のチカラを試すために仕掛けさせてもらったものです。」
「私は今、チカラあるものの助けを必要としているゆえ、どうか許して下さい。」
「誤解しないで下さい。村を襲ったことは私の本意ではなかったのです。」
「とは言え、それは私が助けを欲している理由とも無関係ではありません。」
「私はかつて光の世界をも我が物にせんとする暗黒神ラプソーンと戦い、その封印にチカラを貸しました。」
「そのため私は暗黒神の配下である魔物達から恨みを買っており、それが今回のことの原因となったのです。」
「この島にある私の巣の中には、私の子・・卵が眠っており、やがて訪れる目覚めの日を待っていました。」
「ですがその私の巣が暗黒神の配下であった一匹の魔物、妖魔ゲモンの手に落ち、卵は人質に取られてしまったのです。」
「妖魔ゲモンは卵を救いたければ人間の村を襲えと脅してきました。私はそれに屈してしまったのです。」
「まともに戦えばゲモンごとき敵ではありませんが、卵を人質にされては手が出せません。」
「それゆえ私は、私に代わってゲモンと戦ってくれる勇気とチカラを持つ者を探していました。」
「あなた方は私の影を追って臆することなくこの影の世界までやって来た。その勇気は賞賛に値します。」
「そして今、実際に手合わせしてみて確信しました。妖魔ゲモンを倒しうるのはあなた方だけだと。」
「どうかお願いします。この島の人々のためにも、私の卵を救ってはもらえないでしょうか。」
主人公は頷いた。
「礼を言います。やはりあなた方を見込んでこの世界に招いたのは正しい選択でした。」
「私の巣は人の近づけない険しい岩山の頂にあります。」
「妖魔ゲモンが見張っているため私が山頂まで行くのは無理ですが、麓までなら案内しましょう。」
主人公達はレティスに山の麓まで運ばれた。
「これ以上近づくと妖魔ゲモンに感づかれる危険があるため、私が案内できるのはここまでです。」
「しかし幸いなことにこの岩山の中は空洞になっており、人間の足でも何とか山頂まで登っていけるはず。」
「それでは私の卵のこと、くれぐれも宜しく頼みます。」
主人公達は岩山を登っていき、頂上にいる妖魔ゲモンと対峙した。
「なんだ貴様たちは。こんな所にどうして人間がいる?」
「それにその姿。この闇の世界の住人ではないな。一体何処から迷い込んだ?」
「折角来てくれたのだ。暗黒神ラプソーン様の腹心、妖魔ゲモンが直々に遊んでやろうじゃないか。」
主人公達は襲いかかってくる妖魔ゲモンを倒した。
「馬鹿な・・こんな強い人間がいるなど・・」
「そうか、レティスだな!奴がこの俺を倒させるために光の世界から貴様たちを・・」
「おのれ!そうと分かればこのまま倒されてなるものか。」
「奴の卵も道連れにしてやる!死なばもろともよ!」
「このゲモンを謀ったことを後悔するがいい!グハハ・・」
妖魔ゲモンはレティスの卵を粉々に粉砕して消滅した。
そこにレティスがやって来た。
「これは・・どうしてこんな事に・・私の赤ちゃんが・・卵が粉々になって・・」
「どうやらあなた方には迷惑をかけてしまったようですね。」
「光の世界から呼び寄せておいて、こんな嫌な思いをさせてしまうなんて本当に申し訳ありません。」
「さあ、ここにいたところでもはやなすべきこともありません。」
「光の世界への扉まで送っていきましょう。」
砕けてしまった卵から声が聞こえる。
「母さま、待って下さい。」
「生まれてくることも出来ず、こんな姿でお話することになってごめんなさい。」
「僕を助けるために来てくれたその人達にお礼がしたくて。」
「こんな僕だからこそ出来ることがあると思うんです。」
「実体を持たない魂だけの僕に皆さんの身体を貸してもらえれば、空を飛ぶことが出来るようになるはず。」
「どうか皆さんの旅に僕をご一緒させて頂けませんか?」
主人公は頷いた。
「それでは僕は皆さんとご一緒できるように姿を変えます。」
「チカラが必要な時はいつでも呼んで下さい。」
主人公は神鳥の魂を手に入れた。
レティスが言う。
「その魂の結晶とも言うべき石を使えば、あなた達人間でも鳥の姿になって空を飛べるはずです。」
「ただそのチカラは私達が本来属する世界、すなわち光の世界でしか発揮できないので気をつけて下さい。」
主人公達はレティスに送られて、元の光の世界に戻ってきた。
トロデ王が言う。
「なんとまあ不思議な体験をしたものじゃな。」
「あのようなもう一つの世界が存在するとは、実際に行った者でなければ到底信じられぬことじゃ。」
「今もそこに扉がなければあの体験は夢ではなかったかと疑うところじゃぞ。」
神鳥の魂を使って空を飛び、パルミドの北西の近くある三角谷に入る。
三角谷に住む村人はなんと、魔物だった。
「お前!さては人間だな。よく来たな。ここは三角谷だよーん。」
トロデ王がやって来た。
「何じゃ?こやつ何処からどう見ても魔物ではないか。」
「やい、おぬし。魔物でありながら逃げも襲いもせず歓迎するとはどういう訳じゃ?」
魔物が答える。
「ここ三角谷は人間と魔物とエルフが共に暮らす谷だよーん。」
「だから人間を見ても逃げたりなんてしないよん。」
「何たる事じゃ。まさかこのような集落があるとはのう。」
「おおそうじゃ、ここでならばわしもコソコソせずに堂々と歩き回れるではないか。」
「よし主人公、行くぞ。わしについてまいれ。」
酒場の人間のマスターに話を聞く。
「ことの始まりは今から数百年も昔にさかのぼります。」
「七賢者の一人であるクーパス様は旅の途中、傷ついたエルフとギガンテスをお助けになったのです。」
「恩を感じたエルフとギガンテスは、それ以来クーパス様のお供としてその旅に同行しました。」
「しかし人間とエルフと魔物は寿命が違うもの。時が経ち、クーパス様は天命をまっとうされました。」
「残されたエルフとギガンテスは、クーパス様のご遺志を後世に残そうとこの谷に集落を作ったのです。」
「そんな経緯もあってこの谷では人間と魔物とエルフが仲良く暮らしているのですよ。」
「クーパス様のご遺志とは、世界を襲った暗黒神ラプソーンの恐怖を人々の記憶から消さないこと。」
「なのでこの谷の者達は訪れ来る旅人に必ず暗黒神の恐怖を語るのです。」
三角谷の奥に住むエルフのラジュと話をする。
「私はエルフのラジュ。以前この谷にチェルスという若者がおりました。」
「しかしチェルスは自分が偉大なる賢者の末裔であることさえ知らぬまま旅先にて亡くなりました。」
「もしやあなた方は何処かでチェルスに会ってはおりませんか?」
「何ですって?あなた方がチェルスの最後を看取ったと。何という事でしょうか。」
「偉大なるクーパス様の末裔の最後を看取った方々がこの谷を訪れるとは。これもきっと何かの因縁でしょう。」
「今はわらをもすがる思いであなた方にお頼み申し上げます。」
「暗黒神ラプソーンの復活が近づいています。暗黒神の復活を何としても阻止して欲しいのです。」
「暗黒神の復活を阻止せんとする私達の数百年に渡る長き願い。どうぞ聞き入れて下さいませ。」
主人公は頷いた。
「ありがとうございます。これもきっとクーパス様のお導きに違いありませんわ。」
「暗黒神ラプソーンの復活を阻止する唯一の手段は暗黒神の封印に使われた杖を再び結界に封じ込めること。」
「私達にも、せめてもの協力をさせて下さい。」
「この谷の宝物庫にある宝をあなた方に託します。」
「クーパス様の残された物に暗黒大樹の葉という闇の世界に生きる大樹の葉があります。」
「その葉を地図の上に落とすと、禍々しき存在の居場所を直ちに指し示すそうです。」
「では救世主様、お頼み申し上げました。私達はこの谷で吉報をお待ちしております。」
ラジュの部屋にあるタペストリーに、こう書かれている。
「七賢者の一人は神の子エジェウス。」
「わずか6歳にして奇跡の予言者であり、暗黒神の存在に最初に気づいた方である。」
「また一人は天界を見てきた男、レグニスト。」
「誰よりも神を知る存在であり、神鳥をレティスと名付けたのも彼である。」
「また一人は大学者カッティード。」
「その知識は比類する者なく、世界の全てを熟知すると言われていた。」
「また一人は無敵の男ギャリング。」
「たった一人で騎馬隊50人に勝利した恐るべき技と強運の持ち主である。」
「また一人は魔法剣士シャマル。」
「高名な剣と魔法の使い手でありながら同時に天才的な彫刻家でもあった。」
「また一人は魔法使いマスター・コゾ。」
「この広い世界において彼にしか使えない呪文は片手では足りぬほどである。」
「そして最後の一人はかつては呪術の使い手であった私、クーパスである。」
「我等はそれぞれの命を鍵として封印の杖に暗黒神ラプソーンの魂を封じ込めることに成功した。」
「我等の一族があり続ける限り、暗黒神ラプソーンの身体と魂が出会い、蘇ることは決してない。」
「人々がいたずらに扱わぬよう、魔法剣士シャマルが今ではその大岩を像に生まれ変わらせたと聞く。」
主人公は宿屋の奥にある宝物庫で暗黒大樹の葉を手に入れた。
暗黒大樹の葉を世界地図の上に落とすと、黒い印が浮かび上がった。
神鳥の魂を使い空を飛んで黒い印を追いかけて行くと、サヴェッラ大聖堂へ入っていった。
サヴェッラ大聖堂の1階にいるニノ大司教が慌てていた。
「大変だ!法皇様が・・怪しいものが法皇様のお部屋に侵入したらしいのだ!」
「お前達、頼む!法皇様をお助けしてくれ!」
「そして、法皇様に伝えてほしい。最初に救援の兵をよこしたのは、このニノ大司教。わしの手柄なのじゃと。」
2階にある法皇の部屋に行くと、魔犬レオパルドがいた。
「ほう、レティスのチカラをその身に宿したか。くっくっく。」
「面白い。よかろう、最後の賢者を殺す前にお前達を血祭りにあげてやるわ。」
主人公達は襲いかかってくる魔犬レオパルドを倒した。
「くっ・・馬鹿な・・またしても・・」
魔犬レオパルドは石になり粉々に砕け散った。
ニノ大司教とマルチェロがやってやって来た。
「法皇様!ご無事ですか!」
法皇はうつ伏せに倒れている。
「良かった。脈はまだある。しかしこれは・・あの化物がやったのか?何が起きたというのだ?」
「マルチェロ!何を突っ立っておる!早く法皇様をお部屋までお運びしろ!」
「この役立たずめ!何が警護役だ!貴様は降格だ。明日にも処分を・・わしの命令が聞こえぬか!マルチェロ!」
マルチェロが突然笑い出した。
「はっはっは!ニノ大司教殿。そういう訳でしたか。」
「観念なさい。野犬と誰とも知れぬごろつき共を雇い、騒ぎを起こしてそれに乗じ、法皇様の暗殺を謀るとは。恐れ入りましたよ。」
「あなたが次期法皇の座を狙っていた事は知っているが、ここまでやるとはな。」
「捕まえろ!このごろつき共をまとめて煉獄島へ流刑にするのだ!」
主人公達とニノ大司教は捕らえられ、煉獄島へ連れて行かれた。
誰もいなくなった法皇の部屋でマルチェロが言う。
「おぞましい魔物も時には役に立つものだな。・・ん?」
マルチェロは床に落ちている杖を拾い上げた。
煉獄塔の牢獄に入れられた主人公達とニノ大司教。
「ここは煉獄島じゃ。大罪を犯した者達を死ぬまで閉じ込めておく監獄。」
「一度中に入ったら二度と生きては戻れん。」
「・・マルチェロは悪どい男だが、あの常人ならざる意志の強さと剣の腕はわしも認めざるをえん。」
「わしは奴を利用して上手く立ち回り、次期法皇の座を我がものにしようと思っておった。」
「わしに逆らう者達をマルチェロに始末させ、そうしてただわしは待っておれば良い。」
「ただ地ならしをして、あとは待つつもりだったんじゃ。」
「まかさこんな事になってしまうとは。このわしがあんな若造に。」
ニノ大司教の後悔の嘆きはいつまでも続いた。
いつしか眠りに落ちた主人公は不思議な夢を見た。
それは一人の少年と少女が出会った遠い日の記憶。
幼い頃のミーティアは母親の死を受け入れられずにいた。
城を抜け出し森の中を泣きながら一人で歩いていると、茂みからトーポが現れた。
トーポを追いかけて行くと、その先に幼い頃の主人公が倒れていた。
「まあ、ひどい熱!お願い、目を開けて!」
主人公はミーティアに揺さぶられても目を覚まさない。
ミーティアは走って城に戻り、助けを呼んだ。
ミーティアのおかげで助かった主人公。
「良かった、気付いたのね。心配しないで。もう大丈夫よ。」
目を覚ました主人公の手をミーティアはしっかりと握っていた。
と、そこで目が覚めた。
煉獄島に捕らわれてから何も出来ぬまま時間だけが過ぎていった。
看守達が話をしている。
「聞いて驚くなよ。何と、法皇様がひと月前にお亡くなりになったそうだ。」
その話を聞いたニノ大司教が嘆く。
「何という事じゃ。法皇様がひと月も前にお亡くなりになっていたとは。」
「法皇様が亡くなられたのは、ちょうどわしらがこの煉獄島に閉じ込められてすぐ後か。」
「マルチェロ・・奴はもしや・・」
「じゃがこの煉獄島に閉じ込められている身では何も出来ることはない。」
「真実を確かめるにはどうにかしてここから出ねばならん。」
「わしに考えがある。皆を集めてくれ。」
ニノ大司教が皆に作戦を説明したあと、看守達に向かって叫び出す。
「誰か、助けてくれ!腹が痛くてたまらん!」
「わしの大事な黄金のロザリオが・・うう、腹が痛い!腹の中に!」
「わしは大事な黄金のロザリオを飲み込んだのじゃ!」
「この煉獄島に連れてこられる時、取り上げられてはならぬとこっそり胃袋の中に隠して・・イテテテ!」
黄金のロザリオにつられた看守達が鍵を開けて牢獄の中に入ってくる。
主人公達はその隙きに看守達をやっつけた。
「よし、今じゃ!」
全員で煉獄島を脱出するためのエレベーターに乗り込むが、レバーを操作する人がいないと動かないようだ。
ニノ大司教がエレベーターを降りた。
「わしが残る。わしはどうせこの煉獄島から逃げ出したところですぐに教会の者共に見つかってしまう。」
「ここはわしが引き受けた。だから主人公よ、頼む。わしに代わって法皇様の死の原因を突き止めてくれ。」
「わしは法皇様の死の真相が知りたいのだ!」
ニノ大司教はレバーを操作した。
「必ずやわしに代わって法皇様の死の真相を・・」
主人公達は煉獄島を脱出する事が出来た。
煉獄島を脱出した主人公はマルチェロを追って聖地ゴルドへ向かう。
聖地ゴルドではマルチェロが民衆に演説をしていた。
マルチェロの手には魔法の杖があり、祭壇の背後には大岩に彫られた巨大な女神像がある。
「ご列席の諸侯もご存知の通り、亡くなられた前法皇は数多の祈りと涙とに見送られ、安らかに天に召された。」
「よからぬ噂を立てるものもあるが、まこと天寿を全うされたのだ。」
「しかし、私は次の法皇に即位する気はない。」
「いや、性格に言おう。これまでのような法皇として飾り物にされる気はないのだ。」
「王とは何だ?ただ王家に生まれついた、それだけの理由でわがまま放題。かしずかれ暮らす王とは?」
「ただの兵士には王のように振る舞う事は許されぬ。」
「たとえその兵士が王の器を持っていようとも、生まれついた身分からは逃れられぬ。」
「そう、私もだ。平民の母を持つような身分卑しき者は法皇に相応しくない。」
「教会の誰もがそう言った。良家に生まれた無能な僧どもにしか法皇の冠は与えられぬのだと。」
「いと得高く、尊き前法皇。だが奴が何をしてくれた?余の無常を嘆き、祈る。それだけだ。」
「神も王も法皇も、皆当然のように民の上へ君臨し、何一つ役には立たぬ。」
「だが私は違う。尊き血など私には一滴たりとも流れてはいない。そんなものに意味などない。」
「だが私はここにいる。自らの手でこの場所に立つ権利を掴み取ったのだ!」
「私に従え!無能な王を玉座から追い払い、今こそ新しい主を選ぶべき時!」
「選ぶがいい。我に従うか、さもなくば・・」
マルチェロが主人公を指差す。
「そこにいる侵入者のように殺されるかだ!」
主人公達はレティスの魂のチカラでマルチェロがいる祭壇へ移動した。
「これはこれは。」
「いいだろう。どうあっても私の前に立ちふさがると言うのならば。」
「手始めに貴様にこの手で引導を渡してやろう!」
主人公達は襲いかかってくるマルチェロを倒した。
「何だと・・この私が・・」
魔法の杖のチカラが暴走する。
「礼を言うぞ、主人公よ。」
「ずいぶん手こずらされたが、お前達のおかげでようやくこの肉体を自由に操ることが出来る。」
「この男が法皇、最後の賢者を亡き者にしてくれた今、杖の封印は全て消え失せた。」
「そう、今こそ我が復活の時!」
「甦れ、我が肉体よ!」
魔法の杖から闇の魔力が溢れ出す。
大岩に彫られた女神像が崩れ落ち、ラプソーンの城が出現した。
城は上空に浮上し、空一面を闇で覆い尽くした。
女神像があった祭壇には巨大な穴が空いている。
衝撃で吹っ飛ばされた主人公達が起き上がると、マルチェロがその大穴に落ちそうになっていた。
それを見たククールが駆け寄り、マルチェロを助け出す。
「何のつもりだ?貴様らが邪魔をしなければ暗黒神のチカラを我が手に出来たのだ。」
「だが望みはついえた。すべて終わったのだ。貴様などに助けられてたまるか!」
ククールが言う。
「死なせないさ。虫ケラみたいに嫌ってた弟に情けをかけられ、あんたは惨めに生き延びるんだ。」
「好き放題やって、そのまま死のうなんて許さない。」
「10年以上前だよな。身寄りがなくなった俺が初めて修道院に来たあの日。」
「最初にまともに話したのがあんただった。」
「家族も家もなくなって一人っきりで、修道院にも誰も知り合いがいなくて。」
「最初に会ったあんたは、でも優しかったんだ。はじめのあの時だけ。」
「俺が誰か知ってからは手のひらを返すように冷たくなったけど、それでも俺は忘れたことはなかったよ。」
「また何かしでかす気なら何度だって止めてやる。」
「いつか私を助けたことを後悔するぞ。」
マルチェロは傷ついた身体を引きずりながら何処かへ行ってしまった。
レティスの魂を使いラプソーンの城へ向かう。
城の一番奥に暗黒神ラプソーンがいた。
「待ちかねたぞ。幾度となく我が行く手を遮ろうとした愚かなる者達よ。」
「我こそは暗黒神ラプソーン。この身を取り戻すために、思えばずいぶん長い旅をしたものだ。」
「旅の途中、お互い幾度もの悲しみを味わったな。だが人間よ。今は共に喜び合おうではないか。」
「この光の世界と闇の世界はたった今より一つの世界となり、新たなる神を迎えるのだ。」
「新たなる神の名は暗黒神ラプソーン。」
「さあ、我を崇めよ。身を引き裂くような激しい悲しみを我に捧げるがいい。」
主人公達は襲いかかってくる暗黒神ラプソーンを倒した。
「ぐああ!」
暗黒神ラプソーンの身体は溶岩のように溶け、消えてなくなってしまった。
崩れ落ちていく城を脱出しようと出口に向かうが、暗黒の魔神が現れ主人公達に襲いかかってくる。
主人公達は暗黒の魔神を倒し、レティスの魂を使って外に脱出した。
すると目の前に巨大な身体を手に入れた暗黒神ラプソーンが現れた。
「何というチカラか。」
「我が魂はついに最強のチカラを持つ肉体を手に入れた。」
「時は満ちたり。今こそ二つの世界を一つに束ねる儀式を行う時。」
「出でよ、我がしもべたち!この卑しき世界の何もかもを喰らい尽くすがよい!」
暗黒神ラプソーンは光の世界と闇の世界をつなぐ扉を開き、闇の世界の魔物を光の世界に呼び入れた。
そこに神鳥レティスが助けに現れた。
神鳥レティスは主人公達を背に乗せ、神鳥の止まり木まで運んでくれた。
「暗黒神ラプソーンが光の世界と闇の世界をつなぐ扉を開いたおかげで、ようやくこちらの世界に戻れました。」
「しかし闇の世界より多くの悪しき魂がこちらの世界へと送り込まれてしまったようです。」
「このまま捨て置けばこの世界のあらゆる命は悪しき魂によって滅ぼされてしまうでしょう。」
「暗黒神はすでに完全な身体を手に入れてしまいました。もはやあの者を封印することなど出来ません。」
「主人公、暗黒神を倒すのです。」
「今となってはあの者を倒し、永久に消し去るより他にこの世界を救う方法はないのです。」
「とは言ってもあの暗黒神を打ち滅ぼせる可能性はごくわずか。」
「けれどあなたなら。選ばれし特別な血を持つ者であるあなたならば暗黒神にも打ち勝つことが出来るかも知れません。」
「しかし暗黒神の身体は強力な結界により守られています。」
「まずあの結界を打ち破らねば暗黒神に攻撃することさえままならないでしょう。」
主人公は神鳥レティスにやまびこの笛をもらった。
「その笛はやまびこの笛。あの闇の結界を破るために私達はもう一度彼等のチカラを借りなくてはなりません。」
「かつてあの暗黒神を封印した七人の賢者、彼等のチカラを。」
「私には見えます。暗黒神の復活を再び阻止せんとするかつての賢者たちの大いなる意志が。」
「それは七賢者の聖なる力を宿したオーブとなって世界の各地に現れたようです。」
「そのやまびこの笛を使い、世界に散らばったオーブを見つけ出し、ひとところに集めるのです。」
「その笛を吹いた時、近くにオーブがあれば笛の音はやまびことなって響き渡るでしょう。」
「集めるべきオーブは彼等賢者の数と同じ7つ。」
「その全てを集めたら再びここに戻ってくるのです。」
「私もこの世界で探さなければならない物があります。いずれ一度ここを離れます。」
「さあ時間がありません。主人公、急ぎなさい。」
主人公はトラペッタに向かい、占い師ルイネロを訪ねた。
「ふん、どうやらこの町に来たついでに顔を見せに来たとかではないようだな。」
「まあ他ならぬおぬしだからタダで占ってやるが、本来なら相応の代金をもらうところなのだぞ。」
ルイネロが占いを始めると、水晶玉にマスター・ライラスとドルマゲスが映し出された。
マスター・ライラスが何かの薬を作っている所にドルマゲスがやって来た。
「私にもそろそろ魔法を教えていただけないでしょうか。」
マスター・ライラスが言う。
「またその話か、ドルマゲス。前にも言ったろう?お前にはまだ早いと。」
「それより外の掃除はもう終わったのか?先にそっちをやらんか。」
ドルマゲスは一人で落ち込んでいる。
「はあ・・師匠に弟子入りしてもう何年も経つのにいつまでたってもつまらない雑用ばかり。」
「使える魔法と言えば独学で覚えたちゃちな手品くらいだ。」
「どうすればまともな魔法が使えるようになるんだろう。」
ドルマゲスはマスター・ライラスの書斎に忍び込み、とある文献を発見した。
「む?これは・・」
「なになに、トロデーン城に封印されし伝説の杖についてここに記す・・」
「・・これだ!この杖さえあれば私も魔法が使えるように・・」
ドルマゲスはマスター・ライラスの家を飛び出し、トロデーン城に向かった。
トロデ王に手品を見せ気に入られたドルマゲスは、夜に封印の間に忍び込み、魔法の杖を手に入れた。
魔法の杖でトロデーン城にイバラの呪いをかけた後、マスター・ライラスの所へ戻る。
「ドルマゲスか?今まで何処に行ってたんだ?」
「昨日は悪かったな。わしも少し言い過ぎた。」
「それより喜べ。長年研究していた薬がもうすぐ完成するところだ。」
「この薬を飲めば、お前に眠る魔力の才能を目覚めさせることが出来るはずだ。」
「そうすれば努力次第でお前も大きな魔法が使えるようになるぞ。」
ドルマゲスはマスター・ライラスを背後から襲い、杖で一突きにして殺してしまった。
「悲しいなあ。悲しいなあ。」
その後ドルマゲスはマスター・ライラスの家に火を放ち、トラペッタを後にした。
それを見ていたトロデ王が言う。
「こうなると分かっておれば、あの時ドルマゲスの奴めを城に入れんかったのに。」
「しかしライラスとはなんとも不器用な男だったんじゃな。」
「奴の思いがドルマゲスに少しでも通じておればまた違った結果になっておったろうに。」
マスターライラスの家の焼け跡でパープルオーブを見つけた主人公は、リーザス村にあるゼシカの屋敷に向かった。
ゼシカが母親のアローザと話をする。
「ゼシカ?いつ戻ったのです?」
「ついさっきよ。だけどまたすぐに行かなくちゃいけないの。」
「サーベルト兄さんの仇討ち、私にとってはまだ終わってないの。だからごめんなさい。」
アローザが言う。
「もういいわ。あなたの気が済むまで好きなようになさい。」
「けれど気が済んだなら、必ずこの村に戻ってくるのよ。」
「主人公さん。あなたにお渡ししたいものがあります。」
「あの子の、サーベルトの鎧です。どうか旅のお役に立てて下さい。」
「その方がきっと、あの子も喜ぶでしょうから。」
主人公はサーベルトの鎧を受け取った。
その後、リーザスの塔の最上階にあるリーザス像の前でブルーオーブを手に入れた主人公は、やまびこの笛を使い「ゴールドオーブ」「イエローオーブ」「レッドオーブ」「グリーンオーブ」「シルバーオーブ」を集めた。
7つ全てのオーブを集めた主人公は再びレティスの止まり木に戻ってきた。
「さあ、私が見つけてきたこの世界の最後の希望をあなた達の手に託しましょう。」
神鳥レティスは秘宝の杖を主人公に渡した。
「心配はいりません。暗黒神ラプソーンの魂はすでにこの杖には宿っていません。」
「そればかりか、今この杖の中には七人の賢者たちの魂が眠っているのです。」
「それよりこの杖の名は長い時の間にいつの間にか失われてしまったようですね。」
「この杖はかつて私がこの世界の人間に作り方を授け、七賢者が作り上げたものです。」
「彼等はこの杖のことをこう呼んでいました。」
「神鳥の杖と。」
「闇の結界を取り払うためにあなたたちはこの神鳥の杖を手に取り、暗黒神に立ち向かうのです。」
「私があなた達を背に乗せて暗黒神のもとに運びます。」
「暗黒神はきっと激しく攻撃してくるでしょう。」
「しかしあなた達はその攻撃に耐えながら、杖に向かってひたすらに祈るのです。」
「その時賢者の魂はひとつ、またひとつとオーブに宿りゆき、救いの手を差し伸べるでしょう。」
主人公達は神鳥レティスの背に乗り、暗黒神ラプソーンの元に向かった。
暗黒神ラプソーンの前で神鳥の杖に祈りを捧げると、ラプソーンを覆っていた闇の結界が消えた。
「うおおお!おのれ!どこまでも目障りな虫ケラ共が!」
「我が闇の結界を払い除けた事を地獄の底で後悔するがいい。この肉体の真のチカラを見せてやろう!」
「決してなお消えぬほどの永遠の恐怖をその魂に焼き付けてくれるわ!」
主人公達は襲いかかってくる暗黒神ラプソーンを倒した。
暗黒神ラプソーンの身体は光と共に爆発し、消滅した。
神鳥レティスが言う。
「勇者たちよ。あなた達の強さと何が起きても諦めない心。しっかりとこの瞳に刻みつけました。」
「かつての七人の賢者の時もそうでした。あなた達人間にはいつも驚かされます。」
「さあ帰りましょう。あなた達の仲間が首を長くして帰りを待っています。」
神鳥レティスがトロデーン城まで送ってくれた。
トロデ王が主人公達を出迎える。
「おお、お前達!よくぞ戻った!」
「お前達の勇姿はわしも見ておったぞ。さすがは我が家臣!いや、まったくもって立派じゃった!」
神鳥レティスが旅立とうとしている。
「この世界はもう心配ありません。私はまた新しい世界へと旅立ちます。」
「私は神ではありません。レティスという名前はあなた達人間がそう名付けただけのものです。」
「私が生まれた世界では違う名で呼ばれていました。」
「そう、あの世界では確か・・ラーミアと。」
「それでは行きます。さようなら、勇敢な人間達。あなた達に出会えて良かった。」
神鳥レティスは神鳥の魂と共に何処かへ飛んでいった。
突然トロデ王の身体が光り始める。
「おお・・これは・・!」
トロデ王の身体がついに、魔物から人間の姿に戻った。が、見た目はあまり変わっていない。
「戻った・・?ぬおおー!戻った!元の姿に戻ったわい!」
ミーティアも馬から人間の姿に戻っている。
「みんな・・」
トロデ王が泣いている。
「良かった!良かった!ついに呪いが解けたんじゃ!これでもう何もかも元通りじゃ!」
トロデーン城全体が光りに包まれ、城を覆っていたイバラの呪いが解けた。
植物にされていた城の人々も皆、元通りの人間の姿に戻った。
「たった今よりトロデーン城は復活じゃ!皆の者!宴じゃ!宴の準備じゃ!」
数カ月後・・
近衛隊長となった主人公の元にヤンガスとゲルダがやって来た。
「へへっ、久しぶりでがす。最後の戦い以来でがすなぁ。」
ゲルダが言う。
「アンタ、あれ以来何の音沙汰もなかったろ?」
「おかげでヤンガスの泣き言がひどいもんだったよ。」
「兄貴、アッシのことなんか忘れちまったんでげすかね~って、わざわざあたしのアジトまで来てさあ。」
ヤンガスは慌てた様子であたふたしている。
「ところで兄貴、聞いたでがすよ。何でも近衛隊長になったとか。今の兄貴は光って見えますよ。」
「そんな兄貴の初仕事をアッシが手伝えるなんて、弟分として光栄でがす。」
「今回の兄貴の仕事は馬姫様を・・あ、いけね!もう馬じゃねーんだ。」
「ミーティア姫様を結婚式が行われるサヴェッラ大聖堂まで護衛してゆくんでがすよね。」
「けど意外でがすよ。あんなことがあったのに、まだチャゴス王子との婚約がいきてたとは。」
「そうそう、ここに来る途中、大臣に言伝てを頼まれたでがすよ。」
「出発の用意は整ったから部屋にいるミーティア姫を兄貴が連れてきてくれって。」
「そいじゃアッシ達は城の中庭で待ってるでがすよ。」
主人公は3階にあるミーティアの部屋に向かう途中でククールに出会った。
「よお。主人公。あれ以来だな。連絡をもらったから早速参上したぜ。」
「姫様の護衛をするんだってな。」
「ヤンガスとはさっきここですれ違ったけど、相変わらずだったなあ。」
「お前の仕事の付き添いってのは面倒くさいけど、こんな時でもなきゃみんなの顔が見られないものな。」
「ところでお前、この結婚に納得してんのかね。もし嫌だったらやめちまえばいいのによ。」
「聖堂騎士団を抜けて自由になった俺みたいにさ。」
「んじゃ、主人公。俺は中庭で暇を潰してる。用が済んだら来てくれ。」
主人公が3階に上がると、ゼシカと出会った。
「あ、主人公。久しぶり!元気だった?」
「聞くまでもなく元気そうね。主人公ったらちっともリーザス村へ遊びに来てくれないんだもん。」
「あの後ね、何処かで一人で暮らそうと思ったんだけどお母さんが心配で、結局リーザス村へ戻ったの。」
「兄さんの墓のこともあるし。それにあそこにいればみんなと連絡が取りやすいと思ってね。」
「え?ミーティア姫を連れに来たの?そう、もう出発なのね。」
「それじゃ、私は先に中庭に行ってるからね!」
ノックしてミーティアの部屋に入ると、ミーティアは一人でピアノを弾いていた。
「ここでこうしてピアノを弾くのも最後になるわ。」
「サザンビークにもピアノがあるのかしら。」
「あ、主人公、来てくれたのね。もう出発の時間かしら?」
「あなたに来てくれるように大臣に頼んだのは、出発前にあなたと城を歩きたかったからなの。」
「少し早いけど、あなたにもきちんとお別れを言わなくてはね。今まで尽くしてくれてありがとう。」
「トロデーンで過ごした日々はミーティアにとって一生の宝です。」
「サザンビークへ嫁ぐことでミーティアも王族としての義務を果たします。だからあなたも、この先もどうかお父様に仕え、トロデーンのために今まで通り尽くして下さい。」
「では行きましょうか。あまり皆を待たせては悪いものね。」
主人公は大臣と仲間達と共にミーティアをサヴェッラ大聖堂まで送り届けた。
「おお、ここがサヴェッラ大聖堂か。王族の結婚式を行うのに相応しい場所ではないか。」
「ご苦労であったな、主人公。おぬしの任務はここで終わりだ。」
「あとはこの辺りで宿でもとって、明日トロデーンに戻るが良かろう。」
大臣の言葉にミーティアが驚く。
「え?主人公はこのミーティアの式に参列するのではなかったのですか?」
大臣が言う。
「残念ながら姫様、この者達の席までは・・」
そこへチャゴス王子が出迎えにやって来た。
「これはこれは、はじめまして。サザンビークの王子、チャゴスでございます。」
「おお、あなたがミーティア姫ですね。なんとも美しい。」
「この一瞬で僕の中にある数々の美女との思い出が全て色あせてしまった。」
「あなたのような方を我が妻に迎えられて、このチャゴス、世界一の幸せ者です。」
ヤンガスが言う。
「久しぶりでがすな、王子。そんなキザったらしい台詞が言えるなんて驚きでがすよ。」
チャゴス王子が驚く。
「やや、お前達は!王者の儀式の時の旅人ではないか。」
「ふん、おおかた噂を聞きつけ、見物にでも来たのだろう。残念だったな。お前達が来られるのはここまでだ。」
「可愛い姫が僕の妻になるその神聖な儀式にお前達平民風情を招待するわけにはいかないからな。」
「せめてお前達が金持ちか貴族だったら招待してやれたんだがな。ぶわぁーはっは!」
宿屋に引き上げた後もククールの怒りがおさまらない。
「全くあの野郎!何が平民風情は式に招待できないだ。ムカつくぜ。」
「王者の儀式からだいぶ経ったが、あの様子じゃ相変わらず性根は腐ったままだな。」
「でも明日になれば姫様はあいつと結婚か。なあ、主人公。本当にいいのか?俺は姫の幸せを守るのも近衛隊長の仕事だと思うんだがな。」
次の日の朝、ヤンガスに起こされて主人公は目を覚ました。
「おはようごぜえやす、兄貴。もうじきミーティア姫様の結婚式が始まるでがすよ。」
「折角ここまで来たんだし、式に出れなくてもせめて近くまで行ってみましょうや。」
「じゃ、アッシは一足先に式場の大聖堂の前へ行ってるでがすよ。」
サヴェッラ大聖堂の前に行くと、ククールとゼシカも来ていた。
「やっと来たか、主人公。もう結婚式は始まってるようだぜ。」
「あんだけ人が多けりゃよ、どさくさに紛れて何かやらかしても大丈夫なんじゃねーかな。」
「俺達は仲間だ。お前が何かするつもりならチカラを貸すぜ。」
ゼシカが言う。
「ミーティア姫様も頑固よね。いくら先代の約束でも嫌ならやめればいいのにって私は思うんだけどね。」
「一国の姫君ともなるとそういうわけにもいかないのかな。」
サヴェッラ大聖堂の前に行くとヤンガスが待っていた。
ヤンガスは扉の前で見張りをしている聖堂騎士団員に体当たりをした。
「オリャー!」
「ここはアッシに任せて兄貴は行ってくだせえ!」
主人公はサヴェッラ大聖堂の中に入った。
ミーティアがまだ来ていないようで、チャゴス王子は苛々した様子だ。
正面の扉から堂々と中に入ってくる主人公にチャゴス王子が驚く。
「何のつもりだ貴様!僕の結婚式を台無しにするつもりか。」
「ええい、くそ!衛兵!今すぐそいつをつまみ出せ!」
そこへ聖堂騎士団員が走ってやって来た。
「諸侯の皆々様方、失礼致します。クラビウス王へ急ぎの報告があり参上致しました。」
聖堂騎士団員がクラビウス王に耳打ちする。
クラビウス王が驚いた様子で立ち上がる。
「花嫁が・・ミーティア姫が、逃げたそうだ。」
驚いたチャゴスが主人公に言う。
「そうか、そうだったのか。分かったぞ、お前だな!お前の仕業なんだな!」
「結婚式を邪魔するために姫を逃したのはそいつだ。」
「今すぐ引っ捕えろ!」
主人公は聖堂騎士団に囲まれてしまうが、ヤンガスが助けに来てくれた。
ヤンガスと一緒にサヴェッラ大聖堂を出るとククールが主人公を呼ぶ。
「おーい!大変だ!急いで来てくれ、主人公。」
「下でトロデ王とミーティア姫様が兵士共に囲まれているぞ!」
仲間達が聖堂騎士団を食い止めている間に、主人公はトロデ王とミーティアの元に駆けつけた。
「おお、主人公。いい所に来おったわい。お前なら来てくれると信じていたぞ。」
「今すぐミーティアを連れてここから逃げてくれ!」
「やはりチャゴス王子なんぞに可愛いミーティアをやれんわい。」
「もはや国の面子などどうでもいいわい。だからお前はミーティアを連れて逃げてくれ!」
主人公が純白のウエディングドレスを着たミーティアに駆け寄る。
「王家のかわした古い約束に従って大人しく結婚するのが運命なのだと諦めていました。」
「それが王家に生まれた者の定めなんだとミーティアはそう思っていました。でも、嫌なものは嫌です!」
「あんな王子と結婚するくらいならお馬さんのままの方が良かったくらい!」
「やっぱり自分の気持は騙せませんわ!」
「さあ主人公!この手を取って一緒に逃げて!ミーティアをここから連れ出して!」
主人公はミーティアの手を取って、二人で走り出した。
仲間達も聖堂騎士団を全てやっつけた後、主人公達を追いかける。
チャゴス王子が一人取り残されている。
「おめおめと取り逃したのか!ええい、この役立たず共が!」
「たった数人を相手に何だこのざまは!聖堂騎士団はデクの棒の集まりか!」
その様子を黙って見ていたクラビウス王が言う。
「ならば今すぐ追いかけて自分の手で花嫁を取り返してこい。」
「お前はいつもそうだな。王子という身分に甘え、金や権力で全てを解決しようとする。」
クラビウスは主人公が渡したアルゴンハートを懐から取り出してチャゴス王子に見せた。
それを見たチャゴス王子は何も言えなくなり、ガックリと項垂れた。
サヴェッラ大聖堂の外にあるパレード用の馬車に乗り込み、トロデ王とミーティア、主人公の3人はトロデーン国に帰っていった。
その様子を仲間達がいつまでも笑顔で見送っていた。
無事トロデーン城に戻ってきたトロデ王が言う。
「思えば長い旅路であったな。」
「色々あったがまあ、これで良かったのじゃろう。」
「大切なのは古い約束よりも、今こうして生きていることじゃ。」
「ミーティアの相手はミーティア自身で見つけるがよい。わしはいつまでも待っているぞ。」
「しかし結婚式を逃げ出すような姫を今後もらってくれるような男が現れるかどうか・・」
ミーティアが主人公と手をつなぎながら城を指差す。
「お父様、そんなことより、ほら!」
トロデーン城の人々がトロデ王とミーティア姫の帰還を喜び、大勢で駆け寄ってきた。
数日後、主人公は仲間達を集めベルガラックの南東にある高台へ向かった。
高台にある遺跡の前に行くと竜の紋章が赤く光りだす。
主人公が光る紋章を調べると竜神への道にワープした。
竜神の道を道なりに進んでいくと、竜神族の里に着いた。
竜神族の里の中に入ると主人公の上着のポケットに入っていたトーポが飛び出し、何処かへ行ってしまった。
しばらくすると老人がやって来た。
「よく来なさったな。ここは人と竜、二つの姿を持つ種族、竜神族の住む里じゃ。」
「わしは竜神族の長老が一人、グルーノと申す者。この里でのお前さん達の案内役じゃ。」
「何せこの里を人間が訪れるのは何百年ぶりのことじゃてのう。」
「我等の中にも人間を見て驚く者がいるじゃろうからわしが付き添おうというわけじゃ。」
「窮屈なこととは思うが、まあ我慢して下されよ。」
竜神族の里は荒れ果てていて、それを見たグルーノが驚く。
「これは・・どうしてこんなに荒れ果てておる?わしが旅立った時にはこんなでは・・」
竜神族の里にいる男性に話を聞く。
「お前達ひょっとして人間なのか?」
「いや、そんなことはもうどうでもいいことだったな。滅びゆく我等にとっては・・」
グルーノが男性に聞く。
「おぬし、どうしたのじゃ?一体この里に何が起こったと言うのじゃ?」
男性がグルーノの姿を見て驚く。
「あなたはグルーノ老?そうか、戻ってきたのですね。」
「しかしこんな時に帰ってくるとはあなたも運がない。竜神族の最後を見届けることになるのだから。」
竜神族の女性に話を聞く。
「若い者も老いた者も全ての竜神族はその生命力を少しずつ奪われ続けているのです。」
「あんなに元気だった私の父もすっかり身体が弱って寝たきりになってしまって。」
「一体どうしてこんな災を呼び寄せてしまったのでしょうか。竜神王様があんなことになるなんて。」
女性の家の2階で寝ている老人に話しかける。
「おのれ!どうしてこの里に人間が入り込んでいる?」
「グムム。わしがこんな身体でなければ今すぐ竜となって叩き出してやるのに。」
グルーノが老人に言う。
「やれやれ、寝込んでいても人間嫌いは相変わらずのようじゃな。」
グルーノの姿を見て老人が驚く。
「お前はグルーノ!さては人間達を里に招き入れたのはお前だな!」
「この竜神族の裏切り者め!お前がそんなことだから、お前の娘もあんな過ちを犯すのだ!」
グルーノが言う。
「過ちか。本当にお前さんは相変わらずだな。」
「さあ主人公。こんな石頭のことはほっといて何処か他所へ行くとしよう。」
「病人をあまり興奮させるものでもないしな。」
長老たちが集まる場所にグルーノが入って行く。
「何事だ?今は長老会議の最中じゃぞ。」
「ん?そなたはグルーノ老ではないか。よく帰ってきたのう。」
グルーノが言う。
「うむ。いや、そんな事よりこの里の荒れようはどういう事か誰か説明してくれぬか。」
「そうか。あの儀式が行われたのはおぬしが里を出ていった後じゃったな。」
「よかろう。ではあれからこの竜神族の里に何が起こったのか教えてやろう。」
「おぬしが旅立った後、すぐに我等が王である竜神王様は一つの決定を下されたのじゃ。」
「それはわれら竜神族が持つ二つの姿のうち人間の姿を封じる儀式を行うというものじゃった。」
「竜神王様はまず自らの身で封印の儀式を試すべく、天の祭壇へと向かわれたのじゃ。」
「そして儀式は完成し竜神王様は完全なる竜となった。」
「だがその儀式は失敗じゃった。おぬしも知っての通り、わしらが竜のままでいるのは激しく消耗する。」
「封印の儀式とはその消耗する体力を周囲の者、とりわけ同じ竜神族から吸収していくというものじだったのじゃ。」
「こうしてわしらは竜神王様に体力を吸収され続け、竜神族の里は見る間に荒れ果てたという訳だ。」
「儀式の失敗に気付いた我々は竜神王様の元へ行き、封印を解いて下さるようお願いした。」
「しかし竜の姿のままでいることは竜神王様のお心にまで悪影響を及ぼしておったのじゃ。」
「わしらが天の祭壇で見たものはすでに正気を失われ、凶暴な魔獣と化した竜神王様じゃった。」
「竜神王様に攻撃されて、わしらは為す術もなく逃げるしかなかった。」
「これがこの竜神族の里に起こった災の全てじゃ。どうじゃ、納得がいったかね?」
「ところでグルーノよ。先程から気になっていたのだが、おぬしの同行者を紹介してくれぬか?」
「どうやら人間のようだが。いや、別に人間を里に入れたことを咎めようという訳ではないのだ。」
グルーノが主人公達を紹介する。
「この者達は暗黒神ラプソーンを討ち滅ぼした最強の戦士達じゃ。」
「竜神王様に勝ちうる最強の戦士が必要なのじゃろう?」
「ならば主人公達こそが適任じゃろう。何しろ神鳥レティスに認められた勇者達なのだからな。」
「なあ主人公よ。ここは一つわしの顔を立てると思って竜神王様と戦ってはもらえんじゃろうか。」
「これは竜神族の者達に人間の事を認めさせる良い機会でもあるのじゃ。」
「二つの種族の未来のためにもどうか頼まれてくれ。」
グルーノの家にいる竜神族の女性に話を聞く。
「この里に来る途中にある古いお墓。あれはウィニアお嬢様が愛された人間の殿方のものなんです。」
「その殿方はきっと、人間界から連れ戻されたお嬢様を追って来られたのでしょうね。」
「でもこの竜神族の里は人間界からはあまりにも遠く、その方は道半ばで力尽きてしまわれたのです。」
「それを知った時のお嬢様の悲しみようはとても見ていられないものでしたわ。そのお嬢様も今は亡くなられ・・」
「グルーノ様は今もお嬢様とその方の仲を引き裂いてしまったことを深く悔やんでらっしゃるのです。」
主人公達は天の祭壇へと向かい、竜化して暴走している竜神王を倒した。
竜神王は人間の姿に戻り、正気を取り戻した。
「私は何をやっていた?人の姿を封じる儀式からずっと、まるで長い悪夢を見ていたようだ。」
「人間が何故ここにいる?」
「いや、覚えているぞ。そうだ。お前達が正気を失った私を救ってくれたのだ。」
「勇敢なる人間達よ。礼を言おう。お前達が止めてくれなければ、私は我が一族を滅ぼすところであった。」
「人間の姿を捨てようとして人間に助けられるとは。私の行いは誤りであったということか。」
竜神王が主人公の姿に気づく。
「お前は・・お前はもしかしてあの時の主人公なのか?」
「お前が私を・・竜神族を救ったと?何と宿命的な。」
「そうか、主人公はまだ自らの出生の秘密を知らぬのだな。いや、思い出していないと言うべきか。」
「主人公よ。お前は竜神族の里で生まれ育った竜神族と人間、双方の血を引く者なのだ。」
「詳しい話はそうだな、お前の祖父から聞くのが良かろう。」
「グルーノよ。そこにいるのは分かっているぞ。観念して出てくるがよい。」
主人公の上着のポケットに入っていたトーポが飛び出し、グルーノに姿を変えた。
「やはり竜神王様の目は誤魔化せませんな。全くお恥ずかしい限りで。」
「主人公よ、今までずっと黙っていてすまなんだな。」
「わしがお前の祖父、そしてお前と共にずっと旅をしてきたネズミのトーポの正体なのじゃ。」
「ふむ、どうやら驚かせてしまったようじゃな。まあ、無理も無い事じゃが。」
「ともかくお前の出生と竜神族の関わり、その全てを語らねばなるまい。」
「主人公よ、まずはお前に渡したいものがある。」
主人公はグルーノからアルゴンリングを渡された。
「それはお前の母、ウィニアの形見。そしてお前の父エルトリオからウィニアに贈られた物なのじゃ。」
「その指輪にはめられた宝石にはお前も見覚えがあるのではないか?」
「そう、それはアルゴンハート。お前の父親は20年前に姿を消したサザンビーク国のエルトリオ王子なのじゃ。」
「我が娘ウィニアは持ち前の好奇心から人間界を訪れ、そこで偶然エルトリオ王子と出会った。」
「やがて二人は互いを深く愛し合うようになる。」
「それを引き裂いたのは他でもない、このわしなのじゃ。」
「その時はそれが正しいと思っておった。人間と竜神族とでは幸せになれるはずがないと。」
「だが結局わしの決断は自分の娘を不幸にしただけじゃった。」
「ウィニアを連れ戻してから程なくして竜神族の里の側で人間の亡骸が発見された。」
「それはエルトリオじゃった。ウィニアを追ってこの里を目指した彼は、今少しの所で力尽きたのだ。」
「そのことを知った娘は深く深く悲しみ、悲嘆のあまり徐々に身体を弱らせていった。」
「そしてその時すでにウィニアはエルトリオの子、主人公、お前を身ごもっておったのじゃ。」
「その事に気付いたウィニアは周囲の反対を押し切って生むことを決めた。」
「だが衰弱していた娘の身体が出産に絶えられるはずもなく、お前を産んだウィニアはそのまま命を落としてしまった。」
「こうして生まれてきた人間と竜神族の血を引く主人公をどうすべきかが長老会議で話し合われた。」
「何年にも渡る長い議論の末決められたのは、まだ幼いお前の記憶を封じ、この里から追放することだった。」
「無論わしは必死に反対したよ。だが一度下った決定が覆ることはなかった。」
「このときばかりはわしも自らの無力さを呪ったものじゃよ。」
「やがて会議で決められた通り、お前は竜神王様の手によって記憶を封じられ里を追放された。」
「だが可愛い孫を、ウィニアの忘れ形見を見捨てることなどわしにはとても出来なかった。」
「わしは竜神王様に願い出て人間界へ追放されたお前を追いかける許しを頂いたのじゃ。」
「そのための条件は、姿をネズミに変え、決して主人公と話してはならぬという厳しいものじゃった。」
「だが本当なら人間界で両親と共に幸せに暮らすはずだったお前に背負わせた苦労を思えば・・」
「そうすることがお前に対する償いになるとは思わんが、わしは迷わずネズミとなってお前を追いかけたのじゃ。」
「これがわしに話せる全てじゃ。今まで黙っていて本当にすまなかった。」
「不甲斐ないこの老人を許してくれ。」
「その指輪じゃが、これからはお前が持っていてくれ。」
「その方がウィニアも、お前の母も喜ぶであろうからな。」
「わしはこれからもネズミのトーポとして同行させてもらうとしようかの。」
「嫌と言われてもついていくぞ。ここまで来たらお前さん達の旅、最後まで見届けんわけにはいかんからな。」
竜神王が言う。
「我等の誤った判断のせいで主人公には苦労をかけてしまったな。改めて詫びよう。」
主人公はサザンビーク城に行き、クラビウス王にグルーノから貰ったアルゴンリングを見せた。
「この指輪は!アルゴンハートを石に使ってるな・・どこで手に入れたのだ?」
主人公は事情を説明した。
「ううむ、さすがのわしも頭が混乱してきそうだ。」
「だがお前が我が兄エルトリオの息子だと言う話は本当のようだな。」
「でなければ身内しか知り得ない事情をそこまで知るよしもないであろう。」
「思えばもし兄が国を捨ててお前の母を追いかけて行かなければ、今頃は兄がサザンビークの王のはずだ。」
「そしてお前が王子として生まれていれば、ミーティア姫と結婚するのはお前だったかも知れん。」
「だが今さら何を言おうがそれらは全てもしもの話しだよ。」
「王位継承権を持つ者が新たに加われば国が乱れるであろう。それが分からぬお前ではあるまい?」
「お前に野心が無いことくらい分かっておる。」
「聞けばお前はミーティア姫と幼少の頃からの付き合いらしいが、やはりお前はミーティア姫のことを好いておったのか?」
「結婚したいほどミーティア姫のことを好いておったと言うのか?」
主人公は頷いた。
「少し長くなるが、これはチャゴスの祖父、つまりわしの父である先王が王子だったことの話だ。」
「先王が諸国漫遊の旅をする最中、トロデーン国の姫君と出会い恋仲になった。」
「しかし当時のサザンビークとトロデーンは犬猿の仲でな。」
「それ故トロデーンの姫君を妻に迎えたいという先王の望みは周囲の猛反対で叶わなかったのだ。」
「結ばれることのなかった二人は、将来お互いの子供を結婚させようと約束した。」
「しかし先王もトロデーンの姫君も男児ばかりに恵まれてな。」
「とうとう二人は約束を果たせずに亡くなってしまった。」
「わしは亡き先王とトロデーンの姫君の代わりに二人の約束を果たそうと考えた。」
「そしてトロデ王にチャゴスとミーティア姫の結婚を申し出た。」
「話は以上だ。もう帰るがよい。」
その後、主人公とミーティア姫はトロデ王の許しを得て結婚した。
「いろいろあったがまあ、これで良かったのじゃろう。」
「にしても世が世なら、お前がサザンビーク王家の正当なる後継者であったとは。」
「運命とは不思議なものじゃの。」
「さて、婆様達がかわしたという古い約束などもういいじゃろ。」
「後のことはお前達自身で決めるがよいぞ。」