ジャッジアイズ 【JUDGE EYES】― 死神の遺言― チャプター2「アンダー ザ ウォーター」

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神室町で目を抉られた被害者はこれまで3人いる。
この間の久米以外にあと2人。
全員共礼会の組員だ。
そいつらを全部殺ったのがモグラ。
そいつに羽村のカシラは久米を引き渡していた。
つまり羽村のカシラはモグラとグルだ。
3件全部の殺しに絡んでいる可能性もある。
でもあいつはそのことをまんまと隠しきったまま無罪放免。
カリはきっちり返さないとな。
金にはならないけど。


八神と海藤は殺害現場に向かった。
「俺らはまずモグラを知る必要がある。」
「モグラの最初の犠牲者はこの場所で見つかったんだ。」
「第1の事件があったのは8月の末。」
「被害者は共礼会の真柴健吉27歳。」
「久米よりさらに下っ端だ。」
「目は抉られてて、朝方、死体発見の通報があった。」


海藤が言う。
「次に第2の犠牲者が出たのは10月とある。」
「場所は天下一通りの裏路地だ。」
「行ってみるか?」


「いや、そっちは俺ひとりで行くよ。」
「そのかわり海藤さんは情報屋に連絡とってくれるか?」


海藤が言う。
「ん?綾部のことか?」


綾部は海藤さんがコネをもっている汚職刑事だ。
「警察の情報を流してくれるんだろ?」
「俺らにはモグラの捜査資料がいる。」


海藤が答える。
「わかった。聞いてみる。」


八神が一人で第2殺害現場に向かうと、警察に追われた仮面の男と鉢合わせした。
仮面の男は突然八神の携帯を奪い、逃げ出した。
八神は仮面の男を追い詰めたが、最後で取り逃がしてしまった。
「まあ計画とは違ったけど、結果的に助かったよ。」
「サンキュー。それじゃ。」
仮面の男は八神に携帯を返し、立ち去った。


「あれが神室町の窃盗団か・・」


八神は源田事務所に顔を出した。
事務所にいた源田が言う。
「よお、お前まだなんか探ってんのか?この間の事件。」
「ありゃもう終わったろ?」
「調べてもらっても金は出せねえぞ。」
「お前は羽村が真犯人隠してるって思ってんだろ?」
「それであれこれ調べてるって聞いたら起こるよな?羽村は。」
「新谷がよく電話で話してるけどな。一緒に飲んだり仲良くやってるよ。」


新谷がフリーライターの服部を連れてやってきた。
「忘れてた。今、新谷が取材受けててよ。」


「帰ります。俺はお邪魔みたいなんで。」
八神は帰っていった。


海藤から連絡があり、七福通りの「鯉女房」という釣り堀屋で綾部に話を聞くことになった。
店には地下へ続く隠し通路があり、そこには裏カジノ「ラ・マン」があった。
「あんたが八神さん?」
「それとも八神先生って呼んだほうがいいかな?」
「神室署、組織犯罪対策課の綾部和也だ。」
「どうだ?ここのカジノは気に入ったか?」
「ここの営業は俺が目こぼししてやってんだよ。」
「それに東城会へのみかじめも俺がなしつけて安くしてやった。」
「俺のカジノっつっても罰はあたんねえだろ。」
「共礼会のヤクザが目を抉られてる事件な、ありゃ全部黒岩って俺の上司が指揮とってんだ。」
「この間、羽村を逮捕したのも黒岩だ。」
「で、あんたは羽村を無罪にして、その黒岩に赤っ恥をかかせてくれた。」
「気持ち良かったねえ。」
「あれ以来、俺はあんたのファンだよ。」
「初回サービスだ。お代は結構。」
「あんたがモグラって呼んでいる野郎の捜査資料をまとめた。」
「この間裁判やったのも入れて3件分だ。」
「大事に頼むぜ。」
「もし外に漏れたらあんたの責任だ。」
「そんときゃ、殺す。」
「そのくらいの覚悟は持ってくれよ。」
「黒岩は神室署のヒーローでね。」
「押し出しが利いて部下の人望も厚く、検挙率は抜群。警視庁のお偉方までみんなやつの顔色を窺っている。」
「俺は完全無欠ってのが嫌いでね。」
「あんたも、自分の周りにそんな同僚がいたら好きになるか?」
「おまけに男前なんだぜ?」
「こいつが黒岩だ。」
綾部は八神にスマートフォンを見せた。
「向こうもあんたの顔を知ってるはずだ。」
「なんせ苦労して挙げた羽村を無罪にしてくれたんだから。」
「渡した資料はここで広げんなよ?」
「空いてる時はたいていテンダーにいる。」
「また用があったらいつでも。」


八神は事務所に戻り、海藤と一緒に捜査資料を見た。
「警察も結局無実のカシラを逮捕したぐらいだからな。」
「他にこれはって容疑者もいないってことがこの資料でよくわかった。」
「ただモグラの2件目の事件、被害者の国村って男の足取りが事件の直前まで調べられてた。」
資料には国村の写真が入っていた。
「殺される2時間前に天下一通りの『こんばんワイフ』って店を出てる。」
「人妻系ヘルス。相手した女の子は『かなえちゃん』だ。」
「これからかなえちゃんに話を聞きに行ってくるよ。」
「国村がどんな様子だったか。」
「なにかモグラにつながる情報が出てくるかもしれない。」


八神がこんばんワイフに向かうと、羽村が現れた。
「お前も金ねえなりにこういう店で遊ぶんだなあ。」
「お前、なんでこの店なんだ?」
「なんてな。」
「共礼会の事件を嗅ぎ回ってるって?」
「もうお前の出る幕じゃねえだろ。どういうつもりだ?」
羽村は八神の首を掴み、みぞおちにパンチを食らわせた。
「終わった事件、蒸し返すんじゃねえ。」
「せっかく新谷先生が無罪獲ってくれたんだからよお。」
「タフな探偵気取るならもっと鍛えねえとなあ。」
「与太こいてんじゃねえぞ、オラ!」
羽村は八神の腹を何度も蹴り上げた。
「かなえちゃんなら、さっきこの店辞めて故郷に帰ってったぞ。」
「今回はイエローカードで済ませといてやる。」
「お前は組長のお気に入りだからな。」
羽村は八神の頬を2回平手で叩き、帰っていった。


八神は松金組事務所へ向かい、松金と話をした。
「いきなりだがよ、ター坊。結論から言うぞ。」
「お前が羽村と何か揉めたとしても、俺がしてやれることは何もねえ。」
「話し聞いたって時間の無駄だ。」
「羽村は組の稼ぎ頭でよ。」
「今の俺はその小遣いで細々やってるただの飾りだ。」
「うちの組のモンは確かに俺の言うことはよく聞く。」
「だが、それが羽村の指示とかち合った時には、どうだろうな。」
「多分俺の言葉は聞かなかったことにされちまう。」
「昔、お前を面倒見てた頃が俺は一番華だったよ。」
「それでも海藤がいりゃ、ここまで羽村が力持つこたあなかった。」


羽村の舎弟、ケンゴがやってきた。
「羽村のカシラから八神さんに伝言です。」
「ここを出たらすぐにお出でいただきたいと。」
「場所は中通りの喫茶アルプス。」
「もう一度話がしたいとのことで。」
「あまりウチのカシラを怒らせんなよ。」
「てめえも目ぇ抉られんぞ。」


八神は喫茶アルプスに向かった。
「情けねえ野郎だ。組長に泣きつくとはな。」
「フザけた真似しやがる。」
「どうせ口で言っても聞かねんだろ?ター坊。」
喫茶アルプスにいた客たちはいつの間にかいなくなり、代わりに松金組の構成員達が入ってきた。
「ガキの頃からそうだったもんなあ。」
「お前はまわりにいくら笑われようがよ、夜間通いあげてとうとう司法試験まで通っちまった。」
「どうせ今も腹ん中じゃ手ぇ引かねえ気なんだろ?」
「元弁護士だろうが、所詮はゴロツキあがりだ。」
「やっぱムチでしつけねえとな。」


八神は集団リンチを食らい、フラフラの状態で店を出た。
追ってくる羽村にアイスピックで目を抉られそうになったが、寸前で逃れた。
「ふざけやがって、お前ら。順番守れよ。」
「次は俺の番だろ!」


八神は一人で松金組の構成員たちを倒し、羽村を追い詰める。
羽村はケンゴを煽り、拳銃で八神を撃たせようとした。
その時、以前第2殺人現場で出会った仮面の男が助けに来た。
仮面の男は羽村とケンゴを蹴り飛ばす。
「逃げるよ!ついてきて!」


八神は仮面の男の手引で羽村たちから逃げ出すことに成功した。
「あの時はしつこい警官に追われててさ。」
「そしたらあんたが電話してて、それでパッと計画を思いついたわけ。」
「まずスマホを奪うでしょ?」
「するとあんたは僕を追いかけてくる。」
「あとから来た警官たちは僕と同じ方向に走るあんたを仲間だと思う。」
「で、あんたが捕まってる間に僕は逃げる。」
「ま、あんたまで逃げ切るとは思ってなかったんだけどさ。」
「お互い結果オーライだったでしょ?」
「まあ一応、スマホの件じゃ迷惑かけたしさ。」
「でもそれで今は命が助かったんだから、あんたラッキーだよね。」
「これでチャラね。」


八神が聞く。
「なあ、なんで窃盗団なんてやってんだ?」
「いい若いもんがもったいない。」
「そんなに暇なら俺の仕事手伝わないか?」
「さっきのやつらは東城会の松金組だ。」
「他に共礼会とも俺は揉めている。」


「ちょっと面白そうではあるけどさ、僕らまだお互いに信用できないでしょ?」
「八神さん。」
仮面の男は立ち去った。


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