ジャッジアイズ 【JUDGE EYES】― 死神の遺言― チャプター6「フィクサー」

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星野がすかさず助けに入る。
「源田法律事務所の星野といいます。」
「刑事さん、これは任意の同行ということですね?」
「八神さん、どうします?」


「お断りします。」


星野が言う。
「ではそういうことですのでお引取りを。」


黒岩が声を荒げる。
「大事にしたくなきゃ一緒に来た方がいいな。」
「今だから任意で済んでんだ。」


「そんな脅しは弁護士に通用しませんよ。」


黒岩が言う。
「法廷から逃げ打った弁護士には通じるんだよ。」
「叩きゃ埃だらけだしな。」
「おとなしくついて来い。」
「令状なんか取ったらこっちもひけなくなるぞ。」


「取れるもんなら取ってこいよ。」
「俺を疑う根拠は?」
「どうせ何もないんだろ?」


「なきゃ作ってやろうか?」
「後悔するぞ。」
黒岩は帰っていった。


八神と星野も追い出されてしまう。
「俺を重要参考人だなんて、何いってんだかわからねえな。」
「それより俺らがここに来てることがなぜか筒抜けだったな。」
「それより今は生野だ。」
「せっかくここまで来たんだし、なんとか直接話がしたい。」


橋本という女性スタッフが生野がいる開発研究棟へ戻るところで、それに同行させてもらえることになった。
生野に話しかける。
「いや、困ります。」
「センター長は知らないんですよね?」


厚生労働省事務次官・一ノ瀬薫という男性が近づいてきた。
「一ノ瀬といいます。」
「厚生労働省の者でしてね。」
「アドデック9への政治的な支援をしています。」
「生野さんが迷惑がられてます。お引取りを。」


木戸もやってきた。
「あんたらここで何をしているんだ!」
「もう帰ったんじゃなかったのか?」
「こそこそ何をやっている。」
「生野は何も知らないと言ったはずだ。」


八神たちは追い出されてしまった。
「厚生労働大臣がどうのって話は最近神室町でも聞いた。」
「綾部からだ。テンダーで飲んだ時。」
「あいつが話の中で風見大臣の名前を。」
「たしかはじめはなんで関西の共礼会が神室町に来たのかって話だったんだ。」
「共礼会は梶平って大手ゼネコンに使われてるらしい。」
「で、この梶平が一時期都内の再開発を計画してて、会長自ら根回しに動いてた。」
「その交渉相手の一人が厚生労働省の風見大臣。」
「けど都市開発だったら国土交通省とかじゃね?」
「厚生労働大臣なんてお門違いだろ?」
「何を根回しすることがある?」
「梶平と風見が会って何を話していたかによるな。」


星野が言う。
「それなら杉浦さんが調べられるかも。」
「元梶平の社員だったんですよね?」


杉浦に電話する。
「なるほどね。」
「じゃあ梶平と風見大臣のつながりがわかればいいの?」
「調べてみるよ。」
「そっちはまだ創薬センターだよね。」
「少し時間くれる?何か分かったら電話するから。」


八神と星野は神室町に戻ってきた。
「八神さん、僕は一旦事務所に戻りますね。」
「さおりさんからメールが来てました。」
「今、服部って記者が押しかけてきてるそうなんです。」
「八神さんに取材したいって。」
「新谷先生の件を嗅ぎ回ってるみたいです。」
「僕がかわりに追い払っておきますよ。」


星野と別れた後、杉浦から電話が入る。
「梶平と風見大臣はね、あの創薬センターのことで密会してたんだよ。」
「何年か前から梶平グループはデカい再開発計画を立てて極秘に準備していたんだ。」
「都内のある広い土地をアテにしてね。それが創薬センターとその周辺。」
「正確には医療システム産業開発機構の敷地全部。」
「で、それを管理しているのが厚生労働省だったってわけ。」
「だから梶平は風見大臣に根回しする必要があったんだよ。」
「再開発するには、創薬センターからなにから全部閉鎖するのが大前提だからね。」
「もともと閉鎖って話はずっと前からあったみたい。」
「医療システム産業開発機構ってその組織はさ、日本の高齢化に備えて研究を進めるって触れ込みだったわけ。」
「ところが維持費ばっかりかかって何十年も成果なし。」
「ずっと税金泥棒って言われてた。」
「ま、もともと天下りの受け皿みたいなゆるいとこだったんだよ。」
「もしそこへ大臣が閉鎖と言い出せば、一気に潰そうって流れになるだろうね。」
「とんでもない手数料が入れば、大臣は評判なんて気にしないんじゃない?」
「とにかく梶平は大臣に取り入って、もうだいたい話をつけてたみたい。」
「この時点で贈収賄。」
「しかもだよ、梶平は先々の値上がりを見越してセンター周辺の土地も買いまくった。」
「わかりやすい汚職だよ。」
「でもさ、やっぱ神様は見てるんだよね。」
「ある日、梶平の再開発計画は突然白紙に戻されたんだ。」
「創薬センターを閉鎖できない事情ができてね。」
「その理由がアドデック9の論文発表。」
「この認知症の薬は世界にとって絶対の正義だからね。」
「風見大臣はすぐ手の平返してアドデック9を褒めちぎってた。」
「だから当然、創薬センターとかの閉鎖話は立ち消え。」
「梶平は大臣からハシゴを外されたわけ。」
「再開発に備えてた投資分もろもろ、かなりの金を回収できなくなったんじゃない?」
「アドデック9のことは相当恨んでると思うよ。」
「実は、今僕が言ったことは全部ネットの記事に出てたんだよ。1年も前に。」
「面白い記事だけど、決定的な証拠がなかったのかな。」
「ゴシップ扱いで話題にならなかったみたい。」
「この記事書いたのは服部って記者だよ。」


八神が服部に会うため源田法律事務所に向かうと、すでに追い払われていた服部のかわりに真冬が来ていた。
「泉田検事が八神君の逮捕に動いてるみたい。」
「新谷先生の件で。」
「森田検事正まで八神君を疑ってるみたい。」
「さすがに好き嫌いで動くほど検察は感情的じゃないはずだけど。」
「まあ、八神君がやってないって言うなら安心した。」
「それでも、何かあったら連絡して。」


真冬が事務所を出ると、杉浦から電話が入った。
真冬がヤクザにつけられてるという。
八神は真冬を助け出した。
「私がヤクザに狙われたの?何で?」
ヤクザは共礼会の構成員だった。
「共礼会って関西のヤクザでしょ?」
「その連中が私を狙ったの?」


八神が言う。
「さっき顔殴られてたよな。大丈夫か?」
「もう二度とこんなことがないようにする。」
「共礼会と話をつけてくるよ。」
「俺は当分この街を離れる気はないよ。」
「今追ってるモグラが3年前の大久保の事件とつながってきた。」
「モグラに殺された新谷は創薬センターの生野って研究員に連絡を取ろうとしてたんだ。」
「その生野は大久保の事件で検察側の目撃証人だった。」
「俺もまだパズルのピースを集めてるとこだよ。」
「でもそれを解くまではもう前に進むしかない。」
「じゃあ、またな。」
真冬は迎えに来た警察官と帰路についた。


八神は杉浦に電話をかけた。
「杉浦?八神だ。」
「もう動ける。そっちは今どこだ?」


八神は杉浦、海藤と合流し、襲撃してきた共礼会の組員が逃げ帰ったキャバレー「本丸園」という店に向かった。
本丸園には塩屋がいた。
「ちいと仕事を頼みたいんや。あんたらに。」
「頼むからにはどうやっても断れんようにしたろ思うてな。」
「あのお姉ちゃんに役に立ってもらいたかったわけや。」


塩屋を叩きのめすと、フリーライターの服部と梶平茂会長が現れた。


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