物語は明け方の森の中から始まる。
焚き火の側で寝ている主人公。
ふと目が覚め起き上がると金髪の女性が話しかけてきた。
「あら?もう目が覚めた?あまり眠れなかったのかしら?」
「無理もないわね。いよいよですものね。」
「ところで彼、どこまで見に行ったのかしら。ずいぶん遅いようだけど。」
そこへモヒカンの男性がやって来る。
「お、二人共、もう起きてたか!ちょっとまわりを見てきたけど、やっぱあの城に間違いないようだぜ。」
「さて、そろそろ行かないか?もう十分に休んだだろう?」
金髪の女性が答える。
「そうね。こうしてても始まらないわ。」
「そのために今までずいぶん長い旅をしてきたのですものね。」
「行くぜ主人公!相手は大魔王だ。死んだ気で戦おうぜ。」
「もしこの戦いに勝てば、世界に平和が訪れるはずよ。」
「準備はいいわね?さあ、行きましょう。」
森を抜け、崖道を北に進で行く。
「この崖の下が魔王ムドーの居城だ。もう後戻りは出来ねえぜ。」
「いよいよですね。もし言い伝えが本当ならこの笛で・・・」
「さあ笛を吹くわよ。」
金髪の女性が笛を吹くと、金色の飛竜が主人公達の前に舞い降りてきた。
飛竜の背に飛び乗る主人公達。
飛竜は主人公達を乗せ、魔王ムドーの居城に降り立った。
魔王ムドーの居城を進んで行く。
「この扉の向こうには多分魔王ムドーが待ち構えているはずよ。」
「いよいよだな。けどよ、それにしては静か過ぎると思わねえか。」
「こんなに凄え城なのにここまで簡単に入り込めるとは。」
「ええい、考えててもしょうがねえ。さっさと乗り込もうぜ!」
玉座の間に入ると魔王ムドーが待ち構えていた。
辺りには闇の霧が立ち込め、かなり視界が悪い。
「わっはっは。この私を倒そうなど甘く見られたものだな。」
「愚か者め!石となり永遠の時を悔やむがよい!」
主人公達は石にされ何処かへ飛ばされてしまった。
と、ここで夢から覚める。
「お兄ちゃん!大丈夫?」
主人公の妹、ターニアが心配そうに主人公を見ている。
「もうお兄ちゃんたらびっくりさせないでよ。」
「いきなりベッドから落っこちちゃうんだもん。」
「頭打たなかった?」
「あ、そうだ。さっき村長さんがお兄ちゃんに会いに来たのよ。」
「寝てるっていったらまた後で来るって帰っていったけど。」
主人公は村長に会いに行った。
「おお主人公、来てくれたのか。」
「いや実は頼みたい事があってな。」
「この村の民芸品が町で高く売れることは主人公も知っとるだろう?」
「そして毎年そのお金で精霊の冠を買ってきて村の祭りの時に飾るのだが、今年は主人公に精霊の冠を買ってきて欲しいんじゃよ。」
「この村から麓の町へおりるのは大変だが、主人公なら大丈夫じゃろう。」
「売り物はこの木彫り細工と絹織物10枚じゃ。行ってきてくれるか?主人公。」
「この村から南に山をおりればシエーナの町じゃ。では頼んだぞ、主人公。」
主人公は村を出て山をおり、マルシェの町へ向かった。
町の人から情報を聞く。
「これは噂ですが魔王ムドーがいよいよチカラをつけてきたみたいですよ。」
「レイドック王が来られないのもそのためだとか。物騒な世の中になってきましたなあ。」
村の民芸品を売ってお金を手に入れ冠職人の家を訪ねた。
「あら、なにか御用?え?ライフコッドの村からやって来たの?」
「去年まではお爺ちゃんだったのに今年はずいぶん若い人が来たわねえ。」
「精霊の冠でしょ?でもごめんなさいね。」
「今年は近くにいい材料の木が見つからないってお父さん遠くまで出かけていったの。」
「この町の西にある橋を渡ってずっと先の森まで行くって言ってたわ。」
「出かけていってから今日で3日目だけど流石にちょっと心配ね。」
主人公は町を出て西にある橋を渡った。
すると大地の大穴があり、そこで落ちそうになっている男性を発見した。
「おお、ありがたや。やっと人が来てくれたか!」
「わしは冠職人のビルテじゃ。頼む!助けてくれ!」
主人公はビルテを助けてあげた。
ビルテの手を取り引っ張り上げる。
「ああ助かった。ありがとう・・・」
次の瞬間、主人公は足を滑らせて大地の大穴に落ちてしまった。
主人公は魂だけの存在となり大穴の下にある世界を彷徨った。
町人に話しかけても反応がない。
主人公の姿が見えていないようだ。
不思議な井戸を発見し覗き込むと、大穴の上の世界に戻ることが出来た。
身体も無事のようだ。
シエーナの町に戻り、冠職人のビルテに会いに行く。
「なんじゃい?わしは今忙しいんじゃ。」
「もしかしたらわしのせいで命を落としたかも知れん若者のため、こうして冠を・・・」
主人公の姿に気がつくビルテ。
「おお、おお!お前さんは!そうか生きておったか!」
「うんうん、無事でなりより。こんなじじいの代わりに若いあんたが死んではな。」
「さてお前さんは精霊の冠を買いに来たんじゃろ。」
「ほれ、出来たてのホヤホヤじゃ。」
主人公は精霊の冠を手に入れた。
「命の恩人のお前さんからお金を取ろうとは思わん。村の皆が待ってるじゃろ。」
「早く帰ってやるといいぞ。」
ライフコッドの村に戻ると村長が出迎えてくれた。
「おお、主人公。待っておったぞ。」
「精霊の冠も無事に手に入ったようじゃな。どれどれ。」
主人公は村長に精霊の冠を渡した。
「ほほう、今年の物は特に良く出来ているようじゃな。」
「主人公よ、ご苦労だった。」
「とにかく今は祭りの準備じゃ。おお忙しい。」
村長は精霊の冠を持って何処かへ行ってしまった。
自宅に戻り、留守番をしてくれていたおばあさんに話しかける。
「おや主人公、お疲れだったね。」
「ターニアちゃんから留守番を頼まれてあんたの帰りを待ってたんだよ。」
「さあさあ疲れただろう。祭りが始まるまで少し休みなさい。」
主人公はベットで少し休むことにした。
夜になり祭りが始まったので外に出る。
村長の家から妖精の冠をつけたターニアが出てくる。
ターニアはゆっくりと教会の中に入った。
神父が言う。
「1年の時を経て今夜再び精霊の使いがこの村を訪ねて下さいました。」
「大いなる精霊の使いよ!さあその冠を我々にお与え下さい。」
ターニアは精霊の冠を高く捧げ目を閉じた。
「山の精霊よ。あなたの冠を確かにお受けいたします。」
「そしてこの女神像を通してまた1年の間我々をお守り下さい。」
神父が教会に飾られている女神像に精霊の冠をかぶせる。
「精霊の使いよ。これであなたの役目は終わりました。」
「どうぞ精霊の元へお帰り下さい。」
ターニアが答える。
「わかりました。ではまた来年参りましょう。皆様に平和を。」
ターニアが教会から出ようとした時、ターニアに精霊が乗り移り喋りだした。
「主人公、私の声が聞こえますね。」
「主人公よ。あなたは不思議な運命を背負い生まれてきた者。」
「やがて世界を闇が覆う時、あなたのチカラが必要となるでしょう。」
「その時が来る前に解き明かすのです。閉ざされた謎を。」
「そしてあなたの本当の姿を。」
「主人公よ、旅立ちなさい。それがあなたに与えられた運命なのですから。」
ターニアが正気に戻る。
「あら?私どうしたのかしら。急に気が遠くなって、それから温かいものが・・・」
村人のランドが興奮している。
「す、すげーよ!本物の精霊みたいだったよ、ターニアちゃん!」
村人たちのざわめきががおさまらない。
そんな中、神父が村人たちに言う。
「ゴホン!皆さんお静かに!」
「ともかくターニア、いや精霊の使いよ。ご苦労様でした。」
「これで精霊の儀式は終わります。さあ皆さん、楽しい夜を!」
村に花火が打上げられる。
ターニアを見つけたので近づこうとすると、ランドが一緒にいて何やら告白をしている様子だったので隠れて見守ることにした。
「ねえ、考えてくれたかい?オレとの結婚のこと。」
ターニアが断る。
「ごめんなさい。やっぱり私まだ・・・」
ランドが粘る。
「年のことなら早くないと思うぜ。オレはもう17歳だし、ターニアだって今年16だろ?」
「年のことじゃなくて、私ね、よくわからないの。自分のことが。」
ランドがなおも粘る。
「何を言ってるんだよ。君の何がわからないって言うんだ?」
「ごめんなさい。でも私本当にわからないの。この世界のことも私自身も。」
「もう少し考えさせて。それじゃ。」
ターニアは行ってしまった。
ランドが一人たそがれている。
「ターニア、自分が何者かなんて誰にもわかりゃしないんだぜ。」
村長と話をする。
「おお来たか、主人公。」
「主人公は大地の大穴から落ちて幻の大地を見てきたそうじゃな。」
「ふーむ、山の精霊様のお告げと言い、主人公には何かあるのかも知れんな。」
「よし、村長として主人公にこの村から旅立つことを許そう。」
「そしてこれはレイドック城に入るための通行書じゃ。これをやろう。」
主人公は通行証を受け取った。
「それがあればレイドック王に会うことが出来るかも知れん。」
「お前ももう17歳。そろそろ自分の行く道を自分で決めても良い年頃じゃ。」
「気をつけてゆくのだぞ。」
自宅に戻りターニアと話をする。
「あ、お兄ちゃん。お帰りなさい。」
「私精霊の使いの役をしたせいか、なんだか疲れちゃって。」
「お兄ちゃんも少し休んでいく?」
お祭りはその夜遅くまで盛大に続けられた。
人々はあるいは歌い、あるいは踊り、年に一度のお祭に酔いしれた。
そして夜が明けた。
「あ、お兄ちゃん。やっと目が覚めた?」
「いくら起こしても起きなくて。よっぽど疲れていたみたいね。」
「村長さんから聞いたわ。お兄ちゃんレイドック城に行くんでしょ。」
「王様に会えたらこの世界のことが何か分かるかも知れないもんね。」
「幻の大地のことや魔王のことや・・不思議な事が多くって私も不安なの。」
「このままじゃ何か恐ろしいことが起こりそうで。」
「だから私お兄ちゃんを止めたりしないよ。」
「でもきっとまた無事に帰ってきてね。約束よ、お兄ちゃん。」
主人公は故郷ライフコッドを旅立った。
マルシェの町よりさらに南へ進み、レイドック城へ向かう。
城下町の入り口に立っている門番に通行証を見せ、町の中に入る。
教会に行くと夢の中に出てきたモヒカンの男がいた。
「さあてと、お祈りも終わったことだしそろそろ行くかな。」
モヒカンの男は教会を出ていった。
すぐに追いかけるが見失ってしまった。
その時、お城の方から鐘の音が聞こえてくる。
主人公はレイドック城へ行くことにした。
城の入口にいる門番に話しかける。
「ここはレイドック城。兵士になりにきたのか?」
「これより兵士長ソルディ様がお前たちとお会いになる。」
「城の中に入るが良い。」
城2階の広間には多くの兵士志願者がいた。
先程教会で会ったモヒカンの男もいる。
兵士長ソルディが言う。
「よくぞ集まった。我が王宮の兵士に志願する心ある者たちよ。」
「だがしかし、誰もが我が城の栄誉ある兵士になれるわけではないのだ。」
「そこで私に君たちを試させて欲しい。」
「この城より東南へ橋を2つ渡った先に試練の塔と呼ばれる塔がある。」
「その塔よりある物を取ってきて欲しいのだ。」
「それが何であるかはそれぞれが考えるように。」
「さあゆけ!試練の塔の扉は今まさに開かれた!」
主人公はレイドックを出て南東に進んで行き、試練の塔に入った。
試練の塔をのぼっていると途中でモヒカンの男と出会う。
「あれ?あんた確かどっかで会ったよな。」
「オレの名前はハッサン。あんたは?」
「そうか、主人公か。主人公も志願兵になりに来たんだよな。」
「誰が採用されるかわからないけど、まあお互い頑張ろうや。じゃあな!」
塔の最上階に宝箱があったが、先にハッサンがたどり着いていた。
「へへへ、いただき!」
ハッサンが宝箱の中身を手に入れる。
「悪いな主人公。こいつはオレが貰ったぜ!」
「さあてと、城に戻るか。じゃあな主人公。縁があったらまた会おうぜ!」
主人公が兵士長ソルディの所へ戻ると、ちょうどハッサンが宝箱の中のものを手渡していた。
「というわけで約束通りハッサンよ、そなたを王宮の兵士と認めよう。」
「命令があるまで城の中などを見ておくといいだろう。」
主人公は城の中庭にいる老人に話しかけた。
「王家に代々伝わるこの馬車も今ではこれを引ける馬がいなくなってしまったのじゃ。」
「馬車が立派すぎて重すぎるからとはいえ情けないことよ。」
「どこかに威勢のよい馬はおらんものかのう。」
「威勢のよい馬がおったらその馬をここに連れてきて下さらんか。」
「死ぬまでにもう一度馬車の雄姿をこのじじいに見せてくだされ!」
城を出て少し進むと、ハッサンが主人公を追いかけてきた。
「探したぜ主人公。オレは兵士になれたけどお前は駄目だったんだろ。」
「そこでだ。そのお前にいい話を持ってきたぜ。」
「実は今から噂に聞いた暴れ馬をつかまえに行こうと思うんだが。」
「生け捕りにするには一人じゃ無理かなって。」
「どうだい、ここはひとつこのオレと手を組まねえか?」
「こいつが上手くいきゃ、主人公も兵士になれるかも知れねえぜ。な、いいだろ?」
主人公は頷いた。
「ようし決まった!今日からオレたちは兄弟分だ。」
「よろしく頼むぜ、な、主人公!」
ハッサンが仲間に加わった。
レイドックの西の森に入る。
森の中で馬を追いかけ二人で挟み撃ちにした。
「いいか主人公。いっせーのせで捕まえるぞ。」
「いっせーの、せ!」
暴れ馬をつかまえた。
「ようし、つかまえた!」
「でも変だなあ。暴れ馬っていうわりにはそんなに暴れなかったぜ。」
「あれ?変なやつだなあ。主人公に鼻を擦り寄せたりしてさ。」
「オレたちのこと気に入ってくれたのかもな。」
「そうだ、こいつに名前をつけてやんないとな。」
「うーんと、よし、思いついたぞ!」
「こいつの名前はファルシオンだ。どうだ、いい名前だろう?」
「よーし、行くぜ!」
城に戻り、中庭にいる老人にファルシオンを見せた。
「おおおー!これはまたなんとたくましい馬じゃ。」
「うむ、うむ、引ける。こいつならこの馬車を引けるぞい!」
「こいつをわしに任せてくれるな?お願いじゃ!」
「これでもう一度この馬車雄姿が見られるというものじゃ。」
「おぬしたちの事、きっと王様に報告しておきますぞ。さあ、行きなされ。」
そこへソルディ兵士長がやって来る。
「そなた達二人の働き、しかと見届けた。」
「両名とも王宮の兵士として十分な資格を兼ね備えていると判断した。」
「この私の責任で主人公よ、お前もこの城の兵士として働いて貰おう。」
「すでに聞き及んでいるだろう。魔王ムドーの存在を。」
「このムドーを倒すべく、我が国王は眠ることなくことを進めておられる。」
「さあついてくるがよい。お前たちをレイドック王にひきあわせよう。」
ソルディ兵士長と一緒に玉座の間に向かった。
レイドック王が兵士に指示を出している。
「というわけでラーの鏡というものを探して来て欲しいのだ。」
大臣がソルディ兵士長に気づく。
「王様、ソルディ兵士長ですぞ。」
ソルディ兵士長が言う。
「陛下、この度新しく王宮の兵士に選ばれた2名を連れて参りました。」
「この2人、こう見えても新任早々あの馬車の馬を見つけるほどなかなか優秀で。」
「もしも陛下のお役に立てそうなことがあらば、なんなりとお申しつけ下さい。」
レイドック王が言う。
「ふむ、2人共なかなか良い目をしているな。」
「よろしい!早速だが君たちにも手伝ってもらうことにしよう。」
「この世界の何処かに真実だけを映すラーの鏡というものがあるらしいのだ。」
「いつも後少しでその姿をかき消してしまう魔王ムドーなのだが、ラーの鏡があればヤツの正体を暴けるはず。」
「そこでラーの鏡を探し出し持ち帰って欲しいのだ。」
「君たちの働きに期待しているぞ!」
中庭の老人と話をする。
「おお、あんたたちか。話は聞いているぞい。」
「馬車は表に出しておいたから大切に使うようにな。」
主人公は馬車を手に入れた。
レイドック北東にある関所を通り、そこからさらに北東へ進むと教会があった。
教会から南ある木こりの家へ入り、中にいる木こりに話しかける。
「何だお前らは。ここは私の家でお前らの家ではないな?」
「人の家に勝手に入ってきて随分厚かましいやつだな。何か用なのか?」
「ん?ラーの鏡がなんだって?ちょっと待った。」
「お前さんの話を聞く前にだ。」
「わしの頼みの方を先に聞いてもらおう。それでいいな?」
「実は小屋を建てたいんだ。切った木をしまっておく小屋をな。」
「どうじゃ、引き受けてくれるな?」
木こりについて行き、庭までやって来た。
「というわけでな、この辺りに小屋を建てたいわけだ。」
「小屋を建てるにはまず木を切って、それを削って、組んで。」
「いや待てよ。土台を作るほうが先だったかな。」
「そうそう、まず土台だ。」
「で、土台を作るにはだな、砂利をひいて・・」
「いや待てよ。その前に穴を掘ったような気がするぞ。」
ハッサンがしびれを切らして怒り出す。
「ああ、じれったい!」
「俺がやる。ちょっとどいててくれるか。」
「よーし!いっちょうやるか。あらよっと!」
ハッサンはあっという間に一人で小屋を建ててしまった。
木こりが飛び上がって喜ぶ。
「こいつはすごいぞ!」
「うんうん、立派なもんだ。」
「よし、約束通り今度はわしがお前らの話を聞いてやろう。」
「何?ラーの鏡について知っていることを教えて欲しい?」
「そうか、待てよ。」
「ラーの鏡か、うーん、えーと、すまん!本当にすまなんだ!」
「そんな名前の鏡は見たことも聞いたこともない!」
「よし、かわりにダーマの神殿のことを教えよう。」
「ラーとダーマ。何となく似てるとは思わんか?」
「こりゃあわしの曾祖父の話でわしが見たわけじゃないがな。」
「ここから東の大きな川を越えてさらに東に行った山奥に、とても大きな神殿があったそうだ。」
「あれが噂に聞くダーマの神殿じゃないかと曾祖父は言うとったな。」
「それともうひとつ、東の大きな川を渡る方法だが。」
「ここから東に行った川岸の木に囲まれた場所に、川の底を渡る抜け道があると言うとった。」
「調べればすぐに見つかるとな。」
「どうだ、わしの話はためになるだろう。わっはっは。」
木こりの家の東にある砂地部分の中央を調べると抜け道を見つけた。
抜け道の先へと進んで行く。
洞窟を抜け東の方へ進んでいくと大地の大穴があり、そこから下へ落ちるとダーマ神殿の廃墟があった。
主人公とハッサンの姿は亡霊のように透明になっていて周りの人には見えていないようだ。
ハッサンが言う。
「なんだか俺たちの姿が他の人に見えていないようだな。」
ダーマ神殿の廃墟から西に進み、サンマリーノの町に入った。
町の人には主人公達の姿が見えない。
「うん?なんか今、人の声が聞こえたような気がするけど誰もいないよなあ。気のせいか。」
宿屋の厨房でアマンダという女性が作業をしていた。
「えーっと、あとはこの草を入れれば出来上がりっと。」
「うふふ、メラニィの困った顔が目に浮かぶようだわ。」
「見てらっしゃい。私のジョセフに手を出したりして許さないから。」
町外れに行くとジョセフとメラニィが会話をしていた。
「どうして僕の気持ちを分かってくれないんだい?」
「こんなにキミを愛しているのに。」
メラニィが答える。
「私だってジョセフ様を愛してますわ。でもご主人様のことを思うと。」
ジョセフが言う。
「パパだっていつかは僕たちの結婚を許してくれるさ。」
「パパがどうしても許さないって言うなら僕は家を出るよ。」
メラニィが言う。
「私なんかよりもっと素敵な人が現れますわ。」
ジョセフが項垂れる。
「メラニィ、僕は・・」
メラニィが慌てた様子で言う。
「あ、いけない!そろそろ戻らないとご主人様に叱られるわ。」
「それじゃあ。」
メラニィが去っていった。
ジョセフが一人黄昏れている。
「メラニィ、ごめんよ。」
「僕が頼りないばっかりに。」
「ああ、誰かメラニィを僕のかわりに見守ってくれる人はいないだろうか。」
主人公は「はい」と返事をしてみた。
ジョセフが驚く。
「ん?今誰か返事をしてくれたような気が。」
「神様、あなたですか?」
主人公はもう一度「はい」と返事をしてみた。
「ふう、メラニィにまた油を売らせちゃったな。」
「またパパに叱られなきゃいいけど。」
町長の家に入ると1階の厨房にメラニィがいた。
「さあこれでペロのご飯が出来たわ。」
「あ、いけない。ジョセフ様のお部屋もお掃除しておかなきゃ。」
2階に上がっていったメラニィを追いかける。
「私とジョセフ様が結婚出来るなんて、そんな事あるはずないわよね。」
「こうしてジョセフ様の側で働けるだけで幸せだと思わなきゃ。」
主人公が1階に下りて行くとアマンダが家に入ってきた。
厨房に行き、何やら作業をしている。
「これをペロの餌に混ぜて・・これでいいわ。」
「運が悪かったと思って諦めるのね、メラニィ。」
「ジョセフは渡さないわ。」
アマンダは家から出ていった。
そこへメラニィが1階に下りてくる。
「さあペロちゃんにご飯をあげなくちゃ。」
メラニィは家の外へ出ていった。
ペロにご飯をあげた後、再び厨房で作業を始める。
「さあ今度は皆さんのお食事の用意をしなくっちゃね。」
主人公が外に出ると町長がペロと一緒にいた。
「ペロや、ご飯を食べたのかい?」
「くーん、くーん・・」
ペロが突然倒れ込んでしまい、町長が慌てている。
「うん?どうしたんだペロ!」
「ペ、ペロ!!」
ペロは動かなくなってしまった。
「うぬぬ、メラニィのやつ。一体ペロに何を食べさせたのだ!」
「おーい、誰か!誰かいないか!」
宿屋の主人が駆けつける。
「町長さん、どうしたんですか。」
町長が言う。
「メラニィのやつがペロに毒を。」
「とにかく神父だ!神父を呼べ!」
「ペロや、必ず助けてやるからな。しっかりするんだぞ!」
それからすぐに駆けつけて来た神父の治療のおかげでペロは一命をとりとめた。
しかし怒りのおさまらない町長は、メラニィを地下の納屋に閉じ込めてしまった。
この騒ぎはまたたく間に町中に広まり、そして夜が明けた。
居間で町長がジョセフと話している。
「全く何ということだ。」
「わしの可愛いペロに毒を盛るとは。」
「恩を仇で返されるというのはこのことだな。」
ジョセフが反論する。
「父さん、メラニィがこんなことをするなんて考えられないよ。」
「何かの間違いに決まってるさ。」
「ねえ、メラニィを地下の納屋から出してやっておくれよ。」
町長が言う。
「ふん、メラニィでなければ誰がペロの餌に毒を入れられると言うんだ?」
「とにかくわしは絶対に許さんからな!」
町の一番西にある建物に金髪の女性がいた。
主人公の夢の中でハッサンと一緒に出てきた女性だ。
「あらこんにちは。」
「これは別に独り言じゃなくてよ。」
「ここであなた達が来るのを待っていたの。」
「私はミレーユ。あなた達は?」
「うふふ、私にあなた達が見えるので驚いているみたいね。」
「どうして私だけ見えるのか、その訳を知りたかったらついていらして。」
「町の外で待ってるわ。」
ミレーユを追いかけ町の外に出る主人公。
「さあ、私について来て。」
ミレーユに連れられてサンマリーノの南にあるマーズの館へやって来た。
「さあどうぞ。こっちよ。」
屋敷の中には老婆がいた。
「ひゃーひゃっひゃ。おかえり、ミレーユ。」
「どうやら見つけてきたようじゃね。」
ミレーユが答える。
「ただいま、おばあちゃん。」
「その通りよ。見つけてきたの。」
「おばあちゃんの言った通りだったわ。」
「こちらは夢占い師のグランマーズ。あなた達を待っていたのよ。」
グランマーズが言う。
「そういう事じゃ。確かお前さんたちは主人公とハッサンだったね。」
「ふおっほっほ。そんなに不思議そうな顔をしなさんな。」
「わしやミレーユに、どうしてお前さん達の姿が見えるのか。」
「そもそもどうしてこっちの世界ではおまえさん達の姿が見えないのか。」
「あれこれわからなくて困っとるんじゃろ?」
「お前さん達にはしっかりと目的があるようじゃ。」
「レイドック王の兵士としてラーの鏡を探せと、そう言われているはずだからのう。」
「だがそれにはまず、お前さん達の姿をなんとかしなければならん。」
「この世界で姿が見えなければ、レイドックへの乗船券も買えんのじゃから。」
「ただお前さん達を助けるには、少し準備が必要じゃ。」
「ともかく今日のところは一休みおし。」
「話の続きはまた明日にしよう。」
主人公が目を覚ますと、ハッサンがすでに起きていた。
「よう、主人公。起きたかい?」
「なんだか変なことになってきたなあ。」
「あの婆さんも怪しいし。」
「まあとりあえずは話を聞いてみるしかなさそうだけどな。」
グランマーズと話をする。
「やっと起きたかい。」
「わしゃ歳のせいか朝が早くてね。待ちくたびれたよ。」
「さてと、お前さんたちのことだがね。」
「こっちの世界でも自分たちの姿が人に見えるようにして欲しいじゃろ?」
「この世界で二人の姿を見えるようにするには夢見のしずくが必要じゃ。」
「夢見のしずくはわしも仕事で使うんじゃが今は切らしていてね。」
「南にある洞窟の奥、夢見の祭壇でしか手に入らないんじゃよ。」
「しかしその洞窟には最近、魔物が住みついてしまってのう。」
「取りに行きたくてもわしやミレーユだけでは行けないと言うわけじゃよ。」
「そこでここはひとつ、お前さん達に行ってもらおうと思ってな。」
「ふぉっほっほ。勝手に決めたわけではないぞ。」
「これも夢のお告げじゃよ。」
「ともかくわしにもお前さん達にも夢見のしずくが必要なわけだし。」
「言ってみればこれは助け合いと言うことじゃな。」
「そうそう、ミレーユ。お前もついて行っておやり。」
「気をつけてな。」
ミレーユが仲間に加わった。
「さあ行きましょう。私も少しだけあなた達のお手伝いをさせていただくわ。」
主人公たちは南にある夢見の洞窟に入った。
最下階の夢見の祭壇の前に魔物ブラディーポがいた。
「ああ、うめえ、うめえ。グビグビ。このしずくは本当にうめえわい。」
「うん?なんだお前らは。」
「お前らもこのしずくを飲みたいのか?」
「けどこんなうめえもんを他のやつに飲ますわけにはいかねえなあ。」
「それにちょうど俺様は何かおつまみが欲しかったところだし。」
「おめえらなかなかうまそうだぞ。」
「どれ一口かじらせてもらおうかな。」
主人公は襲いかかってくるブラディーポを倒し、奥のツボを調べて夢見のしずくを手に入れた。
マーズの館に戻りグランマーズに話す。
「おや、おかえり。その顔はうまく夢見のしずくを手に入れて来た顔だね。」
「お前さん達ならちゃんとやってくれると思っていたよ。」
「ミレーユもご苦労だったね。」
「さてと、今から夢見のしずくに呪文をかけるよ。」
「そのしずくをふりかければ、お前さん達もこの世界で姿が見えるようになるはずじゃ。」
ハッサンがグランマーズに聞く。
「でも婆さん。この世界って言うけどよ、ここは一体どこなんだ?」
グランマーズが答える。
「ふぉっほっほ。ここはお前さん達の住んでいた世界とは別の世界。」
「お前さん達はこの世界の住人ではないため、人から姿が見えないんじゃよ。」
「もっともお前さん達の世界からこっちに人が迷い込むなどありえないはずじゃが。」
「まあ、起きてしまったことは仕方あるまい。」
「夢占い師のわしにしか出来ないことをしてあげようじゃないか。」
「それじゃあ夢見のしずくを貰うよ。」
主人公はグランマーズに夢見のしずくを手渡した。
「ぶつぶつぶつ・・・」
グランマーズは静かに呪文を唱え始めた。
主人公とハッサンのカラガが青い光で包まれ輝きだしだ。
「やれやれ終わったわい。」
「そうじゃ。このしずくを少しお前さんにも持たせてやろう。」
「もしこの先、お前さんのような人を見たらそのしずくをかけておやり。」
「お前さん達になら、そういう人の姿が見えるはずじゃからな。」
「のう、ミレーユ。」
ミレーユが言う。
「本当は私もあなた達のようにこの世界で姿が見えなかったの。」
「それをおばあちゃんに助けてもらって、この通り姿が見えるようになったのよ。」
ハッサンが言う。
「なんだ、そうだったのか。」
「それであんたには俺達の姿が見えたって訳だな。」
「でも婆さんにも見えてるのは何故だい?」
グランマーズが答える。
「ふぉっほっほ。わしは夢占いを生業にしておるからのう。」
「わしに見えない夢はないんじゃよ。」
「どうじゃい、お前さんもだいぶ分かってきただろうが、真実はお前さん達にはショックな事かもしれん。」
「まずはサンマリーノからの船でレイドックへ行き、王様に会うがいいじゃろう。」
「難しいことはそれからゆくり考えなされ。」
ミレーユが言う。
「おばあちゃん。私、この人達について行くことにします。」
「そうかい。お前がそう言うならわしはとめはしないさ。」
「どちらにせよ、わしのチカラで出来ることはここまでじゃからな。」
ミレーユが主人公達に言う。
「主人公、ハッサン。これから一緒に旅をさせて頂くわ。」
「お前さん達、ミレーユを宜しく頼むよ。」
「そして何か困ったことがあったらいつでもおいで。」
「わしの夢占いで分かることは教えてやろう。」
サンマリーノへ向かい、民家に住んでいる女性に話しかける。
「あら、お客様かしら?うちの人なら今は・・」
「ハ、ハ、ハッサン!ハッサンなのね!帰ってきてくれたのね!」
「あなた!ハッサンが帰ってきてくれたわよ!」
女性は奥の寝室で寝ている男性のもとへ走っていった。
「あなた、起きて!ハッサンが帰ってきたのよ!」
男性はまだ寝ている。
「もう、せっかくハッサンが帰ってきたっていうのにうちの人ったら。」
「ハッサン!あなたもお父さんを起こしてちょうだい。」
ハッサンが困惑している。
「ちょっと待ってくれよ。悪いけど人違いだと思うぜ。」
女性がハッサンに言う。
「まあ、何を言うのハッサン。母親のあたしが間違えるはずないじゃないの。」
「いや、本当だよ。この家にも覚えがないし、俺は旅の武闘家で・・」
「いこうぜ主人公。全く訳がわかんないよ。」
宿屋の2階でアマンダに話しかける。
「あーあ、まいっちゃうわ。」
「まさかメラニィがこの町を追い出されちゃうなんて。」
「そこまでするつもりはなかったのになあ。」
町長の家でリビングにいる町長と話をする。
「ん?なんだね君達は。」
「え?メラニィ?ふん、あの娘ならもうこの町にはおらんよ。」
「まったく、思い出しただけで腹が立つわ。わしの可愛いペロを病気にさせおって。」
「ん?なんだその顔は。何か言いたいことでもあるのかい?」
主人公は犯人がメラニィではなくアマンダであることを町長に話した。
「どうしてそんな事が分かるんだ?見ていたとでも言うのか?」
「アマンダと言えば、確かうちの息子に惚れ込んでいる宿屋の娘じゃないか。」
「ふーむ。もしその話が本当だとしても、もう手遅れだな。」
「実はちょうど旅の商人が手伝いの娘を探していてな。」
「メラニィを手伝いに行かせてしまったのだよ。」
「旅の商人と言えば、町から町へ物を売り歩く危険な仕事だ。」
「あの娘が無事でいるかどうか。」
「もしその話が本当なら、あの娘には悪いことをしてしまったな。」
2階でジョセフに話しかける。
「僕に何か用ですか?」
「え?メラニィのこと?彼女はペロの餌に毒を入れてないって?」
「やっぱりそうか!僕の思った通りだ!彼女はそんな人じゃない。」
「ああ、僕は何を迷っていたのだろう。彼女を助け出しもしないで。」
「どこの誰か知りませんがありがとう。僕は彼女を探しに行きます。」
「でも、メラニィが犯人じゃないのを知ってたなら何故黙っていたんですか?」
「・・なんてあなた達を責めることは僕には出来ませんよね。すみません。」
「それじゃ僕はこれで。本当にありがとう。」
町の西部にある船着場の建物の内で乗船券を買って船に乗る。
船はレイドックの岬に無事到着した。
その後、船着場から西に進んでレイドック城へ向かう。
城下町の人に話を聞いた。
「ああ嫌だ。王様がご病気なのをいいことに、大臣のゲバンはやりたい放題。」
「このレイドックの国も、もうあんまり長くないかもしれませんよ。」
兵士に話を聞く。
「お前も旅の者だな。噂を聞いたか?」
「なんでもこの国の王と王妃は、すでに1年以上もご病気ということだが、どうやらただの病気ではなく眠ったままどうやっても目が覚めないらしいのだ。」
「目覚めぬ王と王妃に行方知れずの王子。」
「このレイドックの国も長くはなさそうだな。」
他の人にも話を聞く。
「あれ?あんた。」
「そうか、主人公っていうのか。」
「にしても似てるよなあ。」
「この国の王子様に。」
「俺は王子様の顔をいっぺんだけ見たことあるけど、そんな顔をしてたぜ。」
「けどよ、そんだけ似てれば騙されるやつがいるかもしれないぜ。」
「もっと立派な格好でもしていればなおさらだろうよ。」
主人公は防具屋で「貴族の服」を買い装備した。
そしてレイドック城の前に行くと門兵が驚く。
「そ、そんな!ま、まさか!」
「も、もしや王子様では?王子様ですよね。お戻りになられたのですね!」
「城中のみんなが心配をいたしておりました。」
「お帰りなさいませ、王子様!」
その様子を見ていた男性が走ってやって来る。
「はあ、はあ・・、王子様!よくぞご無事で!」
「この兵士長のトムめは王子は必ず生きていると信じておりましたぞ!」
「ささ、早く城のみんなにその元気なお顔を。きっと喜びましょうぞ。」
王と王妃が眠る寝室へ向かう。
静かな寝息が聞こえる。
どうやら深い眠りについているようだ。
時折、王妃からうわ言のようなものが聞こえる。
「鏡を、鏡さえあれば・・」
側にいるメイドに話を聞く。
「まったくおいたわしいことで何と言っていいのやら。」
「ところで王妃様のうわ言をお聞きになりましたか?」
「なにやら鏡、鏡と・・」
「このように眠っておられても身だしなみを気にするとは、さすが王妃様ですわ。」
そこへゲバン大臣がやって来た。
「お久しゅうございます。」
「王子が戻られたとの知らせを受け、取り急ぎ戻りました。」
「王子、よくご無事で。この国の大臣として、これほど嬉しいことはありませんぞ。」
「しかし王子。しばらく見ぬせいか、何やら人が変わったような。」
ゲバン大臣の横にいるトム兵士長が言う。
「何を言われるのです、大臣。」
「この方はこの国の王子に間違いありませんぞ。」
ゲバン大臣が言う。
「そういえば奇妙な噂を聞きましてな。」
「城下町にふらりとやって来たみすぼらしい少年が、町の防具屋で貴族の服を買っていったという。」
「わしも信じたいのだが、今ひとつ確信が持てぬ。分かってくれるな、トム兵士長。」
「王子、ひとつだけ質問をお許し願いたい。」
「もし王子が本物であるなら必ずや答えられるはず。」
「たしか王子には幼くして病気で亡くなられた妹君がいましたな。」
「その妹君のお名前は?」
主人公は「ターニア」と答えた。
ゲバン大臣が言う。
「皆の者、聞いたな。」
「やはりこの者はこの国の王子ではなかった!」
「本物の王子であるなら、あれほど可愛がっていた妹君の名を忘れるなどないはず。」
「トム兵士長。この責任は後日とってもらいますぞ。」
「兵士!この偽物どもをひったてい!」
主人公達は城から追い出されてしまった。
城の前でウロウロしていた旅人に話しかける。
「王様達のためにどんな病気も治すと評判のアモールの町の水を持ってきたのですが、結局効き目がなくて追い出されてしまいました。」
「え?アモールの町は何処かって?」
「アモールならここから北西へぐるっと回って、また南東へと行った先にある滝の綺麗な町です。」
「それにしても王妃様も寝言で鏡だなんて。」
「それならアモールで聞いた鏡の鍵でも持ってくれば飛び起きたりしたのかなあ。」
主人公はレイドックを出て西へ進み、さらに南東へ進んでアモールへ向かった。
「水清き、アモールにようこそ。」
「あなた達もアモール川の水を汲みにいらしたの?」
「この川の水を沸かして飲めば、大概の病気は治ってしまうのよ。」
宿屋の主人と話をする。
「ごめんよ、今日はもう満室なんだ。」
北の家に学者が住んでいた。
「実はこの町の滝の水は、この町の北の洞窟の奥から湧き出てきてるんじゃよ。」
「昔は洞窟の奥まで行けたが、20年ほど前の地震で塞がってしまったんじゃな。」
酒場にいる男に話を聞く。
「くー!うまい水で造った酒は最高だぜ。」
「よし、今日は気分がいいからいい事を教えてやろう。」
「鏡の鍵持て、しからば月鏡の塔開かん。」
「これは町に伝わる古い言い伝えだな。」
西の家の男性に話を聞く。
「もう随分昔のことだが、この町に男女二人組の盗賊がやって来てな。」
「町の北にある洞窟に宝を探しに行ったが、戻った時は一人だった。」
「一体何があったのか。」
「ともかく戻ってきた方の一人はその後、この町にひっそりと住みついてな。」
「それが今教会で下働きをしているジーナ婆さんだよ。」
武器屋にいる旅の兵士に話を聞く。
「いやはや参ってしまったよ。」
「教会で下働きをしている婆さんがうるさくてな。」
「俺が宝を探して旅をしてると言ったら思いっきり説教をたれるんだよ。」
「あの婆さん、よっぽど宝探しをしている連中が嫌いなんだな。」
教会に入り神父と話をする。
「はて、旅のお方。どうか致しましたかな?」
「もしや今晩泊まる所がないのでは?それはそれはお困りでしょう。」
「よろしい。困っている人を助けるのが教会の努め。」
「下にいるジーナ婆さんに頼んでみなさい。きっと何とかしてくれますぞ。」
ジーナ婆さんと話をする。
「なんじゃい?お前さん達は。」
「わしはここんところ嫌な夢ばかり見ててイライラしてるんだよ。」
「用がないのならさっさと出ていっておくれ。」
「何?神父さんから泊まっていくように言われた?まったく神父さんも。」
「ああ分かったよ。泊めてあげるよ。さっさとお休み。」
ジーナ婆さんの部屋で寝た主人公達。
目覚めると、部屋にはジーナ婆さんの姿がない。
教会の外に出てみると町中大変な騒ぎになっていた。
アモールの滝の水が真っ赤に染まっているのだ。
その真っ赤な水は川に注ぎ込み、綺麗な川を汚染していく。
「きゃー!なにこれ!まさか血じゃないわよね。でも、何なの?」
北の家の学者に話を聞く。
「ま、まさかこれは、あの二人のせいでは・・」
「聞いて下され。先日、イリアとジーナという若い二人がこの町に来たんじゃ。」
「なんでもこの町のすぐ北の洞窟にものすごい宝物が眠っていると言ってな。」
「それで二人して洞窟に出かけていたようじゃが、まさかそのせいで。」
「だったらあの二人、絶対に許さんぞ。」
主人公は町の外に出て、すぐ北にある洞窟へ向かった。
洞窟に入ると若い女性がいた。
川で剣を洗っている。
「落ちない・・落ちない・・」
「この剣についた血が、いくら洗っても落ちないよ。」
「そこにいるのは誰?私はジーナ。」
「すべては終わったのよ。」
「この先には宝なんかない。あるのは私の愛しい人、イリアの死体だけ。」
「そうよ、私が彼を殺したの。この剣でね。」
「だから、落ちない・・落ちない・・」
「この剣についた血が、いくら洗っても落ちないよ。」
洞窟の奥へ進んで行くと、男性がいたので話を聞いてみる。
「お宝を頂こうとここへ来たらあの男が倒れていたのさ。」
「かなりの傷を負ってる所に魔物がまた襲ってきたんだ。」
「あのままじゃやられちまうぜ。何とかならないのかよ。」
最下階にたどり着いた。
なんと傷を負った男が魔物に襲われている。
主人公は代わりに魔物ホラービーストと戦い、倒してあげた。
「ありがとうよ。おかげで助かったよ。」
「俺は疾風のイリア。へへ、俺としたことがとんだドジを踏んじまったぜ。」
「そこの宝箱を開けた途端、中にいた魔物に取り憑かれちまってよ。」
「気がついたらジーナに切りかかっていて、それでジーナが俺を・・」
「そうだ!ジーナ!」
「あのバカ、もしかしたら俺が死んだと思って。」
「悪い、助けついでだと思って俺を上まで連れて行ってくれねえか?」
主人公はイリアを入り口にいるジーナの所へ連れて行ってあげた。
「ジーナ!」
ジーナがイリアに気づく。
「イリア!」
「あんた、生きてたんだね。」
「あたしてっきり、あんたを殺してしまったと思って。」
イリアが言う。
「おめえは相変わらずせっかちだな。」
「この俺様がそう簡単にくたばるかってんだ。」
ジーナが安心して涙を流す。
「よかった、本当によかった・・」
「バカヤロー、泣くやつがあるか。」
「まあ、いいや。」
「それより例のものはちゃんと取ってきたんだろうな?」
ジーナが答える。
「鏡の鍵だよね。ほら、ここに。」
「流石はジーナだ。俺が死んだと思ってもちゃんと取るものは取ってらあ。」
ジーナが言う。
「もしもの場合にはあんたの形見にしようと思ってさ。」
「よせやい、縁起でもねえ。」
「さあて、そろそろ行くかな。」
「おっと、その前に。」
主人公に近づいてくるイリア。
「世話になったな。おかげで目的の鍵も手に入ったし。」
「何かお礼をしなくちゃな。」
「えーと、そうだ。これをあんた達にあげるよ。」
主人公はイリアから疾風のリングを受け取った。
「じゃあな。縁があったらまた会おうぜ。」
イリアがジーナに言う。
「さて、次はいよいよ月鏡の塔だぜ。」
「塔の扉をその鍵で開けて、伝説のお宝、ラーの鏡が手に入るってわけだね。」
「行くぜ!ジーナ!」
イリアがとジーナが去っていった。
主人公はアモールの町に戻り、教会で農夫に話しかけた。
「あんれ?あんたら疲れた顔してどうしただ?」
「なんだったら泊まってゆくか?」
「そんじゃ、一眠りするといいだよ。」
主人公達は教会のベッドで寝た。
目を覚ますと、側にジーナ婆さんがいた。
「ひゃー!あんた達!」
「泊めたと思ったらいなくなって、一体どこに行ってたのさ!」
「あれ、今気がついたけどあんた達、わしの夢に出てきた人にそっくりだの。」
「それに昨日までのあの辛い夢は見なくなったし。」
「けど夢と違って、あの人は死に、わしはこの町に住みついたのさ。」
「おや?ところであんたが持ってるそのリング。」
「わしが若い頃になくしたリングによく似ているねえ。」
「さて?誰かにあげたんだったか。」
「嫌だよ。もうろくはしたくないものだねえ。ほっほっほ。」
そこへ老人が訪ねてきた。
「ごめんくださいよ。ここにジーナさんという・・・」
ジーナ婆さんの姿に気がつく老人。
「ジーナ?ジーナだね!」
ジーナ婆さんが言う。
「誰だい?あんた。」
老人は興奮している。
「おお、おお。しわくちゃでもよく分かる。やっぱりジーナだ!」
「わし・・いや、俺だ!イリアだよ、ジーナ!」
ジーナ婆さんが驚く。
「イリア!?あんた生きていたのかい?本当にイリアかい?」
イリア爺さんが答える。
「おうともよ。この俺様がそう簡単にくたばるかってんだ!」
久しぶりの再会に感極まり、抱き合う二人の老人。
「本当はこの町に寄る気はなかったんだが、おかしな夢を見てな。」
ジーナ婆さんが言う。
「そうかい。あんたも夢を。ちょっと待っておくれよ。」
「あんた達、これが必要なんだろう?」
「これが鏡の鍵さ。さあ、持っておいき。」
主人公は鏡の鍵を受け取った。
「あたしにはイリアが戻ってきてくれた。もう形見はいらないのさ。」
「あたしを夢から救ってくれたのもきっとあんた達だね。」
「ありがとうよ。世話になったね。」
「気をつけて行くんだよ。」
ルーラの呪文でレイドック城へ行き、そこから西にある月鏡の塔へ向かった。
月鏡の塔を登っていると、途中で半透明姿の少女がいたので話しかける。
「え?あたしが見えるの?」
「やっと見つけたわ!あたしの姿が見える人を。」
「みんな見えないみたいで話しかけても返事もなくて。」
「ほんと寂しかったわよ。」
「ほら、鏡にもあたし映らないのよ。嫌になっちゃうよね。」
「でも人の噂話くらいは聞けたからこの塔のこと、ラーの鏡のこと知ったんだ。」
「ラーの鏡にならあたしの姿が映るかもしれないって思って。」
「それでここまで来たけど、この塔ややこしくてもう嫌って感じ。」
「でもあなた達に会えてよかったわ。上まで行くつもりでしょ?」
「あたしもついて行こうっと。」
「あ、そうだ。大事なことを聞き忘れてたわ。」
「ねえ、もしかしてあたしが見えたってことは、あなた達もあたしと同じなんじゃない?」
「なのに鏡に映るってことは・・ねえねえ、教えてよ。」
「あたしの姿もそういうふうに出来るんでしょ?」
主人公はこの少女に夢見のしずくをかけてあげた。
「え!今何をしたの?」
「あたしの身体、透明じゃなくなったよ!」
「こんなこと出来るならあたし、わざわざ鏡なんか探しに来なくても良かったんだ。」
「でもまあいいか。おかげであなた達に会えたわけだし。」
「あ、まだあたしの名前を言ってなかったね。」
「あたし、バーバラっていうの。」
「でも覚えているのはそれだけ。」
「どうしてこんな事になったのか、なんにも思い出せなくて。」
「ほんと、寂しかったよ。」
「折角だからあなた達と一緒にラーの鏡を見て行くね。さあ、行きましょう!」
塔の最上階にラーの鏡が祀られていた。
バーバラが喜ぶ。
「あったわ!これがラーの鏡よね!」
「すごーい!思った以上に綺麗だわ。」
「さてと、ラーの鏡も見たことだし、あたしはこれで。」
「・・と思ったけど、あたしこれからどうしたらいいのかしら?」
「うーん、見たところあなた達、悪い人じゃなさそうよね。」
「そうね、しばらくはあなた達について行くことにするわ。いいでしょ?」
「今日からはあたしも仲間よ。宜しくね。」
バーバラが仲間に加わった。
ラーの鏡を手に入れた主人公は廃墟のダーマ神殿へ向かった。
神殿内の地下に古井戸があり、調べると上の世界へ戻ることが出来た。
ルーラで上の世界のレイドック城へ向かい、ソルディと話をする。
「うん?ハッサン!それに主人公ではないか!」
「おぬし達、まさかラーの鏡を?」
「でかしたぞ、主人公、ハッサン!さあ忙しくなるぞ。」
「早速レイドック王に報告せねば。ついて来い。」
主人公達はソルディと一緒に王の間へ向かった。
レイドック王が言う。
「ソルディ兵士長より、今しがた報告を受けた。」
「ついに君たちがラーの鏡を私のもとに持ち帰ってくれたそうだな。」
主人公はラーの鏡をレイドック王に差し出した。
「うむ、これはまさしくラーの鏡。心より礼を言うぞ。」
「この鏡があれば魔王ムドーの正体を暴き、戦いの決着がつけられるはず。」
「私はそのための作戦をたてようと思う。」
「ついては主人公、君たちにも参加してもらいたい。」
「今夜は2階の兵士部屋で待機して欲しい。」
「さらなる活躍を期待するぞ。」
「では皆も決戦にそなえ、ゆっくりと休むように。解散!」
そして夜が更けた。
兵士部屋で待機していると、ハッサンが愚痴をこぼす。
「あーあ、随分待たされてるよな。もうすっかり夜だぜ。」
「こんな所でじっとしてたら身体がなまっちまうよ。」
その時、ソルディ兵士長が慌てた様子でやって来た。
「主人公、すまんがちょっと上に来てくれるか。」
「上で待っているぞ。」
王の間へ向かうとレイドック王の様子が何やらおかしい。
大臣が慌てている。
「レイドック王!一体どうなされたのです!?」
レイドック王が苦しんでいる。
「ううう・・・」
ソルディ兵士長と話す。
「来てくれたか主人公。見ての通りなのだ。」
「そなたらが持ってきたのは本当にラーの鏡なのであろうな。」
「ともかく王が鏡を覗き込んだ途端、このようなことに。」
「一体レイドック王の御身に何が起こってしまったのか。」
突然レイドック王が話し始める。
「わたしは・・レイドック・・」
ラーの鏡が突然強烈な光を放った。
「これはどうしたことか。鏡があのように光って。」
レイドック王がいた場所には謎の女性が座っていた。
女性は何も言わずその場に倒れ込んでしまった。
一体何が起こったのか。
レイドック王が女性の姿に。
しかしこのことは秘密にされたまま夜が明けた。
ベッド上で女性が目を覚ます。
「これが私の本当の姿。私はレイドック王ではありません。」
「シェーラと言います。」
「本当のレイドック王はムドーという者の所にいます。」
「いえ、ムドー自身がレイドックその人だと私は思います。」
「どうしてかは知りませんが、ただ、私には分かるのです。」
「おそらくラーの鏡によって現実の世界でかつて起きたことが見えたのかもしれません。」
「この世界で大臣や兵士長に分かっていただくのは難しいでしょうが、私を信じてくれますね?トム兵士長。」
ソルディ兵士長が驚く。
「トム?トムと呼びましたね。」
「しかし私にはソルディというれっきとした名前があります。」
「トム・・だが妙に気になる名前だ。どうしてだろう。」
シェーラが主人公に言う。
「そこにいるのは主人公ですね?」
「ずいぶんとたくましくなって。」
「ともかく私と共にムドーの所に行きましょう。」
「そうすればすべてがはっきりとするはずです。」
「私が何故この世界でレイドック王になっていたかも分かることでしょう。」
「さあ、行きましょう。」
主人公はシェーラと共にムドーの居城、地底魔城に向かった。
レイドック城を出て東へ進み、関所を通ってさらに南にある洞窟へ入る。
洞窟の先には地底魔城があり、最奥の玉座の間でムドーが待ち構えていた。
「ほほう。愚か者たちがまだ懲りずにこのわしを倒しに来たようだな。」
「我が名はムドー。やがて世界を支配する者なり。」
「そのわしに従えぬなら、我が栄光を見ずして今ここで死ぬがよい。」
主人公達は襲いかかってくるムドーを倒した。
「馬鹿な。このわしが負けるとは。」
「しかしわしは倒されぬ。この次こそお前たちを地獄におくってやるわ!」
「ではまた会おうぞ!わっはっは!」
ムドーの身体が消えかけた時、シェーラが叫んだ。
「今よ!さあ主人公、ラーの鏡を!」
主人公はラーの鏡にムドーの姿を映し出した。
「わっはっは。なんじゃ、その鏡は・・うん?」
ラーの鏡から光が放たれ、ムドーはレイドック王に姿を変えた。
シェーラがレイドック王に駆け寄る。
「あなた!」
レイドック王が正気を取り戻す。
「おお、お前はシェーラ!わしの妻ではないか!」
「ところでわしはこんな所で一体何をしておったのじゃ?」
シェーラが答える。
「あなたはこの世界で魔王ムドーとして存在していました。」
レイドック王が驚く。
「なんと、このわしがムドーに!」
「しかし言われてみると確かにわしはムドーであったようじゃな。」
「しかし一体どうしてそんなことに。」
「どうも頭がはっきりとせん。」
「まるでまだ夢を見ているような。」
「・・!わかったぞ!ここは夢の世界じゃな。」
「ならばいろいろと不思議な事も理解できるぞ。」
「そうであろう、シェーラ。そしてそこの者たちは夢の世界の住人じゃろう。」
「そう思って見ると、どことなくわしの息子に似ている者もおるではないか。」
ソルディ兵士長がやって来た。
「無事であったか!やはりそなたたちだけではと慌てて後を追ったのだ。」
「ところでここは本当に魔王ムドーの居城なのだろうな。」
「そのわりには魔王の姿が・・」
レイドック王が言う。
「なんじゃ。誰かと思えばトム兵士長ではないか。」
「またその名前を。私にはソルディというれっきとした名前が・・」
ソルディ兵士長がレイドック王の姿に気づく。
「レイドック王!」
レイドック王が主人公に言う。
「今回のこと、王妃ともどもそなた達には世話になったな。」
「後で城まで来るが良い。十分な褒美を取らせようぞ。」
ソルディ兵士長に連れられてレイドック王とシェーラが帰っていった。
主人公もレイドック城に戻るが、王の間には大臣の姿しかなかった。
「おお、おぬし達。やっと戻ったか。」
「してあの女性と兵士長は?」
「なんと!女性と兵士長は先に城に戻ったはずだと?」
「しかし戻ってはおらぬぞ。」
「え?なに?それにムドーはやはりレイドック王だったと?」
「どうしたというのだ。おぬし達の言っていることはさっぱり分からんわい。」
「まあよい。先に戻ったと言うのなら何処かで行き違いになったのかもしれぬ。」
「とにかく待つことにしよう。おぬし達もゆっくりと休むが良い。」
若きレイドック王はラーの鏡でシェーラという女性に姿を変え、魔王ムドーもまたラーの鏡でもうひとりのレイドック王に。
そしてトムと呼ばれるソルディ兵士長。
一体3人は何処へ行ってしまったのか。
王たちの帰りを待つ大臣の眠れぬ長い夜が明けた。
「どうしたというのだ。これほど待っても未だ戻って来ぬとは。」
「おお、そうじゃ。おぬし達、もういっぺん探してきてくれぬか?」
「城の者たちにはこのこと、今しばらく内緒にしておこうぞ。」
ハッサンが言う。
「まったく、どうなっているんだか。」
「褒美をやるから後で城に来いなんて言っておいてよ。」
「それで何処かに行っちゃうとは、俺達を馬鹿にしてるとは思わねえか?」
「なんだよ主人公。何か言いたそうだな。」
「ま、お人好しのお前のことだから腹をたてたりはしてないんだろうさ。」
主人公は大地の大穴から下の世界へ行き、マーズの館へ向かった。
「おや、よく来たね主人公。」
「お前さん達が来るのは分かってたから今日は客をとらずに待っとったよ。」
「それにそっちのちっちゃいのは新しい仲間だね。そうかい、バーバラって名かい。」
バーバラが驚く。
「え?どうして?まだ何も言ってないのにあたしの名前を当てたよ。」
「ほっほっほ。わしは夢占い師。そのくらい朝飯前じゃよ。」
「それで旅の調子はどうだい?」
「ほう、ラーの鏡を手に入れたのかい。それはさぞかし大変だったろうね。」
「アモールの町でふたつの世界を行き来し、ラーの鏡も手に入れ、辛い旅をしてきたお前さんたちじゃ。もう真実を話してもいい頃だろう。」
「もう気づいたとは思うが、お前さん達がいた世界は夢の世界。」
「そしてこっちの世界が現実の世界なんじゃよ。」
「そう、お前さんは誰かが見ている夢の住人。」
「だから現実の世界ではお前さん達の姿が見えなかったというわけじゃ。」
「まあ夢占い師のわしには見えたわけじゃが。」
「と、ここまでの話はわかったかい?」
「ふむ。お前さんもしっかり覚悟が出来ているようじゃな。」
「もし夢の住人だとしたら、いつか消えてしまうかもしれないから恐ろしいのではと、そう心配してなかなか言い出せなかったんだよ。」
「さあ、真実を話したからには精一杯の呪文をかけてあげようかね。」
「お前さん達がいつでも夢と現実の世界を行き交うことが出来るように。」
「さあ、静かに目を閉じなさい。」
グランマーズは何やら呪文を唱えた。
「さあ、これでよし。」
「ルーラの呪文でいつでも別世界へ飛べるようになったはずさ。」
「ふう、久しぶりに大きな呪文を使って疲れたよ。」
「さあ行きなさい。これからさらにお前さんの世界は広がるじゃろう。」
主人公は現実世界のレイドック城へ向かった。
城に入ると兵士に呼び止められる。
「やや!お前たちはこの前の偽王子とその仲間!」
「さあ、こっちへ来い!」
主人公達は城の牢屋に入れられてしまった。
「お前たちのことは我が王が直々に調べたいらしい。」
「それまでそこで王子をかたった罪の重さを思い知ることだな。」
しばらくすると先程の兵士が再びやって来た。
「大変失礼致しました。牢に入れたのは間違いでした。」
「王様にあなたの事を話したら何としても連れてまいれと叫んだものですから、てっきりお怒りになられたものと思いまして。」
「ともかく我が王がお待ちです。さあどうかこちらへ。」
主人公は兵士に連れられ玉座の間へ向かった。
レイドック王が言う。
「何やら部下に不手際があったようだが許して欲しい。」
「ふむ、そなた達か。偽の王子をかたった者は。」
「確かに我が息子に似ているな。」
「そして夢の中でわしを助けてくれた者にも。」
「ずばり聞こう。王妃と共にムドーとなったわしの前に現れたのはそなた達じゃな?」
「やはりそうか。するとあれは夢であって夢ではなかったということか。」
「ふーむ。どうしてあんなことになってしまったんじゃろう。」
「あの日わしは、魔王ムドーとの決戦にのぞみ、船でヤツの居城へと向かった。」
「しかし突然、不思議な空間が出現して・・」
「その後どうやって城まで戻ってきたのか覚えてはおらぬ。」
「気づいた時、わしは魔王ムドーだったのじゃ。」
「わしをあの悪夢から救ってくれたそなた達には感謝の言葉もない。」
「もしそなた達が来てくれなかったら、わしはあのまま魔王ムドーとして夢の世界の住人達を苦しめ続けたであろう。」
「心から礼を言うぞ。」
「すまん、まだ気分がすぐれんようじゃ。少し外の空気を吸ってくる。」
レイドック王が主人公に近づき、耳打ちをした。
「頼みがある。後で外に来てくれ。」
シェーラ王妃と話をする。
「傷つき倒れた我が夫、レイドックが城に運び込まれたあの夜、私は夢を見ました。」
「現実と同じく魔王ムドーが民を苦しめている夢です。」
「でもそのムドーからは何かを感じたのです。」
「今思えばそれはレイドックの悲しみの心だったのかもしれません。」
「その時から私の心も夢の世界へ行ってしまったようなのです。」
「何故その世界で私がレイドック王になったのか、それは分かりませんが。」
「夫、レイドックを救えたことを神に感謝します。」
「勿論あなたにもですよ、主人公。」
主人公は王の後を追って2階のテラスへ向かった。
「来てくれたか。わざわざすまんな。」
「話しというのは他でもない、魔王ムドーのことだ。」
「そなた達のおかげで夢の世界のムドーはもういない。」
「しかしこちらの世界のムドーは日増しに強大な存在となっているようなのだ。」
「このままにしておけば、やがて世界はムドーの手におちてしまうだろう。」
「しかし今ならまだ間に合うはず。」
「お願いじゃ。わしに代わってムドー討伐に行ってもらえないだろうか。」
「夢と現実、2つの世界を行き来できるそなた達なら、まやかしにも耐えられるはずじゃ。」
「頼む、この通りじゃ。」
主人公は頷いた。
「そうか、そなた達ならきっと引き受けてくれると信じていたぞ。」
「ところで実は、この城にはもう船がないんじゃ。」
「じゃが心配はいらんぞ。そなたらはゲント族という民族を知っておるか?」
「彼らは神の使いとされ、彼らの神殿には神の船と呼ばれる船が祀られているのじゃ。」
「ここにわしが書いた紹介状がある。」
「これを見せればきっと船を貸してくれるじゃろう。」
「ゲント族の村はここより北の山の中。」
「北の山に入る関所をそなた達のために開かせよう。気をつけてゆくのじゃぞ。」
レイドック城を出て北へ進み、関所を通り、さらに北へ進んでゲントの村へとやって来た。
「ここは偉大なる神の使いゲントの村。」
「あなた方がここに来たのもきっと神のお導きでしょう。」
村の北西部にある家で長老と話をする。
「見た所、旅の者とお見受けするがこのわしに何か用かな?」
主人公は王の書状を長老に手渡した。
「なんと、レイドック王がついに目覚められたのか!」
「ふむふむ、それで王はそなた達に我が神の船を貸してあげてくれと。」
「はて、おかしなことがあるものじゃのう。確か城には船があったはずじゃが。」
「それはまあ良いとしよう。」
「じゃがたとえ王の頼みでも、ゲントでもないそなた達においそれと船を貸すわけにはいかぬ。」
「無駄足をさせて悪かったな。気をつけて帰るのじゃぞ。」
長老の家を出ようとすると、チャモロという年若の男が帰ってきた。
長老が言う。
「チャモロか。で、どうじゃった?」
チャモロが答える。
「はい、おじい様のおっしゃることに間違いはありませんでした。」
チャモロが主人公達に気がつく。
「ところでおじい様、この人達は?」
「それがな、レイドック王の書状を持ってわしらの神の船を借りたいと言うのじゃ。」
チャモロが驚く。
「それで神の船をこの人達に貸すのですか?」
「・・ん?・・うっ!」
チャモロにだけ神の声が聞こえる。
「チャモロ、チャモロよ・・」
「私の声が聞こえますね。」
「この者たちを帰してはなりません。」
「この者たちと共に神の船でムドーの島に向かうのです。」
チャモロが長老に言う。
「この人達に船を貸すことにしましょう。私も共に行きます。」
「どうしたのじゃ?突然。」
チャモロが言う。
「今、神の声が。」
長老が驚く。
「するとこの者たちが伝説の勇者だと!?」
「そうかも知れませんし、そうでないかも知れません。」
「しかし神に授かりし船の封印を解くことがどんな結果をもたらすのか。」
「この先の世界はどうなってゆくのかをこの目で確かめたいと思います。」
長老が言う。
「ふむ、よくぞ申した。」
「近頃、日増しにお前のチカラが強くなっているのも神の思し召しかもしれん。」
「ゆけ、我が孫よ!今こそ封印を解く時じゃ!」
チャモロが主人公達に言う。
「皆さん、行きましょう。」
「村の奥の神の船の神殿へ。」
村の北にある神殿の中に神の船があった。
全員で神の船に乗船する。
「封印を解けばこの船は一気に川を下って海に出るでしょう。」
「私もあなた方にお供して神の船を目覚めさせましょう。」
チャモロが仲間に加わった。
チャモロは静かに目を閉じて祈り始めた。
「我、ゲントの民にして古より神に仕える者なり。」
「神よ、偉大なる神よ。今ここに授かりし神の封印を解き放ち、我にチカラを。」
神の船が動き出し、一気に川を下って海に出た。
船で南へ航海し、ムドーの島に上陸する。
島には洞窟があり、奥へと進んでいく。
洞窟を抜けると森があり、主人公達はここで一旦休憩を取ることにした。
主人公は焚き火の前で仮眠をとった。
ふと目を覚ますと、ミレーユが話しかけてきた。
「あら、もう目が覚めた?あまり眠れなかったかしら?」
「無理もないわね。いよいよですものね。」
「ところで彼、どこまで見に行ったのかしら。ずいぶん遅いようだけど。」
そこへハッサンがやって来る。
「お、三人共、もう起きてたか!ちょっとまわりを見てきたけど、やっぱあの城に間違いないようだぜ。」
「しかし・・ずっと前にもこんな事があったような・・」
「ま、考えててもしょうがないや。」
「さて、そろそろ行かないか?もう十分に休んだだろう?」
ミレーユが答える。
「そうね。こうしていても始まらないわ。」
「そのために今までずいぶん長い旅をしてきたのですものね。」
ハッサンが言う。
「行くぜ主人公!相手は大魔王だ。死んだ気で戦おうぜ。」
ミレーユが言う。
「もしこの戦いに勝てば、世界に平和が訪れるはずよ。」
「準備はいいわね?さあ、行きましょう。」
チャモロが主人公に言う。
「どうかしたのですか?まさか主人公さんもこの場所に覚えがあるとか?」
「不思議な事もあるものですね。」
「さて、参りましょう。」
森を抜け、崖道を北に進で行く。
「どうやらこの崖の下がムドーの居城のようです。しかしどうやってあそこまで・・」
ハッサンが戸惑っている。
「うーむ、やっぱりこんな事が前にも・・・」
「くそ!こんな時に一体俺の頭はどうなっちまったんだ!」
ミレーユが言う。
「この笛を吹けば、私達は魔王ムドーの城に運ばれてゆくでしょう。」
「そう、あの時のように・・」
「さあ笛を吹くわよ。」
ミレーユが笛を吹くと、金色の飛竜が主人公達の前に舞い降りてきた。
飛竜の背に飛び乗る主人公達。
飛竜は主人公達を乗せ、魔王ムドーの居城に降り立った。
チャモロが言う。
「もしもの時のために、ここに結界を作っておきましょう。」
チャモロは目を閉じて何やら祈り始めた。
「これで何かあっても再びこの場所に戻ってこられるはずです。」
主人公達が魔王ムドーの居城を進んで行くと、途中でハッサンによく似た石像があった。
「ちょっと来いよ、主人公!」
「これはもしかして俺じゃねえのか!?」
「けど動いてねえぞ。死んでるのか?」
「違うな。死んだように寝てるだけだ。」
「でもよ、どうして俺が二人もいるんだ?それもこんな所によ。」
「ん?なんだ、なんだ?」
ハッサンの身体と石像が共鳴を始める。
青白い光に包まれたハッサンの身体は石像の中へ吸い込まれていった。
そしてハッサンと石像はひとつになった。
「思い出したぞ!今すべてを思い出したぜ!」
「俺は確かにサンマリーノの大工の息子、ハッサンだ!」
「けどそれが嫌で家を飛び出して主人公達と知り合ったんだよな!」
「それで・・そうだよ!ムドーに戦いを挑んだはいいけどよ、やつの術にかかって俺は心だけが夢の世界に飛ばされちまったんだ。」
「そこでは俺は旅の武闘家で・・」
「ええい、いちいちめんどくせえや!」
「とにかく本物の身体に戻ったら、めきめきチカラが湧いてくる感じだぜ!」
「あのさ、主人公。俺、今までは自分が夢の世界の住人だって思いたくなくてさ。」
「だってそんなのいつか消えそうで嫌じゃんか。」
「けどこうして現実の自分に戻っても、ちゃんとこれまでのこと覚えてるぜ。」
「夢の俺も消えなかったって訳さ。」
「だからお前も現実の身体を探そうぜ。」
「まあその前にムドーを倒さなきゃいけねえだろうけどな。」
「さあ、行こうぜ。」
玉座の間へ通ずる扉の前にやって来た。
ミレーユが一旦、皆を止める。
「待って!この扉の向こうには多分、魔王ムドーが待ち構えているはずよ。」
「ついにここまで戻ってきましたね。」
「思えばあの日以来、ずいぶん長い夢を見させられた気がします。」
「しかし夢の世界での経験は決して無駄ではなかったはず。」
「さあ、行きましょう。」
玉座の間に入ると魔王ムドーが待ち構えていた。
辺りには闇の霧が立ち込め、かなり視界が悪い。
ハッサンが言う。
「駄目だ、これじゃあの時のように・・」
「わっはっは。お前たちのような虫けらが、何度来ようともこの私を倒すことなど出来ぬ!」
「再び石となり永遠の時を悔やむがよい!」
主人公達は石にされ、また何処かへ飛ばされてしまった。
気がつくとターニアが側にいた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
そこは夢の世界、ライフコッド村の自宅だった。
「もうびっくりさせないでよ。突然ベッドから落ちるんだもん。」
「ねえ、お兄ちゃん。ちょっと来て。」
家の中にラーの鏡がある。
「綺麗な鏡よね。これ、お兄ちゃんが持っていたのよ。」
「ほら、私が映ってるわ。でもどうしてかしら。」
「鏡の中の私、元気なさそう。」
「お兄ちゃんも見てみる?」
主人公はターニアの肩越しにラーの鏡を覗き込んだ。
ラーの鏡が輝き出し、現実の世界に引き戻される。
気がつくとムドーが目の前にいた。
仲間たちも無事のようだ。
「わっはっは!ラーの鏡を持っていたとはな。同じ手は効かぬか。」
「よろしい。それほどまでにこの私を倒したいというなら、夢よりもはるかに恐ろしい現実というものを見せてやろう。」
「いでよ、我が下僕たち!」
主人公は襲いかかってくるムドーと下僕たちを倒した。
「何故だ?こんな虫けら共にこの私がやられてしまうとは。」
「我が名はムドー。世界を我ら魔族のものにするまで、まだ滅びる訳にはゆかぬ。」
「ぬおおお!かー!」
ムドーは怪しげな術を唱えた。
辺りに闇の霧が立ち込め、視界が悪くなる。
「さあ来るがよい。私の本当の恐ろしさを見せてやろう。」
主人公はパワーアップした魔王ムドーを倒した。
「こんなはずでは・・」
魔王ムドーは跡形もなく砕け散った。
何処からともなく不思議な声が聞こえる。
「頑張りましたね、主人公。」
「あなた達のおかげでムドーは滅び去りました。」
「さあ行きなさい。皆があなた達の帰りを待っていることでしょう。」
主人公達は魔王討伐を報告するためレイドック城に向かった。
「まさかあのムドーを本当に倒してくるとは。」
「この度のそなた達の働き、誠に見事であったぞ。」
「これでこの世界にも平和が訪れるであろう。すべてはそなたらのおかげじゃ。」
「この国の王として、いや、この世界の住人として心から礼を言うぞ。」
「そしてこれは、わしからの心ばかりの贈り物じゃ。受け取ってくれ。」
主人公はいかずちの杖を受け取った。
「これからも世のため人のため、ますますの活躍を期待しておるぞ。」
「さて、わしの話はこれで終わりじゃが、わしの妻シェーラが主人公と二人で話したいそうじゃ。」
「他の者は悪いが席を外してくれぬか。」
シェーラ王妃と二人きりになる主人公。
「もっとよく顔を見せて。」
「やはり主人公王子ですね。ずいぶんとたくましくなって。」
「こんな事を言っても今のあなたには何のことだか分からないかもしれません。」
「しかし、あなたはきっと私達の息子。」
「いえ、正しくは私達の息子が見ている夢なのでしょう。」
「だから私達の知っている主人公とは少し感じが違うのかもしれませんね。」
「そしてもしそれが本当なら、この世界の何処かにあなたの本物の身体があるはずです。」
「そう、あのハッサンという者がそうであったように。」
「主人公、ごめんなさいね。このようなめでたい日に言いたくはないのですが、魔王ムドーが滅び本当に平和が訪れたなら、何故あなたの現実の身体は戻って来ないのでしょう。」
「その事がどうしても私には引っかかるのです。」
「どうか主人公、世界の何処かにいるあなた自身を見つけて下さい。」
「今のあなたは仮の姿。本当の自分自身となって戻ることを私達は待っています。」
ゲントの村から南へ川を下り、海に出た。
大陸沿いに北上するとモンストルの町が見えてきた。
町に入り話を聞く。
「一月前まではこの町も魔物に狙われて大変だったのさ。」
「だがこの町の勇者アモスが魔物を退治してくれたんだ。」
「いやあ、あの戦いぶりは見事だったぜ。」
町の神父に話しかける。
「旅の方、暗くなる前にこの町から立ち去るのです。」
「これは天の声。神の御心に従うが良いでしょう。」
他の町人にも話を聞く。
「私の子供が魔物に襲われたのです。」
「でもあわやという時、アモス様に助けていただいて。」
「あの方はこの町の英雄。いえ、まさしく救いの神ですよ。」
老婆が言う。
「アモスさんはご病気でね。いつも寝てばかり。」
「あの日以来ずっとさ。かわいそうにねえ。」
町の北西部の家でアモスに話しかける。
「いてててて。」
「え、私が英雄ですって?いやー、お恥ずかしい。」
「魔物はなんとか退治できましたが、これ、この通り。」
「魔物にお尻を噛まれちゃって。ははは、ほんとにお恥ずかしい。」
「でも町のみんなに笑顔が戻ったのが何よりなんですよ。」
「それはそうと旅の方、もうそろそろ日も暮れる頃。」
「今日はこの町で宿をとっていかれると良いでしょう。あいたたた・・」
主人公達はこの町の宿屋に泊まる事にした。
その夜、宿屋のベッドで寝ていると大きな物音で目が覚めた。
外に出てみると、巨大な怪物モンストラーが歩きまわっていた。
主人公は町で歩きまわっている怪物モンストラーを町人のために倒してあげた。
宿屋の主人が駆け寄ってくる。
「やめてください!」
「この怪物は・・どうかこの怪物を殺してしまうことだけは!」
その時、怪物モンストラーの身体が光り、勇者アモスに姿を変えた。
宿屋の主人が町の皆に言う。
「誰か、アモス様を早く!」
アモスは町人に運ばれていった。
「とうとう見てしまいましたね。」
「そうです。あの怪物はアモス様。夜になるとあのような姿になってしまうのです。」
「ささ、今夜はもう怪物も出ないはず。ぐっすりとお休み下さい。」
次の日の朝、老人に話を聞く。
「今のアモスは夢遊病みたいなもんじゃ。」
「わしも若い頃は立派な夢遊病じゃったがな。」
「婆さんの取ってきた理性の種を飲んでからすっかり治ったんじゃ。」
老婆に話を聞く。
「変わり果てたアモスに会ったんだね?」
「あの姿になった時のことは全く覚えていないらしいよ。」
「うちの爺さんに昔飲ませた理性の種でもあればねえ。」
「理性の種は何処にあるのかって?」
「この町の北にある山のてっぺんまで行けば拾えるはずだよ。」
「けど昔と違って、北の山には強い魔物が沢山いるからねえ。」
「いくらアモスを助けたくてもわしら町の者では無理なんじゃよ。」
他の町人にも話を聞く。
「そうか。あんた見たのかい。」
「始めは俺たちも驚いたさ。」
「でもな、町を救ってくれたアモスさんだ。あのくらい我慢しなきゃバチが当たるぜ。」
「特に暴れるわけでもない。夜に歩き回るだけだからな。」
主人公はモンストルの北の山へ向かった。
北の山の頂上で理性の種を手に入れモンストルの町へ戻り、アモスに話しかける。
「ん?あなた達は。とっくにこの町を後にしたと思っていましたが。」
「この私に何か用ですか?」
主人公は理性の種をすり潰してアモスに飲ませた。
「うわ!苦い!これは何の薬・・」
「うぐぐ・・うぐぐぐ・・・ぐわわー!!」
アモスが怪物モンストラーに変身した。
「びっくりしたでしょ。わっはっは。」
アモスは自分の意志で元の姿に戻った。
「しかし今わかりましたが、私が怪物に変身していたのは幻覚ではなかったようですね。」
「とすれば、これまで私は町の皆さんにどれほどの迷惑をかけていたことでしょう。」
「しかしさっきの薬のおかげで、たとえ怪物に変身してもちゃんと理性を保っていられる。」
「そればかりか、自分の意志で自由に怪物に変身できるようになったみたいですよ。」
「そうだ、このチカラはきっと皆さんのお役に立つはず。」
「私もこの町でいつまでも世話になっている訳にはいかないし、ご一緒させていただけませんか?」
アモスが仲間に加わった。
「では私は一足先に外で待ってますね!」
モンストルを出て東に進んで行くとアークボルト城があった。
城の前に立て札がある。
「魔物を倒さんとする強者求む。」
「我と思わん者は我が元へ来たれ。 アークボルト王」
城の中に入り、兵士に話しかける。
「ほう、今日はずいぶんと忙しい日だ。身体がもたんな、これでは。」
「しかしこれも我が勤め。」
「お前が本当に強いかどうかを確かめなくてはならぬ。」
「さあ勝負といこう。」
主人公は兵士ガルシアとの戦闘に勝利した。
城の2階へ行き、玉座の間の前にいる兵士に話しかける。
「我が王はこの先におられる。」
「だがその前に、私達と手合わせを願えるかな?」
主人公は兵士スコットとホリディとの戦闘に勝利した。
玉座の間に入りアークボルト王に話しかける。
「よくぞ来た旅の者たちよ。」
「まず城の兵をけしかけたことをそなた達に謝っておこう。」
「わしは今チカラある者を求めておる。それは何故か。」
「そう、旅人の洞窟に巣食う魔物を倒すためだ。」
「あの魔物は強大だが、我が兵とブラストのチカラで倒せるとワシは思っていた。」
「だがどうしたことか送り出した兵は全滅し、ブラストも深手を負って戻ってきた。」
「ブラストより強い者はこの国にはいない。」
「そこでワシは他国より強い者を求めることにしたのだ。」
「そなた達には洞窟に巣食う魔物退治に向かってもらいたい。」
「が、その前にもうひと勝負してもらいたいのだ。」
「相手になるのは勿論、そこにいる兵団長ブラストだ。」
「彼に勝てぬ者があの魔物を倒すことなど絶対に出来ぬはず。」
「負けると分かっている者を死地へ送るわけにはいかんからな。」
兵士団長ブラストと話す。
「まずお前の名を聞いておこう。」
「主人公というのか。」
「よし、主人公よ。城の南西にある兵達の訓練場へ向かうぞ。」
「この場で剣を振り回す訳にはいかないからな。」
「では王よ。訓練場までご足労を。」
主人公は兵達の訓練場で兵士団長ブラストとの戦闘に勝利した。
「王よ、この試合、私の負けでございます。」
アークボルト王が言う。
「うむ、主人公よ。そなたの戦いぶり、存分に見せてもらった。そのチカラ、本物である。」
「ブラストよ、大儀であった。下がってよいぞ。」
「主人公よ。そなたならば必ずやあの洞窟の魔物に打ち勝つ事が出来るであろう。」
「見事魔物を倒すことが出来たなら、その証に死骸を持ってくるのだ。」
「そのための特製棺桶も用意してある。忘れずに大臣から受け取っていくが良い。」
「さあゆけ!頼んだぞ、主人公よ。」
大臣から特製棺桶を受け取り、アークボルトの北西にある旅人の洞窟へ向かった。
洞窟の最奥に着くと、テリーという剣士が魔物と対峙していた。
テリーも特製棺桶を持っている。
「ふん、こいつはなかなか強そうな相手だな。」
主人公の姿に気づくテリー。
「ふん、お前たちも王に棺桶を貰ってきたのか。」
「だが遅かったな。こいつは俺の獲物だ。引っ込んでいろ。」
テリーは圧倒的な強さで魔物を倒し、特製棺桶の中に死骸を入れた。
「ふん、こいつも大したことはなかったな。」
「さてと、それじゃ城に戻るとするか。」
アークボルトに戻り、王と話をする。
「一足違いであったな。先程、テリーという剣士が魔物の死骸を持ってきたのだ。」
「ブラスト兵団長に調べさせたが、棺桶の中の死骸は間違いなく旅人の洞窟にいた怪物であった。」
「テリーには城の宝である雷鳴の剣を褒美として与えた。」
「あの剣はすごいぞ。テリーという者はもっともっと強くなるじゃろうな。」
旅人の洞窟が通れるようになったので、洞窟を抜けて北東にあるカルカドの村へ向かった。
村に入り、教会のシスターに話を聞く。
「不思議な浮島が満月の夜になると近くの海に現れるのです。」
「その島に乗って来る人々は、自分たちは幸せの国からやって来たと言います。」
「なんの苦労も悩みもない幸せの国。」
「そんな国が本当にあるのでしょうか。」
「今夜も満月。またあの島がやって来るかもしれません。」
西の家の老人に話しかける。
「いつも誘ってくれて大変嬉しいが、行く気はないんじゃよ。」
「ん?あんた達は旅のお方かね?いやいや、これは失礼したね。」
「ワシはまたいつもの幸せの国への誘いの人だと思ってな。」
「まったく年は取りたくないものじゃのう。ほっほっほ。」
南東の家に入り、ベットで寝ている女性に話しかける。
「ゴホッゴホッ。馬鹿なお父さん。」
「幸せの国へ行けばきっと私の病気を治せる薬があるって止めるのも聞かずに行ってしまったんです。」
「薬を持ってきっと戻るってそう言っていたのに・・ゴホッゴホッ。」
武器屋にいるマハメドという男性に話を聞く。
「俺は旅の戦士マハメドだ。」
「海の上をプカプカ浮いて、望む者を幸せの国へ導くという島の噂を聞いたか?」
「どうも胡散臭いと思わんか。」
「幸せの国なんて話がうますぎる。今時、子供だって騙されまい。」
武器屋を出ると、辺りはすっかり夜になっていた。
カルカドを出て西に進み、謎の浮島「ひょうたん島」へ向かう。
なんとひょうたん島は島の形をした船だった。
ひょうたん島に乗り込み、船員に話す。
「では出発致します。よろしいですね。」
ひょうたん島が動き出す。
ひょうたん島の中に酒場があり、そこにはカルカドの武器屋で会ったマハメドもいる。
「ん?おぬし達はたしかカルカドの武器屋で会ったよな。覚えているか?」
「まあいい。ところで幸せの国のことだが胡散臭かろうと調べに来たが、なかなかどうして幸せの国の人達はいい人ばかりだぜ。わっはっは。」
カウンターのバーテンに話しかけた。
「一杯いかがですか?」
「おお、なかなかの飲みっぷりですね。」
「どうです?もう一杯。」
「いやはやお見事。」
「しかしそれだけ一気に飲むと少し眠くなってきたでしょう。」
「向こうに着いたら起こしてさしあげますから少しお休みになりますか?」
主人公は少し休むことにした。
「では、お休みなさいませ。」
主人公が目を覚ますと、魔物たちに囲まれていた。
「キキ!おい、起きろ!いつまで寝ていやがる!」
「お待ちかねの幸せの国に着きましたぜ、お客さん。キーキキ!」
「さあこっちだ。さっさと歩け!」
「さあ、我らが主、ジャミラス様がお待ちかねだ!キキキー!」
主人公はジャミラスの居城にある儀式の間に連れていかれた。
祭壇にジャミラスがいる。
「見よ!この哀れなる人間どもを!」
「己の欲望のままに生き、幸せの国などという甘言にやすやすと惑わされる愚か者を!」
「聞け、我が同胞たちよ!」
「たとえムドーが倒れようとも、このジャミラスがいる限り魔族は滅びぬ!」
「我を崇めよ!我を讃えよ!」
「そして今ここに、我らが黒き神々に生贄を奉らん。」
主人公達が祭壇の前に連れてこられる。
「ほほう。新しい生贄の者たちだな。」
「この者達には何故か血が騒いでならぬ。」
「よかろう。この私が自らその肉を裂き、ハラワタを喰らいつくしてやろう。」
「さあもがくがよい。愚かなる人間どもよ。」
主人公は襲いかかってくるジャミラスを倒した。
「な、何故だ。人間などにこの私が・・」
「はっ!もしやお前たちはムドーを倒したという・・」
「そうなのであろう?そうでなければ、この私が・・ぐふ!」
ジャミラスの身体は跡形もなく砕け散った。
囚われていたカルカドの人々が解放され、皆でひょうたん島に乗り込む。
元船長だったという老人がひょうたん島を操舵し、カルカドへ戻った。
船で未開の地を探索する主人公。
北の山小屋に老人が一人で住んでいた。
「ほう、こんな所にお客さんとは珍しいのう。」
「よし、いい事を教えてやろう。」
「世界中に散らばっている伝説の4つの武具を集めたものは神の城にゆけるという話じゃ。」
「とりあえず南の海に浮かぶ島の階段を降りてみなされ。」
「さすれば道は開けるじゃろう。」
主人公は南にある未開の大陸を探索する。
大陸を西へ進んで行くとホルストック城があった。
ホルストック城の玉座の間で王様と話をする。
「よくぞ来た旅の者たちよ。わしがこの国の王、ホルテンだ。」
「して、我が城に何か用か?もしこれといった用がないのなら我が願いを聞いてもらえぬか?」
「我が願いというのは他でもない。息子のことなのだ。」
「先日、我が息子ホルスがめでたく15歳となった。」
「我が王家には15歳になると城の南にある洗礼の洞窟におもむき、そこで洗礼を受けねばならぬというしきたりがあるのだ。」
「実はすでに何度か洞窟に行かせたのだが、いずれも供をさせた兵士達のチカラが足りず失敗に終わっておる。」
「そこで厳しい旅の地を越えてきたそなた達に頼みたい。」
「洗礼の洞窟に向かう我が息子、ホルスの供をしてもらいたいのだ。」
主人公はホルテン王の依頼を受けた。
「うむ、やってくれるか。」
「よし大臣、早速ホルスを呼んでくるのだ!」
大臣がホルスを呼びに行った。
ホルテン王が言う。
「そなた達、もう旅は長いのかな?よければ旅の目的などを話してはくれぬか?」
「ふーむ、自分を探しながら世界各地に残る魔物を倒す旅をしているとな?」
「自分の身体を探すというのがわしにはよく分からんのだが、魔物退治をしているのは感心だな。」
大臣が一人で戻ってきた。
「王!またしてもホルス様が!」
ホルテン王が言う。
「まさかいないと申すか?」
「ふーむ、あやつのことだ。きっとこの城の中の何処かにいると思うのだが。」
「そなた達もホルスを探してくれぬか。」
「もし見つけたらここへ連れてくるように。頼んだぞ。」
ホルスは地下部屋の樽の中に隠れていた。
「うるさいなー、入ってるよ!」
主人公は樽を壊した。
「うわ!何がなんなんだ?」
「お前たち、いきなり何てことするんだよ。流石の俺でもびっくりするだろ!」
「くそ、見つかったからには仕方がない。先に親父のとこへ行ってるからな。」
「本当は嫌だけど。」
玉座の間に戻る。
「おお、主人公。手間をかけさせてすまなかった。」
「ホルスはずっと庭の花の手入れをしていたそうだ。」
「ご苦労だったなホルス。」
「さて、我が息子ホルスよ。そなたは王位を継ぐものとして洗礼の儀式に旅立たねばならぬ。」
「その旅はつらいものとなるであろう。」
「しかし案ずるな。この者たちがお前の旅の供にと願い出てくれた。」
「さあゆくのだホルス。我が息子よ。」
「お前なら必ずやこの試練を乗り越えてくれると父は信じておるぞ。」
ホルスが言う。
「はい父上、行ってまいります!」
「さあ、しっかりついて来いよ。えーっと、主人公というのか。」
「行くぞ、主人公!」
試練の洞窟に向かうホルスと主人公。
ホルスは度々逃げ出すが、その度に主人公に連れ戻される。
なんとか試練の洞窟の最奥の祭壇にたどり着くと、祭壇にいる神父がこう言った。
「おお、汝ホルストックの血を引く者よ。洗礼の泉へよくぞ参られた。」
「さあ洗礼を。滝の水に打たれ、その身を清められよ。」
ホルスは嫌々ながらも洗礼を受けた。
「うむ、汝は見事に洗礼を受けられた。」
「今こそ、その洗礼の証を汝に与えよう。」
ホルスは洗礼の証を受け取った。
「さあ、では汝の城へ戻るがよい。」
主人公とホルスは城へ戻り、ホルテン王に報告する。
「父上!私は見事試練を果たして参りました!」
「これが洗礼の証でございます。」
ホルスが洗礼の証をホルテン王に手渡した。
「おお、確かに。うむ、よくぞ試練を果たした。」
「わしは嬉しいぞ。これでお前も一人前。」
「わしはいつでも王位をお前に譲るつもりだ。」
「とにかく宴だ!宴を開くぞ!」
その夜、盛大な宴がホルス王子のために開かれた。
そして夜が明けた。
ホルテン王が言う。
「主人公、お前たちの働き、見事であったぞ。」
「我が息子ホルスも試練を越え、見違えるように頼もしくなったわ。」
「ところで主人公。報酬の件なのだが。」
「洗礼の洞窟にはいくつかの宝が眠っておる。それを好きなだけ持ってゆくが良い。」
「お前たちの役に立つ物があるかも知れんからな。」
「それとこれを持ってゆくが良い。」
主人公は魔法の鍵を受け取った。
「その鍵で洗礼の洞窟以外の扉も開くことも出来るはずじゃ。」
「そう言えばこの城の南西に小さな祠があるのを知っておったかの?」
「まあ祠がと言ってもただの井戸があるだけだったような気もするが。」
「確かそこの扉も魔法の鍵で開けられたはず。」
「試しに行ってみてはどうかな。」
「主人公、重ねて礼を言うぞ。ご苦労であった。」
1階から地下通路を通ってホルスの部屋へ向かう。
「やあ、主人公か。」
「今回のことはいろいろと苦労をかけて悪かったな。」
「ところで主人公。俺は立派な王になれると思うか?」
「俺も頑張ってみるよ。」
ホルスの部屋を出ると、城の外にスライムナイトがいた。
「いやー、よかったよかった。」
「ホルス王子に鍵をかけられて何処へも行けず困っておったのだ。」
「私はこのような身なりであるが怪しい者ではないぞ。」
「ただの旅の魔物、ピエールである。」
「私は騎士道を刺激されホルス王子のお供をしたく思い、この城へやって来たのだ。」
「だがこの通り、いきなりホルス王子に部屋の鍵をかけられてしまってな。」
「もう王子のお供は懲り懲りである。」
「何処かに私のチカラを必要としている方はいないだろうか。」
「なんと、目の前にいると?」
「おお、なんと嬉しいお言葉。どこまでもついて行きますぞ。」
ピエールが仲間に加わった。
ホルストック南西の祠に行き、祠の中にある井戸を調べると魔物いどまねきが現れた。
主人公はいどまねきを倒し井戸の中を覗き込むと、夢の世界へワープした。
夢の世界の大陸を南東へ進んで行くと、クリアベールという町があった。
町の人に話を聞く。
「私は空飛ぶベッドの噂を聞きこの町にやって来たのです。」
「そんなロマンチックなことが起こる町だったら、きっと素敵な所だろうと思いましてね。」
「でも残念なことに、ある時からぷっつりと空飛ぶベッドが見られなくなったそうです。」
クリアベールを出て西へ進んで行くと階段があり、階段を降りると現実の世界にワープした。
現実の世界の大陸を東へ進み、クリアベールに入る。
教会に入ると町の人が来ていて、神父に相談事をしている。
マゴットという女性が神父に言う。
「神父様、私の息子ジョンは本当に幸せだったんでしょうか。」
「生まれてすぐに病気で寝たきりになって、そのまま神に召されるなんて。」
「あの子はまだ10歳でした。幸せだったなんて思えません。」
マゴットの夫ハリスが言う。
「なあ、もう思い詰めるのはよそうや。」
「神父様だっておっしゃってるじゃないか。」
「ジョンが幼くして亡くなったのも神様から与えられた運命。」
「それが幸せだったかどうかなんて、あの子自身にしかわからないさ。」
神父が言う。
「コホン、まあまあ、お二人とも。」
「ジョン君のことは誠にお気の毒です。」
「しかしあなた方を見ていると私は思うのです。」
「こんなにも両親に愛されたジョン君は、実はとても幸せだったのではないかと。」
「あなた方の愛情はきっとジョン君にも通じていたはずですよ。」
「神父様、ありがとうございます。」
「さあ、今日はこれで帰ろう。ジョンの墓に新しい花を供えてやらなくてはな。」
ハリスとマゴットは帰っていった。
教会のシスターに話を聞く。
「ハリスさんと奥さんはジョン君のために毎日お祈りをしていらっしゃるのです。」
「どうしても果たせなかったジョン君との約束があるとかで。」
「せめてその約束が叶えばお二人の気持ちも少しは楽になるでしょうに。」
主人公はこの夫婦の家に行き、マゴットに話を聞いた。
「私の息子ジョンは旅芸人パノンさんが来る日をとても楽しみにしていました。」
「パノンさんもジョンのことをとても可愛がって下さって。」
「今度来る時には勇気のバッジをあげるとジョンに約束してくれたのです。」
「勇気の岩を削って作ったバッジをつけていればきっと病気に勝つことが出来ると。」
「でもその後、パノンさんはこの町を訪れることはなく、ジョンは亡くなりました。」
「あの子はとても楽しみに待っていたのに。せめてお墓に供えてあげられれば・・うっうっ・・。」
旅の剣士に話を聞く。
「運命の壁と呼ばれる険しい山の噂をきいたことがあるか?」
「昔、とある剣士がその崖に登り、頂上にそびえる勇気の岩を削って持ち帰ったと言うが。」
主人公はクリアベールを出て北へ進み、運命の壁へ向かった。
険しい壁を登り、なんとか山頂にたどり着くことが出来た。
山頂にある勇気の岩を削り、勇気の欠片を手に入れる。
主人公はクリアベールに戻り、ハリスと話をした。
「おや、あなた方は?何か用ですかな?」
主人公は勇気の欠片をハリスに手渡した。
「うん?もしやこれは・・おお!間違いない、紛れもなく勇気の欠片!」
「しかしどうしてこれをあなた達が。」
「なんと、運命の壁に登って・・そうでしたか。そんなに危険な所へ。」
「いや、これはなんとお礼を申し上げたらいいのか。」
「この勇気の欠片があればジョンの欲しがっていた勇気のバッジを作ることが出来ます。」
「本当にありがとうございました。」
「ところで皆さん、あのような険しい山からお戻りになったばかりでさぞやお疲れでしょう。」
「お礼に差し上げられるようなものは何もありませんが、せめて泊まっていって下さい。」
主人公はハリスの家に泊めてもらうことにした。
「あいにく空いているベッドは亡くなった息子のものしかなくて申し訳ありません。」
「でもあなた方が使って下さるならジョンもきっと喜ぶと思います。」
「さあ、どうぞ。」
主人公がジョンの部屋に入るとマゴットがいた。
ハリスがマゴットに言う。
「なあ聞いて驚くなよ。この方たちが勇気の欠片を持って来て下さったんだ。」
「それで今日は泊まって行って下さるようお願いしたんだよ。」
マゴットが言う。
「そうね、もちろんごゆっくりしていただかなきゃ。」
「ああ、本当に勇気の欠片を・・」
その夜、主人公がベッドに横になると突然ベッドが浮かび上がった。
どうやら夢を見ているようだ。
ベッドは空を飛びまわり、そして雲の中に入る。
雲の中にはジョンがいた。
「それ、いいベッドでしょ。」
「はじめまして。僕がジョンです。」
「勇気の欠片をどうもありがとう。お礼にそのベッドをあげるよ。」
「僕にはもう必要ないんだ。だって自由に空を飛べるようになったんだもん。」
「主人公、本当にありがとう。さようなら。」
主人公は空飛ぶベッドを手に入れた。
このベッドで夢の世界を自由に飛び回ることが出来るようだ。
ふと気がつくと夢の世界のクリアベールにいた。
町の人に話を聞く。
「噂ですがここからはるか北西の海の何処かに大きな穴が開いてしまっているとか。」
「しかもそこからはるか北に向かうと、とある井戸にたどり着き、その井戸から別世界へ行けるとか。」
「もし空飛ぶベッドを手に入れたなら、そんな不思議な場所へも自由に行けるかもしれませんね。」
他の町人にも話を聞く。
「これはあくまで噂なのだが、ずっと西の方の海の底にはとんでもない悪魔が住んでいるということだ。」
「その悪魔によって海に沈められた伝説の都市もあるそうだが。」
「まさか人魚でもあるまいし、海の底まで確かめにゆくことは出来ないだろう。」
武器屋の裏にホイミスライムがいたので話しかけてみる。
「わわ、君は空飛ぶベッドに乗ってた人?」
「やった、僕、空を思いっきり飛んでみたかったんだ。」
「空飛ぶベッドに乗せてよ!」
主人公は頷いた。
「わーい、わーい。僕の名前はホイミンだよ。」
ホイミンが仲間に加わった。
空飛ぶベッドで夢の世界を探索する。
アモールの町のすぐ南にある井戸に入ると、魔物いどまねきが現れた。
いどまねきを倒し井戸を調べると、現実世界へワープすることが出来た。
現実世界の大陸を道なりに進むとフォーン城にたどり着いた。
城の中に入り1階にいる女性に話を聞く。
「あら?あなたも呪われた鏡姫の噂を聞いてここへ来たの?」
「ふーん、でも残念ね。昔は沢山の人が見物に来ていたんだけど、今の王様が普通の人には見せないようにしちゃったの。」
2階にいる老人に話しかける。
「鏡に映った女にうつつを抜かすなど、先代の王が聞いたらなんと思うやら。」
近くにいた兵士に話を聞く。
「私だってあの姫を鏡の中から助け出してあげたいと思うんだ。」
「あらゆる方法で調べた末、姫は何者かの呪いによって鏡の中に閉じ込められたようだ。」
「その呪いを解くにはある呪文を鏡の前で唱えればいいと分かった。」
「そしてその呪文の言葉も発見出来たんだ。」
「でも駄目だったんだよ。誰が唱えても。」
「姫は鏡の中のままさ。」
玉座の間で大臣に話しかける。
「ん?旅の者だな。我が王になにか用かな?」
「王は今、地下にある鏡の間に行っておられる。」
「もし急ぎの用ならば地下まで会いにゆくがよかろう。」
地下の鏡の間の扉の前にやって来た。
扉の中から話し声が聞こえる。
「姫よ、私にはあなたが何者なのか分からない。その名すらも知らぬ。」
「私にはもう、あなたにしてあげられることはないのか。」
「このように会いに来ることくらいしか。」
「すまない、私はもう部屋に戻らねば。」
フォーン王が扉から出てきた。
「むう?そなた達は?」
「鏡姫を見に来たと言うのなら諦めてもらおう。」
「彼女は見世物ではないのだからな。」
「用があるなら上へ来てもらおう。」
玉座の間に向かい、フォーン王と話をする。
「ほほう、魔物の残党を倒しながら自分探しの旅で世界を巡っていると。」
「それはなかなか感心なことだな。」
「しかし鏡姫を見せるわけにはいかない。」
「父の代の時は城の名物として旅の者などにも見せていたが。」
「私は父とは違う考えなのだ。鏡姫は断じて見世物ではない。」
「悪いがお引取り願おうか。」
「・・いや、待て!世界中を旅していると申したな。」
「頼みがある。もしラーの鏡という物の噂を耳にしたら知らせて欲しい。」
「ラーの鏡があれば鏡姫を助けられるかも知れないのだ。」
「・・ん?まさかラーの鏡の噂をすでに聞いたことがあると?」
「なんと!噂ではなく実際に持っているだと!?」
主人公はラーの鏡をフォーン王に見せてあげた。
「おお、それがラーの鏡か!なんとも美しい。」
「よし、それを持って私についてきてくれ。さあ、早く!」
フォーン王と一緒に地下へ行き、鏡の間に入る。
鏡の間には大きな鏡があり、女性の姿が映し出されていた。
「これが呪いの鏡だ。」
「この鏡の前でラーの鏡をかざしてみてくれ!さあ!」
鏡の中の女性は必死に何かを伝えようとしているようだ。
しかし主人公には女性が何を言おうとしているのか分からなかった。
主人公はラーの鏡を頭上に高くかざした。
鏡には悲しげな顔をした女性の姿が映っている。
そしてその背後には不気味に笑う魔人の姿が映っていた。
それを見ていたフォーン王が言う。
「どうしてだ。何故何も起きないのだ。」
「やはりラーの鏡を使っても姫を助け出せないのか。」
「しかし彼女の後ろに映っていた者は一体・・」
「む、もしや・・すまない!ちょっと調べものができた。」
「また後で上に来てくれ。頼むぞ。」
しばらくしてから玉座の間に向かい、フォーン王と話をする。
「そなた達が持ってきたラーの鏡のおかげですべてがはっきりとしたぞ。」
「ここに古い本がある。これは昔からこの城にあるものだ。」
「書かれているのはとある王子と美しい姫の恋物語。」
「そしてそれを快く思わない邪悪な魔法使いミラルゴ。」
「まあよくある物語だ。」
「だが違う。それはただの物語などではなかったのだ。」
「ラーの鏡で見えたあの魔法使いは、この本にあるミラルゴに瓜二つ。」
「やつはまだ生きている。だから姫の呪いが解けないのだ。」
「そなた達は確か、まだ残っている魔物どもを退治するため旅をしていると。」
「頼む!ミラルゴを探し出し、倒してきてはくれぬか?」
主人公は頷いた。
「おお、やってくれるか!」
「では後のことはそこの大臣に聞いて欲しい。」
「頼んだぞ、主人公。」
大臣に話を聞く。
「もしあの物語が真実を書いているのなら、ミラルゴは城の北にある湖に囲まれた塔の上に住んでいると。」
「しかしこの城の北には塔などないし、いやはやまったく。」
「だがもしミラルゴの塔を見つけたなら、その扉の前でインパスの呪文を唱えなされ。」
「物語が真実ならそれで塔の扉が開くはずじゃ。」
主人公は夢の世界のクリアベールに移動し、そこから空飛ぶベッドをに乗って北の砂漠にある魔術師の塔へ向かった。
扉は不思議なチカラで閉ざされていたが、大臣に言われた通りインパスの呪文を唱えると、大きな音を立てて扉が開いた。
塔の最上階まで登ると魔術師ミラルゴがいた。
「ゲゲ、なんじゃ貴様たちは。」
「ミラルゴ?ゲゲ、何でわしの名を知っているのじゃ。」
「鏡姫?ゲゲ、貴様何者じゃ!何故イリカの事を知ってる!」
「いかにも、わしが鏡の中にイリカを封じ込めたんじゃ。ゲッゲ!」
「呪いを解く方法?ゲゲ、簡単じゃよ。」
「イリカがわしの嫁になるって言えばいいんじゃ。」
「じゃがその様子じゃまだその気になってはおらんようじゃのう。」
「強情な女じゃよ。もう何千年経ったことやら。」
「ま、焦ることもない。時は十分にある。そう、永遠に近いほどな。」
「とにかく人の恋路を邪魔する輩は許しておけんのう。ゲゲゲ!」
主人公は襲いかかってくる魔術師ミラルゴを倒した。
「ゲゲ、おのれ・・貴様たちなどに負けるとは思わなんだ。」
「ゲゲ・・イリカ・・わしはただ・・お前が・・ゲフ!」
魔術師ミラルゴの身体は消滅した。
現実世界のフォーン城に戻り、玉座の間でフォーン王に報告する。
「む、戻ったか。してどうだったのだ?」
「なに?仕留めただと!」
「うむ、そなたらならきっとやってくれると信じていたぞ。」
「これで、これで・・」
「そうか、姫はイリカという名前なのか。」
「これでイリカ姫を鏡の中から救い出せる!」
「さあ、そなた達もついてきてくれ!」
フォーン王と鏡の間に移動し、イリカ姫が封じ込められている鏡の前に来た。
「今こそ、この呪文で呪いが解けるはず!」
王は静かに目を閉じて何やら呟き始めた。
「汝、我が愛を受け入れるか?」
「受け入れるなら我が名を呼べ!汝の愛する者の名を!」
鏡の中のイリカ姫が声を出した。
「・・フォーン。」
イリカ姫の身体が輝き出し、封印が解けた。
鏡から出てきたイリカ姫がフォーン王の前に立つ。
「フォーン、ありがとう。」
「イリカ、本当に今、ここに君は存在しているんだな。」
「主人公、私には礼の言葉すら思いつかない。」
「この喜びをどう表したらいいのかよく分からないのだ。」
「しかしこの礼は必ずすると約束しよう。」
「だから今はイリカと二人きりにして欲しい。」
「行こう、イリカ。皆に紹介しなくては。」
「もう決めているんだ。君を妻に迎えたい。」
「さあ、行こう。」
主人公はしばらくしてから玉座の間に向かい、フォーン王と話す。
「おお、主人公。よく来てくれたな。」
「そなたのおかげで私はイリカを妻に迎えることが出来る。」
「本来なら盛大な式を挙げ、そなた達も招くところなのだが。」
「まあそれはそのうちにということで置いておこう。」
「ともかく礼を言うぞ。そしてこれは我が城に古くからあるものなのだが、この水門の鍵をそなた達に託そう。」
主人公は水門の鍵を受け取った。
「その鍵があれば、この城の東の海峡にある水門を開き、南の海に船を出すことが出来よう。」
「さらなる世界がそなた達の前に広がるはずだ。」
「そなた達が探しものを見つけることが出来るよう、私もイリカとともに祈っているぞ。」
イリカ姫と話をする。
「もうどのくらい昔のことだったのか。」
「時間の感覚が麻痺してはっきりわかりません。」
「あの日ミラルゴは私達の城を襲い、私の愛した人を死に追いやりました。」
「ミラルゴは私を連れ去り、自分のものにしようとしました。」
「でも私が自分の愛を受け入れないと知ると、私を鏡の中に封じたのです。」
「自分を愛すると言うまでいつまでも待つと言い残して。」
「初めてフォーンと会ったその時、私には分かったのです。」
「彼はかつて私が愛した人の生まれ変わりであると。」
「そして数千年の時を超え、私は彼と結ばれることが出来ました。」
「それもすべてあなたのおかげ。」
「私で何かをお役にたつことがあったら遠慮なく言って下さい。」
「私の古い知識が必要になることもあるでしょう。」
船で西へ進んでいくと水門があった。
鍵を使い、水門を抜けて川を南へ下って行くとペスカニの村が見えてきた。
村に入るとすぐにロブという男性が駆け寄ってくる。
「おいお前ら、何しにこの村へ来たんだ?」
「人魚が見られるなんて思って来たんじゃねえだろうな?」
「へっ!人魚なんておとぎ話を信じてるのかよ。」
「これだからガキは困るんだよな。」
魚屋の前にいる男性に話しかける。
「実はこの店で魚を売ってるんだよ。」
「でもすごい高いし、おまけに俺たちには売ってくれないんだ。」
「誰かが買い占めてるって噂もあるけどな。食いてえな、魚・・」
魚屋に入り、主人と話をする。
「おっとお客さん、新鮮な魚をおもとめかい?」
「悪いけど先客がいてね。お客さんに売る分はないんだ。ゴメンな。」
「あ、こりゃいけない。お届け物の時間だよ。」
魚屋の主人は何処かへ行ってしまった。
村の南東の家へ入ると魚屋の主人がいた。
「さて、お届け物も終わったし。お店へ戻るとしますか。」
「じゃ、ロブさん。また来ますね。毎度どうもー!」
主人が家から出ると、ロブも家から出てきた。
ロブは何処かへ向かっているようだ。
主人公はロブに気づかれないように後をつけていった。
ロブは村の奥にある洞窟に入り、ボタンを押して隠し部屋に入っていった。
主人公もボタンを押して部屋に入ると、ロブと人魚が密会している現場に遭遇した。
主人公の姿に気づいた人魚は慌てて海の中に逃げていった。
ロブに話を聞く。
「俺のあとをつけていやがったんだな。」
「お前、ここで今、何も見なかったよな?」
「そうか、見ちまったのか。ならば生かしちゃおけねえな。」
「・・と言いたいところだがこのザマじゃ何も出来ねえ。」
「お前らも人魚を捕まえにやって来たのか?」
「もしそうでねえのなら、頼む!人魚・・いや、ディーネのことは誰にも言わねえでくれ!」
「もしここがバレたらディーネは・・」
ディーネが海から顔を出す。
「私には分かります。この人達もロブと同じ優しい人たちだって。」
ロブが言う。
「本当か?ディーネのこと、黙っててくれるのか?」
頷く主人公。
「そうか、よかった。」
「ディーネは俺の命の恩人なんだよ。」
「あの日、俺は嵐の中、村の連中が止めるのも聞かず漁に出た。」
「そして俺の船は大波をもろにかぶって沈んだんだ。」
「その時、手と足をやられた。」
「水をしこたま飲んで気を失いかけた時、ディーネが現れたんだ。」
「ディーネは俺を引っ張ってここまで運んでくれたんだよ。」
「そのかわりディーネは・・」
ディーネが話を続ける。
「ちょうど私は仲間たちとこの近くに遊びに来ていたんです。」
「嵐がやって来たので岩場に戻ろうとした時に小さな声が聞こえたんです。」
「私、居ても立っても居られなくなって声のした方へ行ってみました。」
「そうしたらロブが・・」
ロブが話を続ける。
「ディーネは俺を助けたばかりに仲間たちに置いていかれてしまった。」
「魔物が潜む海をディーネ一人では越えられねえ。」
「出来れば俺がディーネを仲間たちの所へ連れて行ってやりてえ。」
「俺がこんな身体じゃなきゃ・・」
「何処かにディーネを仲間たちの所まで連れてってくれるやつはいねえものか。」
「荒波を越えられる船を持っていて、それでいて腕っぷしのたつやつらがよ。」
主人公が名乗り出た。
「なんだって?お前らが?ふーむ。」
「どうも頼りなく見えるが、自分で言うんだからそこそこの自信はあるんだろうな。」
「よし、俺はここで待ってるから、まずその船を見せてもらおうか。」
主人公は船でペスカニ村の近くの洞窟へ入り、ロブのいる隠し部屋まで船を進めた。
「おお、その船は・・主人公!」
「そいつならディーネを連れて海を越えて行けるんじゃねえか?」
「主人公、頼む!ディーネを連れて行ってやってくれ。仲間の所へ。」
「よし、さあディーネ。この人達について行くんだ。」
「そうすりゃ仲間たちの所へ帰れるんだぞ。」
「お前はここにいても絶対に幸せになんかなれねえ。だから行け!」
ディーネが言う。
「でも私・・ロブが・・」
「うるせえ!さっさと行け!」
「ディーネの仲間たちは、はるか北東の海峡を越えた海で暮らしているはずだ。」
「お前さん達は多分、そっちの海から水門を通ってこっちに来たんだろ?」
「頼んだぞ!」
主人公はディーネを連れて船で北へ進んだ。
すると浅瀬に囲まれた場所でディーナという人魚がハープを奏でていた。
ディーネが近づいていくと、ディーナが気づく。
「ああ、ディーネ。よく無事で。」
「あの日、あなたが群れからはぐれてしまった時、私達はどれほどあなたを探して海を泳ぎ回ったことか。」
「魔物に食べられてしまったんじゃないか・・いいえ、それならまだ諦めもつくけれど、もし、もし・・人間!あの人間に捕らえられて酷い目にあわされてはいないかって、とても心配していたのよ。」
ディーネが言う。
「ううん、お姉さま。そんなことないわ。」
「人間にだって優しい人はいるのよ。」
「ここに戻って来れたのだって、ここにいる主人公のおかげだし。」
「それにロブがいなかったら今頃私は・・」
ディーナが言う。
「もういいわ。私はあなたが戻って来てくれただけでも十分よ。」
「主人公、あなたが何者であれ、礼をしなくてはなりません。」
「このハープを差し上げましょう。さあ受け取って下さい。」
主人公はマーメイドハープを受け取った。
「もし海で何か困ったことがあったら、そのハープを奏でて下さい。」
「私達に出来るだけのお力添えを致します。」
「もっとも、私達に出来るのはあなた方を私達の世界、海の中へご案内することくらいですけれど。」
「それじゃ、行くわよディーネ。皆にあなたが戻ったことを知らせなければ。」
ディーネとディーナは海の中へ消えていった。
主人公はペスカニの村の西にある浅瀬を海底から潜り抜け、西の大陸に上陸した。
大陸を北へ進むとマウントスノーという村があった。
マウントスノーは猛烈な吹雪に見舞われていて、村人たちは冷たく凍りついていた。
北部の家の地下に凍りついていない老人がいたので話を聞く。
「あんたらこんな村に何の用だね。」
「ご覧の通り、わし以外の村人は皆、凍りついてしまっとる。」
「こんな老いぼれに用はないじゃろ?さっさと立ち去るがええ。」
「何を探しているのか知らんが、この村の北東にある祠へは絶対に近づいちゃならんぞ。」
「絶対にな。」
マウントスノーを出て北東にある祠に入る。
中にいる女性と話をする。
「あら随分久しぶりのお客様ですこと。」
「私が誰なのかも分からずにやって来たようだけど。クックッ。」
「向こう見ずな旅人よ。南西の村のゴランという若者に私のことを聞いてごらん。」
「きっと教えてくれるでしょうよ。クックックッ。」
マウントスノーへ戻り先程の老人に話を聞こうとすると、テリーが来ていた。
「チッ、手がかりなしか。仕方ない。他を当たるしかないようだな。」
テリーは何処かへ行ってしまった。
老人に話を聞く。
「なんじゃ、お前さん達。もうわしには何の用もないはずじゃろう。」
「ん?ゴランという若者は誰かじゃと?」
「わっはっは。笑わせるわい。ゴランが若者だったのはもう50年も前のこと。」
「この老いぼれがゴランじゃ。」
「お前さん達、わしがあれほど駄目だと言ったのに北東の祠へ行ったんじゃな?」
「全く、若いというのは無茶なものよ。」
「ええか、お前さん達。もう2度と北東の祠には近づくな。」
「わしのような思いをしたくなかったらな。」
再び北東の祠へ行き女性と話しをする。
「やっぱりまた来ましたね。ゴランから私のことを聞いたでしょう?」
「え?ゴランは若者ではなく老人だったと?」
「そうでした。人間は年を取るのでしたわね。この私としたことがうっかりしていました。クックッ。」
「さあゴランに聞いてきたのなら言ってごらんなさい。私が一体何者なのか。」
「どうしたのです。さあ、私の本当の姿を言ってごらん、さあ!」
しかし主人公は答えられなかった。
「まさか本当に知らないと言うのかい?」
「そう、ではあの男、ゴランはあなた達に私のことを言わなかったのね。」
「思えばあれから50年。ゴランも十分反省したようね。」
「いいわ。あの村にかけた呪いを解いてあげましょう。クスクス。」
「私は雪女のユリナ。この地方の自然を守る者。」
「私と出会ったことは絶対に他人にもらしてはいけない。その約束をゴランは破った。」
「雪山で倒れていたのを助けてあげたというのに。」
「でもその償いは十分に果たしたようね。もういいでしょう。」
ユリナは何やら呪文を唱えた。
「さあ、吹雪よ。冷たい棺より皆の魂を解き放て。」
マウントスノーの吹雪がおさまり、凍りついていた村人たちが解放された。
「これで村の人達は元に戻ったわ。」
「もっとも彼らには、もう50年もの時が過ぎたなんて分からないでしょう。」
「ただ1人の男を除いてね・・クックッ。」
「さあもうここに用はないはず。早くお行きなさい。」
「それと、あなた達も私のことを喋っちゃいけないわ。いいわね。」
呪いが解けたマウントスノーに戻り、ゴラン老人と話をする。
「お前たち、ユリナに会ったんじゃな。」
「ああ、答えちゃいかん。わしと同じ目にあうぞ。」
「お前たちはもう、このゴランのことを知っておるじゃろうな。」
「ユリナはわしを許してくれたんじゃろうか。」
「いや、もうそんな事はどうでも良くなってしまったわ。」
「あの日、わしは友人と酒を飲んでおった。」
「そしてつい雪女・・ユリナのことをポロッともらしてしもうた。」
「あんなに固く口止めされていたのに。」
「ユリナは怒り、この町の者を氷漬けにしてしまった。」
「わし1人を除いて。」
「あれから50年。わしはたった1人で・・長かった・・」
「なあ旅の人よ。若い頃の過ちは誰にもあるものだと言われておろう。」
「だからこそ恐れずに信じた道を進むべきじゃと。そして人は成長すると。」
「ならばわしの犯した過ちも、わしの人生にとって意味のあることだったのじゃろうか。」
「わしにはよく分からん。50年の月日はあまりにも長すぎた。」
マウントスノーの教会で旅の神官と話をする。
「一体これはどうしたことか。」
「いえ、実は私は高名な賢者であるザム神官の噂を聞き、ここへ来たのですが。」
「ザム神官と言えばかなりのご老人で、もうとっくにお亡くなりのはず。」
「せめてお墓にでもまいることが出来ればと思っていたところ、なんとあんなにお元気で生きておいでじゃないですか。いやー、驚きました。」
「さすが高名な賢者殿。並の人間とは比べ物にならない生命力をお持ちですな。」
教会の奥の部屋にザム神官がいた。
「むう、確かにわしはザムと言う者じゃが。」
「突然じゃが、そなた達は伝説の剣を知っているかね。」
「剣はこの村から北の氷に覆われた洞窟に眠る。」
「しかし封印の扉がその入口を閉ざしておるのじゃ。」
「封印を解くにはある言葉を扉の前で唱えなくてはならぬ。」
「ちなみにわしはその言葉を知っておるが、教えて欲しいか?」
「よろしい。そこまで言うならお前たちには特別にタダで教えてしんぜよう。」
「封印を解く言葉は、始めの合言葉と3つの文章からなっておる。」
「まず始めの合言葉はメラサム。これで封印の扉が目覚めるはずじゃ。」
「そしてここからが大事じゃぞ。心して覚えるようにな。」
「われ正しき心をもつ者なり」
「ちからひめたるやいばを」
「氷のふちよりときはなたん」
「剣はこの村から北の氷に覆われた洞窟に眠る。心してゆくがよい。」
氷に覆われた洞窟へ行き、入り口で合言葉を言うと大きな音をたてて扉が開いた。
洞窟の一番奥には伝説の剣が祀られていたが、一足先にテリーが来ていた。
「フン、これが伝説のラミアスの剣か。」
「しかしこれなら今俺が使っている雷鳴の剣の方がよっぽどマシに思えるが。」
「フン、伝説なんて所詮こんなものかもしれんな。」
「せっかくこんな山奥まで来たのにとんだ無駄足だったな。アッハッハ。」
テリーは剣を取らずに帰っていった。
主人公はテリーが残していった「錆びた剣」を手に入れ、ザム神官に報告する。
「ふむ、その顔つきからすると伝説の剣を手に入れることが出来たようじゃな。」
「わしの教えは役に立ったであろう?感謝するのじゃぞ。」
「どれどれ。その剣とやらをこのわしにも見せてみい。」
「うわ、なんじゃこれは。まるっきり朽ち果てているではないか。」
「これはどうしたものかのう。おお、そうじゃ。」
「かつてダーマの神殿があった辺りから真っ直ぐ南へ行ったところに町があったの。」
「その町はロンガデセオ。いかがわしい者がたむろするならず者の町じゃが、そこに伝説になるほど凄腕の剣職人の家系の者が代々住んでおったはずじゃ。」
「なにぶん古いことなので今もいるかどうかは分からんがの。」
「よし、助けついでにこれをやろう。」
主人公は「デセオのパス」を受け取った。
「それがあれば町の中に入れてもらえるはずじゃよ。」
サンマリーノから船で北東へ進み、浅瀬をマーメイドハープで潜り抜ける。
ダーマの神殿からすぐ南の大陸に上陸するとロンガデセオがあった。
ロンガデセオに入ると見張りの兵士に呼び止められる。
「おいあんた。誰に聞いてこの町に来たんだ?」
「ここはならず者の町、ロンガデセオ。」
「悪いがあんたらみたいな人はこの町にふさわしくないぜ。出ていってくんな。」
主人公はザム神官から貰ったデセオのパスを見せた。
「ん?これは・・。あんたらがあの方の知り合いとは。さあ、どうぞどうぞ。」
カジノ近くの建物の屋上で情報屋ホックと話をする。
「ん?この情報屋のホック様に何か用かい?」
「ああ?伝説の剣職人だあ?そんなヤツこの町にいたっけかなあ。」
「いやー、実はこの町に来たのはついこないだでね。」
「おっと、がっかりしなさんなって。」
「知らないことは調べりゃいいのさ。」
「この町の連中は口は固いが、このホック様にかかればちょろいもんさ。」
「じゃあちょっくら行ってくらあ。」
情報屋ホックに礼金を支払い、情報を聞く。
「伝説の名工と言われた剣職人は確かにこの町にいたようだな。」
「名前はコブレ。年は生きていれば50歳位。」
「というのも10年ほど前に伝説の剣を探すため旅に出て以来、行方知れず。生死も不明だからだ。」
「コブレには妻のメアリと娘のサリイがいたが、2人を置いて出ていっちまった。」
「おかげで苦労がたたって、メアリは数年後に病気で亡くなっちまった。」
「今はサリイ一人がこの町に住んでいるってわけだな。」
「さてこの娘のサリイだが、小さい頃から父親にかなり厳しく仕込まれたらしいぜ。」
「何をって、剣の技をさ。」
「噂じゃオヤジの腕を凌ぐかもしれないとか。」
「これで話はおしまいだ。あとはサリイに直接聞いてみるんだな。」
「サリイの家は隠れ酒場の北の家だ。」
「もし家にいなかったら北の祠に行ってみな。」
「そこにメアリの墓があるって話だからな。」
北の祠の墓の前にサリイがいて、何やらつぶやいている。
「何が伝説の名工だ。何が伝説の剣だ。クソ親父。」
「所詮、剣なんて人殺しの道具なんだ。」
「剣なんかやめて畑を耕す桑でも作ってればよかったんだ。」
「母さんが何と言おうと、親父に教え込まれた剣職人の技・・あたいは使うつもりはないよ。」
主人公の姿に気がつくサリイ。
「おや、あんたらも墓参りかい?」
「あたい?ああ、あたいがサリイだけど、それがどうかしたか?」
主人公は事情を説明した。
「伝説の剣だと!何故あんたがあの剣のことを知ってるんだ?」
「まさか、あんた魔王の手先!・・には見えないな。」
「まさかあんた、伝説の剣とやらを持っているのか?」
「持ってるんなら見せてみろ。」
主人公は錆びた剣を取り出し、サリイに見せた。
「これが伝説の剣。親父はこの剣のために・・」
「こんな錆びた剣のために母さんとあたいは・・」
「で、その剣をあたいにどうしろって言うんだ?」
「錆を取って磨き上げてくれとでも言うつもりか?」
主人公は頷いた。
「あたいは町へ戻るけど、2度とその剣を見せに来るんじゃないよ。」
「後を追ってうちに来たりしたらタダじゃすまないからな。」
サリイはそれ以上何も言わず家へ帰っていった。
主人公は隠れ酒場の北にあるサリイの家にいった。
主人公の姿を見たサリイがため息をつく。
「あんた、その剣で何をするつもりなんだい?」
「もし親父が生きてりゃ、きっと喜んでその剣を叩き直したんだろうね。」
「わかった。もしあんたがその剣を正しいことだけに使うというのなら、その剣を親父に代わって叩き直してやってもいいぜ。」
「約束できるか?その剣を正しいことだけに使うと。」
主人公は頷いた。
「ならあたいの目を見ろ。動かずじーっとだ。」
主人公はサリイの目をじっと見つめた。
「ふっ、あんたいい目をしているな。」
「いいよ、信じてやるよ。あんたなら大丈夫だ。剣を貸しな。」
主人公はサリイに錆びた剣を手渡した。
「可哀想に。こんなにくたびれちまって。」
「よし、やるぜ。」
「そう言えば伝説の武具は全部で4つあるそうだな。」
「他のは見つけたのかい?あたいがやってる間、残りを探しに行ってもいいぜ。」
「そうこうするうちに、こっちも出来上がるはずさ。」
トルッカから船で東の大陸に上陸し、現実世界のライフコッドへ向かうため山肌の道を登っていると、村人のジュディと出会った。
「あら主人公。ランドと一緒じゃなかったの?でもランドのやつ、ひどいよね。」
「いくら主人公がターニアのところで世話になってるって言ってもさ。」
「あそこまで主人公に冷たく当たることないと思うわ。」
さらに山肌の道を登っているとランドと主人公にそっくりの男性を見つけた。
ランドが主人公にそっくりの男性に言う。
「おい主人公。いつまでターニアの所にいるつもりなんだ?」
主人公にそっくりの男性が言う。
「でもランド、そんなこと言われても僕、どうしたらいいか。」
ランドがなおも攻め立てる。
「お前が転がり込んで、ターニアは迷惑してるに違いないんだ。」
「あいつは人が良すぎるんだよ!」
「ともかくそのお人好しにつけこんで、いつまで甘えてるんだってことだ。」
「なんならこの俺が力ずくで村から追い出してもいいんだぜ。」
「なんだよ、その恨めしそうな目は。」
「言いたいことがあるなら言ってみなよ!男だろ!」
主人公にそっくりの男性は黙っている。
「け、まったく意気地のない野郎だぜ。ターニアもどうしてこんな男を。」
「じゃあ俺は行くからな。俺の話をよく覚えておけよ。」
ランドと主人公にそっくりの男性は村へ帰っていった。
主人公もライフコッド村へ入り、村長と話をする。
「おお、よく来た主人公。」
「怪我の方はもうすっかり治ってしまったようじゃな。」
「ターニアが血だらけのお前を引きずって来た時は本当にビックリしたぞ。」
「ま、後は記憶が戻れば完璧じゃな。」
「さあ、もう家に戻ったらどうじゃ。」
「ともかく今は出来るだけターニアと一緒にいてやることじゃ。」
「それが恩返しじゃぞ。」
自宅に行きターニアと話をする。
「あれ、主人公兄ちゃん。今出ていったと思ったのにまた戻ってきたの?」
「村長さんの家に行くって言ってなかったっけ。」
「すごく思いつめた顔をしてたからなんだろうって思ったのよ。」
「もしランドに何か言われたことだったら気にしないでね。」
「最近、主人公兄ちゃんが本当のお兄ちゃんのように思えてきたの。えへっ。」
村長の家に行くと、主人公にそっくりの男性も来ていた。
2人の主人公を見て驚く村長。
「何じゃ?何事じゃ?何故主人公が二人いる?」
主人公がもうひとりの主人公に触れると、二人の体が青い光に包まれる。
「嫌だ、嫌だー!」
もうひとりの主人公はその場から逃げ出してしまった。
後を追いかけ、ライフコッド村を出たところにいたもうひとりの主人公と話をする。
「分かっているよ。君もきっと主人公という名前なんだろう。」
「さっき君に触れた時、すべてが分かった気がする。」
「多分僕と君は一人の人間だった。ムドーと初めて戦うまではね。」
「そしてムドーが滅んだ今、君と僕とは一つに戻らなければならない。」
「分かっているさ。でも怖いんだよ。」
「二人がひとつになった時、君が僕になるのか、僕が君になるのか。」
「もしかしたらそのどちらでもない、別の人間になってしまうのか。」
「僕は今の生活が気に入ってるんだ。だから、お城にいる父と母には君からうまく言っておいて欲しい。」
「今更あの子を一人にして行けないし。だから・・」
もうひとりの主人公はライフコッド村へ帰っていった。
主人公もライフコッド村へ戻ると、村中が炎に包まれていた。
村で暴れている魔物たちを倒ながら自宅に戻ると、もうひとりの主人公が魔物と戦っていた。
主人公の姿を見つけた魔物が言う。
「ほほう、主人公が二人になったな。多分お前のほうがムドー様を倒したやつだな。」
「しかしすでに分かっておろう。お前はこやつの夢。」
「この弱い方を倒せばお前も存在できまい。」
「そこでせいぜいもうひとりの主人公を応援しているがいい。」
「ケケケ、死ねー!」
魔物がもうひとりの主人公に襲いかかる。
もうひとりの主人公がなんとか攻撃を防いでいる。
「駄目だ・・こいつは強いよ・・」
「でも僕と君が一つになれば・・」
「もし君と僕が一つになって僕の心が消えてしまっても、ターニアのことを見守ってあげてくれ・・」
「さようなら、ターニア。少しの間だけど、可愛い妹が出来て嬉しかったよ。」
主人公ともうひとりの主人公の身体が青白い光に包まれる。
そして主人公の身体は一つになり、主人公はすべてを思い出した。
体中からチカラが湧き出てくるようだ。
ハッサンが言う。
「へへっ、やっと本物の主人公に戻れたな。これで怖いもんなしだぜ。」
魔物を倒し、ターニアと話をする。
「何がどうなったの?」
「主人公兄ちゃんは・・あなたも主人公って言うんでしょ?」
「私には分かるわ。あなたは今までの主人公兄ちゃんとは違う人なんだって。」
「お兄ちゃんはもういないんだ・・。そっか・・」
「私ね、お兄ちゃんが欲しいなってずっと思ってた。」
「父さんと母さんが死んだ時、私にお兄ちゃんがいればなあって。」
「それなら一人ぼっちになることもなかったのにって。」
「村の崖の下で主人公を見つけた時、この人が本当のお兄ちゃんだったらどんなにいいかなって。」
「あの・・あなたのこと主人公お兄ちゃんって呼んでもいいかな。」
主人公は頷いた。
「ありがとう。えへへ。主人公お兄ちゃん。」
「でもずっと一緒にいてなんて言わないよ。」
「主人公お兄ちゃんには一杯やらなきゃいけないことがあるんでしょ。」
「それに兄妹がいつまでも一緒にいたらおかしいもんね。」
「だから時々でいいから遊びに来て。私いつでも待ってるから。」
「ね、主人公お兄ちゃん!」
村長と話をする。
「む、主人公。ちょうど良い。話がある。」
「魔物たちが何故この村を襲ったのか、お前は知っているのではないか?」
「魔物の1匹が言っておった。主人公を探せとな。」
「勿論、お前と関係のない他の主人公という者の事かも知れん。」
「しかし、わしが何を言いたいか分かると思うが・・」
「わしの口からは言いたくない。そんな事を言ったらターニアと顔を合わせられなくなりそうじゃ。」
「これからどうするか、お前が決めてくれて構わん。」
「だがよく考えてみて欲しいのじゃ。」
主人公が現実世界のレイドック城へ行くと、城下町の入口で兵士達に出迎えを受けた。
一人の兵士が近づいて来る。
「これは主人公王子、よくぞお戻りになられました。」
「私はトム兵士長の後を任されたフランコと申します。」
「先日、王妃様が有名な夢占い師に王子様のことをお尋ねになったところ、今日あたりに戻るかも知れぬとのことで、こうしてお待ちしていたのです。」
「王妃様のお話では、かつて魔王ムドーとの戦いで記憶を失われていたとか。」
「そのため偽王子に間違われたりしたのですね。本物の王子だったのに。」
「しかしこうしてお帰りになったということは、少しは記憶を取り戻されたのですね?」
「おお、ではこの私めのことも思い出して頂けましたか?」
「私がお城づとめを始めたばかりの時、王子はまだ小さくて・・そうそう、妹君のセーラ様がお生まれになった頃でしたな。」
「おっと、つい長話をしてしまいました。こんな所で申し訳ありません。」
「ささ、王と王妃がお待ちかねです。どうぞこちらへ。」
主人公達はフランコ兵士長について、王の間へ向かった。
レイドック王が言う。
「よくぞ戻った、我が息子、主人公よ。」
「そなたの今までのことをシェーラから聞いて、やっとわしにも分かってきたところじゃ。」
「そなたはムドーとの戦いで自分の実体を失い、記憶も無くしていた。」
「しかしついに自分自身を見つけ、一つになって本来の主人公に戻ったということじゃな?」
「ふむ、しかし気のせいか、どうも以前の主人公とは違うような。」
シェーラ王妃が言う。
「その通りですわね、あなた。」
「主人公は戦いの中でこんなに成長したのですから。」
シェーラ王妃が主人公にだけ聞こえるようにささやく。
「主人公よ。何も言わなくともこの母には分かります。」
「あまりに長い間自分自身を引き裂かれたため、元の自分には戻りきれなかったのでしょう。」
「少し寂しいけれど、あなたが私の息子であることに何の変わりもありません。」
「さあ、今夜は久しぶりに王子として人々に顔を見せてあげてちょうだい。」
その日、主人公がやはり本当の王子だったという王の言葉は人々を心から喜ばせた。
人々は宴の料理を頬張り、美味しい酒に酔いしれ、レイドック城の明日を祝った。
そして宴が終わり、城の皆が眠りにつく頃には東の空がしらじらと明けようとしていた。
明け方、主人公がふと目を覚ますと、ベッドの近くにグランマーズがいた。
「おや、主人公。起きてしまったのかい。」
「お前さんはやはり元の主人公王子ではない。」
「いや、主人公王子が生まれ変わったとでも言うべきかの。」
「ミレーユやハッサンと違って、お前さんは自分の実体を取り戻すのに時間がかかった。」
「そのため、夢の中を生きてきた主人公の意識が強くなってしまったのじゃろう。」
「この城で暮らしていた記憶があまり戻らないのは辛いかも知れんが、主人公はこのまま主人公として生きてゆけばええ。」
「目が覚めてしまったのなら城の中でも歩いてきたらどうじゃ?」
「お前さんの中にいるもうひとりの主人公の記憶がまた蘇るかもしれんぞ。」
「さあ城の中を歩いて探してごらん。主人公の記憶を導く小さな光を。」
兵士控室にあった小さな光に触れてみる。
トム兵士長との記憶が蘇る。
「主人公王子、王と王妃が原因不明の長い眠りにつかれてはや一月。」
「有名な学者にもゲント族という不思議なチカラを持つ民にも訪ねましたが、原因は分からず。」
「やはり王子のおっしゃるように、魔王ムドーを倒すしか方法はないのかも知れませぬ。」
「しかし我々が全員でムドー討伐に向かってしまうと城を守る者がいなくなります。」
「とにかく早急に作戦を立てねば。」
主人公が無言でその場を立ち去ろうとする。
「お待ち下さい、主人公王子!」
「まさか、まだお一人でムドー討伐に向かおうなどとお考えではありますまいな?」
「王と王妃が目覚められない上に、王子までいなくなられては国の皆が動揺いたしますぞ。」
「どうかそのような無茶はなさいませぬよう。」
「お分かり頂けますね?主人公王子。」
2階の渡り廊下にある小さな光に触れてみる。
妹のセーラが亡くなった時の記憶が蘇る。
「王子の妹君のセーラ様が亡くなられてから、王妃様は王室にこもったきり。」
「主人公王子も寂しいでしょうな。」
「しかし王子、人は誰でもいつかは死を迎えるもの。」
「それが早いか遅いかの違いはあれ、すべては定めなのですじゃ。」
「そう言えばフランコは幼い頃両親を亡くしたのじゃったな。」
フランコが言う。
「主人公王子様、まだ子供のあなたにこんな事を申し上げたくはないのですが、今世界はとても危険な状態にあるのです。」
「魔王ムドーと名乗る怪物に、いくつかの町や城が滅ぼされたという噂も届いています。」
「どうか強くなって下さい。主人公王子様ならきっと立派な王になれるはずです。」
そこへシェーラ王妃がやって来た。
「こんなところで3人集まって何をしているのです?」
「ほほほ、あなたにも心配をかけましたね。でももう大丈夫。」
「いつまで嘆いていてもセーラは戻ってきませんし、この国のことも考えなければ。」
「実は私も少し魔王ムドーの事を調べてみるつもりですのよ。」
「主人公や、寂しい思いをさせてばかりだけれど、王子のあなたなら分かってくれますね?」
厨房にあった小さな光に触れてみる。
妹のセーラとの記憶が蘇る。
「まあ王女様、そんなにお手を泥で汚されて。」
「あらあら、それに王様の大切なお皿に泥水を入れたりなさって。」
セーラが言う。
「だってお兄ちゃんにスープを作ってあげるんだもん。」
「まあ王女様。セーラ王女様は本当に主人公王子様がお好きなんですね。」
「でも無理もないわね。王様も王妃様もお忙しくて、いつもご兄妹二人きりですもの。」
中庭にあった小さな光に触れてみる。
ハッサンとの出会いの記憶が蘇る。
走ってきたハッサンに主人公が吹っ飛ばされる。
「悪いな、大丈夫か?」
「おっと、俺は怪しいもんじゃないぜ。」
「サンマリーノから来たハッサンってもんだ。」
「実はムドーの呪いでこの国の王と王妃様が眠ったままになったと聞いて、それを確かめに来たっていうか・・」
「ところであんたは?」
書斎にあった小さな光に触れてみる。
執務官との記憶が蘇る。
「主人公王子様。私からこのような事を申し上げて良いか分かりませんが。」
「最近の大臣ゲバン殿の態度にはどうも疑問を感じるのです。」
「もっと税金を高くしたほうが良いとか、兵士を増やして国の領土を広げたほうがよいとか。」
「あげくにその考えに反対する王様のことを陰で能無し呼ばわりする始末。」
「思えば10年ほど前、ゲバン殿の大臣任命に反対したフランコは正しかったのかも知れません。」
「主人公王子様。どうか王子様からも王様に話してみて頂けませぬか。」
王の間にある小さな光に触れてみる。
レイドック王との記憶が蘇る。
「主人公よ、よく聞くがいい。」
「大丈夫だとは思うが、万が一、ワシの身に何か起こったら、その時はシェーラとこの国の事をくれぐれも頼んだぞ。」
「うん?何を心配そうな顔をしておる。万が一の話と言うておろうが。」
「まあこのわしに限ってそんな事はないと思うがな。わっはっは。」
主人公は再びベッドで眠りについた。
翌朝、王の間でレイドック王と話をする。
「目が覚めたか、主人公。昨夜はあまり寝付けなかったようじゃが。」
「まあよい。かくいうこのわしも最近不安に思っておったのじゃ。」
「魔王ムドーが倒れてもなお、魔物共の勢いがとどまる様子もない。」
「実はムドーとの戦いは単なる前触れに過ぎなかったのではないか、世界の何処かではるかに恐ろしい何かが動き出しておるのではとな。」
「ところで主人公よ。お前に見せたいものがある。」
レイドック王は兜を取り出した。
「この兜はムドー討伐へ出向いた折、手に入れたものでな。」
「ひと目見てただならぬチカラを秘めておるのが分かったが、わしには装備出来なんだ。」
「じゃが今思うと、わしが死なず眠るだけで済んだのはこれを持っていたからかもしれん。」
主人公はレイドック王からセバスの兜を受け取った。
「その兜には何やら印のようなものが刻まれておるじゃろう?」
「その謎を解くことが重要な鍵となる、そんな予感がするのじゃ。」
「ゆけ、主人公よ。そして見つけ出すのじゃ。世界に平和が訪れぬその理由を。」
「この国はわしが守る。じゃからお前は世界の人々のため頑張ってくれ。」
現実世界のクリアベールから船で東へ向かうとガンディーノ城があった。
ガンディーノ城下町の民家で老婆に話を聞く。
「夫はまた教会へ懺悔に行っとるのじゃろうか。」
「それともギンドロの所へあの娘を探しに行ったのかも知れんのう。」
町の男性に話を聞く。
「チカラが衰えたとは言え、ギンドロ組は無くなってしまったわけじゃないんだ。」
「だからあまりそこの大きい家に近づかないほうがいいよ。」
ギンドロ組のアジトに入ると何やら話し声が聞こえてきた。
「お嬢さん、考え直して下せえ。」
「お嬢さんが跡目をひいてくれねえと、このギンドロ組はおしまいなんですよ。」
お嬢さんと呼ばれている女性が言う。
「しつこいねえ、あんたも。ヤダって言ってるでしょ、ヤダって!」
「あたしはもっと真面目にきちんと日の当たる場所で堂々と仕事をしたいんだ。」
「そいでもって、カッコイイ男と結婚して子供作って、幸せに仲良く暮らしてくんだ。」
アジトにいる男性に話を聞く。
「イテテテ・・くそ!10年前、あのクソガキにやられた腕の傷がまだ痛みやがるぜ。」
「あの野郎、姉ちゃんを返せとかぬかして突然切りつけてきやがって。」
「半殺しじゃ甘かったな。殺しちまえばよかったぜ。」
別の部屋にいる老人と話をする。
「畜生、ガンディーノの闇の帝王と呼ばれた俺も年にゃ勝てねえってのか。」
教会で懺悔している老人がいる。
「おお神よ。私の罪をお許し下さい。」
「私はギンドロ組の連中の脅しに怯え、大変な罪を犯してしまいました。」
「私はあの日・・いや、やめよう。」
「たとえ神がわしの罪を許してくれたとしても、あの娘が救われるわけではないのだから。」
「ギンドロの所へ行こう。行ってあの娘のことを聞いてみよう。」
老人はギンドロ組のアジトに向かって行った。
主人公も後を追いかける。
「娘を・・娘を返してくれんか。この通りだ。」
「しつけえじじいだな!そう毎日のように来られちゃ困るんだよ!」
お嬢さんと呼ばれている女性が言う。
「こらこら、爺さん相手に怒鳴りつけるこたあないだろ。」
「なあ爺さん。何度も言うけどその娘はここにはいないんだよ。」
「なんでも先代の王の時に、献上品代わりに王にくれちまったって話だぜ。」
「だからその後の事はうちらも知らないんだよ。」
「その娘はすげえ美人だったんだろ。きっと大事にされたに違いねえぜ、ヒヒヒ。」
「だけど今の王の代になった時、そういった女たちや奴隷は全部解放されたって聞いたよ。」
「その時帰ってこなかったんなら、大方、城で死・・おっと、城から逃げたんだろうね。」
「まあそういう訳だから悪いけど引き取ってくれないか。」
老人は老婆の待つ家へ帰っていった。
老婆が言う。
「爺様の気持ちも分かるが、10年も昔のことを今さらどうしようと言うんじゃろうか。」
「どれだけ悔いた所で、あの子達はきっともう・・」
老人はベッドで寝込んでいる。
「うーん、うーん。ミレ・・・うーん。」
城の玉座の間でガンディーノ王と話をする。
「よくぞ来た旅の者たちよ。私がこのガンディーノの国を預かる者だ。」
「私はこの国を今よりさらに良くするため、国外の者の話にも耳を傾けるよう心がけている。」
「一番の気がかりはムドーが倒れし後、この世界全体がどう変わったのかということだ。」
「その方達がこれまで見て聞いたことを元によく考えた上で私に教えて欲しい。」
「どうなのだ?世界は本当に平和になったのか?」
主人公は首を横に振った。
「ふーむ、やはりな。」
「私も、もしもの時のために伝説の盾について城の者たちに調べさせている所なのだ。」
「その盾にどれほどのチカラがあるかは分からぬが、何かをしないではいられないのだ。」
「実は私もおかしいと思っていたのだ。」
「平和になったはずだが、魔物の数は一向に減らないし。」
「世界の何処かにムドー以上の悪魔が潜んでいるのかも知れないな。」
王妃に話を聞く。
「旅の者ですね。私はこの国に嫁いできてまだ日が浅く、昔のことはよく知りません。」
「かつては何人もの女たちが奴隷として城に召し上げられ、ひどい仕打ちを受けていたとか。」
地下牢にいる老人に話を聞く。
「ごほごほ、なんじゃ?何度言われてもわしはここを出てゆかんぞ。」
「わしはあの娘に全てを託したのじゃ。」
「あの娘には不思議なチカラを感じることが出来た。」
「ここを出たらまず弟を探したいと言っておったが、そんなことはどうでもええ。」
「もし伝説が本当じゃったら、きっとあの笛で・・ごほごほ。」
地下牢の隣りにある部屋にいる老婆と話をする。
「ここは昔、奴隷女たちの部屋じゃった。」
「王に献上されてきても、美しすぎる娘は皆ここに入れられたもんじゃ。」
「殆どが死んでいったが、中には逃げ出せた娘もいたかのう。」
アモールの町のすぐ東に、不思議な洞窟があった。
洞窟の中に旅の剣士がいたので話を聞く。
「俺は伝説の武具のひとつ、スフィーダの盾を探して旅をしている者だ。」
「しかしもう駄目かもしれぬ。」
「まず北へ、突き当りを東に、1つ目の十字路を北へ進み、西の十字路を南に進むべし。」
「などという言い伝えだけでは、まるで雲をつかむような話で、もう諦めようかと思ってるのだ。」
主人公はなんとか洞窟の最奥にたどり着き、スフィーダの盾を手に入れた。
海底を探索していると精霊ルビスの城があったので立ち寄ってみる。
「主人公とその仲間たちですね。私にはあなた達がやがて来ることが分かっていました。」
「私はルビス。この世界を見守る者です。」
「以前、私の呼ぶ声が聞こえましたね。」
「主人公よ。あなたは不思議な運命を背負い生まれてきた者。」
「世界の行く末はあなた達の働きに委ねられています。」
「ムドーがいた島には幾度となく悪魔が住み着きました。」
「あの場所には闇の力が集まりやすい何かがあるのかも知れません。」
「そのため、私はかつてある笛をつくっておいたのですが。」
「巡り巡って、その笛も役に立つことがあったのですね。」
「私は感じます。世界の何処かで息づく大きな邪悪なチカラを。」
「ゆくのです。そして解き明かすのです。」
「世界のすべてをくまなくまわれば、何をすべきか分かることでしょう。」
「私はいつもあなた達を見守っています。」
フォーン城から船で南へ進み海底を探索していると、ポセイドン城があった。
ポセイドン王に話を聞く。
「よくぞ来た。わしは海の王ポセイドンじゃ。」
「実はここから東の海の底に闇の神殿なんぞを建てた不届き者がおるのだ。」
「このわしの許しも得ずに海の真ん中で大きな顔をしおって、まことに不愉快じゃ。」
「そやつの名はグラコス。良い知らせを待っておるぞ。」
東の海底にある闇の神殿へ向かう。
神殿の最奥にグラコスがいた。
「ブクルルルー。わしは今眠いのだ。用なら後に・・げは!お前、人間だな!」
「どうして人間どもがこの海底神殿まで。」
「まさかこの海魔神グラコス様を倒して魔法都市カルベローナの封印を解くつもりなのか?」
「いかん、それはいかんぞ!」
「カルベローナを解放しても今さら手遅れというものだが、万が一という事もある。」
「何せあの魔法都市にはマダンテというすごい魔法が伝えられているからな。」
「だからこそ封印し・・げは!また悪い癖で喋りすぎてしまったぞ!」
「とにかく封印を解かせるわけにはいかん!さあ来い!ブクルルルー!」
主人公は襲いかかってくるグラコスを倒した。
「げは!いかん、いかんぞ。」
「このグラコス様が滅びれば、カルベローナの封印が・・」
グラコスが滅び、魔法都市カルベローナの封印が解かれた。
海底からカルベローナのある島が浮かび上がってくる。
主人公は封印が解かれた魔法都市カルベローナへ向かった。
「魔法都市カルベローナへようこそ。」
「あなた方が海底神殿の魔王を滅ぼして下さったおかげで封印から解放されました。」
「私達カルベローナの民は皆様がいらっしゃるのをずっとお待ちしていたのです。」
「この町ははるか昔、偉大なる大魔女バーバレラ様がおつくりになりました。」
町の男性に話を聞く。
「カルベローナは魔王によって2度滅ぼされたと言っても良いでしょう。」
「1回目は現実の世界で町ごと死の炎で焼き尽くされました。」
「その時、私達は肉体から精神を解き放ち、魂だけの存在となって夢世界へ逃れたのです。」
「しかし魔王はその強大なチカラを夢の中にまでのばし、私達が夢の世界に築いたこの町を今度は島ごと全て封印してしまったのですから。」
町の女性に話を聞く。
「この北の家にはカルベ老夫婦とは正反対のへんくつ夫婦が住んでてさ。」
「町の皆との付き合いもなくて、あたしらもあまり会ったことがないんだよ。」
「バーバラ様、あんたはやはりこの町の皆をまとめる長老になるべきお方だよ。」
「もちろん今はまだやらなければいけないことがおありだろうけど。」
「最後には必ず戻って来て下さいね。」
町の老人に話を聞く。
「よくぞおいでになられました。」
「我々は封印されている時でも心の目で世界を見渡しておりました。」
「また、バーバラ様の成長も祈る思い出見守っていたのです。」
「そう、ここはバーバラ様の故郷。」
「かつて魔王がこの町を封じようとした時、バーバラ様の魔法力は大きく反発したのです。」
「そのためバーバラ様の心は我々のように封印されず逃れることが出来たのです。」
「ただあまりに大きな力がほとばしったために記憶を失くしてしまわれたのでしょう。」
カルベローナの長老ブボールの家へ行き話を聞く。
「よくぞ戻りましたね、バーバラ。待っていましたよ。」
「これまでの事など、色々と話したいこともありますが、私には残された時間が・・ゴホッ!」
「早速大切な事を教えましょう。」
「カルベローナに伝わる究極の呪文、マダンテのことはもう知っていますね?」
「自分の持っている魔法力の全てを解き放ち、相手のダメージとする最大の攻撃呪文です。」
「ただし一度唱えるだけで魔法力の全てを使い果たしてしまいます。」
「さあ、私には時間がありません。大魔王も恐らく、あなた方の動きを心の目で追っているはず。」
「急ぎましょう。目をつぶって。」
バーバラの身体が金色に光り輝く。
バーバラはマダンテの極意を手に入れた。
すると突然、長老ブボールに稲妻が落ち、倒れ込んでしまった。
「心配いりませんよ。騒がぬように・・」
「私の役目は無事終わりました。大魔王の手も一歩及ばなかったようですね・・」
「新しい命よ。新しい力よ。頼みましたよ。」
「大丈夫ですよ。魂が長い眠りにつくだけのこと・・」
「大魔女バーバレラ様と共にいつもあなた達のことを見守っていきますよ。」
「おやすみなさい、バーバラ。そして皆さん・・」
長老ブボールは息を引き取った。
カルベローナの北西の家で、カルベ夫人と話をする。
「亡くなられるその前に、長老さまはわしらの心へ直接語りかけて下さった。」
「あの方を失ったのは本当に悲しいことじゃ。」
「しかしバーバラ、お前がここまで成長してくれた。」
「いつかはお前がブボール殿を凌ぐ大魔女になるじゃろう。」
カルベ老人と話をする。
「わしらは魔法のチカラで色々なものを作ることを仕事として来た。」
「バーバラが赤ん坊の時には、羽の生えた服なども作ってやったもんじゃよ。」
「そうそう、魔法の絨毯なんかも作ったのう。」
「何かの役に立つじゃろう。お前さん達が持っていくといい。」
主人公は魔法絨毯を手に入れた。
現実世界のペスカニの村から魔法の絨毯で南に進むとグレイス城があった。
グレイス城は廃墟になっていて、誰一人住んでいなかった。
城の片隅に古井戸があり覗き込むと、夢の世界のグレイス城にワープした。
夢の世界のグレイス城に入り、兵士に話を聞く。
「あんた達、見かけない顔だな。この城の者じゃないんだろ?」
「そりゃとんでもない時にやって来たもんだな。」
「今この城は、王様が悪魔を呼び出す儀式で大騒ぎさ。」
玉座の間に行くとグレイス王が儀式の準備をしていた。
「よし、ではそろそろ儀式の準備を始めてくれ。」
グレイス王はじっと目を閉じたまま物思いにふけっているようだ。
玉座の間の隣には伝説の武具オルゴーの鎧が飾られている。
ゴーリキという兵士が言う。
「しかし兵士長殿、大魔王は本当にこの城を狙ってくるのでしょうか。」
兵士長が答える。
「うむ、必ず来るはずだ。この鎧がこの城にある限り。」
「勇者が身に付けた時、大魔王のオーラも跳ね返すという伝説の鎧ですか・・」
「確かに勇者にまつわる伝説を知る者は次々と魔物に殺され、あのダーマの神殿や魔法都市カルベローナまでもが滅ぼされたとか。」
兵士長が言う。
「なあゴーリキ。勇者は我々に残された希望の光だ。」
「いつか勇者が現れるまで、決してこの鎧を大魔王に渡すわけにはいかん!」
4階の儀式の間に行くと、グレイス王が祭壇の前で降臨の儀式を始めるところだった。
「地の底深くに潜む悪魔の魂よ。今ここに供え物を捧ぐ。」
「古の秘術、そのチカラによりて我々の前に現れ、そのチカラを示すべし。」
祭壇が赤く血の色に染まり、魔王が降臨した。
「私を呼ぶ者は誰だ。」
グレイス王は闇の炎で焼かれてしまった。
「私は破壊と殺戮の化身。全てを無に帰すのみ。」
城のいたるところから炎が立ちのぼる。
兵士長が慌ててオルゴーの鎧が飾られている部屋へ向かう。
「私はこの鎧を宝物庫の地下深くに封印する。」
「内側から板をはめてしまえば、つるはしでも使わぬ限りそこは見つからぬはずだからな。」
主人公は古井戸を覗き込み、現実の世界に戻ってきた。
廃墟と化したグレイス城の地下でつるはしを使い、宝物庫へと入る。
主人公は宝物庫にあったオルゴーの鎧を手に入れた。
伝説の防具を3つ揃えた主人公はロンガデセオのサリイ家へ行く。
「ああ、あんたか。ちょうど今終わったところだ。」
「ほら、これが新しくなった伝説の剣だ。」
主人公はラミアスの剣を受け取った。
「その剣の柄の所を見てみな。何か印のようなものが彫られているだろう。」
「きっとあんた達ならその謎も解き明かしてゆくんだろうな。」
「さあ、もうここに用はないだろう。あたいを一人にしてくれないか。」
「・・もし、この先、旅の途中でコブレという男に会ったら・・伝えてくれないか。」
「あんたの娘が帰りを待っているってな。」
「出来ればでいい。もしかするともう死んじまってるかもしれないし。」
現実世界のクリアベールから船ですぐ北にある祠へ向かう。
主人公が伝説の武具を全て装備して祠へ入ると、ヘルクラウドという浮遊城にワープした。
浮遊城の中で亡霊に話しかける。
「口惜しや。」
「ここはクラウド城。夢の世界を束ねるゼニス王の城。」
「しかし邪悪なる者らによりゼニス王は封印され、この城もまたその者らの手に。」
「もし心ある者がいれば我が願いを聞いて欲しい。」
「ゼニス王の封印を解き放ち、この城を夢の大地に・・」
ヘルクラウド城の玉座の間にはデュランが待ち構えていた。
「初にお目にかかる。我が名はデュラン。このヘルクラウド城の主だ。」
「ほほう、確かに伝説の武具を持っておる。敵ながら見事なものよな。」
「世界中に散らばる伝説の武具全てを集め、この城へと導かれる資格を得る人間がいたとしたら、その者は必ずや我ら魔族にとって厄介な存在となるであろう。」
「ならばそうならぬうちにその芽を摘み取っておこうと、こうして待っていたのだが。」
「ほう、主人公と申すのか。主人公、正直言って私は嬉しいぞ。」
「よもや全ての武具を集められる人間などいるはずもないと思っていたからな。」
「その実力、どれほどのものか。久しぶりに血が騒ぐわ。」
「さあ、楽しませてもらおう!」
デュランはキラーマジンガとランドアーマーを召喚した。
主人公は襲いかかってくるキラーマジンガとランドアーマーを倒した。
「ふぁっふぁっふぁ。その調子だ。」
「ここで負けるようなら待った甲斐が無いというもの。」
「しかし次はどうかな。この者はお前たちと同じ人間。」
「強くなりたいという己の欲望があまりに強く、こちら側に来てしまった者だ。」
「世のためなどというたわけた理由で戦う者と、己だけのために戦う者。」
「どちらが勝つのか、これはなかなか見ものだな。」
デュランはテリーを召喚した。
「紹介しよう。この私に魂を捧げし世界最強の男、テリーだ。」
「さあ死力を尽くし、存分に戦うがよい!」
主人公はテリーとの戦闘に勝利した。
「ほほう。これはいい。こうでなくてはならぬ。」
「だがその前に・・ふぬ!」
主人公達の体力が全快した。
「弱っているお前たちと戦っても面白くないのでな。」
「さあ主人公よ。この私を楽しませてくれ!ゆくぞ!」
主人公はデュランを倒した。
「見事だ。完全に私の負けだ。」
「だがまだ終わりではない。私は強い者が好きだ。」
「だからお前たちに教えよう。」
「ムドー、ジャミラス、グラコス、そして私は大魔王様の下僕に過ぎぬ。」
「我らが主の名は大魔王デスタムーア様。」
「様々な術を使い、我等などまともに戦うことすら出来ぬ。」
「強くなれ!もっと強くなるのだ。それらの術を跳ね返すほどに。」
「主人公よ。もしいつの日か生まれ変わり、この大地に戻れたらその時は・・またおぬしと戦いたいものだ・・ぐふ!」
デュランの身体は消滅した。
テリーが意識を取り戻す。
「待て!俺をこのままにしてゆく気か?」
「くそ!いつだってこうだ。」
「こっちが助けて欲しい時には誰も手を貸してくれないくせに、邪魔だけはされる。肝心な時に。」
「俺は強くなりたかった。強くなれる相手が魔族だろうがなんだろうが構わなかったんだ。」
「さあ殺せ!殺すがいい!生かしておいたら俺はきっとあんたらを殺すことになる。」
「今のうちに息の根を止めておくのが賢明ってもんだぜ。」
「さあ、ひと思いに殺してくれ!」
ミレーユが言う。
「お願い、待って。」
「やっぱり、やっぱりそうだわ。」
「テリー、私が分かる?」
テリーが起き上がる。
「ふん!誰だか知らないがあんたに気安くテリーなんて呼ばれる筋合いはないね。」
「そうね、普通なら忘れてしまってもおかしくないほど時間も経って、忘れてもおかしくないほど色々なことがあったわ。」
「でも、あなただって覚えているはず。」
「ガンディーノの町の事や、人々のこと、そして私のことも。」
テリーが動揺する。
「ま、まさか・・いや、ミレーユ?ミレーユ姉さんか?」
「ミレーユ姉さん・・こんなに近くにいたのに気づかなかった。」
ミレーユが言う。
「いいえ、テリー。」
「何度かあなたを目にしていても声をかけられなかった私が悪いの。」
「姉さん、あの時、俺に今の半分でもチカラがあったら姉さんを守ることが出来たのに。」
ミレーユが話を続ける。
「いいの。もういいのよ、テリー。誰のせいでもないわ。」
「それより聞いて、テリー。」
「あなたのチカラを必要としているのは今はもう私じゃない。」
「あなたがこれまで掴んだチカラをこれからは世界のために使って欲しいの。」
「テリー、私達の仲間になってくれるわね?」
テリーが仲間に加わった。
ヘルクラウド城を出ると、ゼニスの城の封印が解け、夢の世界にクラウド城が出現した。
まずはアークボルトの牢屋に向かい、以前テリーが倒したバトルレックスと話をする。
「待っていた・・おまえ・・青い人間・・私・・打ち負かした。」
「私・・おまえ・・ついていく。それ・・負けたもの・・運命。」
「ギルル!私・・お前のため・・戦う!」
バトルレックスのドランゴが仲間に加わった。
主人公は夢の世界へ移動し、クラウド城の中に入る。
クラウド城内のにいる人に話を聞く。
「クラウド城へようこそ。ここは夢の世界を束ねるゼニス王のお城です。」
ヘルクラウド城で亡霊だった男性がいた。
「おや?あなた方は!この私に見覚えはありませんか?」
「やはり!封印され、魂だけで彷徨っている時、あなた達に会ったような。そんな気がするのです。」
玉座の間でゼニス王と話をする。
「よくぞ来た、主人公。わしの名はゼニス。」
「この夢の世界を束ねる者だ。」
「よくぞこのクラウド城を封印から解放してくれた。心から礼を言うぞ。」
「さて、わしはここにいて世界の全てを知ることが出来る。そなた達がここへ来た理由もな。」
「もうすでに聞き及んでいるであろう?大魔王デスタムーアの名を。」
「かの者こそが全ての元凶。世界の全てを闇の底に沈めようとする邪悪なる存在。」
「そのチカラはとてつもなく強大だ。しかし、つけいる隙が全く無いわけではない。」
「その証拠にデスタムーアは自分を脅かす恐れのある4つの伝説を封印した。」
「人の持つ様々な能力を拡大させ、やがては勇者を生むかもしれぬダーマ神殿。」
「すぐれた武器や防具などを与えるメダル王。」
「究極の大呪文、マダンテを今に伝える魔法都市カルベローナ。」
「そしてデスタムーアの住まう狭間の世界へ行き着くための鍵を握る、このクラウド城。」
「その鍵とは、背中に輝く翼を持ち、空駆ける天馬ペガサスのことだ。」
「ペガサスには狭間の世界の入り口の結界を打ち破るチカラがあった。」
「だが大魔王によってそのチカラは奪われた。」
「よいか、主人公よ。この城の井戸から地上へ下り、ペガサスを連れてくるのだ。」
「さすればこのわしが再びペガサスにそのチカラを授けようぞ。」
クラウド城1階の井戸を覗き込むと、現実世界の天馬の塔へワープした。
天馬の塔を登ると最上階にペガサスの石像があった。
すると、馬車を引くファルシオンの様子がおかしくなる。
ファルシオンの身体が輝き始めた時、突然魔物が現れた。
「待て!そうはさせぬぞ!」
「ふぁっふぁっふぁ!あと一歩という所で悪かったな。」
「しかし大魔王様の命により、ペガサスを復活させる訳にわいかないのだ。」
「その馬もろとも地獄に落としてやろう!」
主人公は襲いかかってくる魔物たちを倒した。
ファルシオンとペガサスの石像が輝きだし、共鳴を始める。
ファルシオンとペガサスの石像はひとつになり、ペガサスが復活した。
クラウド城へ戻り、ゼニス王に報告する。
「よくやった主人公よ。よくぞペガサスを解放してくれた。」
「これで天馬の背に乗って空を駆けることが出来るようになるじゃろう。」
「何者にも遮られず天駆けるのは気分がいいものじゃぞ。」
「さて、それはともかく。ただ飛んでいるだけでは大魔王のいる狭間へは行けぬ。」
「約束通り、このわしが天馬の持てるチカラの全てを解放しようぞ。」
ゼニス王はペガサスに何やら呪文をかけた。
「ふむ、これでよい。」
「これで狭間の世界に行くことが出来るじゃろう。」
「しかし急ぐでないぞ。」
「一度狭間に行けば、そこは大魔王デスタムーアのつくった箱庭。」
「どんなことが待ち受けているか分からぬし、戻ってこられぬかもしれぬ。」
「心してかかるが良いぞ。」
天馬の背に乗り、主人公は狭間の世界へワープした。
ワープした場所に町があったので入ってみる。
「ここは絶望の町。ここには私達のように突然この世界に引き込まれた者が、為す術もなく暮らしています。」
「あなた方もきっと、全ての希望を失うことになるでしょう。この絶望の町で。」
宿屋にいる男に話を聞く。
「この町に住んでいるのは、かつていろんな希望や夢を持って生きていた人ばかり。」
「大魔王はそうした人々を絶望の淵に立たせ、苦しませて楽しんでいるのです。」
「そして私達が希望をなくせばなくすぼど、大魔王のチカラが増大してゆくのだと聞きました。」
民家に入り、ベッドで寝ている老人に話しかける。
「なんじゃお前さんは。わしゃもう2度と防具なんぞ作らんぞ。」
「ここで何をしたって、もう家族のもとには戻れんのじゃ。」
「ん?なんじゃと?大魔王を倒すためにこの世界にやって来たじゃと?」
「それじゃお前さん。自分のチカラでこの世界にやって来たと言うのか。」
「いや、信じられん。そんな話は信じられんぞい。これもきっと大魔王の罠じゃ。」
「もしそうでないと言うなら、もしお前さんの話が本当なら、その証を見せてくれ。」
「そうじゃな、こういうのはどうじゃ?」
「ザクソン村の、モンストルの北西の周りを高い山に囲まれた小さな村にわしの家がある。」
「そこには残されたわしの家族がおるはずじゃ。」
「わしの妻と犬のシルバー。きっとわしのことを心配しておるじゃろう。」
「そのザクソンの村のわしの妻にこれを渡して欲しいのじゃ。」
主人公は古びたパイプを受け取った。
「それは若い頃、妻から貰ったものでな。」
「これを見れば妻はすぐにわしの物だと分かるじゃろう。」
「そうしたらわしの仕事道具を妻に出して貰ってきてくれ。わしの部屋に置いてあるはずじゃ。」
「言い忘れておったが、わしの名はクラーク・エンデ。」
「わしの仕事道具を持ってきてくれたらお前さんの話を信じよう。」
主人公は町を出て西にあるヘルハーブ温泉へ行った。
温泉に入り中央の岩山へ行くと、そこは現実世界につながっていた。
ペガサスに乗り、ゲントの村のすぐ東にあるザクソンの村へ行く。
民家にいる老婆に古びたパイプを見せる。
「おや、これは?まあ!これはあの人の!一体どうして・・」
「もしやうちの人は生きているのでは?」
主人公は頷いた。
「ああ、やっぱり。どんなに絶望しても死ぬような弱い人じゃありませんもの。」
「でもきっと戻れなくてつらい思いをしているのでしょう。」
「あ、そうだわ。」
「これはあの人が命より大事にしていた仕事道具です。」
「どうかこれをあの人のもとへ届けてあげて下さいませんか。」
「この仕事道具を見れば、きっとまた元気を取り戻してくれるでしょう。」
主人公はエンデの道具を受け取った。
「あの人はきっと、いつかここに帰って来てくれると信じています。」
「たとえ離れていても、私とシルバーはいつでも側にいると伝えて下さい。」
再びペガサスに乗り、絶望の町へワープする。
民家のベッドで寝ているクラーク・エンデと話をする。
「なんじゃ、お前さんたち、またやって来たのか。」
「ん?何だと?わしの仕事道具を持ってきたというのか?」
主人公はエンデの道具を手渡した。
「おお、これは確かにわしの大切な道具!」
「まさか本当にザクソンの村に行って来られるとは。いや、疑って悪かった。」
「しかもこれを持って来たと言うとこは、わしの妻も生きておったんじゃな?」
「そうか、そうか。良かった。本当に良かった。」
「よし、道具もきたことだし、お前さん達のためにひとつ腕を奮ってやろう。」
主人公はエンデの防具を手に入れた。
なにやら町に活気が溢れたようなざわめきが聞こえる。
そして主人公達も自分の身体にチカラが満ちてくるのを感じた。
絶望の町を出て東へ進むと欲望の町があった。
「ここは欲望の町だよ。」
「もっとも本当は別の名前があったらしいけどね。今じゃ誰もがそう呼ぶのさ。」
剣士の男性に話を聞く。
「この町の洞窟で金が採れるという噂を聞いてきたのだが、どうやらとっくの昔に彫り尽くされちまったようだな。」
酒場の男性に話を聞く。
「ちっ、モルガンのやつ。あこぎな商売しやがって。」
「自分が賢者の宝を取ってこられないからって俺たち貧乏人を使って・・」
「おっと!今の話は聞かなかったことにしてくんな。」
商人の男性に話を聞く。
「モルガンは牢獄の町の兵士に密かに賄賂を送ってるらしくて。」
「そのかわりに何か金儲けの情報をもらってるという噂ですよ。」
モルガンの屋敷で話を聞く。
「私がこの屋敷の主、モルガンだが何か用かね?」
「どうせ宝探しの話だろう。であればまず自分の足で探すことだな。」
「話はその後で聞こう。さあ、出ていってくれ!」
町にある炭鉱の洞窟に入り、奥へ進むと宝箱があった。
宝箱を開けると、中は空っぽだった。しかし何か紙切れのような物が置いてある。
主人公は紙切れに書いてある文字を読んだ。
「大賢者の宝の情報あり。詳しく知りたい者は私のところまで。モルガン」
町に戻り、モルガンと話をする。
「ほほう、洞窟で私の手紙を見つけたのかね?」
「よろしい。賢者の宝の情報を教えよう。」
「ただし、無料で教えるわけにはいかん。5000ゴールド頂こう。」
「では教えてやろう。町の北西の森の真ん中辺りに隠された湖がある。」
「その湖の底に賢者がこの町に残していった宝が沈んでいるそうだ。」
「この町の北西にある森をくまなく歩いてみるがいい。」
欲望の町の北西の森の中にある湖へ行く人だかりが出来ていた。
「この湖の底に大賢者マサール様の宝が!」
「それがわかっていながら取れないなんて!」
「もし湖の水が引くのなら悪魔にだって魂を売っちゃいますよ、ねえ?」
突然辺りが闇に包まれる。
そして湖の水が引き始めた。
人々は我先にと湖の中に入っていき、大賢者マサールの宝を手に入れるため殺し合いを始めた。
主人公は人々が殺し合う中、そっと宝箱に近づき宝箱を開けた。
しかし、宝箱は空っぽだった。
殺し合いをしていた人々はそれを見て驚く。
「なんだと?宝箱は空っぽだと?」
「すると俺たちは空っぽの宝箱のために先を争って殺し合いまで・・」
「つまりこの空っぽの宝箱は、欲望でおかしくなった俺等の目を覚まさせるためだったのか?」
「どこの誰かは知らねえがありがとうよ。おかげで目が覚めたぜ。」
「いやはや、さすが大賢者マサールの宝物ですな。」
人々は町に帰っていった。
宝箱をもう1度調べると隠し階段が見つかる。
隠し階段から洞窟を抜けて北東に進むと、牢獄の町があった。
入り口で門番をしている男に話しかける。
「ん?なんだおぬしらは。一体どうやってここへ・・」
「ふっ、まあよい。どちらにせよ、よほどこの牢獄に入りたくて来たのであろう。」
「地獄という名の牢獄にな!」
男は嘆きの巨人に姿を変え、襲いかかってきた。
主人公は嘆きの巨人を倒した。
「この私が敵わぬとは。」
「もしやおぬし達が私の弟の待ち望んでいた者かもしれん。さあ、通るが良い。」
牢獄の前にいる兵士に話しかける。
「まさか、100年も門番をつとめてきた私の兄を倒すとは。」
「やはり大賢者の予言通り、大魔王様の存在を揺るがす者が現れたというのか。」
突然、声が響き渡る。
「大魔王の部下に身をやつしながら聖なる心を持つ門番よ。」
「そこにいる者たちこそ、長い間そなたの待ち望んでいた大魔王の存在を揺るがす者。」
「さあ門を開きなさい。この者たちは必ずや人々の光となるでしょう。」
突然の出来事に戸惑う兵士。
「今の声は一体・・」
「しかしおぬしらは大賢者様の言っていた者に違いない。」
「我々兄弟は大魔王に滅ぼされた巨人族の生き残り。」
「大魔王に従うふりをしながらずっとこの時を待っていたのだ。」
「大魔王の居城へ近づく方法は大賢者様しかご存知ないのだが。」
「この牢獄の町を治めるアクバーによって、この町の地下深くに封印されてしまっている。」
「アクバーを倒さぬ限り大賢者様の封印は解けないが、アクバーはあまりに手強い相手。」
「いくらそなたらが強いとは言え、ひとまず捕らえられたふりをして様子を見るといいだろう。」
主人公は牢獄の鍵を受け取った。
「その鍵があれば、この牢獄の町の扉を自由に開けられるだろう。」
「アクバーを倒し、大賢者様の封印を解くのだ!」
一度捕らえられたふりをして牢獄に入り込み、鍵を使って抜け出す主人公。
しかし牢獄の門番に見つかり声をかけられた。
「何奴だ!」
「・・・!!」
「お前は確か主人公!」
「私だ!私がわからぬか!」
「レイドックで兵士長だったソルディだ!」
「いやはや、こんな所でお前たちに会うとはな。」
「私はあの日、ムドーを倒し城に戻るはずが、気づくとこの世界にいたのだ。」
「どうやって来たのかは私も覚えてはおらぬ。」
「しかし必ずや何処かに帰る道があるはずと調べていくうちに、大賢者様の存在を知ったわけだ。」
「主人公よ。扉の封印を解くには、どうやらこの町の主、アクバーを倒すしかないようだ。」
「私には無理だが、ムドーをも倒したお前たちならあるいは・・」
「主人公よ。やってくれるな?ここの主アクバーを倒し、大賢者様を救い出してくれ!」
「くれぐれも気をつけるのだぞ。」
牢獄に囚えられているシスターアンナに話しかける。
「私に何か御用ですか?もし生きる道に迷っておいでならお話をお聞きしますわ。」
「もっとも、私にはこれ以上お話をすることも許されてはいないのでしょうけど。」
「私は大丈夫です。だから見つからないうちに。さあ、早く。」
牢獄を抜け出し、町の男性に話かける。
「アクバーを倒したいなんて無茶もいいとこですぞ。」
「あいつがどれほど強いか。あなた達は来たばかりでよく分かっていないでしょう。」
「とはいっても、シスターアンナをほってはおけないし・・」
「そうだ。兵士達に気づかれないよう、ぶどう酒にしないで隠しておいた物があるんです。」
「ちょっと訳ありの特別ぶどう酒を・・」
その時、広場のギロチン台の前に兵士達が集まり始めた。
「只今より、囚人の処刑を執り行う。」
男性がギロチン台にのせられた。
「ではこれよりお待ちかねの処刑を行う。」
「お前たちも我々に逆らうと、この男のような目にあうぞ。わかったな!」
「よーし、ロープを切れ!」
主人公が止めに入る。
しかし兵士達が次々と襲いかかってきてキリがない。
騒ぎを聞きつけてきたドグマとゾゾゲルが戦闘に加わる。
ドグマはカッと目を見開き、紫の瞳で主人公達を睨みつけた。
まるで吸い込まれそうだ。主人公達の身体が痺れてゆく。
主人公達は身体が痺れて動けなくなってしまった。
「ふん、たわいもない奴らよ。」
主人公達は再び牢獄へ入れられてしまった。
「お前たちはすぐには処刑しないぜ。」
「うん?これは牢獄の鍵!一体これを何処で・・」
「まあいい。鍵は預かっておく。こいつらをしっかり見張っておけよ。」
「あーあ、疲れた。おい、戻って酒でも飲もうぜ。」
「この騒ぎでまた兵士長殿に怒られるよ。全くやってられないぜ。」
「美味いぶどう酒でも持っていってご機嫌をとらなくちゃな。」
兵士達は門番を一人だけ残して何処かへ行ってしまった。
兵士達との戦いで疲れた主人公達は深い眠りに着き、やがて夜が明けた。
門番の兵士が扉の前で気を失ったように眠っている。
そこへ町の人達がやって来た。
「よう、無事だったようだな。助けに来たぜ。」
町の人達が牢獄の扉を開けてくれた。
「どうやらシスターアンナはもうアクバーの所へ連れて行かれちまったらしい。」
「おまけに聞くところによると、いよいよ明日にも魔物の魂を植え付けられるとか。」
「しかし俺達の中にはアクバーを倒すほどのチカラを持つ者はいない。」
「だいぶ前から反乱の計画はあったんだが、そのことで棚上げになっていたのさ。」
「けどよ、昨日のあんた達の行動を見て、みんな勇気づけられたんだよ。」
「駄目で元々。とにかくやってやろうじゃないかってな。」
「そんなわけで、とりあえず邪魔な兵士共には眠ってもらった。」
「けどこれからが本番だ。それじゃ、上で待ってるぞ!」
広場に行くと、町の人達が集まっていた。
「よく来てくれただ。オラが反乱軍のリーダー、トンヌラだ。」
「じつはもっと早く反乱を起こそうと思っていただが、オラ達の中にアクバーを倒せそうな者がおらんので計画が棚上げになっていただ。」
「けんどあんた方にはそのチカラがある!それにシスターアンナの身も危ねえだし。」
「とりあえずほとんどの兵士はオラの睡眠薬入りのぶどう酒で眠らせてある。」
「残りの兵士達はオラ達でやっつけるから、あんた方はアクバーからシスターアンナを助け出してくれ。」
「準備はいいだか?んだばこの牢の鍵を持っていってくんろ。」
主人公は牢獄の鍵を受け取った。
「それだばみんな!いざ行くだよ!」
アクバーを目指して皆で建物を駆け上る。
途中でドグマを発見したが、深い眠りについていた。
目を覚まし襲いかかってくるゾゾゲルを倒し、最上階の儀式の間にやって来た。
「んー?なんだお前は。」
「これから大切な儀式が始まるところだと言うのに邪魔な奴らよ。」
「ふふふ、面白い。実に愉快であるぞ。」
「私が探し求めていた者が自らやって来るとはな。」
「デスタムーア様の存在を脅かす者だというくだらぬ予言などおそるるにたらん。」
「今ここで砕け散らせてみせるわ!」
主人公は襲いかかってくるアクバーを倒した。
「馬鹿な。あの予言は本当なのか・・」
「だとすれば、あの二人を会わせてはならぬ・・」
「断じてあの二人を・・ぐふ!」
アクバーは消滅した。
町の人達がやってくる。
「やっただな!おめえさん達!」
「オラ達と戦ってた兵士が突然目の前から消えたんで、もしやと思っただがやっぱりだ。」
「アクバーが倒されて他の魔物たちもいなくなっただよ!」
町の人が倒れているシスターアンナに気づく。
「それよりリーダー!シスターアンナを。」
「おお、そうだば。アンナさんを早くベッドに!」
「頼んだがや!」
シスターアンナは町の人達に運ばれていった。
ソルディがやって来る。
「遅くなって申し訳ない。」
「アクバーとの戦いに参加できなかったとは・・」
トンヌラが言う。
「まあまあソルディ殿。あんたはよくやってくれただよ。」
「とにかくオラ達はもう自由だよ。なんの文句もねえだ。」
「さあいくだ。皆も待ってるだよ。」
ソルディが主人公に言う。
「さあ、我々も行こう。」
「アクバーが倒された今、おそらく大賢者殿を封印している扉も開かれたはず。」
最下階の大賢者マサールが封印されている扉の前に行くとソルディが待っていた。
「おお主人公。待っていたぞ。さあ早くその扉を開けてくれ。」
牢獄の鍵を使い扉を開ける。
中で鎖に繋がれている男性がいた。
「これはひどい!早くその鍵で鎖を!」
鎖に繋がれていた男性が言う。
「おお、これは。」
「生きているうちに再び人と話すことがあろうとは。ゴホゴホ。」
「もう長い間ここに閉じ込められ目も見えなくなってしまったが、どうやら耳は聞こえるようだ。」
「私は大賢者マサールではない。」
「彼の、マサールのただ一人の弟、クリムトじゃ。」
「大賢者マサールは大魔王の城の近くに囚えられておる。」
「ふむ、そなた達からは不思議なチカラを感じる。」
「恐らくそなた達こそ大魔王の恐れていた者。やはり現れたか。」
「私の兄、大賢者マサールもそなた達がやって来るのを待っているはず。」
「私には兄ほどのチカラはないが、そなた達のゆく道を開くことは出来る。」
「これをそなた達に授けよう。」
主人公はキラキラと輝く小さな光の玉を受け取った。
「それは真実のオーブ。」
「この町より北西にある暗黒の岬から無の海にかざせば、この世界の真の姿が見えるだろう。」
「そなた達なら必ず・・」
クリムトは倒れ込んでしまった。
ソルディが駆け寄る。
「どうやら眠ってしまったようだ。」
「それにしても、おぬし達は只者ではないとは思っていたがやはり・・」
「思えば主人公らと初めて会ったのは城の志願兵に応募してきた時だったな。」
「あの頃から不思議な感じがしておったのだ。何やら懐かしいような。」
「それ以前にも何処かで知り合いだったような。」
「まあ良い。積もる話は後にしよう。皆が上で待っているからな。」
「クリムト大賢者もいずれ目を覚ますだろう。」
「さあいくぞ。」
その夜、自らの手で勝ち取った自由に皆は酔いしれた。
あるいは歌い、あるいは踊り、やがて疲れて人々は安らかな眠りについた。
しかし、その夜明け・・
大魔王デスタムーアの声が町に響き渡る。
「遊ばせておけばいい気になりおって。」
「所詮人間など虫けら。わしのチカラを思い知るがいい!」
町の人々に次々と雷が落ち、石や動物に変えられてしまった。
主人公は町を出て、無の海への行き止まりで真実のオーブをかざすと、祠にワープした。
祠の中に入ると、鎖に繋がれた男性がいた。
容姿が大賢者クリムトにそっくりだ。
話しかけるが返事がない。しかし死んではいないようだ。
突然、主人公達は奇妙な感覚に包まれた。
そして大賢者マサールの記憶が流れ込んでくる。
魔物たちに回答を迫られている。
「さあ我等に忠誠を誓え!」
「そのチカラ、我が大魔王様に捧げると誓うのだ!大賢者マサールよ!」
「断る。」
「ふっふっふ、だがその強がりもここまでだ。ここはお前の心の世界。」
「むき出しにされた心は傷つきやすく、弱い。それが人間という生き物だ。」
「心をじかに攻めれば、いかに大賢者といえども耐えられぬはず。」
「まずはこれを見よ!」
弟のクリムトが処刑台に立たされている。
「あの男が誰だか分かるな?そうだ。お前の弟、クリムトだ。」
「お前が我々にチカラを貸さぬと言うのならこの男を処刑する。」
「どうだ、大賢者マサールよ。チカラを貸す気になったか?」
「ふん、動じぬか。」
「まあいいだろう。この世界の時間は無限。」
「何度でも見せてやろう。お前の心が朽ち果てるまで。」
主人公は牢獄の町に戻り、最下階でクリムトと話をする。
「主人公か、どうかしたのか?」
主人公は事情を説明した。
「そうか、兄上が・・」
「主人公よ、私をそこへ連れて行ってくれまいか。」
「案ずることはない。先程までに回復の魔法を自分にかけておったのだ。」
「そなたらの足手まといにはならぬつもりだ。ではゆくか主人公。」
クリムトを連れて、再び大賢者マサールが幽閉されている祠に向かう。
「兄上!」
「むう、これは・・大魔王め。兄上の心を何処かに封じ込めたな。」
「兄の心はここにない。しかし兄の心を感じることは出来るようだ。」
「そなたらは兄の心のごく浅い部分に偶然触れたのだろう。」
「私なら兄の心のもっと深い部分まで入り込むことが出来るかもしれない。」
「私の祈りが通じれば・・」
「兄上・・私です・・クリムトです・・私を呼んで下さい・・」
クリムトとマサールの身体が輝きだし、共鳴を始める。
「兄上?兄上ですね。今助けに参ります!行くぞ、主人公!」
主人公達とクリムトは大賢者マサールの心の中に入り込んだ。
「クリムト、思ったより元気そうで安心したわい。」
「クリムト、その者たちは?」
クリムトが答える。
「はい、彼らこそ、この世に光をもたらす者たちです。」
「さあ、こっちへ。」
大賢者マサールが言う。
「主人公と申したな。よくクリムトと会わせてくれた。」
「だが礼は後にしよう。まずはここから出ることじゃ。」
「わしはクリムトと祈りを始める。主人公達は時間を稼いでくれ。」
2人の賢者は瞑想を始めた。
「我が心を解き放て、我が祈りよチカラとなれ・・」
「よし、行けるぞ!さあ脱出するのじゃ、主人公!」
魔物の声が聞こえる。
「ちょっと待て!逃がすわけにはいかん!」
「むむむ、しまった。この二人を会わせるなと大魔王様に言われていたのに・・」
「お前たち全員、この世界に閉じ込めてやる!」
主人公は襲いかかってくるズイカクとショウカクを倒した。
心の中の世界から元の世界へ戻ってきた。
「奴らは死んだ。これでもう、わしを縛り付けることは出来んわい。」
「おぬし達のチカラ、とくと見せてもらったぞ。」
「なるほど。弟が見込んだだけのことはあるわい。」
「おぬし達のおかげで我等兄弟は再びこうして会うことが出来た。」
「我等兄弟には生まれつき不思議な力が備わっておるのじゃ。」
「空間を超える、そんなチカラがな。」
「ある地点と別のある地点に空間を結ぶ扉を開く。」
「早い話が、旅の扉と呼ばれるものを作ることが出来るのじゃ。」
「大魔王はこのチカラを欲し、そして恐れたようだ。」
「何故恐れられたか。今から我等のチカラを見せてやろう。」
「ちょうどここは、大魔王の城の真下にあたる。うまくいくだろう。」
二人は呪文を唱える。
「開け、光の道よ!開け、闇の扉よ!ハア!」
巨大な岩山が崩れ去り、デスタムーア城への道が開けた。
「このようにわしらのチカラは恐ろしい破壊を引き起こすことが出来るのじゃ。」
「しかし大魔王の城にはたいしてダメージを与えられなかったようだ。」
「わしらのチカラはここまでということじゃな。」
「行くがよい、主人公よ!大魔王の城への道は開かれた。」
「チカラを合わせよ!おぬし達は深い絆で結ばれているのじゃ。」
「血の絆、友情の絆、愛情の絆、信頼の絆。」
「それこそが、わしらの持つ全てのチカラの源なのじゃ。」
デスタムーア城に入り、城の最奥で大魔王デスタムーアと対峙する。
「フォッフォッフォ。黙って遊ばせておればいい気になりおって。」
「そろそろわしの方からお前たちを潰しに行こうかと思っておったところじゃ。」
「それをお前たちの方からのこのこやって来るとは。どこまでもめでたい奴らよ。」
「もはや名乗るまでもないだろう。わしが全世界の主となる存在、デスタムーア様じゃ!」
「さあ来い、虫けらども!」
「お前たちがどれほど非力で不完全なものなのかを嫌というほど思い知らせてやろうそ!」
「このデスタムーアこそが生きとし生ける者共の王たる存在だと言うことをな!」
姿を変化させながら襲いかかってくるデスタムーアを主人公は倒した。
「グギギギ、何故だ。この私がこんな虫けら共に敗れてしまうとは。」
「意識が薄れてゆく・・私の世界が崩れてゆく・・ぐは!」
デスタムーアは消滅し、デスタムーアの城が崩壊を始める。
その時、大賢者マサールの声が聞こえてきた。
「主人公!私の声が聞こえるか!」
「急いでそこを脱出しろ!何故だか分からぬが、この世界が崩れ落ちようとしているのだ!」
「は!もしや、そなた達、デスタムーアを!?そうなのだな!」
「よしわかった!我々はこの狭間の世界に閉じ込められた人々を助ける!」
「そなた達までは手は回らぬが、なんとか自力で脱出できるだろう!」
主人公達はペガサスに乗り、夢の世界へ脱出した。
クラウド城でゼニス王に報告をする。
「よくやった、主人公よ!デスタムーアは滅び去り、狭間の世界も消え失せた。」
「狭間に囚えられていた人々も人々もそこの二人に助け出された。」
ゼニス王の側には大賢者の兄弟がいる。
「これで世界は真の平和へと向かっていくだろう。」
「これもすべてそなた達のおかげじゃ。本当にご苦労であったな。」
「そなた達がいなければ、現実の夢の両方の世界は大魔王の手に落ちていたはずじゃ。」
「この夢の世界、いわば人々の心の世界を束ねる王として心から礼を言うぞ。」
「ありがとう主人公よ。そして他の者も本当によくやったな!」
「さて、どうやらそろそろお別れの時が来たようじゃ。」
「ここは本来、そなたらが存在するはずのない夢の世界。」
「この世界を支配するため実体化させようとしていた大魔王のチカラももう尽きてゆくはず。」
「されば現実のそなたらには恐らく、この世界も我々の姿も見えなくなるであろう。」
「しかし案ずるでない。世界があるべき本当の姿に戻るだけなのじゃからな。」
「さあゆくが良い。皆がそなた達の帰りを待っておるだろう。」
大賢者の兄弟と話をする。
「こんな城があるなど全く知らんかった。」
「実に興味深い。ゼニス王にもっとお話を伺わなくては。」
「我々はもうしばらくここにとどまっていく。」
「そなた達には本当に世話になった。ありがとう、主人公。」
主人公達はペガサスに乗り、夢の世界のレイドック城へ向かった。
玉座の間にいるソルディと話をする。
「おお、無事に戻ったか。主人公にハッサン!」
「私も大賢者マサール殿とクリムト殿に導かれ戻ってきたのだ。」
「そなたたらにも随分助けられたな。礼を言うぞ。」
「ところでレイドック王が先程からいらっしゃらないようなのだが、何やら書き置きがあってな。」
「読むぞ。主人公にハッサン、ご苦労であった。ソルディも無事でなにより。」
「わしは下で待っているので後で顔を見せるように。レイドック王。」
現実世界にある魔法都市カルベローナヘ向かい、カルベ夫人と話をする。
「ご苦労じゃったなバーバラ。大魔王の魔の手から世界は救われた。」
「そしてお前はもう大魔女と名乗っても恥ずかしくないほどの魔力も身につけた。」
「長老さまも喜んでおられるじゃろうて。」
「しかし私が長老さまのふりをしているのもそろそろ限界かと。」
バーバラが聞く。
「じゃああたしに長老になれっていうの?」
「いや、そうは言わん。お前は若い。まだまだ学ぶことは多いはずじゃ。」
「わしはゼニス王のもとで学ぶことを薦める。」
「あそこにはわしらですら知らぬ魔法が眠っているかも知れんからのう。」
「うーん、でもあたし、もうちょっと考えてみる。どうするか自分で決めたいの。」
「ごめんね。まだ自分で自分がよくわからなくて。」
「行こう、主人公。他のみんなを送ってあげなきゃ。」
夢の世界のライフコッドに行き、ターニアと話をする。
「あ、おかえりなさい。良かった。もうここには戻ってこないんじゃって。」
「主人公兄ちゃん。約束して。ターニアのこと、忘れないって。」
「主人公兄ちゃん・・私・・」
ターニアの身体が光り輝き、透明になっていく。
「私・・なんだか眠くなってきちゃった・・」
「主人公兄ちゃん、さよならだね。でもきっとまた会えるよね。」
「主人公兄ちゃん、大好き。さよなら・・」
夢の世界のライフコッドの村人たちも次々と消えていく。
現実世界のマーズの館を訪れる。
「おばあちゃん、ただいま!テリーも一緒よ。」
グランマーズが言う。
「うんうん、よく戻ったね、ミレーユ。そしてテリー、あんたもね。」
「あんたは初めてだろうけど、わしはいっつもあんたを見ていたよ。」
「それにしてもお前さん達がデスタムーアを倒してしまうとはのう。」
「夢を見るのはいいことじゃ。夢は希望を生み、希望は生きる力を生む。」
「しかし時に夢は欲望を生むこともある。」
「ヤツはきっと、自分の愚かな夢とその欲望に飲み込まれていたのじゃろうな。」
「ともあれお前さん達はよく戦ったよ。2つの世界を守りきったのだからね。」
「これからはまた以前のように平和な日々が送れるってもんだよ。」
ミレーユが言う。
「あの、おばあちゃん?」
「私を弟子にして欲しいの。夢占い師として私のチカラを誰かの役に立てたいの。」
「ほーほっほっ。何を今更。」
「わしは最初からそのつもりじゃったよ。」
「礼などいらんて。さて、それじゃまたごちそうの用意でもするとしようか。」
現実世界のサンマリーノに向かい、ハッサンの実家に行く。
「あ、あんた・・」
ハッサンが言う。
「おう、今戻ったぜ。」
「あんた、ハッサンだよ。ハッサンが帰ってきたよ!」
「おふくろ、それに親父。いろいろ心配をかけて悪かったな。」
ハッサンの父親が言う。
「へん!そんなすごい仕事が出来る男になったんだったら、今度は大工でもしてみやがれ!」
ハッサンが主人公に言う。
「というわけだ、主人公。」
「俺はオヤジの跡を継いで立派な大工になる。」
「長い付き合いだったが、みんなとはここでお別れだ。」
「おいおい、悲しい顔をするなよ。みんな自分の家に帰るだけじゃないか。」
「じゃあ主人公、気をつけてな!」
「お前たちと旅したことは一生忘れないぜ!」
現実世界のゲントの村へ行き、チャモロが長老と話をする。
「おじいさま、今戻りました。」
「よくぞ戻った、チャモロよ。」
「おお、まるで別人のようにたくましくなって。見違えたぞ!」
「不思議なことに、役目を終えたかのように神の船がひとりでに戻ってきおってな。」
「ま、とにかくよくやったな。そなたらはゲントの術でも癒せぬ人々の未来を救ったのじゃ。」
「我等ゲントの神もさぞやお喜びじゃろう。」
チャモロが主人公に言う。
「主人公。私はこれからもこの村で病気の人のため、働いてゆくつもりです。」
「もし怪我や病気で苦しむことがあったら私を呼んで下さいね。」
「では皆さんにゲントの神の祝福があらんことを。」
現実世界のガンディーノ城下町にある家に帰るミレーユとテリー。
突然の訪問に老人が驚く。
「本当にミレーユとテリー・・なのか?」
ミレーユが言う。
「はい、お父様。」
「わしを父と呼んでくれるのか?お前を売ってしまったこのわしを・・」
ミレーユが答える。
「勿論です。だって、身寄りのない私たち姉弟を引き取って、ここまで育ててくれたのはお父様とお母様ですもの。」
「おお、ミレーユ・・」
ミレーユが言う。
「ところでね、私、夢占い師になりたいの。グランマーズという人のもとで勉強したいの。」
「わしは、わしは二人が生きていたというだけで十分だ。」
「こうして会いに来てくれただけで十分だ。」
「だから好きなことをやるがええ。わしらのことなど気にせずにな。」
「ありがとう、お父様、お母様。」
「主人公、ここでお別れしていいかしら?」
「もうしばらくこうして4人で話していたいの。」
現実世界のライフコッドに立ち寄り、村長と話をする。
「おお、主人公。戻ったか。」
「・・と、もう主人公などと呼び捨てにしてはいかんかったな。」
「主人公殿はレイドック城の王子様でしたな。」
「しかもこの世界を救ったお方だ。」
「ところで王子、もうお城には戻られましたかな?」
「なんでもお城で盛大な祝が開かれるとかで、ターニアやランドや、おもだった者はお城に招かれて出掛けてゆきましたぞ。」
「わしも呼ばれたが、城とかそういうのは苦手でな。」
「こうして一人留守番ですじゃよ。」
現実世界のレイドック城に向かい、レイドック王と話をする。
「よくぞ戻った、我が息子よ。」
「大魔王はお前たちの活躍により滅び去った!」
「見よ、澄み渡る空を。感じよ、心地よい風を!これこそが真の平和の証。」
「それをもたらしたのが我が息子とは、父としてこれほど嬉しいことはないぞ。」
レイドック王がバーバラを見る。
「ところで先程から気になっていたのじゃが、そこの可愛い娘さんは誰なのだ?」
バーバラが戸惑っている。
「え?あたしのこと?」
「よい、よい。しかし主人公もわしに似てなかなか隅に置けんな。」
「そんなに可愛い娘を連れて戻ってくるとはな。」
「皆の者!宴の準備じゃ!」
「主人公、お前の友人たちも呼んでおるぞ!さあ、宴じゃ、宴じゃ!」
宴が始まった。
ふと辺りを見渡すとバーバラの姿が見当たらない。
主人公は城を探し回り、玉座の間でバーバラを見つけた。
バーバラの身体が何故か半透明になっている。
「あ、主人公。」
「寂しいけれど、そろそろお別れの時が来たみたいね。」
「ほら、あたしはみんなと違って自分の実体がなかったから。」
バーバラの身体が光を帯びている。
「さようなら、主人公・・みんなにも宜しくね・・」
バーバラは消えてしまった。
宴が終わった後、旅の仲間みんなでマーズの屋敷に集まった。
ミレーユが水晶玉の前で言う。
「いい?それじゃ、始めるわよ。」
水晶玉が光り、クラウド城の様子が映し出される。
金の玉子の前にゼニス王とバーバラがいる。
「すごい・・いよいよね。」
ゼニス王が言う。
「うむ、ついに育ったのじゃ。我々の未来が。」
バーバラが言う。
「どんなのかしら、あたし達の未来は・・あ!生まれるよ!」
金の卵が割れ・・新しい未来が生まれた。