ジャッジアイズ 【JUDGE EYES】― 死神の遺言― チャプター4「ジャック イン ザ ボックス」

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松金組の事務所で羽村が東を問い詰める。
「なあ東。お前、なんで仕事に手ぇ抜いてんのかな?」
「なんでまだター坊がうろちょろしてんだよ。」
「てめえがなってねえからナメられてんだろうが。」
羽村の子分は東を殴り続けた。
ちょうどその時、外で見張りをしていた松金組の組員が何者かに銃撃され死亡した。


翌朝、事務所で八神と海藤が事件の話をする。
「死んだのは栗本って組の古株だ。」
「流れ弾でカタギにも怪我人が出てる。」
「別に目立つやつじゃなかった。」
「犯人は自称会社員。その場で現行犯逮捕。」
「だが、そいつは共礼会の送り込んだ鉄砲玉だ。」
「昨夜東から聞いた。」
「あいつの話じゃ、犯人は栗本の身体にまず弾を4発。で、とどめに両目を撃ち抜いた。」
「要するに共礼会からモグラへの報復だ。」
「だがこうなると、松金組どころか東城会本家も黙ってねえ。」
「共礼会との報復合戦になる。」


八神は東に話を聞きに行った。
「もうカシラもお前に構ってる場合じゃねえ。」
「あのあとすぐ、カシラは事務所を出てそれっきりだ。」
「サツが来た時にはとっくに雲隠れしてたよ。」
「事務所はサツでごった返してる。」
「俺もこの後行くんだけどよ。」
「事務所の守り固めに。」
「組のモンは全員招集かけられてる。」
「今、向こうのナンバー2ってのが神室町に来てんだよ。」
「関西の方からわざわざな。」
「共礼会の若頭で塩屋聡。バリバリの武闘派で、ゆくゆくは古葉会長の跡目だ。」
「しかも塩屋が本当に狙ったのは、多分羽村のカシラだ。」
「昨夜殺された栗本の服装がよ、カシラが昨日来てたジャージに似てるんだよ。」
「さらに栗本とは年も背格好も似ている。」
「カシラも気づいたはずだぜ。」
「本当は自分が狙われたってな。」
「カシラを狙う共礼会にしたらよ、それを無罪にした連中も充分マトになる。」
「お前より新谷ってやつの方があぶねえ。」
「カタギが極道に狙われたらひとたまりもねえぞ。」


八神は源田法律事務所に向かい、新谷と話をする。
「あの事件、羽村は真犯人を知ってたはずだ。」
「なのに裁判中ずっと隠してた。」
「俺らをコケにして罪を逃げ切ったんだよ。」
「あんたはこれでいいんだろうけど、俺はこのままじゃ終われない。」
「今、羽村は逃げ回ってる。」
「共礼会に狙われてるんだ。」
「ゆうべの銃撃事件がそうだ。」
「で、あるスジの話じゃ、羽村を無罪にした弁護士の身も危ないらしい。」
「あんたのことだよ。」
「だからせいぜい気を付けな。」
「今日はそれだけ言いに来たんだ。」
「じゃあな。俺は俺がやるべきことをやる。」


「お前じゃモグラに届かねえよ。」
「どうせヤクザ同士の抗争とでも思ってんだろ?」
「でもな、モグラはそんなんじゃねえんだよ。」
新谷は事務所を出ていった。


テンダーで海藤と待ち合わせをし、綾部から情報を聞く。
「実は昨夜から羽村が姿を消してる。」
「組の事務所にもずっといねえ。」
「目下、警察でも行方を追ってるとこだ。」
「共礼会は東京にも縄張りを持ちたいらしい。」
「東城会2万5000に比べたら共礼会はせいぜい1000人程度。」
「おまけに神室町じゃ完全にアウェイだしな。」
「共礼会は1、2年前から神室町に出てきたが、すぐ東城会に潰されるだろうって警察でもそう見てた。」
「そうならないのは、共礼会のバックについてる関西の梶平グループの資金力がでかいんだよ。」
「ゼネコン大手の梶平系列の会社を共礼会は隠れ蓑にしてた。」
「それがKJアートだ。」
「実は東京進出の野心を持っているのは共礼会じゃなくて、たぶん梶平の方だ。」
「東京ででかい再開発を進めようとしていたらしい。」
「で、その手の話には汚れ仕事が付きものだろ?」
「地上げとか立ち退かせ。あとは政治的な根回しとか。」
「梶平のそれを全部請け負ってるのが共礼会という噂だ。」
「一時期は梶平の会長も頻繁に東京へ来てた。」
「それは間違いねえんだぞ。」
「で、政治家とか役人、変わったとこで厚生労働省の風見大臣にも何度か会ってた。」
「とにかく共礼会が神室町に来たのは極道の理屈だけじゃねえ。」
「松金組は昨夜殺しの現場になっちまったからな。」
「今は警察に囲まれて身動きとれねえってとこだろ。」
「昨夜の一件で、神室町の空気が悪くなっちまったな。」
「また抗争の流れ弾がカタギにも飛んでくるかもってな。」
「それより知ってるか?」
「お前が始めたモグラって呼び名。刑事たちも使いだしててな。」
「街ん中でもわりと通じるんだぞ。」


黒岩満がテンダーの中に入ってきた。
綾部が顔を隠す。
「八神に海藤だな。」
「神室署、組織犯罪対策課の黒岩だ。」
「お前らが無実にしてくれた羽村は、俺が手錠かけたやつだった。」
「おかげでいい笑いモンになってる。」
「ありがとよ。」
「うちの綾部とは仲がいいらしいな。」
「なあ、ひとつ教えてくれるか?」
「3年前、お前の弁護で無罪になった人殺しが何の罪もない女の子を焼き殺した。」
「なのにこの間の裁判でもまた人殺しを野放しにしたな。」
「今度の犠牲者は誰になるんだ?」
「教えてくれよ。八神先生。」


八神は何も答えず店を出た。


「もう少し共礼会を調べる。」
「今まで俺は連中がただ単に神室町のシマを狙ってるだけだと思ってた。」
「でもゼネコンがバックについてたり、再開発のビジネスも絡んでいる。」
「村瀬に話を聞く。」


KJアートに向かう途中、共礼会若頭・塩屋聡に捕まってしまった。
途中、仮面の男も助けに入り塩屋と共礼会の構成員たちを叩きのめした。
仮面の男は仮面を外し、杉浦分也と名乗った。
八神は海藤と杉浦を連れて東のもとに向かった。
「神室町の窃盗団はもう抜けたんだ。今はひとり。」
「僕ね、前は梶平グループで働いてたんだ。」
「関西の本社で。」
「そこで社内のIT管理の仕事をしてたの。」
「サイバー攻撃を防いだりとかそういう、システムエンジニアってやつ。」
「ある日、僕はたまたま経理のデータに数字の改ざんを見つけたんだ。」
「グループの幹部が何人かで裏金を作っていたわけ。」
「億単位で領収書のいらない金が隠されてたんだ。」
「で、僕はそれを見て面白がってたんだけどさ、その覗き見が連中にバレちゃった。」
「そこからは早かったよ。」
「僕はなぜか会社の金を横領したことになってクビ。」
「何を言っても信じてもらえなかった。」
「ただ、それでも僕は幹部連中の裏金が共礼会ってヤクザに流れているらしいことはつかんでた。」
「KJアートはその行き先のひとつでさ。」
「もしその金の流れを証明できれば、僕をハメた連中に仕返しができる。」
「僕はずっと前からあのビルを監視しててね。」
「初めて八神さんがKJアートに乗り込んでったときも見てたよ。」
「この間、一緒に仕事しないかった僕を誘ってくれたじゃない?」
「実はそのときも悪い話じゃないのかなって。」
「いつか組んでも損はないと思ってたんだ。」
「八神探偵事務所とはさ。」
「特にそっちの海藤さん。」
「さっきだってヤクザが何人いても全然負けそうになかったもんね。」
「見てて惚れ惚れしちゃったよ。」
「仲間とまではいかなくても持ちつ持たれつって感じでやるのは?」
「八神さんはモグラ、僕は共礼会。」
「追いかける相手は違っても、結構協力しあえそうだよね。」


八神が事務所に戻ると、城崎さおりから電話が来た。
「八神さん、あの、城崎です。」
「新谷先生がずっと電話に出ないんです。」
「今日八神さんと話して事務所出たきり。」
「共礼会に狙われてるかも知れないんですよね?」
「あの、八神さんからも電話してみてもらえませんか?」
「新谷先生、私からだと出てくれなくて。」


八神が電話をかけると、事務所のクローゼットから音がした。
クローゼットを開けると、両目を抉られた新谷の死体が入っていた。


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