ゲーム ネタバレストーリー まとめ

ゲームのストーリーを詳細にまとめています。続編をプレイする時などに役立てて下さい。このブログにはネタバレ要素が多く含まれています。

ジャッジアイズ 【JUDGE EYES】― 死神の遺言― チャプター9「夢の薬」

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翌朝、星野が八神に会いに来た。
「なんか昨夜は大変だったんですね。」
「で、羽村の黒幕は生野だったってことなんですよね?センター長の木戸でなく。」
「アドデック9に詳しい人を見つけたんです。」
「この先、事件を追うなら僕らもよく知っておかないと。」
「とはいえ科学論文なんか僕らが見てもよくわかんないですよね。」
「そこをわかりやすく解説してくれるって人がいて。」
「ただ、怒らないでくださいね。」
「実はその人、服部さんなんです。例の雑誌記者。」
「服部さんはアドデック9の記事も書いてるし、何人も専門家に取材したとかで相当詳しいみたいです。」
「八神さんが是非にと言うことなら教えて差し上げるって。」
「もしかしたら重要な情報があるかもしれないじゃないですか。」


八神は服部に会いに行った。
「一般的に新薬の開発というのは、まずその病気に効く化合物を見つけることから始まります。」
「それが新薬の候補になるわけです。」
「その効果を動物実験で試しパスすればようやく臨床試験。」
「臨床試験というのは、要するに人体実験のことですね。」
「場合によってはもっと長い時間をかけて効果や安全性を確認し新薬として製品化されます。」
「これまでのアルツハイマー治療薬はあくまで病状の進行を遅らせるものです。」
「しかし木戸博士のアドデック9はマウス実験で目覚ましい効果を上げたんです。」
「もしそれが人体にも有効なら人類はアルツハイマーを治すことができる。」
「1年前の論文はつまりそういう内容だったわけです。」
「今日本では80歳を過ぎると4人に1人は認知症です。」
「例えば50代の夫婦がいたら、それぞれの両親のうち1人が発症する計算です。」
「さらにその30年後、自分か配偶者が認知症になっている確率は2つに1つ。」
「認知症は誰にとっても他人事ではありません。」
「いずれ自分にそれと疑わしい症状が出たら、あたしならすぐ診察を受けますね。」
「なかにはうまく症状の進行を抑えながら仕事を続けている人もいます。」
「認知症は恐れるのではなく、備えるべき病気です。」
「そのとき一番の敵は、社会の無理解と無関心でしょうね。今のあなたのように。」
「ではまず八神さんにはアルツハイマーの概要を知って頂きますが、聞く気はありますか?」
「前提として認知症にはいくつかタイプがありますが、その7割がくだんのアルツハイマー病です。」
「脳にアミロイドベータというタンパク質が蓄積することで発症すると言われています。」
「すると神経細胞が死滅し、徐々に脳が萎縮してしまう。」
「ただそれさえ仮説の域を出ません。」
「アルツハイマーにはまだわからないことが多い。」
「脳が萎縮すると記憶に支障が出ます。」
「そもそも記憶には銘記、貯蔵、検索というプロセスがあります。」
「ひとつあたしが印象的に思った例をあげましょうか。」
「ある認知症患者に日付を聞いた時、今日は何月何日と正しい答えが帰ってきました。」
「ところが今が西暦何年かと聞くと、1952年かな、など何十年も前の年を答えることがあるそうです。」
「認知症では、そういった記憶の混濁がみられるというわけです。」
「論文によると実験マウスに投与されたアドデック9はオートファジーと呼ばれる細胞の自食作用を引き起こします。」
「自分のタンパク質を自分で分解する作用。」
「自分を食べると書いて自食です。」
「その作用で脳に溜まるタンパク質であるアミロイドベータが瞬時に分解されるんです。」
「そのアミロイドベータが消えた結果、マウスのアルツハイマーは完全に進行しなくなりました。」
「しかも驚いたことに、死滅していたはずの脳細胞が一部機能を回復したんです。」
「ある科学者はそれをまるで脳の非常電源が入ったようだと言いました。」
「もしこの作用を人体に対しても起こせたら、アルツハイマーを治せる。」
「患者は世界に数千万人。今も着々と増え続けています。」
「アドデック9が完成すれば、間違いなく莫大な利益を生むでしょうね。」
「売る方にも買う方にもまさに夢の薬です。」
「アドデック9は論文発表後、マウスで何度も検証されていますし、それを裏付けるデータも揃っています。」
「あの新薬はすでに科学的に証明された存在なんです。」
「むしろあたしは論文に多少の粗があってもどんどん開発を進めるべきだと思いますね。」
「認知症治療薬は世界中で開発が進められています。」
「もしよそに先を越されたら国家的な損失ですから。」
「木戸さんは慎重すぎますよ。」
「いつまでも動物実験してる場合じゃありません。」
「すぐにでも臨床試験に入っていい。」
「ただ、これは強いて言えばの話ですけど、アドデック9の論文は筆頭筆者が木戸さんとされています。」
「が、じつは論文に箔をつけるために名前を貸しただけみたいですね。」
「研究の実質的なキーマンは別にいて、ほら、あなたもご存知の生野という研究員です。」
「アドデック9は生野研究員が創ったようですね。」
「まあ、単なる研究員の論文では誰にも注目されません。」
「だからその道の権威の名前で発表される方が体裁も良い。」
「でもよく聞く話ですよ。たいした問題じゃありません。」


事務所に戻り、皆と話をする。
「俺は服部と話しててひとつ気になる言葉があった。」
「人体実験。」
「アドデック9はこれから人体実験に入る段階らしい。」
「モグラの殺しがさ、アドデック9の、例えば極秘の人体実験だったとしたらどうかなって。」
「アドデック9はマウスに無害で、人間には猛毒だったとか。」
「だからその副作用をなくすために何人も実験する必要があった。」
「それで共礼会の連中を何人も殺してたとか。」


星野が言う。
「新薬の臨床実験は健康な人にもやるそうです。」
「薬が人体に安全か確かめるために。」


杉浦が言う。
「あのとき殺された和久さんは、たしかアルツハイマーだったよね。」


八神が言う。
「あの事件の被害者は、アルツハイマー病の患者だった。」
「でも大久保新平は無罪になって、結局今も誰が何のために和久を殺したかはわかってない。」
「生野は画期的な新薬を早く人の身体で試したかった。」
「うまくいけば世界を救うって新薬だ。」
「それでも正式な手順を踏んで臨床試験をやるまでには時間がかかる。」
「下手したら何年も。」


星野が言う。
「でも生野の側には認知症の患者がたくさんいて、ちょっとくらいの実験ならまずバレないでしょうし、逆にうまくいったら万々歳です。」
「それですぐにでも世界を救えるなら多少危険を冒してでも・・」


「でもその結果、生野はまさかの副作用で患者を死なせてしまった。」
「3年前の事件についてはやっぱりそれによる事故だった気がするな。」
「ただし今は危険を承知で人体実験を続けている。」
「モグラを使って。」
「まだ仮説の段階だけど、今の所スジは通ってるよな。」
「ヤクザのコネを持ってるやつが生野の側にいるとしたら・・」
「創薬センターのトップ、木戸隆介。」


星野が言う。
「木戸が人体実験のことを知らされたのは、記者会見の後かも。」
「まず生野は何も知らない木戸をアドデック9の論文の筆頭筆者にしてすべての手柄も譲った。」
「大喜びの木戸はそれをあの場で華々しく発表したんです。」
「で、そのあと実験で人が死んでるとか言われてももう抜けられませんよね。」
「たぶんそうやって生野は木戸を一味に引き込んだ。」
「木戸の金とコネを通じて羽村やモグラを雇うために。」


「なら生野と木戸の力関係は見た目と逆か。」
「半年前に端木を殺したのはモグラだったと思う。」
「生野にとってアドデック9を嗅ぎ回る端木は目障りだった。」
「でも犯行当時、生野にはタクシーに乗ってたってアリバイがある。」
「このとき生野は別の誰かに端木を始末させたんじゃないか?」
「端木が殺されずにいたら、そのうち例の人体実験にも気づいたかもしれない。」
「そうなったら生野たちは破滅だ。」
「端木を始末しようとするには充分動機がある。」
「寺澤絵美の件で、大久保はずっと無罪を訴えてた。」
「でも俺はそれを見捨てたんだ。」
「もう諦めろってな。」
「・・星野君、大久保新平と面会する手配、頼めるか?」
「その間に俺はもう一度大久保の裁判資料を見てくるよ。」


八神は源田法律事務所に向かい、さおりが用意した裁判資料を見た。
「寺澤絵美、事件当時26歳。」
「2015年12月2日23時頃、火災後のアパート2階より焼死体となって発見。」
「胸部には生前刺されたとみられる傷が15箇所確認。」
「死因は失血死。」
「気道に煤がないことから煙は吸っておらず、つまり火災前にすでに死亡していたとみられる。」
「警察は被害者の同居人、大久保新平を現行犯逮捕。」
「凶器とみられる出刃包丁からは同人の指紋が検出された。」
「また炎上中のアパートから消防隊に救出された際、大久保は酩酊状態にあった。」
「しかし大久保は飲酒した記憶はなく、目が覚めたら火に包まれていたと供述。」
「そして逮捕直後から一貫して無罪を主張。」


源田が八神に声をかける。
「どうしてもやんなきゃならねえのか?大久保との面会は。」


「彼とはいつかまた会わなきゃって気はしてたんです。」
「大久保新平はたしかに俺の弁護で無罪になりました。」
「でも潔白を示す動かぬ証拠を見つけたわけでもなかった。」
「あの無罪は大久保が黒とは言い切れないってだけの判決。」
「彼の周囲にとってそれは結局、灰色の決着だったようです。」
「大久保は職場に復帰もできず、ネットには住所も個人情報もさらされてました。」
「彼はほとんど外出もできず、夜寝る時には毎晩睡眠薬に頼った。」
「でも俺はそんなこと知らなかったし、興味も持たなかった。」
「そして大久保は、ある日ずっとやめていた酒を飲んで恋人に包丁を。」
「俺が殺人鬼を無罪にしてそのせいで・・寺澤絵美は殺された。」


源田が八神の胸ぐらを掴む。
「思い上がってんじゃねえぞ若造!」
「20年前、お前の親父さん、八神弁護士の最後の裁判、覚えてるよな?」
「親父さんが弁護したのは15の女の子を乱暴して死なせたって犯人だった。」
「日本中が死刑で当然だと声を荒げた中で、親父さんは無罪を勝ち取った。」
「そのとき殺気立ったマスコミの取材に八神弁護士はこう答えた。」
「弁護人の務めは真実の解明ではない。」
「検察が人を裁くに足りる証拠をそろえたか、それを見極めるだけだってな。」
「あの状況で毅然とそれを言ってのけた。」
「そりゃすげえ勇気だ。」
「そういう強さを見てお前も弁護士に憧れたんじゃなかったか?」


八神が答える。
「親父が無罪にした被告人はもしかしたらやっぱり黒だったのかも。」
「釈放後、すぐ姿をくらました。」
「すると怒りの矛先はそれを弁護してた親父へ。」
「そして俺の両親は・・」
「被害者だった少女の父親にめった刺しにされた。」


「それでも親父さんは弁護士として何も悪いことはしちゃいねえ。」
「真実を見つけるのは俺らの義務じゃねえし、だいたいそんなもん、神様でもねえ限り無理なんだよ。」
「お前も大久保を無罪にした時、弁護士がやれる限りの仕事はきっちり果たしてた。」
「俺が保証する。」
「お前も何も悪いことはしちゃいねえ。」


八神が言う。
「でももし自分の弁護のせいで、そのあと知ってる女の子が焼き殺されたかもしれないとしたら?」
「もし先生が俺の立場でもそれは正論だから、悪いことはしてないから仕方ないことだって片付けられますか?」
「俺は生きてる限り過去を引きずります。」
「真実を神様だけに預けていたから俺は過去を引きずったままなんです。」


八神は星野と共に大久保の接見に向かった。
「僕は無実です。」
「そのセンターの事件も、絵美の事件も!」
「俺は何もやってないって!何度もそう言った!」
「あんただって聞いてたろ!」
「なんで誰も信じてくれないんだよ!」


八神が言う。
「絵美ちゃんの件では検察に証拠が揃ってた。」
「俺なんかの弁護じゃ無罪にできなかった。」


「できるわけありませんよ。」
「あんただって、俺を疑ってたからね。」
「ちゃんと気がついてたよ。」
「俺の無罪を訴えるたびにさ、あんた何度も吐きそうにしてたじゃない。」


八神が言う。
「あの事件は新薬の人体実験による事故、それが俺たちの仮説なんだ。」
「生野は実験台にした患者を想定外に死なせてしまい、その死体を慌てて隠さなきゃならなかった。」
「だから君のトラックに死体を隠した。」
「それ自体は生野の急場しのぎでしかなかったんだと思う。」
「もし君が死体のことを通報してれば話は変わってたはずだ。」
「でも現実にはそうならなかった。」
「君が死体を山に埋めたのは、じつは生野にとっても幸運でしかなかった。」
「おかげで警察がやつを疑うことはなくなってしまった。」


大久保が言う。
「八神先生。」
「俺は絵美のことも殺してないんですよ。」
「そっちの方は何も聞いてくれないんですか?」


「もう確かめようがないんだよ。」
「俺だって君が無実であってほしいって、3年前にやれることは全部やった。」
「ほんの少し焼け残ってた証拠は何度も調べた。」
「今になって、新証拠でも見つかるか?」


大久保が言う。
「じゃあ、絵美を殺した犯人はいつか俺が死ぬのを笑いながら見るわけですね?」
「あの世で絵美に合わせる顔ないよ!」
「俺も!あんたも!」


その日の夜、八神は杉浦と創薬センターに忍び込んだ。
「あのとき生野は大久保に濡れ衣を着せたってことだよね。」
「でも八神さんの弁護で大久保は無罪になった。」
「だったらその後、警察は別の真犯人を探さなかったのかな。」
「あれからすぐ大久保が次の事件を起こした。」
「だからそのあとはたいして捜査してないよね。」
「それで彼の正体は殺人鬼だったと知れた。」
「なら最初の事件で患者を殺ったのも大久保だったろうってみんながそう思うようになった。」
「でもその状況ってさ、誰かさんにとってはメチャ好都合な状況だよね。」
「センターで人体実験をしてた真犯人、生野にとってだよ。」
「つまりさ、寺澤絵美を殺してその罪を大久保に着せる。」
「そこまでやる動機が、あの生野にはあったんじゃない?」
「八神さんが今の大久保の様子、話してくれたでしょ。」
「その時からなんとなく考えてたんだ。」


八神が言う。
「俺は、大久保君が絵美ちゃんを殺したんじゃないとずっと信じたかった。」
「でも信じることができなかった。」
「絵美ちゃんは本当に・・いい娘で・・」
「だから彼女を殺した人間を、大久保君を絶対に許せないと思った。」
「なのに犯人は大久保君じゃなくて生野だったのか?」
「こんなに朝が待ち遠しいのは生まれて初めてだ。」


翌朝、生野を病棟で待ち伏せて問い詰めた。
「この病室であんたと話すことになるなんてね。」
「ここだったろ?和久って患者が入ってた部屋。」
「その患者を、あんたはアドデック9の実験台にして死なせた。」
「手柄を焦ったか?」
「認知症の患者に何したところでバレやしないと?」
「モグラを動かしてるのはあんただな?」
「モグラの窓口は松金組の羽村だ。」
「あいつらの仕事には満足できたか?」
「その対応はまずいなあ、生野さん。」
「あんたは日々新薬の研究に忙しいはずだろ?」
「そんな人が神室町の隠語を知ってちゃおかしい。」
「あんたはまずモグラが何かを俺に聞かなきゃ。」
「そのモグラが生まれたきっかけは3年前のあの事件だ。」
「あの日、あんたはここで寝てた和久さんにアドデック9を試したな?」
「時間は多分深夜だったはずだ。」
「だから死なせた患者をこっそり部屋の外へ運び出せた。」
「和久さんが死んだのはあんたにとっても想定外の事故だったんだろ?」
「とはいえ、あんたは人目につく前に死体を隠さなきゃならなかった。」
「死体はやっぱりランドリーカートに入れて運んだのかもな。」
「その後、シーツの回収に来た大久保新平のトラックが朝8時前に到着。」
「あんたは隙きを見てその荷台に死体を紛れ込ませた。」
「ただしこれじゃいずれ死体を見つけた大久保が警察に通報するだけだ。」
「何の解決にもなってない。」
「すぐに誰がトラックに死体を入れたか犯人探しが始まる。」
「それでも他にどうしようもなかったんじゃないか?」
「たぶんあんたにとっても悪あがきでしかなかったはずだ。」
「ところが死体を発見した大久保新平は過去に傷害の前科があり、自分が警察に疑われることを恐れた。」
「和久さんの死体は山に埋められ、後日大久保本人の自供で発見された。」
「大久保君には感謝したろ?」
「あんたが罪を逃れたのは、実はほとんど奇跡だよ。そう思わない?」
「けどそんなあんたに都合の悪い奇跡も起きた。」
「大久保君の無罪判決だ。」
「彼が無実なら真犯人は別にいるってことになる。」
「そのまま放っておけばまたあんたに疑いの目が向くかもしれない。」
「そこであんたは、悪魔に魂を売ったんだよ。」
「とぼけるなよ。」
「俺が何を言おうとしているか、あんたには分かってんだろ?」
「あんたは大久保を陥れるためにある人物を今度は計画的に殺意をもって殺した。」
「寺澤絵美。あんたにとっては同僚でもあった大久保新平の恋人。」
「あんたは彼らのアパートに押し入ってまず寺澤絵美を刺した。」
「資料によればその傷は少なくとも15箇所だ。」
「大久保君が毎晩睡眠薬に頼っていたことは彼女に聞いてたのかな?」
「あんたの犯行中、目を覚ますことはなかった。」
「断酒してた彼が酒臭かったのもあんたの細工だろ。」
「大久保君に酒の静脈注射でもしたか?」
「それでアルコールの血中濃度があがる。」
「下手すりゃ死ぬとこだが、もしそうなっても別にかまわなかったんだろ。」
「大久保君が酒を飲んでたであろう状況さえ演出できれば。」
「そうやって大久保の犯行に見せかけると、あんたはアパートに火をつけた。」
「安心しな。まだ証拠はないよ。」
「でもさっきの推理で間違ってない。」
「あんたの目を見ればわかる。」
「なあ、もしかしたらこんな風に考えてないか?」
「アドデック9が完成すれば多くの人間が救われる。」
「だから自分は正しいことをしてる。」
「正義だってな。」
「人が一番残酷になるのは、自分に正義があると思っているときだ。」
「でもあんたのそれは、本当に正義か?」


「何をやっているんだ!」
木戸が部屋に入ってきた。


「どうも。ちょうど今帰るとこですよ。」
「アドデック9、まだうまくいってないみたいですね。」
「人体実験はまだこの先も必要なんですか?」
「大丈夫。生野さんは何も白状してません。」
「でも、全部暴き出してやるよ。」
「俺にはその権利があるはずだ。」
八神と杉浦は部屋を出た。


八神は再び大久保に接見した。
「まだ期待は持たせられない状況だけどさ、君は、無実だよ。」
「今まで誰も殺してなんかいない。」
「だから俺は、絵美ちゃんの仇を討つよ。」
「君もここから出してやる。」
「約束する。」
「もっと早く、この言葉を君に言うべきだった。」
「なのに俺は・・」
「3年も・・」
「本当に長いこと何してたんだ・・」
八神はうつむき、涙を流した。
「俺に・・」
「もう一度チャンスをくれるか?」


「もちろんです。」
「こっちこそ・・よろしくお願いします、八神先生!」


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