ゲーム ネタバレストーリー まとめ

ゲームのストーリーを詳細にまとめています。続編をプレイする時などに役立てて下さい。このブログにはネタバレ要素が多く含まれています。

ドラゴンクエストIX | 星空の守り人

「ねえ、誰かいるの?」
「いるのだったら姿を見せてよ。何か言ってよ。」
そんな人々の声が聞こえる。
一体いつの頃からこの世界を見守って来たのだろう。
僕達は天使と呼ばれていた。


主人公の師匠であるイザヤールという上位天使が主人公に言う。
「天使主人公よ。よく頑張ったな。」
「私に代わりこの村の守護天使を任せた時は少々不安ではあったが、お前の働きにより村人達も安心して暮らしているようだ。」
「立派に役目を引き継いでくれて、このイザヤール、師としてこれ以上の喜びはない。」
「これからはウォルロ村の守護天使主人公と呼ばせてもらうぞ。」


ウォルロ村のリッカという少女と老人が村の外を歩いている。
そこへ魔物が現れ、リッカ達に襲いかかった。
その様子を見ていたイザヤールが言う。
「むむむ、これはいかん!あのままでは魔物に襲われてしまうだろう。」
「さあ、ウォルロ村の守護天使主人公よ。我等の使命を果たす時だ。」


主人公とイザヤールはリッカ達に襲いかかった魔物達を倒した。
リッカ達には主人公達の姿が見えていないようだ。
「ほら、ウォルロ村が見えてきたよ、お爺ちゃん。」
「でもこれもきっと守護天使様のおかげだよね。」
「道中お守り下さってありがとうございます。守護天使主人公様。」
リッカの胸から青く輝くハート型の光が出て主人公の身体に吸い込まれていった。
「それは星のオーラ。」
「人間達の我等への感謝の心が結晶となったものだ。」
「そしてその星のオーラを天使界にある世界樹に捧げるのもまた、我等が使命。」
「ウォルロ村の守護天使主人公よ。ここはひとまず天使界に戻るとしよう。」


主人公とイザヤールは天へ昇っていき、天使界に戻ってきた。
「さて、地上から戻ったら長老オムイ様に報告するのが守護天使の習わし。」
「私は別の用事があるから先に行かせてもらうぞ。」


主人公は長老オムイに会いに行く途中、天使達に話を聞いて回った。
「僕ら天使は上位の天使には絶対に逆らえないんだよね。」
「主人公のお師匠様はイザヤール様か。あの人は生真面目過ぎるよね。」


「かつて神は何もない星空に世界樹を守るための世界、天使界を創られました。」
「そうして我等天使たちにこの天使界を任せ、神の国へ戻られたのです。」


「世界樹が育ってその実をつけた時、僕ら天使は神の国に帰ることが出来るそうだよ。」
「え?主人公は地上から星のオーラを持って戻ったの?凄いじゃん。だったらもうすぐだね。」


「人間はちょっとした怪我や病気でもすぐに死んでしまうし、精神力もとても弱いそうだ。」
「私は天使に生まれて本当に良かったと思うよ。」


天使像の前にいる女性天使に話を聞く。
「御覧なさい。天使界にはこの像がとても沢山あるでしょう?」
「白い翼と聖なる光の輪。この像は私達天使のことを現しているのですよ。」
「私達見習い天使はみんな一人ずつ師匠について守護天使として修行してるの。」
「うちのお師匠様は優しいんだけど、ちょっとのんびり屋さんなのが玉に傷なのよね。」
「もし師匠を選べるなら、私イザヤール様かラフェット様が良かったなあ。」


男性天使と話をする。
「ほほう。早速地上で星のオーラを手に入れてきたか。流石だな、主人公。」
「ずっと弟子をとろうとしなかったあのイザヤールが自ら選んで弟子にしただけのことはある。」


本棚にある本を読む。
「天使の長い寿命や空を飛ぶ翼、頭の光輪は人間達よりも優れた存在である証。」
「か弱く愚かな人間達を守り導くため、神より与えられたものなのだ。」


女性天使に話を聞く。
「人間とは何とわがままな生き物でしょう。」
「そんな人間達を見守れとは、神様もとんだ役目を天使達に押し付けたものですわ。」


別の女性天使に話を聞く。
「空を眺めているとたまに不思議な動きをする流れ星が横切っていくの。」
「あれは一体何なのかな。」


男性天使に話を聞く。
「この天使界は地上界のはるか上空を気ままに漂っています。」
「もちろん我等天使の姿を見られないのと同様、人間達は気づくはずもないでしょう。」


「長命の天使達の中でもオムイ様は最も長生きしている文字通りの長老様なのだ。」
「その命数は数千年とも一万年とも言われているな。」


女性天使に話を聞く。
「私の師匠のラフェット様と主人公の師匠のイザヤール様って仲いいよね。」
「二人はずーっと昔からの喧嘩友達なんだってさ。」


イザヤールとラフェットが話をしていた。
「驚いたわよ。主人公がもう守護天使になるなんて。あなたよく許したものね。」
イザヤールが言う。
「違うのだラフェット。私はまだ早いと反対したのだ。それをオムイ様が。」
「主人公はまだ未熟だ。人間界で何かあったらどうする。」
「君はエルギオスの悲劇のことを忘れたのか?」
ラフェットが言う。
「その話をすることは、この天使界でタブーになったのじゃなかったのかしら?」
イザヤールが主人公姿に気づいた。
「ウォルロ村の守護天使主人公よ!いつからそこにいた?」
「何をしているのだ、お前はまだオムイ様に報告を終えていないのではないか?」
「ならば早くお会いすることだ。オムイ様はこの部屋のすぐ隣りにある長老の間にいらっしゃるはずだ。」


長老オムイと話をする。
「よくぞまいった。イザヤールの弟子、主人公よ。」
「わしが天使界の長老オムイじゃ。」
「守護天使として地上での初めての役目、ご苦労じゃったな。」
「とは言え、今まではイザヤールに同行してもらったのだったのう。」
「じゃがこれからはそうではない。」
「イザヤールに鍛えられたお前なら必ずやってくれるとわしは信じておるよ。」
「さて、ではそんな主人公に次の役目を与えるとしよう。」
「地上でお前は人間達の感謝の結晶、星のオーラを手に入れたはずだな。」
「次にお前がなすべきは天使界の頂にある世界樹にその星のオーラを捧げることじゃ。」
「樹はやがて育ち、その実をむすぶであろう。さあ、世界樹の元へ向かうがよい。」


世界樹へ向かう途中で天使達に話を聞く。
「星のオーラで世界樹が満たされた時、美しき実がなると言われている。」
「その実は女神の果実と呼ばれ、とてつもないパワーを秘めているそうだ。」


「おお、地上で手に入れた星のオーラを世界樹まで捧げに行くところなのだな。」
「女神の果実が実る時、神の国への道は開かれ、我等天使は永遠の救いを得る。」
「つまり役目から解放され、我等天使達は神の国に戻れるらしいぞ。」


主人公は世界樹の元へ行き、星のオーラを捧げた。
星のオーラは世界樹に吸い込まれ、世界樹が光輝いた。
そこにイザヤールがやって来る。
「どうだ、ウォルロ村の守護天使主人公よ。」
「星のオーラを捧げられた世界樹は実に美しいだろう。」
「人間達からオーラを受け取り世界樹に捧げる。これこそが我等天使の務め。」
「ウォルロ村の守護天使主人公よ。お前の今後に期待しているぞ。」
「やはりいちいちウォルロ村の守護天使と呼ぶのは少し面倒だった。」
「これからは時々そう呼ぶことにしよう。」
「さあ、オムイ様の元に行き、無事に役目を果たした事を報告するが良いぞ、主人公よ。」


長老オムイに報告する。
「ご苦労じゃった、主人公。して、世界樹の様子はどうであったかな?」
「ほほう。そんなにも輝いておったか。これはいよいよかも知れんな。」
「主人公も知っていようが、我等天使の使命は世界樹を育て、女神の果実を実らせること。」
「守護天使達が人間を守り、星のオーラを集めてくるのも全てはそのためなのじゃ。」
「守護天使主人公よ。自分のするべきことがもう分かったであろう。」
「再び地上へとおもむき、星のオーラを集めてくるのじゃ。イザヤールは供をせぬぞ。」
「準備が整ったら下の階に行き、輝く星型の穴の側にいる女天使に話しかけるが良い。」
「守護天使主人公よ。汝に星々の加護のあらんことを。」


下の階に行き、輝く星型の穴の側にいる女天使に話しかける。
「いってらっしゃい、ウォルロ村の守護天使主人公さん。」
「いっぱい人助けをして星のオーラを集めてくるのよ!」


主人公はウォルロ村におりて行った。
ウォルロ村で人助けをしていると夜になり、イザヤールがやって来た。
「主人公よ。しっかりと役目に励んでいるようだな。」
「どうした?私がこの村に来るのはもういらぬお世話かな?」
「なに、これから世界中を回るつもりでたまたま最初にこのウォルロ村に立ち寄っただけのことだ。」
「ところで主人公よ。実はまだお前に教えることが残っていたのだ。」
「生きている人間を助けることも天使の使命だが、もう一つ、死して後まだ地上を彷徨っている魂を救うことも天使たる使命。」
「この村の何処からか救いを求める魂の声がお前にも聞こえるであろう。」


地上を彷徨う魂を救い、星のオーラを集めた主人公はイザヤールに報告した。
「星のオーラがかなり集まったようだな。一度天使界に戻るか?」
主人公は頷いた。
「では気をつけて帰るのだぞ。私は今しばらく下界にいよう。・・ん?」
星空を見上げると、金色に輝く列車が走っていた。
「天の箱舟か。近頃やけに慌ただしいな。」
「気が変わった。主人公よ、やはり私も天使界まで同行させてもらうぞ。」
主人公とイザヤールは天使界に戻った。
「私はオムイ様と話がある。悪いが先に行かせてもらうぞ。」


星のオーラを捧げるため世界樹の元へ向かうと、長老オムイとイザヤールが来ていた。
「おお、丁度良い所に来たな。ウォルロ村の守護天使主人公よ。」
「見よ、この世界樹を。星のオーラが満ちて今にも溢れ出しそうだ。」
長老オムイが笑っている。
「ふぉっふぉっふぉ。あとほんの少しの星のオーラで世界樹は実を結ぶはずじゃ。」
「女神の果実が実る時、神の国への道は開かれ、我等天使は永遠の救いを得る。」
「そしてその道を開き我等をいざなうのは天の箱船。」
「主人公よ。お前の持つ星のオーラを世界樹に捧げるのだ。」
主人公が星のオーラを捧げると、世界樹に女神の果実が実った。
世界樹が黄金に輝き、天の箱船がやって来た。
すると突然雷が落ち、天の箱船に直撃した。
天の箱船はバラバラになり地上へと落ちていく。
天からさらに無数の雷が落ち、天使界に大きな地鳴りが起きる。
「これはどうしたことじゃ?わしらは騙されていたのか?」
一本の巨大な雷が世界樹に落ちた。
世界樹に実った女神の果実はバラバラになり地上に落ちていく。
その衝撃で主人公も地上に落ちていった。


気がつくと主人公の頭の上にあった光輪が消え、背中に生えた翼も無くなっていた。
どうやらウォルロ村のリッカに助けられたようだ。
「主人公、怪我の方はすっかりいいみたいね。」
「あなたを見つけた時はビックリしたわ。」
「あの大地震に巻き込まれて滝から落ちたんだろうけど、ほんとに危ないところだったのよ。」


リッカの祖父に話を聞く。
「滝から落ちたお前さんを孫娘のリッカが拾ってきた時はそりゃあ驚いたもんじゃよ。」
「しかしわずかの間にあの大怪我が治ってしまうとはのう。若いというのは素晴らしいことじゃな。」


井戸端会議をしている女性達の話を盗み聞きする。
「大地震が起こったと思ったら魔物は湧き出すし峠の道まであんなことに。」
「ほんと不吉ですわねえ。私思うんですよ。リッカちゃんのとこの旅芸人みたいな格好をした人、主人公さんって人が村に不幸を呼んだんじゃないかって。」


村の老婆と話をする。
「あんたがリッカちゃんに拾われた旅芸人さんだね。守護天使様と同じ名前だって言う。」
「偶然だろうけどあんたの名前はそりゃあ、ありがたい名前なんだ。」


教会にいる男性に話しかける。
「リッカちゃんの死んだ父親リベルトとは昔なじみでよ。ガキの頃からよく知ってたんだ。」
「あいつ一時期セントシュタインで暮らしてて、その時に結婚して生まれたのがリッカちゃんなんだよ。」
「うん?母親の方はどうしたかって?」
「もともと身体の弱い人で、若くして亡くなったとしか聞いてないな。」


村の入口にいる男性に話を聞く。
「なんだ、あんたか。悪いことは言わないから今は村の外に出ないほうがいいぜ。」
「この前のでっかい地震のことは覚えてるだろう?」
「あの地震の後、急に魔物が増えだしてさ。危なくて出歩けたもんじゃない。」
「まったく、主人公様は何してんだかな。あ、いや。あんたのことじゃなくて守護天使様の方な。」


女性に話を聞く。
「リッカちゃんの宿屋、お客さんが来なくなっちゃってかなり困ってるみたいね。」
「あんたリッカちゃんのお世話になってるんだからチカラになってあげなさいよ!」


村長の家の中で会話を盗み聞きする。
「まったくお前はいい年して遊び呆けてばかりおって!」
「少しは宿屋のリッカを見習って村のために働こうとは思わんのか。」
村長に説教を受けているのは息子のニードだ。
「リッカは関係ないだろ。俺は今、本当にやりたいことを探してるんだよ。」
「それが見つかれば俺だっていくらでも働いてやるさ。」


ニードが主人公の姿に気付いた。
「よう、主人公。ちょっとお前に話があるんだ。」
「ここじゃ何だから外に出ようぜ。ついてきてくれ。」
ニードに連れられて裏庭にやって来た。
「さて、話ってのは他でもねえ。土砂崩れで峠の道が塞がってるのは知ってるだろ?」
「あの道はこのウォルロ村と他の土地を結ぶ大切な架け橋なんだよ。」
「そこでこのニード様は考えた。俺が土砂崩れの現場まで行って何とかしてやろうってな。」
「そうすりゃ親父も俺のことを見直すだろうし、リッカだって大喜びって訳だ。」
「で、まあ、そういう訳でお前に峠の道まで一緒に行ってもらいたいんだよ。」
「旅芸人ってのは結構、腕の方も立つんだろ。ひとつ頼まれてくれ。」


主人公とニードは一緒に村を出て土砂崩れの現場までやって来た。
「土砂崩れってこれかよ。正直なめてたぜ。」
「こんなの俺と主人公だけじゃどうにもなんねーじゃねえか。どうすんだよ、この土砂の山を。」
「くそ!上手くすりゃ親父の鼻を明かしてやって村のヒーローになれたってのに。」
土砂の向こう側から声が聞こえる。
「おーい!そっちに誰かいるのかー!いるなら返事をしてくれー!」


ニードが向こう側から聞こえる声に答える。
「おーい!ここにいるぞ!ウォルロ村のイケメン、ニード様はここだぞー!」


土砂の向こう側にいるのはセントシュタイン城の兵士のようだ。
「やはりウォルロ村の者か!我等はセントシュタイン城に仕える兵士だ。」
「王様から峠の道の土砂崩れを取り除くよう命じられてやって来たのだ。」
「ウォルロ村の者よ。一つ取り急ぎ確認したいことがあるのだ。」
「地震の後、お前達の村にルイーダという女性が来たという話は聞いてないか?」
「城下の酒場に務めるご婦人だが、ウォルロ村へ行くと言って町を出たきり消息が知れないのだ。」
ニードが答える。
「ルイーダねえ、知らねえな。大体そんな女がうちの村に何の用があるってんだ?」


「そうか。実は彼女はキサゴナ遺跡からウォルロ村へ向かったという噂もあるのだ。」
「だがその遺跡もいつの間にか道が塞がってしまったようで、確かめる方法が無いのだよ。」
「とにかく村人達にはもう間もなく道が開通すると伝えておいてくれ。」
「出来ればルイーダさんのことも聞いてもらえると助かる。」


主人公とニードは村に戻り、村長に報告した。
「なるほどな。もう間もなくセントシュタインの兵士たちが土砂を取り除いてくれるわけか。」
ニードが言う。
「そうだ、もう一つセントシュタインの兵士から聞いたことがあったんだ。」
「ルイーダとかいう姉ちゃんがこの村に向かったまま行方不明だから探して欲しいって話だったぜ。」
そこへリッカがやって来た。
「ちょっと、その話本当なの?」
「父さんのセントシュタイン時代の知り合いにそんな名前の人がいたはずなんです。」
「主人公が村の外に出たって聞いて本当に驚いたんだから。」
「でも全然平気そうだね。主人公って私が思ってるよりずっと強かったんだ。」
「ねえ主人公。もし良かったらでいいんだけど頼めないかな。」
「私やっぱり行方知れずになったルイーダさんって人のことが気になるの。」


主人公はルイーダを探しにキサゴナ遺跡へ向かった。
遺跡の奥に進んでいくと、ルイーダが瓦礫に挟まれて身動きが取れなくなっていた。
「あらびっくり。こんなところで人に会うなんて珍しいこともあるものね。」
「ねえあなた。ちょっとそこの瓦礫をどけて下さらない?」
「怪我は大したこと無いんだけど足を挟まれちゃって動けなくて困っていたの。」
主人公はルイーダの足を挟んでいる瓦礫を持ち上げた。
「あなたのおかげで助かっちゃったわ。」
「私はルイーダ。セントシュタインの城下町で酒場をやってる訳あり女よ。」
「あなたはウォルロ村から来たの?」
「さあ、いつまでもこんな所にいてもつまらないから外に出ましょ。」
「私、ウォルロ村に急いで行かなくちゃいけないの。」
「それじゃ、お先に失礼するわね。お礼は改めて。アデュー!」


ウォルロ村に戻りリッカの宿屋に行くと、ルイーダが来ていた。
「さすがリベルトさんの宿屋ね。細部にお客さんをもてなそうって心遣いが感じられるわ。」
リッカが言う。
「お父さんの知り合いの方?あ!もしかしてあなたがルイーダさん?」
「私、心配してたんです。ルイーダという名前の女の人が村に来ようとして行方不明と聞いて。」


「そう、ありがとう。あの頃、あなたはまだ幼かったけど私の名前を覚えていてくれたんだ。」
「ところでリベルトさんは何処かしら?」
リッカがうつむきながら答える。
「やっぱり父さんに何か用があったんですね。でも父さんは2年前に・・」
ルイーダが驚く。
「ええ!リベルトさんはもういないの?亡くなってしまったの?」
「なんてこと・・あの伝説の・・それじゃあうちの宿屋はもう・・」
ルイーダは何かを思いついたようだ。
「リベルトさんが亡くなったってことはこの宿屋、あなた一人でやってるのよね?」
「ここって小さいけどいい宿ね。お客さんへのもてなしの心が隅々まで行き届いてるわ。」
「さすがは伝説の宿王の娘ってところね。」
リッカがルイーダの話を聞いて戸惑っている。
「あの・・さっきから伝説、伝説って・・」
ルイーダが単刀直入に言う。
「ねえあなた。セントシュタインで宿屋をやってみる気はない?」
ルイーダがリッカにリベルトの伝説を聞かせた。
「じゃあ父さんはセントシュタインにいた頃、伝説の宿王って呼ばれてたんですか。」
「私の知ってる父さんは穏やかで小さな宿屋でも私と一緒にやれるのが嬉しいって・・」
ルイーダが言う。
「とにかく宿王の去ったセントシュタインの宿屋は今、大ピンチなの。」
「まさかリベルトさんが2年も前に亡くなってたなんて知らなくて。ごめんなさいね。」
「セントシュタインの宿屋には代わりにあなたを連れて行くから。」
「あなたは宿王の才能を確実に受け継いでるわ。私には人の才能を見抜く力があるのよ。」


主人公がリッカの宿屋を出ると、ウォルロ村はすっかり夜になっていた。
宿屋の片隅に亡霊がいたので話しかける。
「ビックリしたなあ。驚かさないでくださいよ。」
「・・ってあなた、私のことが見えるんですか?私とっくに死んでるんですよ!」
「まったく不思議な人だなあ。」
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私、リッカの父親のリベルトと申します。」
「流行病でポックリいって以来早2年。ご覧の通り未だに地上を彷徨っています。」
「ところであなたは?そうですか。主人公さん・・ん?」
「主人公って・・まさかあなたは守護天使様?」


突然声が聞こえてくる。
「そこ、ちょっと待ったー!」
小さな色黒の女妖精が主人公にぶつかってきた。
「いったぁーい・・ちょっと!ボケッとしてないで上手くかわしなさいよ!」
「ま、それはいいや。そこのおっさん!あんたの発言、聞き捨てならないんですけど!」
「今天使とか言ったよね?あたしもそう思ったけどいまいち確信が持てないのよね。」
「その人には光る頭の輪っかも背中の翼も無いのよ。これって変くね?」


リベルトが言う。
「そう言われれば確かに。でも変と言うならあなたの方が。一体どちら様なのでしょう?」


「フフン・・それを聞いちゃいます?そうね。聞かれちゃったら答えないわけにはいかないわね。」
「聞いて驚け!あたしは謎のギャル、サンディ。あの天使の箱舟の運転士よ!」
サンディは背中にピンクの羽が生えた小さな色黒妖精で、髪は金髪。髪飾りに赤いハイビスカスを付けている。
「さて、このあたしに名乗らせたんだから、あんたも自分の正体、教えて欲しいんですけど?」
「どう見てもただの人間なのに、天の箱船や幽霊が見えちゃうあんたは一体何者なの?」
主人公はサンディにこれまでの経緯を説明した。
「ふーん、それじゃああんたは、あの時の大地震で天使界から落ちてきたんだ。」
「それで気がついたら翼も輪っかも無くしてこの村にいた訳ね。」
「何か信じらんないんですけど。」
「翼や輪っかを無くしたのに魂を見る力は残ってるって、何その半端な状態。」
「もしどうしても天使だって認めて欲しいなら、魂を昇天させてみなさいっての。」
「それが出来てこその天使よ。ちょうど幽霊のおっさんもいることだし。」
「よし、決まり!このおっさんの未練を解決してやって昇天させてやんのよ。」
「そしたら天使だって認めるし、天の箱舟に乗せて主人公を天使界まで送ってあげるわ。」
「そういう訳だからしばらくあんたと一緒に行動するんで、宜しくね!」


リベルトに話を聞く。
「おかしな話になってきましたな。ともかく宜しくおねがいします。」
「え?私の魂を地上に縛っている未練は何なのかですって?」
「何だろう。宿屋の裏の高台に埋めたあれかな・・」


主人公は宿屋の裏の高台を掘り返し、地面の下から金色に輝くトロフィーを手に入れた。
トロフィーには、「汝を宿王と認めこれを送る。セントシュタイン王」と刻まれている。


リッカの宿屋に戻り、宿王のトロフィーをリッカに手渡す。
「これ・・宿王と認めるって・・セントシュタインの王様からうちの父さんに?」
「そんな・・ルイーダさんの話は本当だったんだ。」
「でもだったらどうして父さんは宿王の地位を捨ててまでウォルロ村に帰ってきたの?」
「父さんが何を考えてたのか、私にはさっぱり分かんないよ。」


「そのことについてはわしから話そう。」
リッカの祖父が近づいてきた。
「リベルトから口止めされていたのでずっと黙っていたが、もう話してもいいだろう。」
「リッカや。お前は自分が小さい頃、病気がちだったことを覚えているだろう?」
「その体質は母親譲りのものじゃ。本来なら成長するにしたがって弱っていき、やがて死に至る。」
「実際お前の母親も身体が弱く、若くして亡くなっておるな。」


リッカが言う。
「でも私は元気になったよ。身体が弱かったことなんて忘れてたくらい。」


「それはこの村の滝の水、ウォルロの名水を飲んで育ったおかげじゃろう。」
「ウォルロの名水は身体を丈夫にし、病気を遠ざけるというからのう。」
「あいつは自分の夢よりも娘を助ける道を選んだのじゃよ。」
「リッカが父親の夢を奪った、そう思わせたくなくてあいつは口止めをしていたのじゃろうな。」
「だが今のお前ならこの事実を受け止めることが出来るとわしは信じておるぞ。」


リッカが言う。
「父さんが時々見せていた遠くを見るような表情が、実はずっと気になっていたんだ。」
「そっか。父さんは私のために・・」
「ねえ、主人公。私、セントシュタインに行くことにするわ。」
「私に何が出来るか分からないけど、ルイーダさんの申し出を引き受けてみるよ。」


リッカがルイーダの元に向かった後、リベルトと話をする。
「話は全て聞いていました。」
「まさかリッカが私の夢を継いでくれるなんて。あの子も大きくなったものです。」
「私が見ていなくても、きっとあの子は立派にやってゆけるでしょう。」
「どうやらお別れのようですね。本当にありがとうございました、守護天使様。」
リベルトの魂は天に召されていった。


その様子を見ていたサンディが言う。
「行っちゃったわね。」
「なかなかやるじゃん。こりゃあんたのこと天使だって認めないわけにはいかないか。」
「約束通り天の箱船に乗せて天使界まで送ってあげるわ。感謝しなさいよ。」
「ところでさ、あんた天使だったら星のオーラを回収しなくていいの?そこに転がってるんですけど。」
主人公は星のオーラが見えなくなっていた。
「へ?あんた星のオーラ、見えてないの?見えなくなっちゃったの?」
「前言撤回したいんですけど・・こんな奴信用していいのかな。」


数日後、土砂崩れは取り除かれ峠の道は開通した。
そしてリッカがセントシュタインへと旅立つ日が来た。


「離れ離れになっちゃうけど元気でね、お爺ちゃん。」
ニードが見送りにやって来ている。
「ねえニード、この宿屋、ニードが引き継いでくれるんでしょ?」
「勝手な話だけど、私この宿屋を閉じたくなかったから・・ありがとう。感謝してる。」
「それじゃ、行ってきます!みんな、今までありがとう!」


リッカはルイーダと共にセントシュタインへと旅立った。
リッカを見送った主人公は、天の箱船があるという峠道に向かった。


峠の道に着くと天の箱船があった。
「よーし、それじゃ中に入るよ。」
「これが天の箱船の中よ。どう?なかなかイケてるでしょ。」
「でも出来る事ならもっと可愛くしたいのよね。まだちょっと地味じゃない?」
「ゴールドの中にキラキラピンクのラインストーンも並べてさ。あたし色に染めたい訳よ。」
「何よ。さっさと出発しろって言うの?分かったわよ。ええ、やってやりますよ。」
「ぶっちゃけあたしも天使界がどうなったのか知りたいっぽいしね。」
「それじゃ行くよー。スイッチ、オン!」
天の箱船はピクリとも動かない。
「あーあ、やっぱ駄目なんですけど。」
「あたし的には天使を乗せれば動き出すって思ったのに、何でかなあ。」
「あ!あんた、あの時、天使のくせに星のオーラが見えてなかったよね?それってやばくね?きっとそのせいなんですけど。」
「大体さあ、天使のくせに翼も頭の輪っかも失うとかありえなくね?」
主人公は頷いた。
「あれ?意外と素直じゃん。悪いと思ってんだ?超うける!」
「・・とか言ってる場合じゃないか。あたしもあんまり暇こいてると神様に怒られるっぽいしね。」
「ああー!神様!そうよ、神様よ!」
「こんな事になってるのにどうして助けてくれないわけ?」
「おかしいんですけど。もしかして見つけられない?」
「というわけで主人公。あたしらも道が通じたっていうセントシュタインに向かうわよ。」
「いっぱい人助けをして星のオーラを出せば、それが目印であたし的には見つけてもらえると思うの。」
「え?なあに?その思いっきり疑ってる顔。超うける!」
「んじゃ、方針も決まったことだし、さあ行くよー!」


主人公は峠の道を越えてセントシュタインへ向かった。
セントシュタイン城の玉座の間に行くとセントシュタイン王とフィオーネ姫が話をしていた。
「フィオーネよ。何度言えば分かる。あの者に会いに行こうなどと、このわしが許せるわけなかろう。」
フィオーネが言う。
「いいえ、お父様。あの黒騎士の目的はこのフィオーネです。」
「私がおもむけば国の者は安心して暮らせることでしょう。」


「馬鹿を申せ。自分の娘をあんな不気味な男に差し出す親が何処にいるのだ。」
その時、セントシュタイン王が主人公の姿に気付いた。
「ウォッホン、客人か。すまなかったな。さあ、こちらへ参られよ。」
「わしがこの城の主、セントシュタイン国王じゃ。」
「突然だが、黒騎士を倒すのに手を貸してもらえんじゃろうか。」
主人公は頷いた。
「おお、そうか。黒騎士退治を引き受けてくれるのか!」
「おぬし、名は何と申す?」
「そうか、主人公と申すか。それでは主人公よ。わしの話をよく聞いてくれ。」
「行きずりの旅人であるおぬしに黒騎士退治を頼むのには勿論、訳がある。」
「実はな、黒騎士の奴はわしの娘、フィオーネを狙いこの城にやって来たんじゃよ。」
「奴は約束の時間までにフィオーネをシュタイン湖という場所に届けるよう言い残して去っていったのだ。」
「しかしわしはその言葉を黒騎士の罠だと思っておる。」
「わしがシュタイン湖に兵を送り城の守りが薄くなったところで奴は城にやって来るに違いない。」
「それ故わしはおぬしのような自由に動ける人材が欲しかったのじゃよ。」
「それでは主人公よ。これからシュタイン湖におもむき、黒騎士の所在を確かめて来てくれ。」
「シュタイン湖に行くにはこの城の裏手にある北の橋を渡って、さらに北を目指せば良い。」
「もし奴がそこで待っておったらおぬしの腕の見せどころじゃ。そのまま叩きのめしてまいれ。」
「これが上手く行けば褒美をとらせるからな。しっかり頼んだぞ、主人公よ。」


城を出て北に進みシュタイン湖に着くと、謎の黒騎士が現れた。
「誰だ、貴様。」
「貴様に用はない。姫君は何処だ。」
「姫君を出せ!我がうるわしの姫を!」
主人公は襲いかかって来た謎の黒騎士を倒した。
「なにゆえ姫君は貴様のような者を私の元へつかわした・・」
「メリア姫はもう私のことを・・あの時交わした約束は偽りだったと言うのか・・」


サンディが主人公の懐から現れた。
「ねえ主人公。この騎士キモくない?メリアって誰?」
「確かあの姫の名前はフィオーネ。メリアなんて名前じゃないんですけど。」


サンディの話を聞いた謎の黒騎士が驚く。
「それはまことか?」
謎の黒騎士にはサンディの姿が見えるようだ。
「なあ、教えてくれ。あの城にいたのはメリア姫ではなく別の者だったと言うのは本当か?」
「何てことだ。あの姫君はメリア姫ではなかったのか。」
「言われてみれば彼女はルディアノ王家に代々伝わるあの首飾りをしていなかった。」
「・・・私は深い眠りについていた。」
「そしてあの大地震と共に何かから解き放たれるようにこの見知らぬ地で目覚めたのだ。」
「しかしその時の私は自分が何者か分からないほど記憶を失っていた。」
「そんな折あの異国の姫を見かけ、自分とメリア姫のことを思い出したのだ。」
「私の名はレオコーン。そしてメリア姫というのは我が祖国、ルディアノ王国の姫。」
「私とメリア姫は永遠の愛を誓い、祖国での婚礼を控えていた仲だった。」


サンディが言う。
「じゃあ何?ぶっちゃけこの黒騎士はフィオーネ姫と元カノを間違えちゃったわけ?」
「どんだけ似てたのよ。フィオーネ姫とメリア姫って。」


「いずれにせよ、私は自らの過ちを正すため今一度あの城へ行かねばなるまいな。」
「いや、それはまたややこしくなるか。」
「そなたらの方から城の者へ伝えておいてくれないか。もう城には近づかないと。」
「ルディアノ城ではきっと本当のメリア姫が私の帰りを待っているはず。」
「私はルディアノを探すとしよう。」
レオコーンは去っていった。


主人公はセントシュタイン城に戻って王様に報告した。
「主人公よ、よくぞ戻った。黒騎士の件、どうであった?」
「何?黒騎士は記憶をなくし、フィオーネの事を婚約者と見間違えていただけだっただと?」
「奴はルディアノという国を探しているため、もうこの城には近づかないと言うのか。」
「おぬしはその言葉をそっくり信じて帰ってきたのか!そんなもの口からでまかせに決まっておろう。」
「ふん、ルディアノという国などわしは聞いたことがない。奴はでたらめを言っているんじゃ。」
「良いか、主人公。奴はフィオーネを狙っていずれまたこの城にやって来る腹づもりよ。」
「黒騎士の息の根を止めるまではおぬしへの褒美もお預けじゃ。」


玉座の間を出て北東にある部屋でフィオーネ姫と話をする。
「主人公様、私、お話したいことがあるのです。」
「実は私、ルディアノ王国のことを耳にしたことがあるのです。」
「昔ばあやが歌ってくれた童歌の中にルディアノという国の名前が出てきたのです。」
「もしかしたらその歌が何か手がかりになるかも知れません。」
「ばあやは今、彼女の故郷エラフィタの村にいます。」
「エラフィタはシュタイン湖の西の方にある小さな村。」
「あの黒騎士は父の言うような悪い人ではありません。そんな気がしてならないのです。」
「主人公様。どうかあの方のお力になってあげて下さい。」


主人公はセントシュタインの北西にあるエラフィタの村へ行き、北東部の家に住むソナばあさんに話を聞く。
「あらあらお客さん?どうぞこちらにいらっしゃって。」
「ええ、あたしがフィオーネ姫様のばあやをしてた者ですじゃ。一体何用ですかな?」
「はあ、小さい頃の姫様に歌ってあげた童歌を聞かせて欲しいとな?」
「いいですとも。この歌は黒バラ童歌って言うのよ。」
「♪闇に潜んだ魔物を狩りに黒バラの騎士、立ち上がる♪」
「♪見事魔物を討ち滅ぼせばしらゆり姫と結ばれる♪」
「♪騎士の帰りを待ちかねて城中みんなで宴の準備♪」
「♪北ゆく鳥よ、伝えておくれ。ルディアノで待つしらゆり姫に。黒バラ散ったと伝えておくれ♪」
「・・とこんな感じじゃが満足してもらえましたかねえ。」


家の外に出ると村にレオコーンがやって来た。
逃げる村の木こりに詰め寄っている。
「木こりよ、何故逃げる?私は話を聞きたかっただけだ。お前には何もしない。安心しろ。」
木こりが言う。
「嘘こくでねえ!おら森の中であんたのことを探している女の魔物に出会っただ!」
「真っ赤な目を光らせながら我が下僕、黒い騎士を見なかったか・・ってよ!」
「あんた、あの魔物の下僕なんだろ!」


「この私が魔物の下僕だと?何をバカなことを。」
レオコーンが主人公の姿に気づき、近づいてきた。
「そなたは確か主人公と申したな。何故このような場所にいるのだ?」
主人公は事情を説明した。
「そうか。ルディアノ王国の手がかりを。こんな私のためにすまない。」
「それで何か分かったのか?」
「・・黒バラの騎士。確かにルディアノではそう呼ばれていたが、そなたが何故それを?」
「何!私のことが童歌になっていただと?」
「どういう事だ。私がおとぎの国の住人だとでも言うのか。」
「良かろう。ならば北ゆく鳥を追うことにしよう。真実を掴むためにな!」
レオコーンは去っていった。


主人公はレオコーンの後を追い、エラフィタ村の北西にあるルディアノ城廃墟へ向かった。
ルディアノ城の最深部にある大部屋に入るとレオコーンと妖女イシュダルが対峙していた。
「ククク、お帰りなさい。レオコーン。ずいぶん探したけどやはりここに来たのね。」
レオコーンが言う。
「貴様はイシュダル・・そういう事か。今すべてを思い出した。」
「私は貴様を討つべく、このルディアノ城を飛び出し・・」
妖女イシュダルがレオコーンに近づく。
「そして私に敗れ、永遠の口づけを交わした。」
「あなたと私は数百年もの間、闇の世界で二人きり。」
「あなたは私の下僕。そうでしょ?レオコーン。」


「黙れ!貴様のせいでメリアは・・」
妖女イシュダルの攻撃を受けたレオコーンは吹っ飛ばされた。
「ククク、馬鹿な男。あの大地震のせいで私の呪いは解けてしまったけど、いいわ、もう一度かけてあげる。」
「二人きりの闇の世界にいざなうあの呪いをね。」


主人公がレオコーンの前に立ちふさがる。
「あら?何あんた。まさか、レオコーンを助けようってんじゃないだろうね。」
「ククク、あんたも馬鹿ねえ。この男にかけられた呪いの威力が分からないようね。」
「いいわよ。それじゃ、あんたにもかけてあげる。私のとびっきりの呪いをね!」
妖女イシュダルが呪いの攻撃を放つが、主人公はそれを跳ね返した。
「何故?何故私の呪いが効かない?」
「お前は何者だ?人ならば私の呪いにかかるはず・・もしやお前は!」
「ク・・こうなったら・・ズタズタに切り刻んであの世へ葬ってやる!死ねえ!」
主人公は襲いかかってくる妖女イシュダルを倒した。
「口惜しや・・再びレオコーンと私だけの世界が蘇るはずだったのに・・」
「でもね、レオコーン。数百年の時はもう戻すことは出来ない。」
「愛するメリアは何処にもいない。クク、絶望にまみれ永遠に彷徨い歩くがいいわ。」
妖女イシュダルは消滅した。


レオコーンが項垂れている。
「メリア姫・・そんな、まさか・・」
「そなたの手まで借り、ようやくルディアノに辿り着いたというのに。」
「時の流れと共に王国は滅び、私の帰りを待っていたはずのメリア姫ももういない。」
「私は戻ってくるのが遅すぎた・・」


そこに王家の首飾りをつけたフィオーネ姫がやって来た。
城の兵士にここまで連れて来てもらったようだ。
「遅くなどありません。」
「約束したではありませんか。ずっとずっとあなたのことを待っていると。」
「さあ黒バラの騎士よ。私の手を取り踊って下さいますね?かつて果たせなかった婚礼の踊りを。」
レオコーンとフィオーネ姫は一緒に婚礼の踊りを踊った。
「ありがとう、異国の姫よ。あなたがメリア姫でないことはもう分かっていた。」
「しかし、あなたがいなければ私はあの魔物の意のまま。絶望を抱え永遠に彷徨っていたことでしょう。」
フィオーネ姫が言う。
「あなたはやはり黒バラの騎士様だったのですね。」
「初めてお会いした時からずっと運命のようなものを感じておりました。」


「メリア姫の記憶を受け継ぐあなたならばそのように思われたのも不思議な事ではありません。」
「もう思い残すことはない。ありがとう・・」
レオコーンの魂は天に召されていった。


フィオーネ姫と話をする。
「あなたにお任せしたはずなのに、あの方の事を考えていたらここまで来てしまいました。」
「不思議な事があるものですね。あの方と踊っている間、どこからか声が聞こえたのです。」
「優しい女の人の声で、よく来てくれましたねフィオーネ、ありがとうって。」
「主人公様。あなたへのお礼もお城で改めてさせていただきますわ。必ずお城まで来てくださいね。」


主人公はセントシュタイン城に戻り、王様に報告した。
「おお、主人公か。よくぞ戻った。話は全てフィオーネから聞いておる。」
「思えばあの黒騎士も哀れな奴だったのう。わしも少し反省しておるよ。」
「よし、それでは約束通りおぬしに褒美を授けよう。」
「玉座の後ろにある階段を登り外に出てみなさい。そこから東に見えるのが宝物庫じゃ。」
「黒騎士事件のせいでこれまで通れなかった北東の関所も通れるようにしておいたぞ。」
「北東の関所の向こうには大きな町がある。覚えておくといいじゃろう。」
「わしらはここでおぬしの無事を祈っておる。」
「また会おう。セントシュタインの救世主、主人公よ!」


宝物庫で金のロザリオを手に入れた主人公は一度、天の箱舟に戻ってきた。
「あれ?あれあれ?」
「ちょっとどゆこと?天の箱舟ってば何にも変わってないじゃん。」
「神様があたしらを見つけてくれたなら箱舟が光って動き出しそうなもんなのに。」
「もしかして、あたしの予想、外れた?」
「マジすか・・あたしら神様に見捨てられちゃった?」
主人公が天の箱舟に乗り込むと、大きな音をたてて箱舟が揺れた。
「わわ!ちょっとどゆこと?今一瞬揺れたよね。あんたが入ってきた時・・」
「そうか!それよ、主人公!」
「黒騎士事件を解決した時に出た星のオーラの力であんたに天使の力が戻ったのよ!」
「天使が乗れば箱舟が動くっていうあたしの最初の予想、やっぱ当たってたんですけど。」
「いっぱい天使の力を取り戻せば今度こそ箱舟は動いちゃうんですけど。」
「それじゃ、お城の東にある関所を越えて新しい町に言ってみようよ。誰か困ってるかもしんないしね。」
「よーし!なんか希望が見えてきた。人助けの旅に出発進行!」


関所を抜けて北東へ進み、ベクセリアの町へ入る。
「旅の人、悪いことは言わないからここには近づかない方がいい。」
「このベクセリアの町はもうすぐ滅んじまう。巻き込まれたくなきゃさっさと立ち去ることだ。」


教会のシスターに話を聞く。
「流行り病にかかると激しく咳き込むようになり、人によっては高熱が出たりします。」
「ただの風邪に似ていますがいつまでも回復することはなく、だんだん弱っていくのです。」
「そしていずれは・・」


町の老婆に話を聞く。
「ずっと昔、今と同じように流行り病がこの町を襲ったと聞いた事がありますわい。」
「その時はどうやっておさまったんかのう。何とかして爺さんを助けてやりたいんじゃが。」


町の女性と話をする。
「学者のルーフィン先生が町長を手伝ってるらしいけど大丈夫なのかねえ。」
「あの二人ってほら、折り合いが悪いから。あたしゃ心配でならないよ。」


北の屋敷にいる町長と話をする。
「・・さっぱり読めん。やはり古文書の解読はあいつに頼るしかないか。」
「とにかくこれ以上被害が広まる前に何とかせねば。」
「おや?お客人でしたか。私はこのベクセリアの町長です。何かご用ですかな?」
「ふむ、この町で何が起こっているかが気になるという顔ですな。」
「いいでしょう。では分かっている限りのことをご説明しましょう。」
「我がベクセリアに流行り病が広がっていることはすでにご存知でしょうな。」
「実はこの流行り病、100年ほど前にも今と同じように流行ったものらしいのです。」
「そこで古い記録をあさって治療法を探しているのですが、何が何やらさっぱりでしてな。」
「やむを得ず学者のルーフィンにそれらしき古文書の解読を任せておるのです。」
「そろそろ何か分かっても良さそうな頃だが、こちらから聞きにくいのはシャクだな。」
「そうだ、お客人。あなたもどうなっているのか気になっておるのでしょう?」
「ならばルーフィンの所まで行って様子を見てきてもらえますかな。」
「あいつの家はこの屋敷の西にある一軒家ですから。申し訳ないがひとっ走り頼みますわい。」


ルーフィンの家で寝ているエリザと話をする。
「ごめんなさい。ちょっとうたた寝しちゃってて。」
「えっと、もしかしてルー君にご用かしら?」
「あ、ルー君ってのはうちの主人のルーフィンのことね。」
「ルー君なら今お仕事で研究室にこもってるんですよ。」
「え?パパ・・いえ、町長に頼まれて様子を見に?」
「それなら私が一緒に行って研究室の扉を開けてもらいますね。ルー君、人見知りするから。」
「あ、申し遅れましたけど、私ルー君の妻でエリザって言います。」


エリザと一緒にルーフィンの研究室に向かう。
「パパったらルー君に会うのが気まずいからって旅の人に頼まなくても・・ケホッ、ケホン!」


ルーフィンと話をする。
「今忙しいんだけどな。でもお義父さんの使いじゃ無視も出来ないか。」
「古文書の解読結果を聞きに来たんでしたっけ?」
「はじめまして。僕はルーフィン。考古学などをやっています。」
「あなたは・・主人公さん?まあ出来るだけ覚えておきますよ。多分すぐ忘れちゃうけど。」
「そんなことよりも古文書の解読の結果、流行り病の原因が判明しましたよ。」
「事の起こりは100年ほど昔、この町の西でとある遺跡が発見されたことです。」
「遺跡を発見したベクセリアの民は軽はずみにも遺跡の扉を開いてしまったそうです。」
「その中に病魔と呼ばれる恐るべき災が眠っているとも知らずに。」
「古文書によると実際には病魔というよりは呪いの一種だったようですね。」
「当時の人々は病魔を封印し、遺跡の入口を祠で塞ぐことで呪いから逃れたと言います。」
「多分この前の地震で祠の封印に何か異変が生じたのが原因でしょう。」
「祠に行って病魔を封印しなおさなければならないようだが、素人には難しい。」
「この町で出来るのは僕だけだろうね。」
「もし上手くいったらお義父さんも僕のことを認めてくれるだろうし。」
「何よりあの遺跡を調べられるまたとない機会だから、行きたいのはやまやまだよ。」
「でも遺跡には魔物が出るらしいし、わざわざ出かけていって怪我するのも馬鹿馬鹿しいよな。」


町長の家に戻り報告する。
「なんと、流行り病の原因は病魔の呪いですと。」
「で、その呪いを解くにはこの町から西にある祠の封印を直す必要があるわけですか。」
「しかもそれが出来るのはルーフィンだけ。なるほど、事情は分かりました。」
「そう言えばあなたは見たところなかなか腕がたちそうですな。」
「どうでしょう。あなたにルーフィンの護衛を頼めませんかな。」
「祠へ行くのが危険だと言ってるなら護衛を付けてやれば問題ないでしょう。」
「勿論私から何がしかのお礼はいたしましょう。引き受けてもらえませんかな?」
主人公は頷いた。
「おお、やってもらえますか。ありがとうございます。」
「ならば前は急げだ。この鍵をルーフィンに渡してやって下さい。」
主人公は祠の鍵を受け取った。
「その鍵があればこの町から西にある祠の扉を開くことが出来るはずです。」


研究室に向かいルーフィンと話をする。
「あれ、その鍵は・・」
「え、お義父さんが僕の護衛をあなたに頼んだですって?」
「なるほど。あなたはお義父さんの手の者ってわけだ。こりゃあ見事に嵌められたな。」
「行けばいいんでしょう。僕が口先だけの男じゃないってお義父さんに証明してやりますよ。」
「そうと決まればのんびりしてられないな。」


主人公はルーフィンと一緒に西にある封印の祠へ向かった。
祠の奥に行くと壊れた壺があった。
「おお、古文書で見た通りです。あそこに転がっているのは病魔を封じていた封印の壺。」
「やっぱり地震で壊れてしまったようですね。」
「よし、封印の紋章が描かれた部分は壊れていないな。これなら楽勝だ。」
「一流の考古学者ならこれくらいの割れ物を直すのなんて朝飯前ですよ。」
「まずは破片を集めてっと・・後は特性接着剤で・・」
すると突然、病魔パンデルムが現れた。
「愚かなる侵入者よ。我を再び封印せんとやって来たか。」
「そうはさせぬ。汝に病魔の災いあれ!」
主人公は襲いかかってくる病魔パンデルムを倒した。
その後ルーフィンは直した封印の壺に病魔パンデルムを封印した。
「見てましたか、主人公さん。見事病魔の奴を封印してやりましたよ。この僕が。」
「フッフッフ。これでお義父さんも僕のことを認めざるを得ないでしょうね。」


ベクセリアに戻ると、エリザは家のベッドで寝ていた。
話しかけても返事がない。なんとエリザは息をしていなかった。
「エリザ?どうしたんだ、エリザ!返事をしてくれ!」
「死んでいるのか?まさかエリザ、君も病魔の呪いにかかって?」
「馬鹿な!病魔は確かに封印したはずだ。町の連中だって治ったって・・」
「どうして言ってくれなかったんだ。君が病魔の呪いに侵されていると知っていればもっと急いだのに・・エリザ!」


その夜、エリザの亡霊が主人公の前に現れた。
「あはは、私、死んじゃいました。・・って私のことが見えるんですね。」
「凄い!どこか普通の人と違うと思ってたけど主人公さん、霊能者だったんだ。」
「良かった。主人公さんがいてくれれば何とかなるかも。」
「えっと、お願いなんですけど、ルー君を立ち直らせるために協力してもらえませんか?」
「このままじゃルー君、駄目になっちゃうと思うんです。」
エリザの頼みを聞き、ルーフィンと一緒に町の人達からルーフィンへの感謝の気持ちを聞いて回った。
「ありがとうございます。おかげでエリザの言いたかったこと、分かったような気がします。」
「今までの僕は何をやるにも自分のことばかりで周りが見えてなかったんですね。」
「だからエリザの体調がおかしいことすら気づかないで。まったく情けない話です。」
「今日町を回ってみて、初めて自分がいかに多くの人々に関わっているのか気づきました。」
「これからはその事を忘れずに、このベクセリアの人々と共に生きていこうと思います。」
「みんなに感謝されるのも悪くない気分ですしね。」


外に出てエリザの亡霊と話をする。
「ルー君を助けてくれて本当にありがとうございます。」
「おかげで私、死んでいるのに自分の夢を叶えることが出来ちゃいました。」
「ルー君の凄い所を町のみんなに知ってもらうこと。」
「そしてルー君にこの町を好きになってもらうこと。それが私の夢でしたから。」
「あわわ、もう時間みたい。」
「それじゃあこれでお別れです。どうかお元気で。」
エリザは天に召されていった。


すでに日の出も近い時間。主人公は宿屋に戻り休むことにした。


朝になるとサンディが喜んでいる。
「ついにやってくれたね、主人公!」
「あんたには見えないだろうけど、今町中に星のオーラが溢れてるんだよ。」
「これだけ人間を幸せにしたんなら、あんたの天使としてのランクも赤丸急上昇間違いなしでしょ。」
「ってことは、今度こそ天の箱舟も動いてくれるに違いないって。」
「さあ、天の箱舟の所までダッシュで戻る!」


天の箱舟に乗り込もうとすると、フードをかぶった女性の亡霊が現れた。
「・・いない。」
「・・あの人はここにもいない。」
フードをかぶった女性の亡霊は消えてしまった。


主人公が天の箱舟に乗り込むと大きな音をたてて箱舟が動き始めた。
「・・行ける。今度こそ行けるわ!」
「あとはあの操作パネルをチョチョイといじってやれば天の箱舟は飛び上がるはずだよ!」
「それじゃ、いっくよー。スイッチ、オン!」
天の箱舟が空に浮かび上がり天使界に向けて出発した。
天使界は荒廃しており、世界樹の前で長老オムイが神に祈りを捧げていた。
「神よ・・聖なる世界樹よ。どうか我らをお守り下され。」
そこに天の箱舟がやって来て中から主人公が降りてくる。
「なんと!しかもその姿はどうしたのだ!天使の翼も頭の光輪も無くなっているぞ!」
主人公は長老オムイに事情を説明した。
「何?人間界へ落ち、翼を失ったお前を天の箱舟が送り届けてくれたじゃと?」
「・・ともかく主人公よ。よくぞ無事天使界へ帰った。」
「さあおいで。地上で何が起きているのか私達に教えておくれ。」


主人公が人間界から無事に帰ったという知らせは天使界中に伝えられた。
主人公が人間界に落ちた時、天使の光輪と翼を失ったこと、天使の力を失ったことも。
そして人間界のあちこちで異変が起きていることを長老オムイに話した。
「そうか。あの時の邪悪な光は天使界ばかりでなく人間界までも襲っていたのか。」
「主人公も覚えておろう。女神の果実が実ったあの日、邪悪な光が天使界を貫いた。」
「天の箱舟はバラバラになり、そして女神の果実全てが人間界へ落ちてしまったようなのじゃ。主人公、お前と共にな。」
「あの後、地上に落ちてしまった天使や邪悪な光の原因を探すため何人もの天使が地上へ降りた。」
「じゃが主人公、お前の他は誰も戻ってこないのだ。」
「皆のことが気がかりじゃが、ともあれお前だけでも戻ってこれて良かった。」
「お前は世界樹の元に行き、戻れたことを感謝し祈りを捧げるのだ。」
「もしかすれば世界樹の力が失われた翼と天使の光輪を蘇らせてくれるかも知れんぞ。」
「行きなさい、守護天使主人公よ。お前に神と聖なる世界樹の守りがありますように。」


世界樹に向かう途中、ラフィットが石碑に祈りを捧げていた。
「偉大なる天使エルギオスよ。主人公とイザヤールがどうか無事に帰りますように。」
主人公の姿を見て驚くラフィット。
「え・・主人公?」
「良かった、無事だったのね。ねえ、イザヤールは?一緒に帰ってきたんじゃないの?」
「・・そっか。てっきりイザヤールも一緒だと思ったんだけどなあ。」
「イザヤールはあなたを探しに人間界へ降りてからずっと帰ってないんだ。」
「だから私はこの石碑の前でずっと祈りを捧げていたのよ。二人が無事帰りますようにって。」
「これはエルギオスの石碑。エルギオスの事を忘れぬため作られたもの。」
「偉大なる天使エルギオス。その気高き魂と人間を愛する美しい心、我ら忘れることなし。」
「そして誓おう。神の国に帰れるその日までこの世界を見守っていくことを。」
「エルギオスというのは、かつて何百年も前にイザヤールの師だった天使。」
「ある時消息不明になってしまった。何が起こったのか、もはや知る由もなく私達はこうして祈るしかないの。」
「イザヤールは心配だったのよ。主人公までエルギオスみたいに帰らないんじゃないかって。」
「偉大なる天使エルギオス。イザヤールの師よ。どうかお守り下さい。」
「あなたの弟子イザヤールが無事天使界へ帰りますように。」


世界樹の前で祈りを捧げると、やがて主人公は眠りに落ちてしまった。
何処からか声が聞こえる。
「人間達はこの世界には相応しくない。」
「己の事しか考えず、嘘をつき、平気で他者をおとしめる。そんな人間のなんと多いことか。」
「私は人間達を滅ぼすことにした。」
天から赤い雷が地上に向けて放たれた。
青い光を放つ何者かがその赤い雷を打ち消した。
「お待ち下さい!」
「私は人間達を信じます。」
「人間を滅ぼしてはいけません。どうか・・」


「ええい、黙れ!」
「もう決めたことだ。人間は滅ぼさねばならぬ。」


「私は人間達を信じます。この身にかえても人間と人間界を守りましょう。」
主人公は目を覚ました。
どうやら主人公は夢を見ていたようだ。


主人公は世界樹に祈りを捧げたが、翼も頭の光輪も戻らなかった。
何処からともなく不思議な声が聞こえてくる。
「守護天使主人公よ。よくぞ戻ってきました。」
「翼と光輪を無くしてもなお、ここに戻って来られるとはこれもまた運命なのかも知れません。」
「守護天使主人公よ。あなたに道を開きましょう。」
「私のチカラを宿せし青い木があなたを新たな旅へといざなうでしょう。」
「そしてもう一つ。これまであなたが旅した地へと戻る呪文を授けましょう。」
主人公はルーラの呪文を覚えた。
「守護天使主人公よ。再び地上へ戻りなさい。」
「天の箱舟で人間界へ行き、散らばった女神の果実を集めるのです。」
「そして人間達を、世界を救って下さい。」


そこへ長老オムイがやって来た。
「どうじゃ、主人公よ。翼と光輪は戻ったのか?」
「・・何という事じゃ。世界樹に祈りを捧げても天使のチカラが戻らんとは。」
「可哀想に、主人公よ。お前はずっとこのまま・・」
主人公は長老オムイに今までに起きたことを説明した。
「何?世界樹に祈りを捧げたら不思議な夢を見たじゃと?」
「ううむ、なんとも不思議な夢じゃ。」
「世界を滅ぼさんとする者とそれを止めようとする者。」
「主人公が天使の翼と光輪を無くしたことや天の箱舟に乗れることにも何らかの意味があるのじゃろう。」
「主人公が見たという夢は恐らく神のお告げ。」
「聖なる声がお前に女神の果実を集めよと言うならば、わしはそれを信じよう。」
「女神の果実には世界樹のチカラが宿っておる。女神の果実を集めれば人間界も天使界も救われるかも知れん。」
「行きなさい、主人公よ。人間界に落ちた女神の果実を集め、無事に天使界へ持ち帰るのだ。」
「果実は全部で7個ほどじゃったように思うぞ。」
「頼んだぞ、守護天使主人公よ。」


再び天の箱舟に乗りサンディと話をする。
「何であのオヤジいないかなー。ここまで来たら普通顔くらい見せるでしょ。」
「もしかして箱舟が落ちた時、人間界の何処かに落ちちゃった?探すの超ダルいんですけど。」
「でも店長いないとバイト代貰えないし・・」
「あ、主人公!実はあたし困ってるんだよね。ちょっと人探しで人間界戻らなきゃなんなくて。」
主人公は事情を説明した。
「ちょ、マジ?あんたも天の箱舟で人間界行きたいわけ?」
「それいい!協力する!よし、一緒に行こう!」
「でも天の箱舟ちゃん、壊れてるんですけど。また人間界行けるのかな?」
「あれ?何あの青い木。箱舟ちゃん降りれるっぽい?」
「よく分かんないけど、とりあえず行くしかないっしょ。」


主人公は天の箱舟で青い木がある大陸に向かった。
「地上ではこの青い木のある所にしか天の箱舟を停められないみたい。ここからは箱舟を降りて歩かなきゃ。」
「で、さっき見えた建物って多分ダーマ神殿ってとこだよ。そこでは転職が出来るんだとか。」
「きっと人も沢山集まってるはずだから行ってみて損はないと思うんですけど。」
「それじゃああたしは人探し。あんたは女神の果実探し。つーことでダーマ神殿、行ってみよー!」


ダーマ神殿に入り、神官に話しかける。
「ようこそダーマ神殿へ。転職をしに参られたのですか?」
「申し訳ありません。大神官様が不在のため、今は転職が出来ないのです。」
「大神官様は必ずお戻りになると思いますのでどうかお待ちを。」
「おや?まだ何かご用が?」
「ほほう。光る果実をお探しと。」
「むむ、そう言えば大神官様がそのような果実を転職に来た者から受け取っていたような。」
「その者はまだこの神殿に留まっていたと思いますので話を聞いてみるとよろしいでしょう。」


下の階でメイドに話を聞く。
「はい?光る果実ですか。それなら見たことありますよ。」
「この間お昼を食べに来た大神官様が持ってきました。果物が大好物らしいんです。」
「デザートに食べるから皮をむいてくれって頼まれたので食後にお出ししました。」
「その光る果実は武闘家に転職した人がくれたと大神官様は言ってましたね。」


武闘家の男性に話を聞く。
「なんだい?俺に何か用かい?」
「光る果実を知らないかだって?ああ、それなら確かに俺が大神官に差し入れしたよ。」
「ここに来る途中で拾ったのさ。大神官は果物に目がないって聞いてたからな。」


サンディが主人公の懐から現れた。
「ここにも店長いないんですけど。まったくどこに行っちゃったんだか。」
「でもさ、主人公が探してる女神の果実はどうもこの神殿にあったっぽくない?」
「何か大神官って人が食べっちゃったくさいんですけど。」
「とにかくさっきの大臣っぽい神官に果実のことを話して大神官を追っかけたほうがいいんじゃないの?」


先程の神官に話を聞く。
「おや、あなたは先程の。」
「何ですと?大神官様が出ていったのは光る果実を食べたせいなのですか?」
「なるほど。その果実には秘められたチカラがあると。」
「む、そうか。ダーマの塔か。」
「そこはかつて転職の儀式が行われていたと言われる塔ですが、今は魔物の巣になっているのです。」
「そんな危険な所へ大神官様が一人で行くなど考えもしませんでしたが。」
「光る果実によってチカラを得たというのであればダーマの塔へ向かったとしか考えられません。」
「旅の方、ダーマの塔へおもむき、どうか大神官様を連れ戻してはいただけませんか?」
「我々ではあの塔に潜む魔物には太刀打ち出来ないのです。」


東にあるダーマの塔へ向かい最上階に登ると大神官がいた。
「全ての職業を知り、全ての職業を司る大いなるチカラよ。」
「今こそ我に・・む?」
大神官が主人公に気付いた。
「何者じゃ。ここへ入り込むなどただの迷い人ではないと見える。」
「じゃがわしの邪魔をすることは許さぬぞ。」
「わしはチカラを手に入れたのじゃ。このチカラがあれば、わしは人々をより良き道へ導くことが出来る。」
「わしはダーマの大神官として人々のためここで祈り、さらなるチカラを手に入れるのじゃ!」
「今こそ我にチカラを!我に人々を導くチカラを与えたまえ!」


大神官の周りを闇の渦が取り囲む。
「おおお、チカラが満ちてくるぞ・・」
「何事じゃ。身体が・・この身体はなんじゃ・・これはまるで化物・・ぐう・・」
「黒いチカラが溢れて・・違う・・わしはこんなチカラを求めていたのではない!」
大神官は魔神ジャダーマに姿を変えた。
「ククク。そうか。このチカラで人間どもを支配すれば良いということか。」
「我はこれより魔神ジャダーマと名乗り、人間どもを絶対の恐怖で支配するとここに誓おう!」
「ちょうど良い。貴様相手にこのチカラを試してくれよう。」
「さあ、恐怖に怯える姿を我に見せるがよい!」
主人公は襲いかかってくる魔神ジャダーマを倒した。
「オオオ・・我のチカラが!チカラが消えていく・・」
魔神ジャダーマは消滅し、元の大神官の姿に戻った。
「うう・・わしはここで何を?そなたは何者だ。何故ここにいる?」
主人公は事情を説明した。
「光る果実を求めて?」
「そうじゃ!わしは光る果実を食べた。その後はよく覚えておらん。」
「覚えているのは自分が自分でなくなっていく恐怖だけじゃ。」
「なんと、わしは魔物の姿となり世界を支配しようとしていたじゃと?」
「そなたがわしを救ってくれたのか。そうか。」
「ああ、ダーマ神殿に帰らなくては。転職を待つ人々がわしを呼んでいるのが聞こえるのじゃ。」
大神官はダーマ神殿に帰っていった。
大神官がいた場所に女神の果実が落ちているのをサンディが見つける。
「ちょ、これって女神の果実じゃん!大神官のおっさんに食べられちゃったはずなんですけど?」
主人公は女神の果実を手に入れた。
「ま、いいか。主人公の探してるものが手に入ったんだからここは喜ぶところよね。」
「それにしても人間が果実を食べると、ろくなことにならないんですけど。あー、やだやだ。」
「ま、それはそれとして、あたしたちももう一度ダーマ神殿に行ってみない?転職っていうのにも興味あるし。」


ダーマ神殿に戻り大神官と話をする。
「おお、そなたは主人公殿。ダーマの塔では世話になった。」
「一体あの果実は何だったのじゃろうな。」
「わしは確かに人々をより良い道へと導くためのチカラを求めていた。」
「あの果実はそのチカラを与えてくれたのかも知れないが、わしはそのチカラに溺れてしまった。」
「あの果実は人が食べてはいけないものだったのじゃろう。」
「そなたが止めてくれなければ、わしは世界を滅ぼしていたかも知れんのじゃからな。」
「そなたには礼のしようもない。せめて我が転職のチカラをそなたの旅に役立てて欲しい。」
「わしはダーマ大神官。転職によって人々をより良き道へと導くことこそわしの役目なのだ。」


主人公はダーマ神殿から南へ道なりに歩き、ツォの浜へ入った。
「おやおや、よくまたこんなとこまで来たもんだね。ここはツォの浜。漁師の村じゃ。」
「さあ浜辺に急ぎなされ。今ならありがたいものを見られるじゃろうて。」


浜辺には人だかりが出来ていた。
「主様のおかげで私達、本当に助かってるんです。」
「それにオリガもお父さんを亡くしたばかりで大変なのによくやってますよ。」


オリガという少女が海を見つめて一心に祈っている。
「主様、海の底よりおいで下さい。」
「どうかあたし達にお力を。ツォの浜のため、海の恵をお授け下さい。」
突然海からクジラが現れ、尾びれで海面を叩く。
すると浜に大量の魚が降ってきた。


オリガと話をする。
「あなたは旅人さん?」
「よかった。あたし、ずっと村の外から誰かが来るのを待ってたんです。」
「あたし・・」
そこへ村長がやって来た。
「オリガ。もうお前の父が行方知れずになったあの嵐の日から随分になる。」
「厳しいことを言うが、お前の父は死んだのだ。もうこの浜に戻ることはあるまい。」
「だからな、オリガ。うちの子にならないか?」
「息子のトトとお前は仲もいい。わしはお前を娘のように思っているのだ。」
「お前は本当によく頑張った。もう充分だろう。」


オリガが言う。
「ありがとうございます。少し考えてみます。」
「あの、実はあたしもお話したいことがあったんです。」
「村長様、あたしもう主様をお呼びしたくないんです。」
「あたし、こんな暮らし間違ってる気がするんです。だから・・」


村長が怒り出す。
「馬鹿なことを言うでないぞ!そんな話今さら納得するわけないだろう。」
「それにお前はどうするつもりだ?村のために他に何が出来る?」
「今日はもうよい。お前も疲れているのだろう。」
村長は帰っていった。


オリガに話の続きを聞く。
「海の神様に甘えきってしまうなんていけないことだわ。」
「なのに誰も耳を貸してくれない。村長様だって。」
「でも村のことに関係ないあなたにならきっと話を聞いてもらえると思ったんです。」


夜の浜辺に男性の亡霊がいた。
「おお、旅人よ。死んだこのわしが見えるというのかね。」
「見たろう?この浜に現れた主様と呼ばれている者を。」
「あれは断じて海の守り神などではない。」
「可哀想に。あのオリガという娘は得体の知れぬあの生き物に取り憑かれているのじゃ。」
「頼む、旅人よ。あのオリガという娘を守ってやってくれ。今に良くないことが起きるぞ。」


次の日の朝、オリガが村から姿を消した。
村の裏門の前に村長の息子のトトがいたので話を聞いてみる。
「あのね、オリガがうちに来てやっぱりもう主様を呼びたくないって言ったんだ。」
「そしたらパパ、すごい怖い顔してオリガをこの先の岩場に連れてっちゃって。」
「ねえ、僕何だかすごく嫌な予感がするんだ。オリガとパパを追いかけて!」


村を出て海辺の洞窟を抜けると、オリガと村長がいた。
「どうだ、綺麗な場所だろう?ここならお前も落ち着いて話が出来ると思ってな。」
「お前はこのところ祈ってばかりで疲れてしまったんだな。」
「仕方がない。浜でお祈りするのはもうやめよう。」
「村人にはわしから言っておいてやろう。主様をお呼びするお前のチカラは消えたと。」
「それでだな、オリガよ。これからお祈りはこの岩場でこっそりとしようではないか。」
「海の底にはサンゴや真珠、沈んだ船の財宝もあるだろう?」
「そうしてくれればわしらは豊かで幸せに暮らすことが出来る。」
「だからもう帰ってこない父を待ち続けるのはやめなさい。」
「これからはわしがお前の父親になろう。」


近づいてくる村長にオリガが抵抗する。
「違う!止めて!あなたはあたしのお父さんなんかじゃない!」
「あたしのお父さんは・・」
突然海から主様が現れ、オリガを食べてしまった。
村長は驚いて腰を抜かしている。


主人公は怒り狂っている主様を倒した。
するとオリガは主様の口の中から無事に出てきた。
「やめて!主様!この人には手を出さないで!」


主様からオリガの父親の声が聞こえる。
「オリガ、その者は村長の手下ではないのか?」
「旅人よ、申し訳ないことをした。怒りで私はどうかしていたようだ。」
「オリガ、辛い思いをさせてすまなかった。」
「あの嵐の晩、海に投げ出された私の元へ黄金の果実が降ってきたのだ。」
「薄れゆく意識の中、それを手に私は浜に残したお前を想った。」
「まだ小さいお前がこれからどう生きていくのかと。」
「そしてあの時、私は確かに死んだ。だが次に目覚めた時、私はこうしてこの姿で蘇っていたのだよ。」
「私はお前が生きていくために浜に魚を届けていたのだ。」
「だがいつしかお前の元に人々が群がるようになっていった。」
「黙って見ていたがもうここまでだ。行こう、オリガ。こんな村は捨てて遠くへ行こう。」
「これからもずっと私がお前の面倒を見てやる。何も心配はいらない。」


オリガが言う。
「お父さん、駄目だよ。そんなのは良くない。」
「あたし、浜で漁を手伝うよ。自分でちゃんと働くの。」
「お父さんの仕事、ずっと見てきたもの。全部覚えてるもの。」
「あたしはお父さんの娘。村一番の漁師の娘。」
「あたしは一人でやってけるようにならなくちゃ。」
「お父さん、主様になってこれまで助けてくれてたんだね。ありがとう。でももう大丈夫だよ。」


オリガの父親が言う。
「オリガ・・いつまでも子供と思っていたが、お前は私の思うよりずっと大人になっていたのだな。」
「私のしていたことは全て余計なことだったようだ。」
「オリガ、私はお前の言葉を信じよう。自分の力で生きるお前を見守り続けよう。」
「オリガ、私はいつもお前の側に・・・」
オリガの父親は天に召されていった。
主様が消えたあとに女神の果実が浮かんでいた。
主人公は2つ目の女神の果実を手に入れた。


こうして果実を手に入れた主人公は、オリガ達と共にツォの浜へと戻った。
「旅人さん、本当にありがとうございました。」
「お父さんが主様だったなんて、この目で見たことなのに何だか夢でも見てたみたい。」
「あの時本当は、主様になったお父さんでもいいからもっと一緒にいれたらって考えちゃった。」
「でもあんなの良くない。お父さんが可哀想だもの。」
「あたし頑張りますよ。お父さんもお母さんも見守ってくれる。それにトトだっていてくれるもの。」


船にいる船員と話をする。
「今日から漁を始めることにしたんだ。」
「今度は遠くの海の魚を狙う。この辺じゃ魚が取れないからな。」
「あんたも東の大陸に行きたきゃ連れてってやるぜ。」


主人公は漁師の船に乗せてもらい東の大陸へ向かった。
東の大陸の船着き場から東に進むとカラコタ橋があった。
「このカラコタ橋は行き場のないならず者たちの吹き溜まり。全部忘れて楽しく行こうぜ。」


橋の下で暮らしている男性に話を聞く。
「この間、橋の近くにキラキラ光るヘンテコな果実が落ちてきたらしいんだ。」
「この町の誰かが拾ったって話だが、ええと、誰だっけな。」


奥の小屋に住む男性に話を聞く。
「いやあ、まさか手に入れた金ピカ果実がこんなに高値で売れるなんてよう。」
「ん?あんたも金ピカ果実が欲しかったのか?」
「果実ならビタリ山の麓に住んでる変わり者のラボオのジジイが買っていったぜ。」
「ビタリ山ならカラコタ橋を渡って道沿いに東の方へ行けばいい。後は立て札を見てきゃ分かるよ。」


南の橋を渡っている途中、フードをかぶった女の亡霊に出会った。
「・・いない。この町にも。」
「まさか・・」
主人公の顔をじっと見つめる女の亡霊。
「・・違う。違うわ。」
「・・どうかしてる。旅人を天使と見間違えるなんて。」
フードをかぶった女の亡霊は何処かに行ってしまった。
サンディが主人公の懐から出てきた。
「あいつ、前にもどっかで見なかった?」
「まあいいか。それより果実を探さなきゃ。」


カラコタ橋を東に抜けてビタリ山へ向かう。
ビタリ山の麓にラボオ爺さんが住んでいるという小屋があったが、今は留守のようだ。
机の上に置かれていた日記を読んだ。
「遠い昔、私は泣く恋人に5年で戻ると言い聞かせ修行の旅に出た。」
「私はひたすらに彫った。気づけば約束の5年などとうに過ぎていたが気にもとめなかった。」
「けれどようやく故郷の村に戻った私が目にしたのは、すでに他の男と結婚した彼女の姿だった。」
「全ては過ぎ去った話。この老いぼれが若かった頃の話。」
「だがそれでも私はビタリ山へ行く。終わりまであと少し。」
「この山小屋にはもう戻らないだろう。」


主人公はビタリ山に登り、頂上にある石の町に入った。
町の人や家は全て石で出来ている。
1軒だけ中に入れる石の家があった。
「へえ、この家は入れるようになってるんだ。」
「一体この町って何なの?全部石で出来てるみたいだけど。」
「ねえ、主人公。あたし達、この町に何だか見覚えない?」
「ずっと前にこんな場所って来たことなかった?町の真ん中にあったでっかい木とか見覚えない?」


この石の家の中に話ができるスライムがいた。
「プルプル、君は誰?どうしてここへ来たの?」
「ラボオ爺さんはずっとここで一人で彫刻を彫ってたんだ。」
「何年も何十年もかけてこの町を完成させて爺さんは死んじゃった。」
「ラボオ爺さんはね、最期にカラコタで買ったとても綺麗な果実を食べたんだ。」
「たった一度の贅沢さ。爺さんその時言ってた。」
「この町は自分の全て。だからどうやったらいつまでも残せるだろうかって。」
「でもあれから・・」
大きな物音がした。
「来た!あれからなんだか怖い音が外から聞こえるんだ。」


主人公が外に出ると、石の番人がいた。
「誰だ・・ラボオではない・・ならば・・」
「我は番人。この地を荒らすお前を許しはせぬ。」
主人公は襲いかかってくる石の番人を倒した。
するとラボオ爺さんの亡霊が現れた。
「すまなかったね、旅の人よ。」
「どうやらあの番人は私が不思議な果実にこの地の平穏を願ったばかりに生まれたようだ。」
「だがあれは私の本意ではなかった。これでようやく私の小さき友人も安心できるだろう。」
「私は帰れぬ故郷の地を、手に入らなかった大切な物をここに作り上げたのだ。」
「そう、この地は幻影。老いぼれの見た最後の夢。」
「だがそれでも・・クロエ・・私はこれで愛する君の元へ、故郷エラフィタに帰ったのだ。」
ラボオ爺さんは天に召されていった。
ラボオ爺さんがいた場所には女神の果実が落ちていた。
主人公は3つ目の女神の果実を手に入れた。
「そっか、思い出した。」
「ここって黒騎士騒ぎの時に歌を聞きに来たエラフィタ村なんだ。」
「あの村がラボオってお爺ちゃんの故郷だったんだね。それを何十年もかけて。」
「でもこのことを知って、お爺ちゃんの元カノはどう思うんだろう。」
「ねえ、主人公。人間のすることってよくわかんないね。」


主人公はルーラの呪文でエラフィタ村に行き、クロエ婆さんと話をした。
「まあ、ラボオに会った?山の上に石のエラフィタを作って?」
「面白いこと言うのね。それにあなた、一体ラボオの名をどこで聞いたの?」
「ラボオ、懐かしい響き。」
「確かに昔、この村の生まれのラボオという名の青年がいたわ。私は彼と恋人同士だった。」
「でも彼は腕を磨くために旅に出てそれっきり。この村には帰ってこなかった。」
「裏切られたって思ったわ。私はあの人の事をずっと待って・・」
「なのにあの人が彫刻でエラフィタを?そんな事あるはずないわ。」
「私にはとても信じられない。あの人はこの村を捨てたのよ。私と一緒にね。」
「それにあなたの言ったことが本当だとしても今更遅いわ。」
「時間は決して戻せないのよ。」


主人公はカラコタ橋から南に進み、サンマロウの町に向かった。
「花の町サンマロウへようこそ。まあ、あなた旅人さんね。」
「なら自分の船が欲しいんじゃない?」
「この町にある立派な船なら世界中何処へだって自由に旅が出来るはずよ。」
「ね?欲しいでしょ?欲しいわよね。だったらマキナお嬢様のお友達になるといいわ。」


船着場にいる老人と話をする。
「どうじゃ?ここにある船は立派じゃろう。」
「かつては世界の海を自由自在に旅していたんじゃぞ。」
「しかし持ち主の大商人様が亡くなられてからというもの、船はずっとほったらかしじゃ。」
「昔はこのわしも船番として高台にあるお屋敷に雇われていたんじゃが。」
「なに?あんた船に乗りたいのか。そうか。この船を必要とする人間がまだいたとはな。」
「ではお屋敷のマキナお嬢さんに船をくれと頼んでみるといい。優しい方じゃからきっと聞いて下さる。」
「門番には船番の爺さんの知り合いだと言えば通してくれるはずじゃぞ。」


町にある大きな屋敷に住むマキナと話をする。
「誰?新しいお友達?」
「あなた、初めて会う方ね。」
「え?船が欲しいの?いいわ、あげる。何処へでも持っていって。」
「その代り、私のお友達になって・・」
「あれ?あなた、町の人達とは違う・・」
「あなた、マキナを迎えに来たのね?」
「駄目よ!絶対駄目!」
「私、あなた嫌い。あなたなんかお友達じゃないわ。やっぱり船もあげない。帰って。」


屋敷に住むマキナの乳母と話をする。
「ええ、私は昔マキナ様の乳母を務めておりました。」
「マキナ様がお部屋に閉じこもってしまったんですか?」
「心配だわ。でも私が行ったところで会って下さるかどうか。」
「マキナ様はご病気が治ってから別人のように気難しくなり、使用人とは口も聞かぬ有様。」
「でもそうだわ。一人だけ今も変わらずマキナ様の心を開く相手がいます。」
「マキナ様お気に入りの人形を作ったからくり職人のお爺さんです。教会の隣に住んでいますよ。」


教会の隣の家に住むお爺さんと話をする。
「この店は昔わしの工房でな。からくり職人としていろんな物を作ったもんじゃよ。」
「ん?なんじゃと?マキナお嬢さんに人形を作ったことがあるだろうじゃと?」
「なぜ旅人のあんたが。そうか、乳母から聞いたんじゃな。うんうん、懐かしい話じゃ。」
「なに?マキナお嬢さんがへそを曲げて部屋に閉じこもったじゃと?」
「ううむ、それは心配じゃ。旅の人、知らせてくれてありがとう。」
「どういう訳だかお嬢さんはわしをえらく気に入っておってな。」
「使用人たちを追い出した後もわしだけはちょくちょく家に招いてくれるんじゃ。」
「行ってみよう。わしが声をかければ部屋から出てきてくれるかも知れん。」


からくり職人のお爺さんと一緒にマキナの部屋に行くが、マキナの姿が見当たらない。
「おかしいな。マキナお嬢さんがいない・・わしが作った人形もない・・」
「ベッドの上に手紙があるな。どれどれ。」
「娘は預かった。返して欲しくば金を北の洞窟まで持ってこい。」
「この手紙は・・大変だ!みんなに知らせなくては!」
からくり職人のお爺さんは急いで部屋を出ていった。


するとベッドの横にマキナによく似た女の子の亡霊が現れた。
「あの子は私のたった一人の大切なお友達。」
「私はマキナ。そしてあの子、さらわれてしまったあの子は私のお人形、マウリヤ。」
「不思議な光る果実のチカラで命を宿した私の大切なお人形。」
「普通の子のように外で遊ぶことが出来ない私にとってマウリヤだけがお友達でした。」
「大好きな大切なお友達。マウリヤと毎日遊んだ。とても幸せでした。」
「でも私の病気はどんどん酷くなり、じきに天使様がお迎えに来るだろうと分かっていました。」
「そんなある日、召使いが万病に効くという珍しい果物を取り寄せたのです。」
「黄金色に輝く美しい果実。けれど私はとっくに諦めていました。」
「黄金の果実を食べたところで私の病気が治るはずはない。私の命はもう尽きるのだと。」
「その果実を手に取った時、光る果実はマウリヤに吸い込まれていきました。」
「そして動き出したマウリアに私は言いました。」
「マウリヤ、あなたに私の持っているものを全部あげる。」
「あなたがマキナになるの。」
「お人形だと知られたらこの町にあなたはいられないかも知れない。だから私のふりをして、と。」
「私の言葉を守るためマウリヤは誰にも気づかれぬよう墓を作り、マキナになりすましました。」
「天使様、町の人々を騒がせた罪は私一人のもの。マウリヤをどうか責めないで。」
「どうか天使様、マウリヤを・・私の大好きなお人形を・・大切なお友達を助けて・・」


主人公はサンマロウの北にある洞窟に向かった。
洞窟の奥にいる妖毒虫ズオーを倒すと、マウリアをさらった盗賊は恐れをなして逃げていった。
「本当は分かってるの。うまく出来ないの。」
「みんな本当のお友達じゃない。物をあげるときだけ来てくれるの。」
「本当は私はいらないの。」
「マキナのために沢山お友達を作りたかったけど、私作り物だから駄目なのね。」
「マキナは遠い国へ旅立つ。私は人形マウリアに戻る。」
「でもその前に、マキナは旅に出るってみんなに教えてあげなくちゃ。」


主人公はマウリアと一緒にサンマロウに戻りマキナの墓の前に行くとマキナの亡霊が現れた。
「マウリア、ごめんさない。もう遊べないのよ。」
「一人ぼっちだった私をマウリア、あなたが支えてくれた。でも今はあなたが一人ぼっち。」
「私を幸せにしてくれたあなたを、私は・・」
「ごめんなさい。あなたはもう自由になって。私の願いに縛られないで。」
「私はマキナ。あなたはマウリア。私は天使様と一緒に遠い国へ旅立ちます。」
「だからあなたも偽物のマキナじゃなくてお人形のマウリアに戻って。」
「マウリア、大好きなお友達。ありがとう。」
「天使様、船着き場にある船はどうぞご自由にお使い下さい。」
マキナの亡霊は天に召されていった。
それを見届けたマウリアも普通の人形に戻った。
人形に戻ったマウリアの横に女神の果実が落ちていた。
主人公は4つ目の女神の果実を手に入れた。


船番のお爺さんに今までに起きた出来事を報告した。
「マキナお嬢さんもあんたに感謝しておったはずじゃ。」
「さて、マキナお嬢さんの言われた通りこの船はあんたが自由に使うといい。」
「世界中どこまでも自由に船を走らせてくれ。船も喜ぶじゃろう。」
主人公は船を手に入れた。


船でサンマロウの北にある島に向かう。
砂漠が広がる島の中央にグビアナ城があった。
城の2階で大臣と話をする。
「そなた、旅の者か?我が城に一体何用じゃな?」
「ほう、黄金の果実を探してここまでやって来たのか。」
「女王様はただの旅人などと決して顔を合わさぬお人。お目通りは叶わん。」
「そうじゃ、旅の者よ。実は今このグビアナ城では困ったことがあってな。」
「それを解決してくれればお主を女王様のお目にかかれるよう計らってやろうではないか。」
「実はな、女王様のペットである金色のトカゲをジーラという侍女が逃してしまったんじゃ。」
「お主にはそのトカゲを探す手伝いをして欲しいんじゃよ。」
「ジーラなら下の階の廊下でまだトカゲを探しているはず。話を聞いてみるがよい。」


1階にいる侍女のジーラに話を聞く。
「あら、何か御用ですか?私は今トカゲのアノンちゃんを探すので忙しいんですけど。」
「まあ、アノンちゃんを探すのをあなたも手伝ってくれるのですか?ありがとうございます。」
「それでは私は引き続きこの辺りを探しますから、あなたは他の場所をお願いします。」
「そうそう、あの子は大きな音が苦手で人のいない場所が好きなんです。」


城を出て左側の日陰にいる金色のトカゲを捕まえた主人公は、大臣に報告した。
「おお、そのトカゲはまさしく女王様のペット、アノンちゃん!」
「でかしたぞ、旅の者。それでは約束通りお主を女王様に会わせてやろう。」


主人公はユリシス女王に謁見した。
「で?あなたはこの私にどんなご用かしら?」
「そう、黄金の果実を譲れとおっしゃるのね?」
「それは無理な話だわ。今、私の手元に黄金の果実が無いんですもの。」
「お風呂から出たら果実が無くなっていたの。」
「どうせ何処かの泥棒猫が盗んで食べたんでしょうけど。」


そこへ侍女が慌てた様子でやって来た。
「女王様!大変でございます!」
「アノンちゃんが見つかった草むらを調べていたらこんなものが・・」
侍女が差し出したのは黄金の果実だった。


「それは黄金の果実!」
「どうしてアノンちゃんが・・」
「ま、果実が見つかりさえすれば些細なことは気にしないわ。」
「私、この果実をスライスして一切れ残らず沐浴場に浮かべようと計画しておりましたの。」
「黄金果実のお風呂に入ればお肌がもっとスベスベになるに違いありませんもの。」
「それではアノンちゃん。早速お風呂に行きましょうね。」
ユリシス女王は沐浴場に行ってしまった。


しばらくすると沐浴場からユリシス女王の叫び声が聞こえてきた。
急いで沐浴場に駆けつけると、トカゲのアノンが女神の果実を食べて巨大化し、ユリシス女王を襲っている。
アノンはユリシス女王をさらって井戸の中に逃げていった。


アノンを追って井戸の中に入ると、井戸はグビアナ水道につながっていた。
グビアナ水道の最奥でアノンとユリシス女王を見つける。
アノンはユリシス女王と話をしていた。
「なあユリシスはん。わてと一緒にこれからスウィートな人生をおくろうややいか。」
アノンが主人公の姿に気づく。
「あ、お前は。わてを草むらから連れ戻したけったいな旅人やないか。」
「お前のせいであの木の実を使ってわての夢を叶えようっちゅう計画が台無しになるとこやったんやぞ。」
「動物的本能が訴えかけたんや。あの木の実を食べたら人間になれるっちゅうてな。」
「そんでわては人間になったんや。どや、イケメンやで。」
「ま、ちょっと格好良くなりすぎてユリシスはんもタジタジやけどな。」
「長年想い続けたユリシスはんと一緒になろうっちゅうわての夢を邪魔しに来たんか?」
「わての邪魔するやつは許さへんぞ!」
主人公は襲ってくるアノンを倒した。
「アンタと戦ってわては気付いてもうた。」
「わて、人間とちゃうわ。人間は口から火吹いたりせえへんもんな。」
「せやけどここでくたばるわけにはいかんのや。」
「ユリシスはんをあの城に・・あの敵だらけの城に帰す訳にはいかんのや。」


そこへ侍女のジーラがやって来た。
「お待ち下さい、主人公様。」
「もうこれ以上アノンを傷つけるのは止めて下さい。アノンにもしものことがあったら。」
「女王様はもう誰にも心を開かなくなってしまいます。」
「私は見てしまったのです。女王様がアノンの前で涙を見せながら話しているのを。」
「ワガママな自分が嫌い、両親がいなくて寂しい。女王様はそうおっしゃっていました。」
「私はそのお気持ちをアノンだけではなく私達にも打ち明けて欲しいのです。」
「辛い気持ちを分け合えば女王様も変われるはずだから。」


ジーラの話を聞いていたアノンが言う。
「あの城にはジーラはんみたいな優しいお人もいたんやなあ。これじゃあわてはピエロやで。」
「わては力尽くであの城からユリシスはんを引き離そうとした。トカゲの浅知恵やったわ。」
「わて、もうこんなチカラいらん。トカゲに戻ってユリシスはんと一緒に暮らすことにするわ。」
「この木の実、アンタに託すで。」
「ジーラはんのようなお人がいればもうユリシスはんは大丈夫や。」
アノンは元のトカゲの姿に戻った。
そして主人公は5つ目の女神の果実を手に入れた。


ユリシス女王が言う。
「ありがとう、アノン。あなたも私のことをずっと想ってくれてたのね。」
「主人公と言ったかしら。ありがとう。命がけで私を助けに来て下さって。」
「私はこれまで自分のことを見てくれる人なんて誰もいないと思ってたわ。」
「けれど今回の件で思い知ったの。」
「ジーラやアノン、私のことを大事に思ってくれてる人がいるということを。」
「本当にありがとう、主人公。これからは皆とチカラを合わせ、女王として国を盛り上げますわ。」


主人公はヤハーン湿地からエルマニオン雪原へと進んだところにあるエルシオン学院に入った。
「ようこそエルシオン学院へ。私がここの学院長です。」
「ふむ、あなたが探偵の方ですね。やりての方だとお見受けしましたぞ。」
「実はですね、また一人うちの生徒が姿をくらましまして。これで二人目になってしまいました。」
「これ以上問題が起きれば学院の信用は失われるばかりで、ほとほと手を焼いております。」
「ですがこうして探偵の方が来て下さったからには事件などもはや解決したようなものですな。」
「あなたのチカラなら行方不明の生徒を見つけることなど容易いでしょう?期待していますぞ。」


夜中にエルシオン学院の屋上に行くと、モザイオという男子生徒がいた。
「幽霊なんか嘘っぱちさ。天使像のおでこを触ったけど全然出てこなかったぜ。」
主人公は守護天使モリケンヌの天使像のおでこを触ってみた。
すると教師の姿をした亡霊が現れた。
「おのれ、夜中に抜け出してくだらん悪さをしおって。何というふざけた生徒だ。」
「このろくでなしめ。エルシオンの恥さらしが。貴様には教育が必要だ。」
「私の教室へ連れて行ってやる。貴様の腑抜けた精神を鍛え直してやるわ。」
教師姿の亡霊がモザイオに乗り移った。
亡霊に乗り移られたモザイオは空を飛んで何処かへ行ってしまった。


モザイオを追って町の北東部にある墓に行くと、モザイオがちょうど隠し階段から地下に降りていくところだった。
主人公も地下へ降りて最奥に向かう。
最奥にある教室で、教師の亡霊がさらわれた生徒たちに授業をしていた。
「座れと言っただろうが!何だ、その目は。貴様、私に歯向かうのか!」
「愚か者!教師に口答えをするとはなめられたものだ。英雄にでもなったつもりか?」
「貴様のような生徒はいらん。その反抗的な態度。貴様は学院の蛆虫だ。」
「私の名はエルシオン。このエルシオン学院の創立者にして真の教育者。」
「覚悟しろ、戯け者。蛆虫に説教など不要。」
主人公は襲いかかってくる魔教師エルシオンを倒した。
「いかん。私がいなければエルシオン学院は不良の巣に・・」
「グオオ・・頭が割れる・・ウオオ・・」
魔教師エルシオンは消滅し、女神の果実が出現した。
主人公は6つ目の女神の果実を手に入れた。


エルシオン卿の亡霊が現れた。
「私は一体何を・・ここは私の教室ではないか。」
「君達はエルシオンの子か。おお、どうしたというのだ。それほどやつれた顔をして。」
「・・そうか、思い出したぞ。」
「すまない、エルシオンの子らよ。私は正気を失っていたようだ。」
「私は何としても君達に更生して欲しかったのだよ。その理由が分かるかい?」
「君らが才能あふれる若者だからだ。磨けば光る原石なんだ。」
「なのに君らは努力をしない。」
「だから私は果実に願った。君らに教育を施すためのチカラが欲しいと。」
「だがまさか魔物になろうとは。行き過ぎた教育への熱意が果実のチカラで暴走したようだ。」
「まさか学友のために命をかけてここまで助けに来るとは。君の名前は何というのかね?」
「主人公か。私は君を誇りに思うぞ。」
「これほど素晴らしい生徒がいるなら私も安心して眠ることが出来る。心配する必要などなかったな。」
エルシオン卿の亡霊は天に召されていった。


船でヤハーン湿地を北に進み、カルハド大草原にある集落に入る。
「最近集落の中まで入ってきて族長を狙う魔物が出てきただ。凶暴な猿みてえな魔物でよ。」
「まあ族長の側にはシャルマナ様がついてるからな。何の心配もいらねえだよ。」


老婆に話を聞く。
「シャルマナって女はな、奇妙な術でたちまち怪我を治しちまうんだ。」
「んで、自分の命令を素直に聞く者だけにその術を使って下さるのさ。」
「みんな役に立つからって喜んでいるが、どうも信用出来ねえ。あいつは怪しい女だよ。」


男性に話を聞く。
「族長と息子のナムジン様はすっかりシャルマナ様の言いなりになっちまっただ。」
「まああんだけの美人なら骨抜きにされても仕方のねえ話ってもんだべ。」


族長と話をする。
「俺が族長のラボルチュだ。お前は海から来たよそ者だな。」
族長の隣りにいたシャルマナが話に割り込んできた。
「これはこれは。何とも珍しい客人よのう。」
「ホホホ、わらわはシャルマナじゃ。」
「おぬし、名は何と申す?・・ほう、主人公と申すか。」
「一体、草原に何の用じゃ?」
「・・何!光る果実を探しているとな?何のことやら分からんが・・ホホホ。その様なもの、聞いたことないわ。」
族長が言う。
「どうしたのだ、シャルマナ。慌てるなどお前らしくもないな。よそ者の言うことなど放っておけ。」
「話は終わりだ。光る果実など知らん。とっとと立ち去るがいい。」


その時、集落に魔物が現れた。
主人公が魔物を追い払うと、それを見ていたラボルチュ族長が頼み事をしてきた。
「私にはナムジンという息子がおる。」
「ナムジンはいずれ集落を導かねばならん。」
「しかしナムジンは小心者でな。魔物一匹、仕留めることも出来んのだ。」
「俺は父親としてあいつに自身を持たせてやりたい。」
「主人公よ、ナムジンを助けてやってくれ。」


ナムジンと話をする。
「君は?一体僕に何の用だい?」
「え?父上に頼まれて一緒に魔物退治に行くって?」
「みんなは魔物が父上を狙っていると言ってますが、あなたも本当にそんなふうに見えましたか?」
主人公は首を横に降った。
「どうやらあなたは話の分かる方のようですね。」


主人公はナムジンと一緒に魔物の住処に向かった。
住処に着くと、集落を襲った魔物がナムジンに近づいてきた。
ナムジンが魔物に話しかける。
「あのようなやり方ではシャルマナを倒すどころかお前が殺されてしまうぞ。」
「お前が死んでは母上もあの世で悲しむ。命を粗末にしては駄目だ。」
「今はここで大人しく母上の墓を守っていてくれ。いいかい?」
「主人公さん、あなたにはお話しておきましょう。」
「この魔物は僕の友達で名前はボギーと言います。」
「昔、草原で倒れていたところを僕と母上で手当してから懐くようになったんですよ。」
「ボギーが集落を襲う本当の目的は父上ではなく、シャルマナを狙ってのことです。」
「あの女は怪しげな術で草原の民をたぶらかし、良からぬことを企んでいる。」
「僕はうつけのふりをしてあの女の正体を暴こうとしていますが、一体どうすればいいのか。」
「今の話は誰にも言わないで下さい。」
「さて、そろそろ戻らないと。」
ナムジンはボギーと一緒に何処かへ行ってしまった。


すると墓からナムジンの母親パルの亡霊が現れた。
「ああ、ナムジンよ。このままではお前はシャルマナに殺されてしまう。」
「私の名はパル。勇敢なるカルバドの族長ラボルチュの妻です。」
「旅の方、あなたを見込んでお願いがあります。」
「遥か東の岩山の麓に魔物に滅ぼされたカズチャという村があります。」
「その村に眠るアバキ草をナムジンに渡して頂けないでしょうか。」
「あの子なら上手くアバキ草を使ってくれるはず。ナムジンを助けてやって下さい。」


主人公はダダマルダ山の東に進み、カズチィチィ山にあるカズチャ村へ向かった。
地下の泉でアバキ草を手に入れ、集落に戻ってナムジンと話をする。
「おや、その手に持っているのは・・うーん、昔何処かで見たような。」
「そうだ、それはアバキ草だ。母上に見せてもらった事がある。何故あなたがそれを?」
主人公は事情を説明した。
「そんな馬鹿な。幽霊と喋れるなんて、そんな話信じられない。」
「けれど僕の話を信じてくれたんだ。僕も主人公さんを信じよう。」
「母上がアバキ草を手に入れろと。シャルマナの正体はやはり魔物だったと言うことか。」
「アバキ草を煎じた汁をかければ、必ずや奴の化けの皮を剥がせます。」


主人公はナムジンと一緒にシャルマナの元に向かった。
族長の前でシャルマナにアバキ草を煎じた汁をかけるナムジン。
「落ち着くのだ、カルバドの民よ!この女は人間ではない!」
「さあよく見るのだ!お前たちが信じていたこの女の正体を!」


シャルマナの身体が闇の煙に包まれる。
シャルマナは魔物に姿を変えた。
「グオオー!」
呪幻師シャルマナはナムジンを殴り飛ばした。
「フウフウ!人間ごときがここまでわらわを怒らせるとは。」
「もう少しで族長をたらしこみ、のんきな遊牧民どもを利用して草原を我が手中に出来たものを。」
「わらわの計画を邪魔しおって。もう我慢出来ん。残らず食い殺してくれるわ!」
主人公は襲いかかってくる呪幻師シャルマナを倒した。
「まさか人間ごときにわらわが敗れるなんて・・おのれ、折角の魔力が・・」
呪幻師シャルマナの身体が萎んでいき、みすぼらしい魔物になった。
シャルマナのそばに女神の果実が落ちていた。
主人公は7つ目の女神の果実を手に入れた。


「ヒィー!頼む!許しておくれ!わらわは何のチカラもないんじゃ!」
「一人ぼっちで遊牧民どもに怯える自分が嫌だったんじゃ。」
「だから草原で手に入れた果実を食べて願ったのじゃ。わらわを強くしてくれと。」
「絶大な魔力を手に入れ、自分を押さえられなかったんじゃ。うう、見逃しておくれ。」


ナムジンは無事だったようだ。
「お前のやろうとしたこと、それは決して許されない。」
「だがチカラを失ったお前を倒したところで、もはや何の意味もない。」
「僕の大事な友達ボギーとお前も、今日から友達になってもらおう。」
「もう一人で怯えなくていい。これからはボギーが一緒だ。」


主人公の働きで穏やかな草原が戻った。
みんな眠るのも忘れ、宴を楽しんだ。
そして夜が明けた。
広場で族長ラボルチュがカルバドの民に言う。
「よく聞け!カルバドの民よ!俺は族長の座を降りる!」
「未熟だと思っていた息子はいつの間にかこの父をこえていたようだ。」
「今のナムジンになら安心して託すことが出来る。」
「今日からナムジンが族長だ!」


ナムジンが言う。
「私が族長ナムジンである!よく聞け、カルバドの民よ!」
「私達は誇り高き遊牧民族。何者にも縛られず道を切り開くのが私達の生き方だ!」
「自分たちのものでないチカラに頼り切るなど、誇りを捨てたも同じこと。いいか、みんな。」
「遊牧民の誇りを忘れなければ自分を見失うことはない。強くなるのだ、カルバドの民よ!」


サンディが主人公の懐から出てきた。
「これにて一件落着。これで草原も一安心ね。」
「あ、てかさ。これで女神の果実は7つ目だっけ?だいぶ集まったし、そろそろ天使界へ帰ろうよ。」
「まさか忘れたりしてないよね?ダーマ神殿のそばの青い木で天の箱舟を呼ぶのよ。」


ダーマ神殿のそばにある光る青い木で天の箱舟を呼び、天使界へ向かった。
サンディが天の箱舟を操縦しながら言う。
「落っこちた女神の果実があといくつあるのか知りませんけど、見つけた分は届けておくべきよね。」
「主人公も頑張ってるって事アピールしておかないと・・んん?」


突然、天の箱舟の中にイザヤールが現れた。
「久しいな、主人公。」
「落ちた女神の果実を探していたのはお前だったのだな、主人公。」
「女神の果実は私が天使界へと届けよう。」
「さあ、主人公。女神の果実を私に。」
主人公は全ての女神の果実をイザヤールに渡した。
「流石だな、主人公。地上に落ちた女神の果実は7つ。それを全て集めていたとは。」
「確かに女神の果実は受け取ったぞ。これで・・」


何処からか声が聞こえる。
「・・イザヤールよ、ご苦労であった。」
「約束通り女神の果実を我が帝国へと送り届けるがよい・・」


いつもと様子が違うことに気づいた主人公はイザヤールに剣を構える。
「私に歯向かう気だな?邪魔をするというなら容赦はしないぞ!」
イザヤールが主人公に襲いかかってくる。
主人公がイザヤールに攻撃しようとするが身体が動かない。
「弟子が師匠に逆らうことは許されない。それが天使の理だ。」
主人公はイザヤールの攻撃をまともに受けて倒れ込んでしまった。
「さらばだ。」
イザヤールは空を飛んで天の箱舟を後にした。
天の箱舟と並走するように、闇の飛竜に乗ったゲルニック将軍が近づいてくる。
「イザヤールさん。首尾はいかがですか?」


「私のお目付け役か?ご苦労なことだな、ゲルニック将軍。」


ゲルニック将軍が言う。
「ホーホッホ、滅相もない。こちらに用があっただけです。たまたまですよ。」
「とは言え、我々が完全にはあなたを信じていないのも事実。」
「しかし果実はちゃんと手に入れたようですね。」
「では次はこちらに手を貸して頂きましょうか。」
「ドミールの地を目指します。そして空の英雄を亡き者に。」
「我が帝国が誇るこの闇竜バルボロスもチカラに満ちていますよ。」
「少しお見せしておきましょう。ホーッホッホ!」
闇竜バルボロスが闇の炎を吐き、天の箱舟を直撃した。
衝撃で主人公とサンディは空に投げ出され、地上へと落ちていった。


「えー、何?何?主人公!」
「まさか死んじゃったの?てか天使なんだからこれくらいで死なないよね?」
主人公が目を覚ますと、そこはナザムという村だった。
「やっと起きてくれたわね。超焦ったよ。ふう、良かった。」


ティルという少年が主人公を助けてくれたようだ。
「良かった、気がついたんだね。お兄ちゃん。」
「怪我がひどかったからもう駄目かと思ったけど、本当に良かったよ。」
「僕はティルって言うんだ。お兄ちゃんの名前は?」
「そっか、主人公さんって言うんだね。」
「ついさっきの事だけど、おっかない黒いドラゴンが村の上を飛んでいったんだ。」
「その後主人公さんが村の川の所に流れ着いていたのを僕が見つけたの。」
そこに村長がやって来た。
「む、気がついたのか。」
「怪我が治ったのなら夜に教会に来い。そこで寄り合いを開くが、おぬしにも話を聞かせてもらうぞ。」
「いいな?夜に教会に来るのだ。それまではこの村に留まることを許してやる。」


主人公は夜になるのを待ち、教会に向かった。
「来たか。おぬしに聞きたいことと言うのは他でもない。黒いドラゴンの事だ。」
「黒いドラゴンが現れ、そしておぬしがこのナザムに落ちて来た。これがどういう事か。」
「おぬしとあの黒いドラゴンには何か関係があるのではないのか?」
主人公は事情を説明した。
「ほう、おぬしは黒いドラゴンに襲われてこの村に流れ着いたと言うのだな。」
「しかし、おぬしがあの黒いドラゴンの仲間であるという可能性もわしらは考えねばならんのだよ。」
「あの黒いドラゴンはドミールの方角へ向かったように見えたが。」
「かの地にいるという空の英雄グレイナルならいざ知らず、ただの人間に何が出来る。」
「グレイナルの助けを借りれば望みもあるかも知れんが、それも叶わぬことなのだ。」
「とにかく何事も起こらぬうちにこの村から出ていってくれ。」


村の外へ出て、近くにある希望の泉にいたティルと話をする。
「ナザムの人はよそ者が嫌いなんだ。」
「ずっと昔、村の女の人がよそ者を連れ込んで酷い目にあったから。」
「僕もよそ者なんだ。遠い町から親戚の叔父さんに引き取られたの。」
「主人公さんも村から出て行けって言われたんでしょ?これからどうするつもりなの?」
「あの黒いドラゴンを追っかけてもまたやられちゃうかも。」
「そうだ、ドミールにいるっていうグレイナルに会えばチカラを貸してもらえるかも。」
「それにはドミールに行かなきゃいけないけど、僕いいことを知ってるんだ。」
「村の人達が秘密にしているナザムの言い伝えを僕が主人公さんに教えてあげるね。」
「ドミールへの道を目指す者現れし時、像の見守りし地に封じられた光で竜の門を開くべし・・っていうの。」
「像の見守りし地っていうのは、ここからずっと西にある魔獣の洞窟って呼ばれている所らしいんだ。」
「でもその洞窟の入口は封じられていて、それを解く方法は誰も覚えていないんだって。」
「ごめんね。肝心な所で主人公さんの役に立ててないや、僕。」
「何だか悔しいな。村に帰って主人公さんのために出来る事がないか探してみるよ。」


希望の泉を出ると、フードをかぶった女性の亡霊がいた。
「またここへ帰ってきてしまった。あの人を見つけることも出来ずに。」
「あなたはどこかで・・」
「あなたには私が見えるのね。これまで誰も私には気づくことはなかったのに。」
「私の名前はラテーナ。一つお願いを聞いて欲しいの。今の私には出来ないことだから。」
「ナザム村に置いてきてしまった大切な物を見つけてきて欲しいの。」
「守護天使の像の足元を探して。そこに隠したはず。」
「お願い。見つけてきて。」


主人公はナザム村に戻り、武器屋の前にある守護天使の像の足元を調べると星空の首飾りを発見した。
再び希望の泉に向かい、星空の首飾りをラテーナに渡した。
「私のお願いした物、見つかったみたいね。」
「これはあの人が私にくれた大切な首飾り。」
その時、星空の首飾りが光を放った。
「天使が近くにいると光を放つってあの人が言ってた。」
「まさかと思ったけど、あなたもあの人と同じ天使なのね。」
「でも私にとって天使はあの人だけ。この首飾りをくれたあの人だけ。」
「ああ、見える。あの人が・・」


川に流れ着いた男性の天使。
この天使を助けたのがラテーナだった。
「あの・・大丈夫ですか?」
「え?これって翼?この人は一体・・」
ラテーナはこの怪我した天使をナザム村に連れて帰り手当した。
「それじゃああなたは本当に天使なの?」
「あんな大怪我をしても生きてるなんて普通の人間じゃないとは思ったけど。背中の翼も本物なのね。」
「このナザム村はエルギオスという守護天使様に守られてるって小さい頃から聞かされてきたの。」
「まさか本当に天使がいて、しかもこうして会えるなんて。」
その時、ナザム村にガナン帝国の兵士達が現れた。
「この世の全ては我がガナン帝国の物。たとえこんなちっぽけでゴミ溜めのような村でもな。」
「物とは限らぬ。あの娘はなかなか器量が良さそうではないか。」
ラテーナを連れて行こうとする兵士達をエルギオスが追い払った。
「ガナン帝国に逆らうなど、それがどれだけ愚かなことか!後で思い知らせてくれる!」


「・・私のせいであの人は。」
「だから私はあの人を探し続けなければならない。」
「首飾りを見つけてくれたお礼にあなたの願いを聞くわ。私に出来る事なら何でも。」


サンディが言う。
「あんたさ、村の人だったんなら魔獣の洞窟の入り方とか知らない?」


「魔獣の洞窟の入口の封印を解く方法なら知っているわ。」
「それじゃあ私は先に魔獣の洞窟に向かっているから。」


主人公はラテーナについて行き、魔獣の洞窟の入口の前に来た。
「あなた達が言っていたのはここのことでしょう?」
「私はここを開ける呪文を知っているから。」
ラテーナが呪文を唱えると魔獣の洞窟の入口に張られた封印が解けた。
「私に出来るのはここまで。あとはあなたに任せるわ。」
「私は旅立たなくてはならないの。」
「あの人を・・エルギオスを見つけなければならないから。」
ラテーナは何処かへ行ってしまった。


魔獣の洞窟を進んでいくと一番奥にある台座を大怪像ガドンゴが守っていた。
「我は光の道を守る者。汝、竜の門を開くことを望むのならば勇気を我に示せ。」
主人公は襲いかかってくる大怪像ガドンゴを倒した。
「その勇気、しかと見た。」
「光の道を汝に示す。空の英雄グレイナルの元へ旅立て。」


主人公は台座のプレートに書かれた文字を読んだ。
「光の道を矢と変えここにおさめる。」
「竜の門にてこの矢を放て。さすれば竜の門は開かれん。」
主人公は光の矢を手に入れた。


ナザム村の西にある石版を調べる。
この石版は竜の顔が描かれており地面に埋められていた。
石版の上に乗ると光の矢が輝き出し、何処からともなく重々しい声が聞こえてくる。
「光を掲げ空を射抜け。さすれば光は汝を導く。」
主人公は弓に光の矢をつがえ、空に向けて放った。
すると何もない空中に光の橋が架かった。
そこへナザム村の村長がやって来た。
「なんだ、主人公ではないか。ここで何をしておるのだ?」
「これは一体・・光る橋がかかっておるぞ。」
「ドミールへの道を目指す者現れし時、像の見守りし地に封じられた光で竜の門を開くべし・・」
「それはこういう事だったのか。ただの言い伝えではなかったと、そういう事なのか・・」
「主人公殿があの黒いドラゴンに襲われて生き残ったというのも本当のことだと言うわけですな。」
「我々はあなたを信じようともせず、過去の災いに怯え、よそ者を近づけまいとしていたのか。」
「先程までの無礼を謝りたい。どうかお許し下され。」
「この橋の先にあるドミールの里には空の英雄グレイナルがいるという言い伝えも残されております。」
「グレイナルと会うことが出来れば、何か黒いドラゴンに対する手立てがあるかも知れませんぞ。」
「どうかお気をつけて。ご武運を祈っておりますぞ。」


主人公は光の橋を渡りドミールの里に向かった。
「なんと、下界からの客人とは珍しい。」
「ここはドミールの里。はるか昔、魔帝国ガナンと戦った空の英雄グレイナルを崇める地だ。」
「いかなる導きでここまで来られたか知らぬが、ゆるりとしていかれるがよい。」


宿屋近くの家で長老と話をする。
「私はドミールの長を務める者。わざわざこのような山奥にお越しになるとは何用ですかな?」
主人公は事情を説明した。
「なんと、黒いドラゴンを追うために空の英雄グレイナルに助力を願いに来たですと?」
「そんな馬鹿な。闇竜バルボロスは300年前の戦いでグレイナル様に倒されたのですぞ。」
「しかしわざわざこの地までそんな嘘をつくためだけに来る者がいるとも思えない。」
「分かりました。そういうことならグレイナル様にお会いになるといいでしょう。」
「あるいは無駄足かも知れませんが、ここまで来て止めたところで納得できますまい。」
「グレイナル様はこのドミール火山の山頂にいらっしゃる。」
「この家の近くに山頂へ続く洞窟があるのでどうぞ行ってみて下さい。」


ドミール火山を登り、山頂にいた白い竜の姿のグレイナルに話しかける。
「誰じゃ?」
「ふむ、里の者ではないようじゃな。わしがグレイナル。空の英雄、グレイナルじゃ。」
「見知らぬ旅の者がこのわしに一体何の用じゃ?」
「ん?この匂い・・」
「忘れもせぬ。魔帝国ガナンの兵どもにまとわりつくあの不快な匂い。」
「貴様、さてはガナンの手先だな。性懲りもなくわしの命を狙ってきおったか。」
「良かろう。いにしえの竜族のチカラを思い知らせてくれるわ。」
主人公は襲いかかってくるグレイナルを倒した。
「おのれ、帝国の犬め。翼が傷ついてさえいなければこのような結果には・・」
「えーい、殺すなら殺せ!このまま生き恥を晒すくらいなら死んだほうがマシじゃ!」
主人公は、黒い竜を追うために助けを求めに来たことを話した。
「黒い竜じゃと?バルボロスの事か?」
「やつならばわしが300年前に倒したはずではないか。」
「また再びやつが現れたと・・わしに今一度バルボロスと戦えと言うのじゃな?」
「空も飛べぬモウロクしたわしではバルボロスとは戦えん。」
「帝国の手先と同じ匂いをまとった者など信用できぬ。バルボロスの復活もでたらめじゃ。」
「貴様が帝国の手先かどうかなどもはやどうでもいいわ。」
「とにかくわしは貴様のことが気に食わんのじゃ。さっさと立ち去るがいい。」


ドミールの町に戻ると魔帝国ガナンの兵士達がいた。
「我らは偉大なる魔帝国ガナンの兵士だ。」
「このドミールはかつて我が帝国に逆らった者達の巣窟。地上に残す価値のない場所だ。」
「空の英雄グレイナル共々、この地にいる者は一人残らず葬り去ってくれよう!」
主人公は襲いかかってくるガナン帝国の兵士達を倒した。
「よくもやってくれたな・・このこと、将軍に報告せねば・・」


突然、ゲルニック将軍が現れた。
「ホッホッホ。もう知っていますよ。」
「やれやれ、偉大なる帝国の兵士ともあろう者が人間ごときに遅れを取るとは。」
「全く嘆かわしい限り。あなたにはどうやらお仕置きが必要なようですね。」
ゲルニックは闇の炎で兵士達を焼き払ってしまった。
「おや、何処かで見たと思ったら、あなたはイザヤールさんの・・なんと、生きてらっしゃったんですか。」
「帝国の敵はグレイナルだけではないというわけですね。まあ、いいでしょう。」
「あなたもグレイナルもドミールも、どうせもうすぐこの地上から消え失せるのですから。」
ゲルニック将軍はそう言うと、姿を消してしまった。


ゲルニックと名乗る魔物は去り、ドミールは平穏を取り戻した。


村長の家にいる老婆と話をする。
「おお、丁度良かった。実はグレイナル様からあんたに伝言がありましてな。」
「どういう訳か心変わりなさって、条件付きであんたの話を聞いてやっても良いとのことじゃよ。」
「その条件とは、あんたが竜の火酒を持って山頂まで来ることだそうじゃ。」
「竜の火酒というのは、このドミールで造っている地酒でグレイナル様の大好物なんじゃよ。」
「むこうの階段を降りたところにある酒蔵で造っているので受け取ってくるがいいじゃろう。」


主人公は竜の火酒を持ってグレイナルの元に向かった。
「ええい、遅い。待ちくたびれたではないか。」
「まあ良いわ。そう言えばまだ名を聞いておらなんだ。名乗るが良いぞ。」
「ふむ、主人公と言うのか。貴様らしい間の抜けた名前だの。」
「それはさておき、先だっては貴様のことを信用出来ぬと言ったがどうやら間違いだったようじゃな。」
「何故分かったかじゃと?帝国の兵士と名乗る連中を退治したのは貴様ではないか。」
「老いたりとは言え、わしの耳は人間とはモノが違う。」
「外であれだけ騒いでおれば嫌でも聞こえてくるわ。」
「わしの知る帝国の兵士達はあのような魔物ではなかったが、奴らの放つあの気配は忘れもせん。」
「あれこそは紛れもなく300年前にわしが戦ったのと同じものじゃ。」
「・・っと、それよりも酒じゃ。竜の火酒を持ってきたのじゃろう?早くそいつをよこすのじゃ。」
主人公は竜の火酒をグレイナルに渡した。
「これじゃ、これじゃ。わしは酒には目がなくてのう。早速いただくとしよう。」
「グビグビグビ・・ぷはあ!うー、しみるのう。」
「おお、そうじゃ。面倒をかけた詫びに貴様にはこれをくれてやろう。」
主人公はガナンの紋章を受け取った。
「それは300年前の戦いで帝国の将軍を倒し手に入れたもの。やつらにとって貴重な品らしい。」
「まあわしにとってはガラクタも同然じゃが、売れば少しは金になるんじゃないか?」
「・・ん?この気配は何処かで・・」
ドミールの里の上空に闇竜バルボロスが現れ、闇の炎で攻撃を始めた。
「おおう、ありゃ紛れもなくバルボロスではないか。」
「里を攻撃するとは卑怯者め。どうあってもわしをおびき出す気か。」
「良かろう。幸いここには主人公もおる。何とかなるじゃろう。」
「おい、主人公よ。貴様に竜戦士の装具というありがたい宝物をくれてやる。」
「それを着て我が背にまたがる竜の戦士がいれば、今のわしでもきっと再び空を飛べるはず。」
「さあ、この竜戦士の装具をまとうが良い。」
主人公は竜戦士の装具をグレイナルから受け取った。
竜戦士の装具をまとった主人公はグレイナルの背に乗った。
「うむ、かつてのチカラが戻ってくるのを感じるわい。」
「これならばバルボロスなど余裕で蹴散らしてくれよう。ゆくぞ、主人公!」


グレイナルは主人公を背に乗せ、上空へと飛び上がった。
上空で闇竜バルボロスと対峙するグレイナル。
「ふふふ、グレイナルよ。この前のようにはいかぬぞ。」
「我はさらなるチカラを得たのだ。」
「己の非力さを思い知れ!」
グレイナルは闇竜バルボロスの攻撃をまともに受け、主人公と共に地上に落ちていった。


サンディとはぐれてしまった主人公は帝国の兵士に捕まり、カデスの牢獄に連行された。
主人公はアギロという囚人に話しかけられた。
「よう、新入り!俺の名はアギロ。お前の隣の牢の住人だ。」
「お前さん、名前は?・・ほう、主人公ってのか。」
「しかしこいつは驚いたな。・・いや、なんでもねえんだ。宜しくな、主人公。」
「こう見えても俺は囚人達のまとめ役みたいなことをやっててな。」
「で、新入りにこのカデスの牢獄の案内やらルールを教えてやんのも俺の仕事って訳だ。」
「とりあえず好きに歩き回ってみろ。俺が後ろからついて行って色々と説明してやるからよ。」


牢獄の出口には結界が張られていた。
「おっと、そこまでだ。こっから先には俺達囚人は入れねえんだ。」
「見張りの塔やら帝国の連中の宿舎があるエリアだからな。」
「それとあとは地下牢があるって話だな。」
「何でもその牢にはゴレオンってやつが探してる特別な連中が捕まってるらしい。」
「まあそんな事はともかく、目の前にある結界には触れないようにしとけよ。」
「帝国の連中は平気で通ってくるが、俺達がそいつに触れるとビリビリっときてはじかれるんだ。」
「いや、ものは試しだな。ひとつ身体で覚えるつもりで触ってみろ。」
主人公は言われた通り結界に触れてみるが何も起きない。
「どうして結界にはじかれないんだ?」
「とにかくこんなところを帝国の連中に見られたらまずい。すぐこっちに戻ってくるんだ。」
「しかしどういう事だ?あの結界をすり抜けちまうなんて。」
「うん?なんか光ってるぞ?」
グレイナルから貰ったガナンの紋章が光っている。
「これは帝国が使ってる紋章が彫り込んであるな。」
「光ってるってことはお前が結界をこえられたのはこいつのおかげってことか。」
「おい、こんな物一体どこで手に入れたんだよ。」
主人公は事情を説明した。
「グレイナルだって?なるほどねえ、あの老ドラゴンから貰ったって訳か。」
「なあ、主人公。この事は俺の胸にしまっておくから、お前も誰にも言うんじゃないぞ。」
「もし帝国の連中に知られたら只事じゃ済まなくなるからな。」


それから主人公はその日一日、クタクタになるまで働いた。
その夜、隣の牢から声が聞こえてくる。
「主人公、俺だ。アギロだ。」
「今日はご苦労だったな。初めての事ばかりで疲れたろ。」
「実はお前に話があってな。ちょいと長くなるんだが、まあ我慢して聞いてくれ。」
「今日一日働いてこの牢獄が酷いとこだってのは分かっただろ。」
「このままじゃいけねえってんで、以前から俺達の間じゃ脱出計画が練られていたんだ。」
「話ってのはさ、お前さんにもこの計画に協力して欲しいって事なんだよ。」
「計画と言っても単純なもんでな。不意打ちで連中の武器を奪って蹴散らすって寸法さ。」
「雑な作戦だが、もともと頭数ではこっちの方がずっと上なんだ。成功の目はあると思ってる。」
「だが問題なのは例の結界だ。あれがある限り俺達はこの牢獄から出ることが出来ない。」
「ところが結界を通り抜けられるお前さんがいるとなると話は変わってくるんだよ。」
「俺達の計画に協力してくれ。」
「今日明日すぐに決起って訳じゃねえんだ。今の話、考えといてくれよ。」


次の日の朝、処刑台で囚人が処刑されようとしていた。
そこへアギロが止めに入り、帝国兵を殴り飛ばす。
「俺にはもう我慢出来ん!みんな、聞いてくれ!」
「俺達は今まで散々奴らに虐げられて来た。だがもう限界だ!」
「今こそ立ち上がる時!俺達の自由を勝ち取るために戦うべき時が来たんだ!」
「そこにいる主人公は奴らの結界を通り抜けることが出来る。」
「今から主人公には見張り塔にある結界の発生装置を止めてきてもらう。」
「俺達はそれまでの間、帝国兵どもを押さえてりゃいいんだ。それなら楽勝ってもんだろ?」


主人公は結界を通り、カデス監視塔向かった。
2階にある結界発生装置を停止させた主人公は、アギロに報告する。
「流石俺の見込んだ男だ。」
「地下の囚人たちを助けるにゃ、まずゴレオン将軍を倒さなくちゃならねえんだ。」


主人公は地下牢の入り口で待ち構えるゴレオン将軍と対峙する。
「虫ケラが1匹迷い込んだか。だが何匹来ようとも虫ケラは所詮虫ケラ。」
「それより貴様ごときがどうやって我が帝国の結界を越えられたのだ?」
ゴレオン将軍が主人公の持つガナンの紋章に気づく。
「それは・・何故貴様がそれを持っている?」
「この俺が皇帝陛下より賜ったガナンの紋章を何故貴様が!」
「我がチカラを!パワーを魂に刻みつけるがいい!」
主人公は襲いかかってくるゴレオン将軍を倒した。
「帝国の将軍ともあろう者が虫ケラごときに倒されるとは・・これは夢か?悪夢か?」
「いや、違う・・俺は以前にもこうして戦いに敗れ、這いつくばっていた。」
「そうだ。遥か昔、俺はグレイナルに挑み奴の炎に焼かれて死んだはず。」
「では俺は死者なのか?そんな馬鹿な・・俺は・・帝国は・・」
ゴレオン将軍は消滅した。


そこへアギロがやって来る。
「どうやら奴らただの魔物じゃないようだな。魔帝国ガナンとは一体・・」
「おっと、そんな事より今はアレを取り戻さなくては。」
アギロはゴレオン将軍が持っていたホイッスルを見つけた。
「やはりここにあったか、俺のホイッスル。これさえあれば・・」
「さあ、地下牢に捕まっている連中を出してやろう。」


地下牢に降りていくと、繭のような物の中に天使達が捕らえられていた。
天使達を繭から助け出していく。
「帝国の奴らはこの繭を使って私達から天使のチカラを吸い取っていたんだ。」
「ガナン帝国の兵士達には普通の人間には見えないはずの天使の姿が見えてしまう。」
「奴らは天使のチカラを闇竜バルボロスに与えることで操っているんだ。」
「暗黒皇帝ガナサダイ・・なんて恐ろしい男だ。」


全ての天使を助け出した主人公はアギロと協力して天使達を外に連れ出した。
すると闇竜バルボロスが上空に現れ、カデスの牢獄を攻撃し始めた。
「奴は味方ごとこの牢獄を焼き払うつもりだ。」
「俺が何とかしよう。」
アギロはホイッスルを吹いた。
するとサンディが操縦する天の箱舟がやって来た。
「うは!誰かと思ったら主人公じゃん。」
「あんたさあ、何勝手にさらわれてくれちゃってんの?」
「こっちはあんたが消えてから一人ぼっちで天の箱舟を探し出して、修理して・・」
「その間ずっと心配してて、とにかくもうすっごい迷惑したんですけど!」
「おまけに勝手にこんな見知らぬ土地に呼び出すしさ。そーゆーのありえなくない?」
「って、そーいやどうやってこの天の箱舟を呼び出したのよ。いつの間にそんなテクを・・」
その時、サンディがアギロの姿に気づく。
「・・って、あなたは!店長!店長じゃないっすか!」


アギロが言う。
「誰が店長だ!ちゃんとアギロさんと呼べといつも言ってるだろう!」
「しかし驚いたぞ。お前と主人公が知り合いだったとは。」
「どうして俺がここにいるか訳が分からないという顔だな。仕方がない、教えてやろう。」
「囚人達のリーダーとは仮の姿。その正体は、天の箱舟の責任者。アギロ運転士その人だったのだ!」
「・・まあ込み入った話はおいおいするとしてだ。とりあえず天使界を目指すとしよう。」
「捕まっていた天使達を後ろの車両に寝かして、まずは彼等を届けよう。」


カデスの牢獄を脱出した主人公は、捕まっていた天使達と共に天の箱舟で天使界へ向かった。


天使界の2階で長老オムイと話をする。
「ようやく帰ったか、主人公よ。囚われた天使達の救出、まことにご苦労。」
「地上では何が起きておるのだ?詳しく話してみよ。」
主人公は地上での出来事を長老オムイに報告した。
「何と、あの魔帝国ガナンが人間界に蘇ったのか。」
「年若いお前は知らぬだろう。魔帝国ガナンとは数百年前に滅びた邪悪なる帝国。」
「人間界を征服するためチカラを追い求めた挙げ句、自ら滅びたはずなのじゃ。」
「先程お前はこう言ったな?師であるイザヤールに裏切られ、女神の果実を奪われたと。」
長老オムイが女神の果実を主人公に見せる。
「しかし女神の果実はこの通り天使界へと戻っておる。」
「そしてこの女神の果実を届けたのは他でもない、イザヤールなのじゃ。」
「イザヤールはこう言っておった。」
「天使主人公の代わりに女神の果実全てを持ち帰った。イザヤールと主人公は人間界で再会して一緒に女神の果実を探していたと。」
「そして7つの果実を全て見つけ出した後、天使界へ帰る途中で主人公とはぐれてしまったのだと。」
「わしはイザヤールから確かに女神の果実を受け取った。あいつが裏切り者だとはどうしても考えられぬのだ。」
「じゃがお前が嘘をつくはずもない。一体どうなっておるのだ。」
「今は考えても埒が明かんな。」
「守護天使主人公よ。天使界にはこう伝えられておる。」
「女神の果実が実る時、神の国への道は開かれ我ら天使は永遠の救いを得る。」
「そしてその道を開き我らをいざなうは天の箱舟・・とな。」
「女神の果実は天使界へ戻った。わしは言い伝えを信じ、神の国へ行ってみようと思う。」
「言い伝えがどこまで本当かは分からぬが。」
「もし神がいらっしゃるならば、必ずや世界を救って下さるはずじゃ。」
「守護天使主人公よ。お前はわしと共に天の箱舟で神の国へ向かうのじゃ。」
「天使界は邪悪な光に襲われ、人間界では魔帝国ガナンが復活した。」
「神の国と言えども何が起きるか分からんからな。いざという時は宜しく頼むぞ。」


主人公は長老オムイと共に天の箱舟に向かい、アギロに事情を説明した。
「何だと?神の国へ行くってのか?するってえと女神の果実が・・ちょっと待ってろよ。」
長老オムイが天の箱舟に乗り込む。
「ほっほー。天の箱舟の中はこのようになっておったのか。どれ、失礼致しますぞ。」
「女神の果実と同じ黄金の光に包まれておる。さすが神の創り給うた舟じゃ。」
「さて、運転士殿。あなたにお願いがあります。」
「主人公の活躍により女神の果実は天使界に戻りました。」
「言い伝えに従い、我らをこの天の箱舟で神の国へと連れて行って下され。」


アギロが言う。
「かつて神はこのように命じられました。」
「女神の果実が実ったならば、この天の箱舟に天使を乗せ神の国まで連れて来いと。」
「つまり今こそ神の国へと向かうべき時なのでしょう。」
「分かりました。俺にお任せ下さい。」
「ようし、じゃあ神の国までひとっ走り参りましょうぜ!」


アギロの運転により天の箱舟が神の国に向かって動き出す。
長老オムイが驚いている。
「信じられん。もう天使界が豆粒のように見える。天の箱舟とはまさしく神の奇跡。」
「運転士アギロ殿。あなたはこの天の箱舟に乗られて長いのですかな?」


アギロが答える。
「ええ。神が天の箱舟をお創りになったその日から運転士として乗り込んでおります。」


天の箱舟が神の国に到着したようだ。
「さあ着きましたぜ。ここが神の国です。では参りましょう。」


神の宮殿の前にある石碑を読む。
「我は空と海を分かち、空には星々を。海には大地を浮かべた。」
「鳥や魚、獣、花々や木々、ありとあらゆる生き物を我は空に、海に、大地に創り、最期に人間達を創った。」
「神とは生きとし生ける者全てを等しく守り導く。全て正しき心を持つ者を。」
「正しき者を守るため、悪しき者は滅ぼさねばならぬ。」
「人間より先に創られた生き物は皆正しき心を持っていたが、人間には正しき者と悪しき者があった。」
「人間達のうち悪しき者ばかりが栄え、正しき者はごくわずかだった。」
「悪しき者は正しき人間だけでなく、鳥や獣、全ての生き物を苦しめ、支配するようになった。」


皆で神の宮殿の中に入る。
「この宮殿に神がいらっしゃるのか。天使界数千年に及ぶ悲願。神にお会いする時がとうとう・・」
しかし神の宮殿には誰もおらず、巨大な穴が空いていた。
「これは・・この大穴は・・まさか天使界を襲った邪悪な光は神の国をも・・」
「神よ!お答え下され!一体どちらにいらっしゃるのですか!」


神の玉座の裏に不思議な光が輝いている場所がある。
「何と神々しい光じゃ。」
「さあ守護天使主人公よ。女神の果実を捧げるのじゃ。」
主人公は7つ全ての女神の果実を捧げた。
何処からともなく不思議な声が聞こえてくる。
「守護天使主人公、そして長老オムイ。私の声が聞こえますか。」
「私はあなた方天使が神と呼ぶ者ではありません。」
「人間の清き心から生まれた星のオーラは世界樹に女神の果実を実らせ、天の箱舟を神の国へと導きました。」
「あなた方が神の国へと女神の果実を届けてくれたおかげで私は何千年もの長き眠りから目覚めることが出来たのです。」
「天使達よ。私の元へとお帰りなさい。」
主人公達は天使界にある世界樹の前に転送された。
世界樹が女神の果実と同じ黄金色に輝いている。
「お帰りなさい、天使達よ。」
「私はあなた達が世界樹と呼んでいた者。」
「創造神グランゼニスの娘、女神セレシア。」
「あなた達天使が長い間人間を守り、星のオーラを捧げてくれたおかげで私はこうして目覚めることが出来ました。ありがとう。」
「そして主人公、一度は失われた女神の果実を取り戻してくれたこと、心から感謝しています。」


長老オムイが言う。
「女神セレシア様とお呼びすればよろしいのでしょうか。あなた様はなにゆえ世界樹に。」


「人間界を守るためです。」
「父なる神グランゼニスは、かつて人間は失敗作だと言って人間達を滅ぼそうとしました。」


主人公達の頭に女神セレシアの記憶が流れ込む。
「人間達はこの世界に相応しくない。」
「人間は失敗だ。私は人間を滅ぼすことにした。」
グランゼニスが赤い雷を人間界に向けて放つが、女神セレシアが青い光でその雷を受け止める。
「お待ち下さい!」


「何故止めるのだ。人間には庇ってやる価値などないではないか。」


女神セレシアが言う。
「私は人間達を信じます。人間を滅ぼしてはいけません。どうか・・」
女神セレシアは世界樹になった。
「お父様がどうしても人間を滅ぼすと言うのなら、私は世界樹となりましょう。」
「世界樹となったこの身を元の姿に戻すのは人間の清き心だけ。」
「人間はまだ清き心を失ってはいないはず。私は身をもってその事を・・」


グランゼニスが言う。
「何と・・何という愚かなことを・・」
「セレシア、お前には分からぬのか?もし人間の心が邪悪であれば世界樹となったお前は永遠に・・何ということをしてしまったのだ、お前は・・」
「いいだろう、セレシアよ。お前のその愚かさに免じて人間を滅ぼすのはしばし待とう。」
「そして世界樹となったお前の手足となる者を創り、その者達に人間を見守り清き心の証を集める役目を与えよう。」
「我が娘セレシアよ。お前が女神として目覚める日は来るのであろうか・・」


女神セレシアが話を続ける。
「清き心の証とは、あなた方が星のオーラと呼ぶものです。」
「父なる神グランゼニスに人間は邪悪ではないと信じてもらうため、私は自ら世界樹となりました。」
「人間の清き心から生まれた星のオーラを世界樹に捧げればいつの日か女神の果実が実る。」
「女神の果実が神の国へ届けられし日、私は女神として目覚めるのです。」
「父なる神グランゼニスは世界樹に仕える者としてあなた方天使と天使界を創りました。」
「人間達を見守り星のオーラを集め、世界樹へと捧げること。そして実った女神の果実のチカラで私を蘇らせるためにあなた方天使は生まれたのです。」


長老オムイが言う。
「我ら天使にそのような役目があったとは・・」
「ならばグランゼニス様はいずこにおられるのですか?」
「よもや、あの神の宮殿を破壊した邪悪な光によって神はすでに・・」


「父グランゼニスが滅びたのなら私もこの世界もとうに消え去っているはず。」
「私には分かります。神の国にはいませんが、父なる神は確かにおられます。」
「天使達よ、あなた方に伝えたいことがあります。」
「神の国を襲った邪悪な光。その源たる邪悪な者はこの世界を滅ぼそうとしています。」
「時に忘れ去られたガナンの地、蘇りしガナン帝国城に邪悪な気配を感じます。」
「守護天使主人公よ。魔帝国ガナンへ向かい、どうか邪悪なチカラから人間達を守って下さい。」
「あなたに道を開きましょう。」
「私のチカラを宿せし青い木があなたをガナン帝国城へと導くでしょう。」
「邪悪なチカラが消え去りし時、世界は救われる・・どうか主人公、人間界を・・」


主人公は天の箱舟に乗ってガナン帝国城に向かった。
ガナン帝国城の入り口に着くとゲルニック将軍が待ち構えていた。
「ホーホッホ。またお会いしましたね、主人公さん。」
「まさかあなたごときがカデスの牢獄を解放するとは思いもよりませんでしたよ。」
「それにしてもゴレオン将軍も迂闊な。おかげで私まで皇帝陛下に大目玉でしたよ。」
「ホッホ。こう見えて私、相当頭に来ているんですよ。全身の血が煮えたぎる程にね。」
「この憤りをおさめるため精魂込めて念入りにブチ殺して差し上げましょう!」
主人公は襲いかかってくるゲルニック将軍を倒した。
「ホッホッホ。どうやらあなたに関わると私の計算は狂わされるようですね。」
「しかし私が倒れたところでまだ帝国三将最後の一人、ギュメイ将軍がいます。」
「彼さえいれば帝国城の守りは万全。実に腹立たしいことですがね。ホッホッホ・・」
ゲルニック将軍は消滅した。


帝国城の内部を進んでいくと、途中でギュメイ将軍が待ち構えていた。
「ゴレオンもゲルニックも逝ったか。我が名はギュメイ。帝国三将最後の一人だ。」
「この先は主君ガナサダイ皇帝陛下の玉座の間。」
「我が忠義にかけて招かれざる者は蟻一匹たりとも通しはせぬ!」
主人公は襲いかかってくるギュメイ将軍を倒した。
「見事だ。あの方の他に我が剣を打ち破る者がいようは。」
「最期にお前のような敵と戦えたこと、誇りに思うぞ。」
「皇帝陛下、最期までお仕えできぬ不忠をどうかお許し下さい・・」
ギュメイ将軍は消滅した。


さらに奥に進むと暗黒皇帝ガナサダイがいた。
「さあイザヤールよ。その女神の果実を早くよこすのだ。」
イザヤールが言う。
「良かろう、暗黒皇帝ガナサダイ。これが欲しければくれてやる。」
「だがその代わりにお前の命を貰い受ける!」
剣を向けるイザヤールに暗黒皇帝ガナサダイが言う。
「それが貴様の本心か。なるほど。さしずめその果実も偽物といったところか。」
「よくもこのガナサダイを謀ってくれたものよ。その罪、万死に値すると知れ。」


「ここでお前を倒し、あの方を救い出させてもらう!」
イザヤールが暗黒皇帝ガナサダイに攻撃を放つがまったく効かない。


「貴様のチカラはこの程度か。失望させてくれる。」
「これではバルボロスの餌にしたところでたいした足しにもならんな。」
「役立たずめ。無用者には死をくれてやろう。」
イザヤールは暗黒皇帝ガナサダイが放つ炎の魔法で全身を焼かれてしまった。


そこへ主人公が駆けつける。
「これは・・幻?主人公、どうしてお前がこんな所に。」
暗黒皇帝ガナサダイと対峙する主人公。
「ほう、そこの死にぞこない以外にもネズミが入り込んで来ようとは。」
「ギュメイもゲルニックも倒されたと言うわけか。ならば余も本気を出さねばな。」
「かかってくるがよい、ネズミ。魔帝国ガナンの皇帝が威光、その身に刻んでくれようぞ。」
主人公は襲いかかってくる暗黒皇帝ガナサダイを倒した。
「このガナサダイが・・魔帝国ガナンが敗れるなどあってはならぬ・・おのれ・・」
暗黒皇帝ガナサダイは消滅した。


暗黒皇帝ガナサダイとの戦いを見ていたイザヤールが言う。
「強くなったな、主人公。」
「捕らえられた天使達を救うためガナサダイに従うふりをしてきたがチカラ及ばずこのザマだ。」
「だが私は自分の行いが間違っていたとは思わない。思わないが、お前を欺き、傷つけてしまった事だけが心残りだった。」
「だがお前は私の想像など遥かに超えて強くなっていたのだな。」
「主人公、お前になら・・」
「どうやら私はここまでのようだ。」
「後のことは頼む。天使達を、そしてあの方を。我が師匠を救い出し・・」
イザヤールは天に召されていった。


ガナン帝国城の地下に向かうと太い鎖で手足を拘束された天使がいたので鎖を外してあげた。
「ここを訪れる者がいるとは・・ガナサダイが倒されたのか?」
「クックック。そうか。また私一人を残してガナサダイは逝ったか。」
「野望を果たせぬまま彷徨う奴の魂にチカラを与え手駒としてやったというのに。」
「つくづく勝手な男だ。いや、そもそも人間とは皆自分勝手なもの。」
「人間を守ろうとするセレシア。滅ぼそうとしながら放置したグランゼニスも同罪。」
「犯した罪は裁かれねば。誰もやらぬと言うならこの私が手を下そう。」
「我が名はエルギオス。かつて大いなる天使と呼ばれし者。」
「問おう、翼なき天使よ。お前は人間に守る価値があると思っているのか?」
主人公は頷いた。
「ならば黙って我が手にかかれ。人も神も全て皆滅びるがいい。」


襲いかかってくる堕天使エルギオスに反撃しようとするが、主人公の身体は動かなかった。
「上位の天使には逆らえぬ天使の理か。戦う価値もない。」
主人公は堕天使エルギオスの攻撃をまともに受け、倒れ込んでしまった。
「300年囚われていた私の憎しみがどれほどのものかお前には想像できまい。」
「しかしその憎悪の念こそが私にチカラを与えたのだ。今や私の存在は神をも超えた。」
「かつて私が放った閃光はお前も見ただろう?神は死んだのだ。」
「今こそこの私が神になりかわり至高の玉座につこう。」
「人間どもを滅ぼす前に、まず神の国を我が居城としてくれる。」
「闇竜バルボロスよ。我もとに来たれ!」
堕天使エルギオスは闇竜バルボロスと共に神の国へと飛んでいった。


サンディが主人公の懐から出てきた。
「ちょっと主人公、大丈夫?」
「思いっきり負けちゃったね。でもあのエルギオスってやつが帝国を操ってたの?」
「あいつ、天使なんだよね。どうしてあんなことになっちゃったんだろ。」


そこへラテーナがやって来た。
「エルギオス!」
「今度こそ会えると思ったのに。」
「また手が届かなかった・・」
ラテーナの記憶が主人公の頭に流れ込んでくる。


「もう、怪我がまだ治りきってないのに勝手に抜け出したりして。」
「エルギオス、この前の戦いであなたの傷は悪化してるのよ。もっと自分を大事にして。」
エルギオスが言う。
「ナザムはいい村だな。ここで暮らすようになって改めてそう思うようになった。」
「ラテーナ。私はこれからもこの村を守り続けることを誓おう。」
「これはその約束の証だ。受け取ってくれ。」
ラテーナはエルギオスから星空の首飾りを受け取った。
「この星空の首飾りは天使が近づくとそのチカラに反応して輝き出すという特別なものだ。」
「願わくはこの首飾りが常に輝きと共にあらんことを。」
ラテーナが言う。
「それって、あなたがこれからもずっと側にいてくれるってこと?」
エルギオスは優しく微笑んだまま頷いた。


帝国の兵士達がナザム村に攻め込んできた。
「帝国が私を狙っているだと?懲りない奴らだ。再び蹴散らしてくれる。」
村長が言う。
「お待ちくだされ。帝国の奴ら、この間とは比べものにならぬ大軍ですぞ。」
「天使様は裏山の泉の洞穴に隠れていて下され。」
「帝国兵共には天使様はすでに天使様の国に帰られたのだと言い聞かせましょう。」
「ラテーナ、お前も天使様に付き添って隠れておるのじゃ。」
「それとタンスの奥の秘伝の薬、万が一の時のため持っていきなさい。」
「ではわしは帝国軍を村の外で引き止めておくから。後のことは頼んだぞ。」


泉の洞穴に着くと、エルギオスから貰った星空の首飾りが光り輝く。
「この首飾りつけてたら帝国軍に見つかっちゃうかも。隠しておかないと。」


「ここならそう簡単には見つかりっこないわ。」
エルギオスが言う。
「ラテーナ、やはり私は村に戻ろうと思う。」
「守るべき村から逃げ出し敵に背を向けるなど、守護天使として許されることではない。」


「そうよね、あなたならそう言うと思ってたわ。」
ラテーナがエルギオスに秘伝の飲み薬を手渡す。
「村に伝わる秘伝の飲み薬よ。傷によく効くの。お父さんが使ってくれって。」
エルギオスは飲み薬を飲んだ。
「うう、これは眠り薬・・どうして・・ラテーナ・・」
エルギオスは眠り込んでしまった。
「ごめんなさい、エルギオス。」
「でもこうしなければあなたはきっと村のために戦い、深く傷つくことになる。」
「そんなの私には耐えられない。たとえあなたを裏切ることになっても。」


そこへ帝国軍と村長がやって来た。
「娘には酷いことをしないで下され。村人には手を出さないという約束だったはずですぞ。」
ラテーナが言う。
「酷い!騙したのね!」
「村のために守護天使様を帝国に売るっていうの?そんな事、許されないわ!」
「エルギオス、目を覚まして!エルギオス!」


「この娘は翼の男をまんまとおびき出し眠らせた協力者なのです。」
「どうかその手柄に免じて無礼はお許し下され。」


帝国兵が言う。
「まあいい。翼の男さえ手に入るなら後はどうでもいいことだ。」
「お前達、その男を鎖につないで運び出しておけ。」
帝国兵はエルギオスを鎖につないで運んでいった。
「さて、残るは・・この二人、始末しておけ。」


「待ってて、エルギオス。」
「ここで死んでも、私はきっとあなたを見つけ出す。」
「あなたが何処にいても、たとえ何年、何十年かかっても。必ず・・」
村長とラテーナは帝国兵に殺されてしまった。


サンディが言う。
「・・そんなことがあったんだ。そりゃあ、あのエルキモすも人間を恨んじゃうわ。」
「多分あんたの事も裏切り者って思ってるんじゃない?」


「私はもう一度彼に会ってあの時のことを謝らなくてはならないの。」
「そのために今日までこうして地上を彷徨って来たのだもの。」
「あの人が去っていったのなら、私はそれを追うだけ・・」
ラテーナの亡霊は去っていった。


「あーあ、行っちゃったよ。相手はお空の上だってのにどうするつもりなのかな。」
そこへアギロがやって来た。
「おう、主人公。無事だったか。」
「なんか得体の知れない野郎がバルボロスを呼んで一緒に飛んでっちまっただろ?」
「なのにお前さんからはちっとも連絡がないんで心配しちまったぜ。」


サンディが言う。
「心配しちまったぜじゃないですよ、店長!こっちは大変だったんだから!」
「その飛んでったキモい奴こそが全ての元凶で激強で神の国に行っちゃったんスよ!」


「まあ待て。詳しい話は天使界に戻る途中で聞くとしよう。」
「捕まってた天使達は先に箱舟に乗ってもらってるからな。今すぐ戻るぞ。」


ガナン帝国城を後にした主人公は、救い出した天使達を天使界へとお送り届けた。


長老オムイが言う。
「何ということじゃ。」
「天使界を襲った邪悪な光、そして魔帝国ガナンの復活。それが全て天使エルギオスの仕業じゃったのか。」
「人間界で消息を絶ってから数百年。よもや魔帝国ガナンに囚えられたままエルギオスが生きていたとはな。」
「そのうえ哀れなエルギオスは邪悪に心を蝕まれ、堕天使となってしまったのか。」
「主人公よ。堕天使エルギオスは自ら新しき神になるため、神の国へ向かったのじゃな?」
「本来ならお前にエルギオスを追いかけ奴を止めて欲しいのじゃが。」
「天使は上位の天使には逆らえぬのが習わし。」
「もはやエルギオスを超える天使は何処にもおらぬ。このわしでさえもな。」
「神よ・・いずこにおられます。どうぞ神よ、我が祈りお聞き届け下され。」
「怒りに囚われしエルギオスの心をどうかお救い下され。人間界をお守り下され。」


世界樹へ向かい、女神セレシアと話をする。
「悲しみが空を覆っています。堕天使エルギオスの悲しみと怒りが世界を染めようとしている。」
「このうえ堕天使エルギオスに罪を重ねさせてはいけません。あの者の心は汚れきってはいない。」
「あなたがこれまで助けてきた人間達を覚えていますか?」
「あなたに出会い、悲しき運命から逃れることが出来た沢山の人間達。」
「彼等はあなたに心から感謝を捧げています。清き心を持つ人間達が。」
「あなたが助けた人間達が、今度はあなたのチカラとなる。」
主人公は女神セレシアから女神の果実を受け取った。
「その果実はあなたが助けた人間達の感謝の心が結実して、たった今生まれたものです。」
「主人公よ、その果実を食べれば恐らくあなたは人間になってしまうでしょう。」
「けれど人間ならば天使の理に縛られることなく、堕天使エルギオスと戦えます。」
「辛い選択を強いている事は分かっています。ですがもうこの方法しかないのです。」
「主人公、神の国へ行きエルギオスを止めて。」


天の箱舟に乗りアギロと話をする。
「セレシア様のお言葉、俺にもしかと聞こえたぜ。」
「だけどお前、天使をやめて人間になっちまうなんて、本当にそれでいいのかよ。」
「俺にはとてもお前さんにそこまでの決意があるとは思えねえ。」
「どうしてもエルギオスを追って神の国へ行くっていうんなら、お前の決意をここで見せてみな!」
主人公はアギロの前で女神の果実を食べた。
「俺には分かる。主人公のオーラは変わったぜ。こいつは人間のそれだ。」
「恐らくその時が来れば、俺達も天の箱舟も天使界も見えなくなっちまうはずだ。」
「主人公、お前の決意、しかと見せて貰ったぜ。もう止めやしねえ。」
「神の国でも地上でも好きな所に飛んでってやるよ!」


主人公は天の箱舟に乗って神の国へと向かい、堕天使エルギオスと対峙した。
「罪。存在そのものが罪なのだ。」
「人間だけではない。神の創りしこの世界はありとあらゆる罪にまみれている。」
「全ての罪に裁きを下さんとするならば、もはや世界を滅ぼす他ない。」
「翼なき天使よ。お前は我が目的を阻むためここまで来たのか。」
「愚かなことだ。」
「だが天使の理に縛られている以上、お前は我が敵にはなり得ぬ。身の程を知るがいい。」
主人公は襲いかかってくる堕天使エルギオスを倒した。
「なぜだ?なぜ天使であるお前がこの私と戦うことが出来る?」
「そうか。貴様、天使のチカラを捨てて人間に成り果てたな!」
「くっくっく。実に愉快だ。」
「人間への憎悪によって堕天使となった私の前に立ちはだかるのが天使を捨てて人間となった者とはな。」
「ならば私も天使の姿を捨て、完全なる破壊の化身と化そうではないか。」
「来たれ、バルボロスよ!」
闇竜バルボロスが現れたが、主人公が返り討ちにした。
「バルボロスをも倒したか。人に落ちたる者よ。」
「だが貴様ら人間への憎悪と絶望こそがこのエルギオスの力の源なのだ。」
「その憎悪の激しさを、絶望の深さを、今こそ思い知らせてくれるわ!」
堕天使エルギオスは悪魔に転生した。
「さあ始めよう。世界の滅亡を。」
主人公は襲いかかってくる堕天使エルギオスを再び倒した。
「馬鹿な・・神をも超える力を手に入れたこの私が・・人間ごときに敗れると言うのか・・」
「良かろう。今は一時の勝利に酔いしれるが良い。だが、この世界は消滅するのだ!私の憎悪のチカラで愚かなる貴様もろともな!」


そこへラテーナの亡霊が現れた。
「やっと見つけたわ・・」
「エルギオス、あなたをずっと探してた・・」
ラテーナの亡霊が堕天使エルギオスの手に触れると、ラテーナの記憶がエルギオスの頭に流れ込む。
「あの日、私はあなたを守れなかった。」
「だからずっと探し続けたの。今度こそあなたを救いたい・・」
「絶望の闇の中で迷うあなたを・・」
ラテーナの思いが伝わり、堕天使エルギオスは天使に戻った。
「ラテーナ・・君が私を裏切るはずなどなかったのだ。それに気づかなかった己の未熟さが恥ずかしい。」
「ラテーナ、辛かっただろう。こんなにも長い年月を愚かな私のために彷徨って。」
「それなのにあの頃と変わらずこんな私のために微笑みを返してくれるというのか。」
「私は何という愚かなことを・・」
「主人公、もしお前が止めてくれなければ怒りと憎しみに我を忘れ、私は全世界を滅ぼしていただろう。」
「我が愚かなる行いの数々、償っても償いきれぬが、せめて罪を重ねずに済んで良かった。」
「天使主人公。お前は我が弟子イザヤールを師とあおぐ天使だそうだな。」
「あいつは良き弟子を育てた。不甲斐なき師である私を許せとイザヤールに伝えてくれ。」
エルギオスとラテーナは天に召されていった。


女神セレシアが神の国に戻ってきた。
「悲しき魂を救い世界を守ったのはあなたです、主人公。」
「人であり天使でもあるあなたの良き心、良き行いが人間達の世界を救いました。」
「そして今、長きにわたる天使達の役目も終わろうとしています。」
「星となった天使達は永遠に星空の守り人として輝き続けることでしょう。」
「けれど主人公、あなたには別の役目があります。」
「主人公、あなたは人間として人間達の世界の守り人になって下さい。」
「神の国も私もじきにあなたの目には見えなくなるでしょう。お行きなさい、主人公。」


主人公を乗せた天の箱舟が地上に向かって動き出す。


「ねえ、誰かいるの?」
「いるのだったら姿を見せてよ。何か言ってよ。」
そんな人々の声が聞こえる。
一体いつの頃からこの世界を見守って来たのだろう。
僕達は天使と呼ばれていた。


地上に着くとサンディが泣いていた。
「うぐっ、グスッ・・」
「何よ~、これでお別れなんてそんなの寂しいよ~。」


アギロが言う。
「じゃあな、主人公。お前の幸運を祈ってるぜ。」


天の箱舟が天に向かって動き出す。
「主人公ー!これまで一緒に旅して結構面白かったよー!」
「人間になってもアタシとあんたは友達だからねー!よーく覚えときなさいよー!」
「あ、そうだ!最後だからあんたにだけアタシの秘密教えたげるー!」
「あのねー!アタシ、ずーっと秘密にしてたんだけど、何を隠そう、アタシってね、ネイルアーティスト検定に合格したの!!」