ゲーム ネタバレストーリー まとめ

ゲームのストーリーを詳細にまとめています。続編をプレイする時などに役立てて下さい。このブログにはネタバレ要素が多く含まれています。

キングダムハーツ ユニオンクロス

「昔々、世界中の人々は暖かい光に照らされて平和に暮らしていた。」
「みんな光が大好きだったんだよ。」
「ところがみんなが光を欲しがって、やがて争いが始まった。」
「すると皆の心に闇が生まれたんだ。」
「闇はどんどん広がって沢山の心と光を飲み込んだのさ。」
「世界は闇に覆われて消えてしまったんだ。」
「けれど小さな光の欠片が残っていたのさ。」
「子供達の心の中にね。」
「子供達は光の欠片の力で消えてしまった世界を作り直したんだ。」
「それが私達の世界なんだよ。」


マスター・オブ・マスターはフラスコの中でチリシィという猫に似たドリームイーターを生み出した。
「世界は闇だった。」
「でも生まれ出た世界は光に包まれていてとても眩しかった。」
「僕をこの世界に生み出した主は光の中で微笑んで僕を見ていたんだ。」


予知者マスター・アヴァが率いるユニオン「ウルペウス」に所属する主人公にもチリシィが相棒として常に同行している。
「君は光を求めキーブレード使いとして選ばれた。」
「キーブレードは光の心の力。」
「この世界は闇に覆われつつある。」
「キーブレードで闇を払い、光を集めて世界を守るんだ。」
「闇の魔物はハートレスって言うんだけど、闇の存在であるハートレスは心を求めて世界を闇に染めるんだ。」
「それに対抗できるのがキーブレード。」
「だからそのキーブレードでハートレスから世界を守らなきゃいけないんだ。」
「まあそんな初心者のキーブレード使いの面倒をみるように僕がとあるお方から仰せつかってるんだ。」
「これから君のそばにいることになるチリシィ。今後色々教えるから安心して。」


キーブレードでハートレスを倒し、ルクスを集めているとマスター・アヴァがやって来た。
「キーブレードの力を引き出すことが出来たようだな。」
「弱きハートレスならそれで倒すことが出来よう。」
「しかし強大なハートレスを倒すには同じ志を持ち、同じ導きをたどる仲間と力を合わせなければならない。」
「君には繋がる力が必要だ。」
「我々と同様に闇を払うため、光を求める集団がいくつか存在する。」
「しかしそれらが我々と志を同じくしている訳ではない。」
「すなわち世界の平穏を目的とせず私欲の為に光を集める者もいるということだ。」
「光の守護者を隠れ蓑にする闇の探求者が誰なのか、君自信で見極めなくてはならない。」
マスター・アヴァは去っていった。


主人公はキーブレードを使いハートレスを倒して世界各地をまわる。
「キーブレード使いとして随分サマになってきたね。」
「見た目も立派になってきたよ。」
「だからそろそろ話しておこうと思うんだ。」
「僕を生み出した主が消える前、主は6人の弟子に新しい名前を与え、その内の5人に予知書を与えた。」
「予知者となった5人の弟子は未来が書かれたその予知書を読み、最後のページに書かれた一節に驚愕したらしい。」
「彼の地の大戦によって光は敗北し消滅する。」
「世界は永遠の闇に覆われることとなる。」
「5人の予知者は未来の世界を救うため予知書に秘められた力を使おうと考えた。」
「それが今君たちが使っている力。」
「メダルを媒介として未来の力で闇から光を守り、闇に覆われる未来を変えようとしている。」
「あとは知っての通り、その5人の予知者は目的が同じでも決して同じ志じゃない。」
「だから君自信は見失っちゃ駄目だよ。」


主人公のチリシィとマスター・アヴァが話をしている。
「キーブレード使いの活躍によって多くのルクスを回収してもそれ以上の勢いで闇の勢力は拡大している。」


チリシィが言う。
「やっぱり5つの光の勢力に裏切り者が?」


マスター・アヴァが言う。
「まだそう信じたくない。」


主人公が夜明けの街「デイブレイクタウン」でハートレスを倒しているとエフェメラという青年がやって来た。
「俺はレオパルドスのエフェメラ。」
「君は?」
主人公はウルペウスに所属していることを伝えた。
「そうか。じゃあライバルだな。」
「でも今日はミッションと無関係の単独行動だからあんまり警戒しなくていいよ。」
「うーん、これも何かの縁かな。」
「俺達が回収してるルクスはおとぎ話の世界の光じゃなく、それらの世界は立体映像のような幻で実際にはこの世界の光を回収してるんだ。」
「厳密に言えば今いる世界は全て地続きで無数の世界が存在している。」
「でもその世界を全て巡ってルクスを回収するのは不可能。」
「そこでこの場には存在しない世界を出現させ、実際には遠く離れた場所のルクスを回収しているというのが今の構造なんだ。」
「で、俺はその仕組みを調べようとしてて。」
「それら世界の幻の発生元が各ユニオンの予知者達の持つ予知書じゃないかと思ったんだ。」
「どうやらまだ重要性が分からないみたいだね。」
「まあともかく俺達は実は狭い空間でこの広い世界の光を回収してて、なぜかそれを何の疑問も持たずに奪い合い争ってる。」
「だから俺はその理由を調べてたんだけど、どうやら5つのユニオンは目的が違うみたいなんだ。」
「どうかな。ちょっと一緒に調べてみないか?」
主人公は頷いた。


主人公はエフェメラと一緒にデイブレイクタウンの街を調べ、時計塔の中に入る隠し通路を見つけた。
「ちょっと待って。」
「今日はやめとこう。時間が掛かりすぎた。」
「このまま侵入して探索するのも時間が掛かりそうだ。」
「ユニオンのミッションから長く離れてるとさすがに怪しまれる。」
「これで塔への侵入経路は確保出来たしまた次の機会に待ち合わせて調べないか?」
主人公は頷いた。
「よし、じゃあ俺達は今日からユニオンを越えた友達だ。」
「じゃあ明日の正午、広場で待ち合わせしよう。」


エフェメラと別れて自宅に帰った主人公にチリシィが話しかけてくる。
「そうか、友達が出来たんだね。」
「僕にはいないからそれがそんなにいいものなのか分からないけど。」
主人公はチリシィも友達であることを伝えた。
「え?そうか、友達か。エヘヘ。」


その夜、エフェメラは一人で時計塔の中に入っていった。
「ごめんな、主人公・・」


次の日の正午、主人公は広場に向かったがエフェメラは来なかった。
チリシィが言う。
「きっと何か事情が出来たんだよ。」
「友達が約束を守れない時はよっぽど大変なことがあったんだよ。」
「心配かも知れないけど信じてあげようよ。」
「君が悲しめば僕も悲しいよ。」
「だって僕も友達でしょ?」


主人公は再びルクスを回収する旅に出た。


噴水広場でマスター・アヴァとエフェメラが話をしている。
「あら?今日は何だか弱気ですね。」
「予知者様でも悩んだりする事あるんだ。」
「じゃ、予知書の秘密、教えてくれるんですか?」


マスター・アヴァが言う。
「それは駄目。」
「私が1番話しやすい予知者だからってからかってる?」
「まあいいけど。」
「でも君みたいにユニオンに縛られない仲間って考え方は間違ってないよ。」


エフェメラが言う。
「今日俺、他のユニオンの友達が出来たんです。」
「何か無口で変な奴なんですけどね。」
「明日また会う約束してて。」


マスター・アヴァが言う。
「友達と約束か。」
「じゃあ早く帰って休まないと。」


「はい。じゃあお先に失礼します。」
「よく分かんないけど元気だして下さいね。」
エフェメラは帰っていった。


一人になったマスター・アヴァが呟く。
「もしもの事があったら、君みたいにユニオンに縛られない子達に託そう。」
「タンポポの綿毛のように風に乗って遠くまで飛んでいって。」
「ダンデライオン。」


主人公が自宅で寝ていると、エフェメラの夢を見た。
「ごめん、ごめん。本当にごめんって。」
「どうしても来られない用事が出来ちゃってさ。」
「じゃあさ、今から一緒に行かない?」


主人公とエフェメラは時計塔の隠し通路にやって来た。
「この先だ。覚悟は出来てる?」
「やっぱり君にはまだ早かったかな?」
「待ってるよ、主人公。」


目を覚ました主人公にチリシィが言う。
「友達の夢を見たんだね。」
「え?塔に友達を探しに行く?」
「駄目だよ。」
「あそこは予知者様達だけの領域だし、今はタイミングが悪いよ。」
「詳しくは教えられないんだけど。」
「実は最近、各ユニオンのマスターである予知者様達の間でトラブルが起きてて、余計に今は近寄らない方がいいんだよ。」


主人公はチリシィの言うことを聞かず、塔の様子を見に行った。
「だから駄目だって。」
「全然聞いてないし・・」
「ちょっと!どこ行くの!」
主人公はエフェメラの事をユニオンの仲間に聞いてみた。
「ある予知者様がユニオンに関係なく優秀なキーブレード使いを集めてるって噂を聞いたわ。」
「確か狐の仮面の予知者様だったからアヴァ様じゃないかな。」
「最近広場でよく見かけるよ。」


広場にいたキーブレード使いに話を聞いてみる。
「エフェメラって銀髪の子でしょ?」
「アヴァ様と話してるのを見かけたなあ。」
「アヴァ様のことをよく知ってる友達が一人いるんだけど、今はミッションに出かけていて街を離れてるの。」
「確かアグラバーに向かったはずだわ。」
「いつ戻ってくるか分からないし、話が聞きたかったら行ってみた方が早いかもね。」


主人公はアグラバーに行き、キーブレード使いに話を聞いた。
「アヴァ様なら塔の近くでよく見かけるよ。」
「どうやって塔の中に入るのか僕は知らないけど、その辺りを捜してみたらどうかな。」


デイブレイクタウンに戻って塔の周辺を捜すとマスター・アヴァがいた。
「あなたはウルペウスの主人公ね。」
「どうして私を追ってきたの?」
主人公はエフェメラのことを話した。
「エフェメラ?」
「知ってるけどどうして私に?」
「そんな噂だけで私を捜していたの?」
主人公は夢の内容を話した。
「エフェメラが夢でここで待っていると。」
「そしてここは我ら予知者の領域。」
「エフェメラは最近トラブルを抱えている我らに何らか巻き込まれたと。」
「その中でも私が一番怪しいと思ったわけね。」
「いいね、君。」
「少し惜しいな。まだ詳しくは教えられないけど。」
マスター・アヴァはキーブレードを出現させて構えた。
「さあ、キーブレードを構えなさい。」
主人公はマスター・アヴァと手合わせをした。
「なかなかね。才能は感じるかな。」
「でも君は心に悲しみを抱えている。」
「悲しみはいずれ闇に繋がるわ。」
「その悲しみ、早く乗り越えて。」
「君にはいい子がついているみたいだからきっと大丈夫。」
「今日はこれで帰りなさい。」
「あと、ここには簡単に近寄っては駄目よ。」


主人公が帰った後、マスター・アヴァが呟く。
「そうか、無口な友達か。」


主人公は自宅に帰ってきた。
「今日は大変だったね。」
「まさか予知者様と戦うなんて驚いたよ。」


そこにマスター・アヴァがやって来る。
「私も。」
「本当ならあんなやり方はしないんだけどね。」
「エフェメラが夢の中から語りかけてきたのかな。」
「エフェメラは真実に近づいている。」
「アンチェインドという解放状態から別の空間にいて主人公に語りかけたんだと思う。」
「エフェメラと夢の中で繋がったのなら、主人公も別の空間に近づいているんだと思う。」
「進むかは自らの心に従うしかないけどね。」
「悪夢から守ってあげてね、チリシィ。」
「主人公が風に乗って飛べるように。」
マスター・アヴァは去っていった。


いつものようにルクスを回収し終えた主人公が噴水広場で休んでいるとスクルドという女性のキーブレード使いがやって来た。
「どうして争うのかな?」
「どのユニオンも目的は同じ光を守ること。」
「なのにいつの間にか他人より上に行きたい、他人より多くの光を集めたい、目的変わってるよね。」
「私はスクルド。」
「君は主人公だよね。よろしくね。」
「ところで君、エフェメラって知ってるよね。」
「私は彼と同じパーティーにいたんだ。」
「って言ってもキーブレード使いになってすぐの事だけど。」
「彼は変わった子で、しばらくしたある日パーティーから離れたの。」
「で、ここからが重要なんだけど、つい先日彼が夢に現れて君と行動してくれって。」
「彼がパーティーを離れてからも何度かすれ違うような事はあったけど挨拶程度しかなかったし、どうして私の夢に現れたのかも分からないの。」
「だから君と行動しろって言われてもどうしてなのか理由も分からない。」
「逆に君に聞けば何か分かるのかと思って来たんだけど。」


主人公はエフェメラが自分の夢にも現れた事をスクルドに伝えた。
「え?君の夢にも現れたの?」
「彼は何か言ってた?どんな夢だったの?」
夢の内容を話す主人公。
「そう、そんな事が。」
「待ってるよって言ったんだね。」
「君がエフェメラと行くはずだった場所にもう一度私と行ってみない?」
「エフェメラがわざわざ私に君と行動を共にしろって言ったのはきっとそういう事だと思う。」
「あともう一つ・・」
その時、大きな地響きが起きた。
「何んだろう・・私、行ってくる!」
主人公もスクルドのあとを追った。


地響きが起きた現場に行ってみると、ユニオン「ウルスス」を率いるマスター・アセッドとユニオン「レオパルドス」を率いるマスター・グウラが戦っていた。
それを見たスクルドが驚く。
「どうして・・どうして予知者様同士が戦ってるの?」
「やっぱりエフェメラが言ってた事は・・」
「さっき言いかけた事。」
「実はエフェメラが夢の中で最後にもう一言いってたの。」
「世界の終わりが近いって。」
「どういう事かは分からない。」
「でも終わりなんて予告なしに唐突に来るもんだよ。」
「エフェメラが消えた様に。」
「行こう。」
主人公とスクルドは時計塔の隠し通路に向かった。
時計台の下にある橋にやって来ると、黒いチリシィが現れた。
「やあ。」
「ルクスなんて結局争いの元なんだから僕に渡しておいた方がいいよ。」
「まあ、まだ君達が持っててもいいけど。」
「どうだい?僕の姿。」
「どうしてそんなに闇を嫌うの?」
「世界に昼と夜がある様に君達にも光と闇がある。」
「何を恐れてるんだい?」
「心の弱い人間は闇を恐れ闇にのまれる。」
「闇を受け入れ闇をコントロールしてこそ真の強さを手に入れる事が出来る。」
「世界の事実は誰かに教えられるものなんかじゃない。」
「自ら学ぶものさ。」
「僕のプレイヤーは身近にいる。」
「いずれ分かるよ。」
黒いチリシィは目の前から消えてしまった。


隠し通路までやって来た。
「ここがエフェメラと最後に会った場所?」
「きっとこの先に秘密があるのね。」


スクルドと一緒に塔の中に入り奥へ進むと予知者達の部屋があった。
「エフェメラはここまで来たのかな。」
「ここには何もないか・・」
「何だか肩透かしだったな。」
「エフェメラの夢は何を意味してたんだろう。」


そこにユニオン「ウニコルニス」を率いるマスター・イラがやって来た。
「何をしている。」
「チリシィ、お前が付いていながら何故ここに入ることを許した?」
「先日もここに侵入した者がいたが、彼が君達の友人なのか?」


スクルドが言う。
「彼を、エフェメラを知っているんですか?」


「彼が所属していたユニオンは我らウニコルニスとは相反する目的でルクスを回収していた。」
「彼が君に近寄ったのは我らのユニオンの情報を探るため。」
「彼にはもう会うことは出来ない。」
「彼には消えてもらった。」


スクルドが言う。
「許せない・・」


チリシィが言う。
「マスター・イラ様。」
「今日の一件は全て僕の責任です。」
「どうか二人を許して下さい。」


主人公が言う。
「マスター様、今日まで自分はこの世界のために光を回収しユニオンに尽くしてきました。」
「仲間だと思っている同士でも競い合ってきました。」
「それもこの世界の為なら仕方がないことだと、その意味を考えないようにしてきたんです。」
「でもそんな時、そんな単純な疑問を問いかけてくれた。」
「それがエフェメラです。」
「彼との出会いはほんの一瞬だったし約束も破られてそんなに楽しい思い出ではないけれど、心に大きく存在しています。」
「それはきっと彼が友達だからです。」
「そんな友達を奪われた。」
「この怒りと悲しみの感情が闇を意味する事であっても自分はどうしても抑えることが出来ません。」
「もしマスター様とキーブレードを交えたとしても自分が無事で済むとは思いません。」
「自分も消えてしまうかも知れません。」
「それでもきっとエフェメラがこの場にいたらこうするでしょう。」
「マスター・イラ、キーブレードを構えて下さい。」
主人公はマスター・イラと戦った。


マスター・イラが言う。
「怒りと悲しみに飲まれる事なくよく戦いましたね。」
マスター・イラはマスター・アヴァに姿を変えた。
「主人公、スクルド。」
「あなた達の心の強さを確かめさせてもらいました。」
「さっきまで戦っていたマスターも場所も私が作った幻影。」
「エフェメラが夢で告げた通り、もうすぐこの世界の終わりが来るでしょう。」
「もしこのまま世界の終わりに全員が巻き込まれれば、キーブレード使いはそこで途絶えます。」
「それは避けなければいけない。」
「私は自らの使命を遂行し始めました。」
「ユニオンの隔たり関係なく優秀なキーブレード使い達を後の世界に残す準備です。」
「この世界は終わりに向かっている。」
「エフェメラが疑問を感じ調べていたのは、ある意味それを感じはじめていたからでしょう。」
「彼は誰よりも早く真実に近づいた。」
「だからお願いをしたの。」
「私の代わりにダンデライオンを導く様に。」
「後の世界に残るキーブレード使い。それがダンデライオン。」
「世界の終わりに立ち会わない者達。」
「そのダンデライオンを組織するのが私の役目。」
「でも私は世界の終わりに立ち会わなければいけない。」
「だから私がいなくなった後、残った者達を導いてもらう為にエフェメラにはもう別の場所で待っていてもらう事にしました。」
「エフェメラは無事です。」
「この世界が終わるのはキーブレード使いの中に闇に飲まれた者がいるから。」
「黒いチリシィに出会ったと思うけど、あれがその証。」
「後の世界に闇の力を残さないように、私はあなた達キーブレード使いの心を揺さぶってわずかな闇に飲まれない者をダンデライオンとして選んでいる。」
「だからあなた達にもお願いしたいの。ダンデライオンに加わる事を。」


スクルドが言う。
「分かりました。」


主人公が聞く。
「そのダンデライオンに選ばれない大多数のキーブレード使い達はどうなってしまうんですか?」


マスター・アヴァが答える。
「この世界の最後、キーブレード戦争に向かうことになるわ。」
「それはもう避けられない。」


主人公が言う。
「ダンデライオンへの参加は考えさせて下さい。」


マスター・アヴァが言う。
「分かりました。強制はしません。」
「ただ混乱を起こさない様、この事は他言しないで下さい。」


主人公とスクルドは噴水広場に戻ってきた。
チリシィが言う。
「どうして参加を保留にしたの?」
「参加すればエフェメラ君にも会えたかもしれないのに。」


主人公が言う。
「エフェメラは大切な友達だよ。」
「でもこれまで一緒に戦ったキーブレード使いのみんなも大切な仲間だから。」


スクルドが言う。
「私の話、していい?」
「実は私がキーブレード使いになってパーティーを作っても誰も入ってくれなくてさ。」
「そんな時にエフェメラが入ってくれたの。」
「ずっと二人のパーティーだったんだけどね。」
「しばらくしてパーティーのメンバーも増え始めて、みんなで一緒にルクスを集める事に必死になってて。」
「エフェメラと二人で話す機会も減って、そんなある日、スクルドはもう大丈夫だって言って彼はパーティーを去って行ったの。」
「それからも私はパーティーのメンバーとルクスを集めることに夢中になってた。」
「でも気づくとパーティーのメンバーが減り始めてて。」
「結局また一人になってたんだよね。」
「エフェメラはきっとパーティーを去った後も私のことを心配してくれてたんだと思う。」
「だから君に会う様に言ってくれたんだと思う。」
「君は色々気づかせてくれた。」
「でも私はエフェメラに会ってお礼を言いたい。」
「だから参加したいって思った。」
「また会おうね。」
二人は握手をして別れた。


マスター・アヴァはダンデライオンのメンバーを噴水広場に集めた。
そこにはエフェメラとスクルドの姿もある。
「今日もまたこれまでの任務に準えた訓練になります。」
「既に体験した事の追体験になりますが、それはまるで夢の中の世界。」
「こことは別の空間での。」
「あなた達は希望です。」
「いずれ争いが始まる。」
「同じ光を守護したいと願うもの同士が、ただユニオンの隔たりというだけで競い合った友人と敵同士になってしまう。」
「私もどこまで正しい導きを続けられるか分かりません。」
「自らの闇に飲まれ、争いの中心でキーブレードを振るうかも知れません。」
「でもこの戦いに勝者はいない。」
「全てが消滅するだけです。」
「だけどあなた達は希望の種として残って欲しい。」
「もしこの先その争いが起きた時、あなた達だけは争いに参加せず外の世界に旅立って下さい。」
「日々こうして別の訓練を繰り返すのはその為です。」
「あなた達にキーブレード使いの未来を、光の世界を託します。」
「鍵が導く心のままに。」


マスター・アヴァはマスタ・オブ・マスターとのやりとりを思い出した。
「予知書に記された結末は避けられない未来。」
「世界は闇に覆われて消えてしまうだろう。」
「お前に与える使命が、あるいは消滅してしまった世界を再生する希望になるかも知れないな。」
「争いに巻き込まれないように各ユニオンの隔たりを超え優秀なキーブレード使いを選び、自らのユニオンとは別に組織してくれ。」
「そしてタンポポの綿毛の様に外の世界へと旅立たせるんだ。」
「光の守護者を途絶えさせてはならない。」
「アヴァ、お前にしか出来ない事だよ。」
「で、その後なんだけど、ダンデライオンだけになってもユニオンを維持できる5人を選ぶんだ。」
「ユニオンが必要ないなら君達5人を否定する事にもなるだろ?」
「そしてユニオンリーダー達5人以外には、もし全てが消滅してしまってもその事は秘密にするんだ。」
「悲劇の記憶は先の時代に必要はない。」
「こことは別の世界で悲劇のない時間を追体験してもらうんだ。」
「出来るって事になってるから大丈夫。」
マスタ・オブ・マスターはマスター・アヴァに1枚のメモを渡した。
「まずはこの5人。」
「そこに書かれた5人をダンデライオンに加え、来るべきタイミングでリーダーに任命して。」
一人だけ赤で丸印がつけられている。
「その印をつけた子にだけ、いずれ予知書を引き継いで欲しいんだ。」
「予知書によって色んな先の世界を今の世界に形成してるからさ。」
「それがないと追体験出来なくなっちゃうでしょ。」
「その赤丸の子以外が見ちゃうと危険かも。」
「だからその子にだけ秘密で渡さないといけないよ。」


マスター・アヴァがエフェメラ呼び出して話をしている。
「あなたを含め5人、ダンデライオンから選びます。」
「その5人がリーダーとなり、今後各ユニオンを率いて皆を導いて下さい。」
「5人いるんだから少しは気が楽でしょう。」
「もう消滅は避けられません。」
「私達5人のマスターも恐らく・・」


エフェメラが言う。
「いきなりユニオンマスターなんて大役、無理ですよ。」
「しかも消滅とか冗談キツいですって。」


マスター・アヴァが言う。
「時間がありません。」
「これからはあなた達だけになるんです。」
「誰かが皆をまとめていかなければ光が途絶えてしまいます。」


「5人ですか・・」
マスター・アヴァはエフェメラに掟書を手渡した。
「あなた達5人が今後ユニオンを率いる上で必ず守らなければいけない掟が書かれています。」


エフェメラが言う。
「どんどん話が進んでますけど、まだ消滅とかリーダーとか何も納得してませんからね。」


マスター・アヴァが言う。
「納得できなくても聞いておいて下さい。」
「あなたに今お願いしている他の世界での準備。」
「もうすぐそこにダンデライオン全員に移動してもらいます。」
「そこではここと同じ経験を追体験してもらいますが、消滅の未来のない世界が続きます。」
「上書きということになります。」
「ダンデライオンのメンバーには消滅の記憶を消してもらい、世界を先の時代に繋いでもらわないといけません。」
「悲劇の記憶は必要ありません。」
「皆に悲しみを引きずって欲しくはないのです。」
「だからこのことはあなた達5人の秘密です。」
「各メンバーのチリシィに協力してもらって下さい。」


エフェメラが言う。
「例え悲劇でもそれを胸に先に進むべきでは?」


「さすがエフェメラ君だね。」
「でもその最後の瞬間に立ち会ってもそう思えるかな?」


「これは5人だけの秘密の話。」
「全て終わってから彼の地で待っていて下さい。」
「あなたの他に4人現れ、5人が揃います。」


ダンデライオンのメンバーにストレリチアという髪色がピンクの女性がいる。
―私にはお気に入りの場所がある。
―私はストレリチア。
―噴水広場を見下ろせる屋根の上は私だけの場所。
―この2年、闇の魔物を倒し光を守護する日々。
―出会いと別れもいくつか経験した。
―パーティーメンバーも何度か入れ替わり、初期から一緒にいる仲間も少なくなった。
―でも私にも長く時間を共有する友人はいる。
―主人公を初めて見かけたのは噴水広場だった。
―あなたはずっと誰かを待っているみたいで私が任務に出て戻っても誰かを待ち続けてたみたいだけど、結局来なくてチリシィを抱えて涙ぐんでた。
―それからたまにあなたを見かけるようになって、多分それまでもみかけていたんだろうけど、あの噴水広場で見かけて以来あなたを視界に意識するようになったんだと思う。
―何度かあなたを見かけているうちに話してみたいなって思ったんだけど、なかなか勇気が出なくて。
―みんなが疑問を感じず日々を過ごしている中、あなたはみんなと見てるものが違うと言うか、何か特別に見えたんだ。
―あなたは私を知らないけど、私はあなたを友人の様に感じていた。
―いつか話せる日が来るといいなって思ってる。


マスター・アヴァがストレリチアの所にやって来た。
「ストレリチア。」
「あなたはダンデライオンですね。」
「急ですがお願いがあるのです。」
マスター・アヴァはストレリチアに掟書を手渡した。
「落ち着いて聞いてほしいのですが、間もなくこの世界は・・」


その夜、ストレリチアは自室のベッドでマスター・アヴァに渡さた掟書を読んだ。
「ユニオンリーダー・・」
「私にそんな役目が務まるのかな・・」
「それに世界がもうすぐ消滅するなんて・・」
「ダンデライオン以外のキーブレード使いは助からないってことだよね。」


ストレリチアのチリシィが言う。
「そうなるよね。」
「でもストレリチアと交流があるキーブレード使いはみんなダンデライオンに所属してるよね。」


「うん、でも交流がない人は見捨てていいわけじゃないよ。」


チリシィが言う。
「そうだけど、もしみんなにそれを突然伝えたところで世界が消滅します、予知者様達もいなくなります、なんて誰も信じてくれないよ。」


「そうだよね・・」
「あ!」
「主人公はダンデライオンじゃない!」
「伝えなきゃ!」
「・・でもどうやって?」
「・・夜だし。」
「どうしよう・・」
「そうだ!早く起きて噴水広場で待とう!」
「ダンデライオンに勧誘してみる。」
「消滅のことは話さない。」
「おやすみ。」


次の日の朝、ストレリチアは噴水広場で主人公を待っていた。
ストレリチアのチリシィが言う。
「あっちの方で主人公を見たよ。」


ストレリチアはチリシィと一緒に空き家に入った。
「この前の通りで見たなら後はこの空き家くらいしかないけど。」
「こんにちはー。誰かいますかー。」
誰もいないようだ。
「また噴水広場に戻ろうか・・」


その時、ストレリチアは背後から何者かに襲われた。
倒れ込むストレリチアとチリシィ。
ストレリチアを襲った何者かは掟書を奪い去った。
「チリシィごめん・・守れなくて・・」
「・・やっぱり・・主人公と話したかったな・・」
ストレリチアの身体は消滅してしまった。


デイブレイクタウンでルシュの姿を見つけるマスター・アヴァ。
ルシュはマスター・オブ・マスターからノーネームというキーブレードと絶対開けてはいけない黒い箱を託された弟子の一人だ。
「やっと見つけたわ、ルシュ。」
「ずっと何をしてたの?」


ルシュが言う。
「アヴァか・・」
「見てた。」
「俺の使命だから。」


「あなたはどんな使命を?」


ルシュが言う。
「見てろと。」
「ただ見てろと。」
「俺は5人と違い予知書を授からなかった代わりに、その予知に書かれた先の時代へと進まなくてはいけない。」
「この世界の終わりを見届けて旅立つんだ。」
「アヴァはキーブレード戦争を回避させたいんだろ?」
「だからマスターと同じく姿を消した俺を捜していた。」
「マスターの行方を知るために。」
「でもそれは無理だよ。」
「この世界は終わるようになってる。」
「そういう話にね。」


マスター・アヴァが聞く。
「ルシュ、何を知っているの?」


「欠落した一片・・」
「アヴァ達の知らない予知。」
「マスターの意思。」


マスター・アヴァが言う。
「マスターの意思?」
「こうなったのも、世界の終わりもマスターの意思だと言うの?」


「俺の使命は秘密を受け継ぐこと。」
「その為には欠落した一片どおりにこの世界を進ませないといけない。」
「マスターの意思は世界の行く末じゃない。」
「俺が使命を果たすために行動し、見ている。」


マスター・アヴァが聞く。
「欠落した一片には何が書かれていたの?」
「ルシュ、あなたがこうなるようにしていたの?」
「あなたが裏切り者なの?」


ルシュは裏切り者の名前をアヴァに告げた。
「そんな・・」


ルシュが言う。
「そうさ、それが裏切り者の正体。」
「君にこの真実が受け止められるのか?」


「それが真実だなんて信じられない。」


ルシュが言う。
「だから運命に従い戦うしかないんだよ。」
「もしも別の答えがあるとしても、それは戦いの果てにある。」
「マスターは世界の行く末より我ら弟子が鍵にどう導かれていくのかを知りたいんじゃないかな?」


「世界より私達?」
「そんなはずない!」
「ルシュ、あなたはマスターの意思を利用している。」
「マスターがそんなことを望むはずない!」
マスター・アヴァはルシュにキーブレードを振り下ろした。
ルシュのキーブレード「ノーネーム」とアヴァのキーブレードが激しくぶつかり合い、その衝撃で時計塔の鐘が鳴り響く。


数日後―
キーブレード戦争が終わった後、主人公は力尽き倒れ込んでいた。
そこにエフェメラがやって来る。
「約束・・破った・・」


エフェメラが言う。
「やっと会えたな。」


「遅い・・」


エフェメラが言う。
「ああ、悪かった。」


全てが終わった後、謎の荒野で1人で待っているエフェメラ。
しばらくするとスクルドが現れた。
「スクルド・・君か。」


スクルドが言う。
「不服?」
「私はエフェメラはいると思ってたよ。」


エフェメラが言う。
「いや、大戦の直後、君とは一度ここに来ただろ?」
「まさか君もリーダーに選ばれてると思わなかったよ。」


スクルドが言う。
「ここに5人が揃う刻がくるまでは選ばれていることは秘密の話だったからね。」
「それよりあと3人は誰なんだろうね。」


エフェメラが言う。
「さあ。」
「スクルドがここに来るまではアヴァ様の話も半信半疑だったし。」
「誰が来るんだろうとか考えもしなかったよ。」
「あ、誰か来た。」


スクルドが言う。
「君で3人目ね。」
「私はスクルド。よろしくね。」


やって来たのはヴェントゥスという青年だった。
「あ、うん。よろしく。」


エフェメラが聞く。
「君もアヴァ様から?」


ヴェントゥスが言う。
「うん、全て終わったらここに来るようにって。」
「5人の1人になって欲しいからって。」


「そうか。」
「俺はエフェメラ。よろしくな。」


「俺はヴェントゥス。ヴェンでいいよ。」
「そうか、2人は知り合いなんだね。」
「俺はずっと野良だったから羨ましいな。」


スクルドが言う。
「私も同じようなものだよ。結局ね。」


ヴェントゥスが言う。
「でも俺なんて特別何か凄い訳でもないし、ランキングでも上位に入ったことないのにどうして選ばれたのか分からないんだよね。」


スクルドが言う。
「それはアヴァ様に何か考えがあったんじゃないかな。」


「うーん、アヴァ様ともそんなに話したことないし、実際どういう方なのか分からないんだよね。」
「やっぱり仲間って羨ましいな。」


エフェメラが言う。
「何言ってんだよ。ヴェンも仲間だろ。」


「うん!」
3人で笑い合っていると、4人目のメンバーがやって来た。
「仲間か、いいねー。」
やって来たのはというブレインという青年だった。
「俺はブレイン、よろしくな。」
「俺が最後かと思ったんだけどな。」
「もっとマイペースな奴がいるのか。」
「で、5人のリーダーは君なの?」


エフェメラが言う。
「いやあ、そんなの決まってないよ。」
「とりあえず5人揃わないと。」


ブレインが言う。
「なるほど。」
「ところであの掟ってやつは絶対なのかな?」


スクルドが言う。
「それは掟だからね。」


「ふーん、スクルドは真面目な子なんだねえ。」
「まるでアヴァ様だ。」


ヴェントゥスが言う。
「アヴァ様ってスクルドに似てるんだ!」


スクルドが言う。
「でもさ、本当に信用しちゃっていいのかな?」
「例えば消滅の事実は5人だけの秘密ってやつとか、皆に嘘をつくことになるんだけど。」


エフェメラが言う。
「秘密だ。」
「あの悲劇を思い出させたくない。」
「掟に従おう。」


「りょーかい。」
「俺はエフェメラを信じるよ。」


5人目はラーリアムという青年だった。
ラーリアムの髪色はピンクだ。
「待たせたかい?」
「ああ、もうみんな揃ってるのか。」
「みんな、待たせてしまって申し訳ない。」
「ちょっと探し物をしていてね。」
「僕はラーリアム。よろしく。」


その後―
スクルドが主人公のチリシィと話をしている。
そばにはエフェメラもいる。
「そう、けっこう夢で見てるんだね。」


チリシィが言う。
「とても辛そうにうなされてて。」
「最初は嘘は嫌だなあって思ったけど、やっぱり忘れさせてあげたい。」


スクルドが言う。
「辛いだろうけどよろしくね、チリシィ。」


チリシィが言う。
「うん、主人公は僕の親友だから。」


エフェメラが言う。
「その為にもさっきの件、頼んだよ。チリシィ。」


チリシィが言う。
「うん、ユニオンクロスだよね?」


スクルドが言う。
「うん、きっと心の奥にある悲しみの記憶は仲間達と冒険することで薄れていくはずだから。」


エフェメラが言う。
「それにこの世界には前の世界と違う闇を感じる。」
「その正体は以前の闇より複雑でまだ分からないけど大きな意思を感じる。」


スクルドが言う。
「そっちは私達に任せて。」
「チリシィは主人公をよろしくね。」
「ユニオンクロスの説明、お願いね。」


チリシィは主人公のもとに帰っていった。


スクルドが言う。
「どうしてチリシィに話したの?」
「不安にさせるだけじゃない。」


エフェメラが言う。
「ああ、ごめん。」
「でも彼らも無関係じゃない。」
「この新しい世界に移って元の世界と違う分岐が起きる度に妙な胸騒ぎが増えていくんだ。」
「今回のユニオンクロスもまた違った悪意、闇を感じた。」


スクルドが言う。
「でもユニオンクロスの開始も掟にあったことでしょ?」


エフェメラが言う。
「うん。鍵が導く心のままに・・か。」


数日後―
5人のリーダーが揃い、皆で予知者達の部屋にやって来た。
ブレインが言う。
「ここがマスター様の部屋かー。」
「これからは俺らが使っていい部屋なんでしょ?」


エフェメラが言う。
「そうだな。」


ラーリアムが言う。
「で、何から始める?」


スクルドが言う。
「ユニオンの振り分けとか?」


エフェメラが言う。
「それなんだけど、しばらくはそれぞれのユニオンを振り分けないでいたいんだけど。」
「今ある5つのユニオンはそのままで、各ユニオンに関しては5人で協議して決めたい。」


スクルドが言う。
「先の様な争いを避けるのね。」


「ああ。自分のユニオンだけに縛られずにみんなで考えたいんだ。」


ブレインが言う。
「掟には振り分けるように書かれてるけどいいの?」


ラーリアムが言う。
「でもいつからとは書かれていない。」


「なるほど。」
「長めのしばらくになりそうだねー。」


ヴェントゥスが言う。
「俺はみんなと同じでいいよ。」


エフェメラが言う。
「みんなに合わせなくてもいいんだよ?」


「いきなりどこかのユニオン任されても自信ないし、みんなで決めた方が安心だから。」


ブレインが言う。
「そんな弱気じゃ困るなー。」


ラーリアムが言う。
「ヴェン君は優しいんだよ。」


エフェメラが言う。
「じゃあ決まりで。」
「あと混乱は避けたいからしばらく予知者様達は健在ってことにしよう。」


ラーリアムが言う。
「そうだね。今みんなは予定されていた通りキーブレード使いになってからを最初から追体験中だろうから、それが終わる頃にまたどうするか話し合えばいいんじゃないかな。」


「ところでさあ、俺達の初仕事、これにしない?」
マスタ・オブ・マスターの机の上にあった本を持ってくるブレイン。
「俺達の就任祝いにみんなにスピリットっていうパートナーを解禁しよう。」
「チリシィほどの能力はないけど、スピリットは悪夢を食べる生き物なんだ。」


エフェメラは主人公が毎晩、悪夢を見ていることを思い出す。
「悲劇を思い出させないため・・」


ブレインが言う。
「悪夢を食べる生き物をみんなのパートナーとして育ててもらえば悲劇はいずれ消えていく。」
「そう思うんだ。」


エフェメラとスクルドが頷く。
「いいかも。」


ラーリアムが言う。
「でもそんなのどうやって創るんだい?」


ブレインがマスタ・オブ・マスターの本を見ながら言う。
「スピリットの素となるアーキタイプから創れるとは思うんだけど。」
「そうだな・・他にも必要な物があるんだけど、俺は準備するからみんなで集めて来てくれる?」


エフェメラ、スクルド、ヴェントゥスの3人で必要な物を集め、ブレインとラーリアムでスピリット創作の準備をした。


眠れる森の美女の世界「エンチャンテッド・ドミニオン」でマレフィセントが悔しがっている。
「なぜだ!どうして結末を変えられない!」


謎の男が現れた。
「あんたが先の時代から来ることを知っていたからだよ、マレフィセント。」
「俺はあえて言うなら闇だ。」
「あんたの魂胆は単純だ、マレフィセント。」
「過去の世界で敗北の筋書きを書き換え、7つの純粋な光の心セブンハートを集めたかった。」
「だが歴史の改ざんは無知な者が容易に触れてはいけない。」
「自分が存在する過去には時間を遡ることが出来る。」
「その為には一度心と体を分ける必要がある。」
「これが時間移動のルールだ。」
「あんたはうまく操っていたと思っていた少年にその身をキーブレードで貫かれた時に思った。」
「かつて老キーブレード使いから教わった時間を超える方法が使えるんじゃないかと。」
「その方法を使い、あんたが過去に来ることもマスターは当然知っていた。」
「だからキーブレード戦争以前の現実世界にはエンチャンテッド・ドミニオンの世界を構成しなかった。」
「キーブレード戦争以前、キーブレード使い達は予知書から取り出された未来の光の世界で闇の魔物を倒して光を集めていた。」
「キーブレード戦争後マスターと予知者は消え、残ったキーブレード使い達の悲しみの記憶を追体験という名目で上書きすることになっていた。」
「しかしマスターと予知者なき後、予知書から世界は取り出せない。」
「そこで事前にデータの中に世界を構成し直しておいた。」
「現実世界に構成しなかった世界を含めてね。」
「そう、あんたが来たのは現実の世界線上じゃない。」
「ここは決まった筋書きが用意されたデータの世界。」
「上書きは出来ないように鍵が掛けられている。」


マレフィセントが言う。
「私の力を恐れ、現実世界じゃなく隔離された空間に閉じ込めるように罠を張った訳だね?」


「察しがいいな。」
「だが恐れたのはあんたの力じゃない。」
「未来の時代を知るあんたの記憶だ。」
「だからデータであってもセブンハートの世界を一つ省いた。」
「その世界で起きることを記憶として未来に持ち帰られては困るからな。」


マレフィセントが言う。
「ふん!で、どうする気だい?」
「このままデータの世界に閉じ込めておく気かい?」


謎の男が言う。
「それは困る。」
「あんたには元の時代に帰ってもらわないとな。」


「でも未来に向けては時間を超えられないんだろう?」


謎の男が言う。
「方法はある・・」


エフェメラがスクルド、ヴェントゥス、ブレインを予知者達の部屋に呼び出した。
「どうしたの?」
「今日はなんの話?」
ブレインが言う。
「目を通さないといけない本が多くて忙しいんだ。」


「ああ、なるべく早く終わらせよう。」


ヴェントゥスが言う。
「ラーリアムがいないね。」


ブレインが言う。
「あ、ラーリアムは欠席。」
「どんな議題だろうとエフェメラに賛成だってさ。」
「そう言付かってる。」
「信頼されてるねえ、リーダー。」


エフェメラが言う。
「みんながリーダーだよ。」
「出来れば5人で決めたいけど。」
「ユニオンリーダーに選ばれた時この掟の書をみんなも渡されたと思うんだけど、ここに書かれているシフトプライドに関してなんだ。」


ブレインが言う。
「キーブレード使い同士の戦いでしょ?」
「何か問題?」
「どうせ試合みたいなもんでしょ?」
「レクリエーションは必要だと思うけど。」
「それにほら、掟だし。」


ヴェントゥスが言う。
「俺は反対。」
「だって試合でも仲間同士がキーブレードを向け合うなんて俺は嫌だよ。」


スクルドが言う。
「私も反対。」
「危険な予感しかしないわ。」


ブレインが言う。
「これで2対1。エフェメラ次第だね。」


エフェメラが言う。
「俺は・・俺は掟に従おうと思う。」


「ラーリアムも賛成ってことで、これで解散だね。」
ブレインが帰ろうとする。


「ちょっと待ってくれ、ブレイン。」
「掟には従う。」
「けどキーブレード同士の戦いはさせない。」
「キーブレード戦争後、追体験と称してめぐる世界は全てデータ上に再現された別の空間。」
「その際、自分たちもデータ化されてその世界に入っている。」
「ということは個々のデータも記録されているはずだ。」
「対戦相手は記録されているデータ上のキーブレード使いと戦う。」
「これなら心と心の衝突は起こさずに済む。」


ブレインが言う。
「掟通り、キーブレード使い同士の試合も実行できるってことだね?」
「それにしてもよくそんな名案思いついたね。」
「エフェメラらしくないな。」


「ひどいなー。」
「でもまあ、これはラーリアムのお陰なんだ。」
「数日前、俺がシフトプライドについて悩んでいるとラーリアムがやって来て、もっと楽に考えたほうがいいってこの案を教えてくれたんだ。」
「ラーリアムには捜している人がいて、ダンデライオンに参加してるはずなんだけど見かけなくてデータを探してみるって言ってた。」
「手伝おうかって言ったんだけど、個人的なことだからいいって断られた。」
「自分で何とかするって。」


ブレインが言う。
「あまり触れてほしくなさそうだし詮索はやめとこう。」
「ラーリアムから相談があるまでは。」


「まあそういう訳でラーリアムのお陰で思いついたことだし、ラーリアムにはいて欲しかったんだけどな。」


その頃、ラーリアムはデイブレイクタウンの街なかでエルレナというキーブレード使いの女性と話をしていた。
「君がエルレナ?」


「あ、はい。」


ラーリアムが言う。
「妹のことを・・ストレリチアのことを聞きたいんだ。」


「ストレリチアが行方不明?」


ラーリアムが言う。
「僕にも多くを語らない妹だったけど君とは何度か同じパーティになったみたいで。」
「唯一名前を聞いたことがあったから何か知ってるんじゃないかと思って。」


エルレナが言う。
「私もあまり知らないんです。」
「ストレリチアは一人でいることが多くて。」
「友達って訳でもなかったし、会話もミッションに関することだけで。」


「そうか・・」
「妹がダンデライオンへの参加を躊躇していた頃、何とか参加するように説得したんだけどそれ以降しばらく会えてないまま姿を見なくてね。」


エルレナが言う。
「んー・・」
「たまに見かけても誰かを待ってるみたいで声は掛けなかったんですよね。」


「誰かを?」


エルレナが頷く。
「噴水広場の屋根の上でよく見かけましたよ。」
「でもそれも結構前になりますね。」
「アヴァ様が演説した頃があったじゃないですか。」
「このままだとユニオン同士の戦いになるって。」
「結局何も起こらなかったですけど、それくらいの時期ですね。」


ラーリアムが考える。
「何も起こらなかった?これが上書き?」
「憶えていないようだけど、キーブレード戦争前か・・」
「まさかあの戦いに参加してしまったんじゃ・・」


「妹さん想いなんですね。」
「何か力になれればいいんですが・・」
「あ、もしかしたら!」
「チリシィー!」
エルレナは自分のチリシィを呼んだ。
「あなたストレリチアのチリシィと仲良くしてなかった?」


チリシィが言う。
「あー、してたしてた。」


ラーリアムが聞く。
「そのチリシィからストレリチアのことを何か聞かなかったか?」


「何かって・・」
「どうしてユニオンリーダーが?」


エルレナが言う。
「彼はラーリアム。ストレリチアのお兄さんよ。」
「ストレリチアがいなくなったの。」
「彼女について何か聞いてなかった?」


「うーん・・」
「最後に会った時、誰か捜してたなあ・・」
「ストレリチアは名前も知らない誰かがずっと気になってたみたいなんだ。」
「すごく無口な人らしいんだけど、ダンデライオンにどうしても誘いたいって。」


ラーリアムが聞く。
「最後に会ったのは鐘のあと?前?」


「鐘?」
「ああ、そうだね。」
「前だったかな。」


「そうか・・」
ラーリアムが考える。
「やはりキーブレード戦争直前で足取りは途絶えてる。」
「ストレリチアが気にしてた誰かが鍵か・・」


「そう言えば最後に会ったのもこの辺りだったかなあ。」
「話してる最中、その家に入っていく人達を見てストレリチアのところに慌てて戻っていったんだ。」
「それから少ししてユニオンリーダーが発表されたけど、その時の一人はスクルドさんだったね。」


「スクルド?」


エルレナが言う。
「何か手掛かりになりそうですか?」


「うん、そうだね。」
「二人ともありがとう。」
「また何か思い出したら聞かせてもらっていいかな?」
「ではまた。」
ラーリアムは帰っていった。


エルレナが空き家に入ろうとしている。
「その家なんでしょ?」
「何か手掛かりがあるかも知れない。」


ラーリアムが予知者達の部屋に帰ってきた。
「ちょうど良かった。」
「ちょっとスクルドに聞きたい事があるんだ。」
ラーリアムはスクルドにストレリチアの事を聞くが、スクルドは何も知らないと答えた。
「そうか・・」
「お人好しな子だったから気になる人を追ってあの戦いに参加してしまったのかもしれないな。」


その話を聞いていたブレインが近づいてきた。
「いいかな?」
「妹さんの気になる人だけど、ダンデライオンに誘いたいってことは鐘が鳴るまでダンデライオンに参加してなかったのは確実。」
「逆に言えば参加に躊躇していたはずの妹さんはダンデライオンに参加していた。」
「となると噴水広場でのアヴァ様の演説、あの時点でダンデライオンのメンバーならその気になる人もいたはずだし妹さんも見落とすはずはない。」
「そうなると気になる人はキーブレード戦争に参加した可能性は高いだろうね。」
「そしてなぜかダンデライオンの参加に躊躇していたはずの妹さんはその人をダンデライオンに参加させたがっていた。」
「不思議だね。」


エフェメラが言う。
「今のブレインの話を聞いてて思い当たる人がいるんだけど。」
「無口でダンデライオンに参加しなかった。」
「俺の友達、主人公だ。」


主人公が噴水広場にいるとエフェメラがやって来た。
「やあ、久しぶり!」
「あれからずっと忙しくてなかなか会いに来られなかったんだけど、ミッションの方は相変わらず頑張ってるみたいだね。」


主人公のチリシィが言う。
「エフェメラこそ。」
「ユニオンリーダーになって忙しいでしょ?」


「まあバタバタはしてるかな。」
「でもスクルドがいてくれて助かってるよ。」


チリシィが言う。
「そんなに忙しいのにどうしたんです?」


「ちょっと主人公に会いたいって人がいて。」
「ユニオンリーダーの5人は知ってるよね?」


ラーリアムがやって来た。
「はじめまして。僕はラーリアム。」
「エフェメラ君と同じユニオンリーダーなんだ。」
「君に聞きたい事があって。いいかな?」
ラーリアムは主人公にストレリチアの事を知らないかと聞くが、主人公は知らないと答えた。


エフェメラが言う。
「やっぱり心当たりないか・・」


「でもこれでハッキリしたことがある。」
「じゃあ僕はこれで失礼するよ。」
「ちょっと用があってね。」
「主人公さん、今日はありがとう。」
「君にはよく分からないかもしれないけどストレリチアのこと、憶えててあげてほしいな。」
主人公が頷くとラーリアムは帰っていった。


エフェメラが言う。
「俺は今日、主人公と過ごすよ。」
主人公はエフェメラと一緒にデイブレイクタウンを巡った。
「いやー、久しぶりに羽を伸ばせたよ。」
「ありがとう、主人公。」
「たまにはこういうのも大事だな。」


主人公が言う。
「忙しいだろうけどまた遊びに来てよ、エフェメラ。」


「ああ。」
「じゃあそろそろ帰るよ。」
その時、主人公とエフェメラは時計塔の上空に巨大な渦のようなものを見つけた。
「なんだ?あれは。行こう!」
主人公とエフェメラは時計塔に向かって走っていった。


ラーリアムはエルレナに呼び出されていた。
「あ、呼び出しちゃってすみません。」
「実は私達、気づいたことがあって。」
「あの後、その家に行ってみたんです。」
「薄暗くて、気味悪くて。」
「そしたら突然ストレリチアの残像が見えたんです。」


その話を聞いたラーリアムは急いで空き家に入った。
「ストレリチア!!」
しかし誰もいない。
エルレナも入ってきた。
「私達も何度か出入りしてみたんですが、その後は現れなくて。」
エルレナのチリシィが言う。
「それと最後にストレリチアのチリシィと話した時、もう一つ聞いてたのを思い出したんだ。」
「名前も知らない気になる人のことを。」
「どうしてダンデライオンに誘うか聞いたんだけど、理由はまだ言えないって言ってた。」
「けどストレリチアはその人をこのあと起きる大きな戦いから助けたいって。」
「この話をしている時に、スクルドとその人がこの空き家に入るのを見かけたんだ。」
「そしたらストレリチアのチリシィは急いでストレリチアの所に戻らないとって言って行っちゃったんだ。」


ラーリアムが言う。
「このあと起きる大きな戦いから・・確かにそう言ったんだね?」


「はい。」


エルレナが言う。
「アヴァ様が演説で言っていたやつですよね。」
「結局そんなの起きなかったのに変ですよね。」


ラーリアムが考える。
「ストレリチアはキーブレード戦争を確信していた?」
「なぜだ?」
「ブレインなら何か解き明かせるのか?」


予知者達の部屋でヴェントゥスとスクルド、ブレインが話をしている。
「どうしたんだ?ヴェン。」


「いや、ブレインってずっと本読んでるけど何か調べてることでもあるのかなって。」


スクルドが言う。
「そうだね、エフェメラもかなり好奇心旺盛だと思ってたけどブレインはそれ以上だよね。」


ブレインが言う。
「俺には目的があるんだ。」
「今はまだ滅びの運命をたどってる。」
「俺はそれを書き換える。」
「この世界は決められた滅びの道を進んでるんだ。」
「キーブレード戦争の記憶を上書きしたところでそれは変わらない。」
「俺はその運命のプログラムを書き換えるウィルスになるのさ。」


ブレインがいなくなった後、ヴェントゥスとスクルドの2人で話をする。
「さっきのブレインの話、どう思う?」


スクルドが言う。
「ブレインは頭がいいから私達より色々詳しいと思うんだけど、ダンデライオンの結成が滅びの運命だったらわざわざキーブレード戦争を回避させた意味が分からないわ。」


ヴェントゥスが言う。
「そうだよね。」
「エフェメラにも話した方がいいよね。」


「もちろんそのつもりだけど・・」
その時、マスタ・オブ・マスターとマスター・アヴァの幻影が出現した。
「そこに書かれた・・5人・・ダンデライオンに・・リーダーに・・して・・」
「この赤で・・丸・・いるのは?」
「うん、その子・・いずれ予知・・引き継いでほしいんだ・・」
「予知・・色んな先の世界を・・してるからさ・・」
「それが・・追・・出来なくなっちゃう・・」
ここで幻影が消えた。


「何なの?これ。」


ヴェントゥスが言う。
「ブレインはまだ塔の中にいるよね。」


「うん、管理室に向かったはずよ。」


「呼んでくる!」
ヴェントゥスはブレインを呼びに管理室に向かった。


ブレインは管理室の前室にある時計塔の歯車に歪みがあることに気づく。
「始まってたか・・」


主人公とエフェメラは時計塔をのぼり管理室の前までやって来た。
ヴェントゥスもやって来る。
「ああ、エフェメラ!」
「円卓の部屋にいたんだけど、突然アヴァ様みたいな姿が現れて。」


主人公をヴェントゥスに紹介するエフェメラ。
「俺の友達だ。」


「あ、君がそうなんだね。」
「あ、それで、こういうことはブレインに聞いた方がいいんじゃないかと思って。」


時計塔の歯車に歪みがますますひどくなっている。
「管理室でも異常が起きてるのかも知れない。」
「行ってみよう。」
エフェメラがキーブレードで管理室の鍵を開け、3人で中に入った。


管理室には巨大なコンピューターがあり、そこにブレインが座っていた。
「ブレイン!」


ブレインが振り向く。
「エフェメラ!ヴェン!」
「・・と、誰?」


エフェメラが言う。
「主人公、俺の友達だ。」
「それより何が起きてる?」
「外が大変なことになってるんだ。」


ブレインが言う。
「とりあえず侵入は一旦食い止められたはずだけど。」
「じゃあお友達もいることだし、複雑な構造の世界だから分かりやすく言うね。」
「キーブレード戦争以前の世界、このデイブレイクタウンという世界に予知書から取り出した未来の世界を展開していた。」
「この場で飛び出す絵本を開くようなものさ。」
「これはあくまで未来の世界であって実在しない世界を取り出していたわけじゃない。」
「だから仮に予知書を使わなくてもデイブレイクタウンから地続きでその世界は実在はしている。」
「時間が過去だってことなだけでね。」


ヴェントゥスが驚く。
「え!そうなの?行けちゃうの?」


「ただ容易には見つからなかっただろうね。」
「世界は広大に広がり続けているから。」
「そしてキーブレード戦争以降の世界、地続きだった世界はバラバラになってしまった。」
「そうなることは予知書にも書かれていたから、このデイブレイクタウンの世界に予知書なしでも未来の世界を展開できるようにいくつかの世界をデータ化した。」
「これも知ってるよね?」
「つまり俺達含むダンデライオンのメンバーはキーブレード戦争以前同様に現実のデイブレイクタウンからデータ世界のデイブレイクタウンを経由してデータ上に展開された未来の世界に行ってるんだ。」
「ここまで分かる?」
「じゃあ問題。」
「今いるこのデイブレイクタウンは現実?データ?どっち?」


エフェメラが言う。
「うーん。」
「普通に考えれば現実でしょ?」


「でしょ?」
「でも今の状況は普通じゃなくなってるんだ。」
「現実なのかデータ世界なのか、明確ならまだ良かったんだけど。」
「あのブロックノイズみたいな歪みの現象、ここは現実の世界のはずなのにデータ世界で起きる現象が発生してるんだ。」
「最初に話したけど、あくまでこれまでは現実の世界に存在はしていた世界を、この世界を玄関、つまりポータルとして展開していた。」
「ところがこの世界、時間に実在しない世界と繋がってしまったみたいなんだ。」
「何でだろうね。」
「あらかじめ用意されていたことなのかどうかも分からないし、ともかくここと繋がってしまった世界を調べてみないと手掛かりが少な過ぎるね。」
「とりあえず、その世界と繋がったせいで異常が起きた。」
「完全に繋がりを閉じるのは無理だったから一旦安定だけさせられたけど。」
「やっぱり向こうの世界を実際に調べてみないと駄目っぽいね。」


エフェメラが言う。
「分かった。俺が行ってこよう。」


「そう言うだろうと思ったけど、いきなりリーダーの君が行って何か起きちゃったらみんな困る。」
「ここはやっぱりダンデライオンのメンバーを派遣した方がいいんじゃないかな。」
「それが任務ってもんでしょ?」
主人公に聞く。
「君はどう?」


主人公が答える。
「行くよ。」


「大丈夫、とりあえず君がルートを確保してしまえばこちらからだけの行き来を安定させられるはず。」
「そうすればすぐに他のメンバーも合流できると思うよ。」


エフェメラが言う。
「だったらなおさら俺が。」


ブレインが言う。
「分かった。じゃあ二人でルートを確保してきて。」
「友情っていいね、うらやましいよ。」
「だけど何か危険があればすぐ戻ってね。」
「まだ不安定だから急いで。」


主人公とエフェメラは二人でルートの確保に向かった。
「いつもの回廊とは様子が違うね。」
「ここはもう新しい世界なのかな?」
回廊を抜けると、そこはゲームセントラルステーションという世界だった。
「新しい世界・・なのか?」


主人公のチリシィが言う。
「何だか出入り口がいっぱいあるよ。」
「黒装束を着たハートレスもいる。」


エフェメラが言う。
「ブロックノイズの原因と黒装束の目的・・」
「手分けして調べる必要がありそうだな。」
「黒装束は俺が追う。」
「主人公はブロックノイズを調べて。」


主人公はブロックノイズを調べるため、複数ある入り口の一つに入った。
そこはナイスランドという世界に繋がっていた。
チリシィが言う。
「ブロックノイズは放っとけない。」
「ハートレスもいるし。」
「早く捜し出そう!」


ラルフという大男がビルを壊していた。
「誰だ?おまえは。」
「まさかターボしようってのか?」
「俺のゲームでそんなことはさせないぞ。」
突然襲いかかってきたので倒すと、フェリックスという少年がやって来た。
「ラルフ!」
「もしかして・・」
「なんてこった!」
「ちょっと困るよ!」
「僕らのゲームで勝手なことされちゃ。」
「確かにラルフは悪役だけど、このゲームには必要な悪役。」
「ラルフが壊して僕が直す。」
「ラルフをやっつけるのは僕、フェリックスの役目さ。」
「今回はプレイヤーが気づかなかったから良かったけど、今度からは気をつけてよね。」
「じゃ、僕はパーティの準備があるから、またね。」
フェリックスはどこかに行ってしまった。


「俺もフェリックスみたいにヒーローになってみたいよ。」
ラルフは起き上がり、瓦礫の山に帰っていった。


いつの間にかビルが新しくなったので最上階に行くとパーティが行われていた。
パーティ会場から聞こえる。
「メダルはヒーローしかもらえない。」
「君は何だ、ヒーローじゃないだろ?」
ラルフの声がする。
「その気になりゃなれるさ。」
「俺だってメダルをもらえる。」


「だったらもらってこい。」
「まあどうせ無理だろうな。」
「君は何でも壊してしまう悪役なんだから。」


「よし、分かった。」
「見てろよ、俺はメダルを勝ち取る。」
「絶対勝ち取ってみせるからな。」
「誰も見たことないようなピカピカのメダルだ。」
ラルフはパーティ会場を出ていった。


フェリックスがやって来る。
「やあ、ようこそ。君も・・パーティに呼んだっけ?」
「このゲーム、フィックス・イット・フェリックスの30周年記念パーティなんだけど。」
「今日はお開きだよ。」
「ラルフがめちゃくちゃにしていった。ケーキも。」
「ラルフの奴、ヒーローの証のメダルを手に入れるって飛び出していったけど、悪役がもらえるメダルなんてないのにね。」


その時、ナイスランドの世界全体が暗くなった。
「大変だ。僕達故障中になっちゃった。」
「君達のゲームは君達でやってよ。」
「ラルフもいなくなったし、最悪の31年目だよ。」
「ラルフは多分、いきつけの店で居眠りでもしてると思うよ。」
「そうだ、会いに行くなら君から言っといてよ。」
「すぐに帰ってこいって。」


主人公はラルフを追いかけた。
ラルフはゲームセントラルステーションの入り口からサイ・バク・セクターという世界に入っていった。


街の中心にある塔の上から光が上がった。
「ビーコンがついた!」


街を破壊しているサイ・バクという魔物がビーコンに群がっていく。


女性の兵士・カルホーン軍曹がラルフと話をしている。
「違う、絶対にプレイヤーの邪魔をしないことだ。」
「我々の役目はプレイヤーがあの上まで行ってメダルを取れるようにすること。」
「それだけだ。」
「いいか、しっかりやれ。」
「プログラム通りにやれ!」


ラルフが答える。
「ああ、はい、アイアイサー。」


「よーし、へなちょこども。」
「全員スタート位置に戻れ。」


「あそこにメダルがあるんだな。」
ラルフはビーコンのある塔に向かって走っていった。
主人公もラルフを追いかける。


フェリックスもサイ・バク・セクターの世界にやって来た。
カルホーン軍曹とフェリックスが話をする。
「僕、フィクス・イット・フェリックスってゲームから来たフェリックスって言います。」
「あなたほど解像度の高い顔は見たことがありません。」
「とてもきれいだ。」


カルホーン軍曹が言う。
「また民間人か。」
「ここに来た目的は?」


「ああ、仕事仲間を捜してるんです。」
「ラルフって言う・・」


カルホーン軍曹が答える。
「聞いたこともない。」


ラルフは塔の最上階でメダルを見つけた。
「やったー、メダルだ。」
「これでヒーローだ。」
その時、足を踏み外したラルフは偶然座ってしまったシャトルに乗ってどこかへ飛んで行ってしまった。
そのシャトルには1匹のサイ・バクがくっついている。


ラルフを追って最上階までやって来た主人公のもとにエフェメラがやって来る。
「大丈夫?主人公。」
「黒装束を追ってたらここに辿り着いたんだ。」
「でもそのおかげかな。主人公と合流出来たよ。」
「一緒に戦ってくれるだろ?」


エフェメラと一緒に塔の最上階に巣食うサイ・バクを倒す。
その後、エフェメラと一緒に黒装束を追った。
「お前は違う・・」
黒装束はサイ・バグと融合し、どこかへ飛んでいってしまった。


エフェメラが言う。
「黒装束とこの世界のサイ・バグってモンスターが融合したみたいだ。」
「あいつをこのまま放っとくことは出来ない。」
「追いかけよう。」
エフェメラと主人公はサイ・バグと融合した黒装束を追いかけた。


塔を降りてサイ・バグと融合した黒装束を追いかけるとカルホーン軍曹が戦っていた。
「なんなんだ、このサイ・バグは?」
主人公達が加勢する。
「ほー、なかなかいい面構えをしてるな。」
「ちょどいい、手伝え!」
「我々のミッションは全てのサイ・バグを退治すること。」


主人公とエフェメラは協力してサイ・バグを倒した。
カルホーン軍曹が言う。
「倒せたか。」
「まあどのみち、ここにいる分にはビーコンが機能するから心配ないだろう。」
「問題なのはもう1匹と一人・・」


フェリックスがやってくる。
「そうなんだ。」
「ラルフも一緒に行ってしまった。」


エフェメラが言う。
「なるほど。」
「そのラルフって悪役とブロックノイズに何か因果関係があるかも。」
「主人公は引き続きブロックノイズの方を追ってくれるかな。」
「俺は一度戻って黒装束の異常行動を報告してくるよ。」
「主人公のことを信頼してるから任せるんだ。」
「別行動でも平気だよね。」
「それに離れていても心は繋がってる。」
「大丈夫だ。」
エフェメラは管理室に戻っていった。


―約5年前―
マスター・オブ・マスターが管理室でルシュと話をしている。
「俺がまだ少年だった頃・・」


ルシュが驚く。
「ええ?!」


「いや、俺だって少年の頃くらいあったさ。」
「で、まあ少年だった頃にキーブレード戦争がはじまったんだ。」


ルシュが再び驚く。
「ええ??!!」
「キーブレード戦争って過去に起きてたんですか?」


「ああ。そうだ。」


ルシュが聞く。
「じゃあマスターのマスターとかいたんですか?」


「いない。」


ルシュがなおも聞く。
「じゃあ何と何が戦ってたんですか?」


「そりゃ光と闇だろうよ。」


ルシュがさらに聞く。
「光って、マスター以外にキーブレード使いはいたんですか?」


「んー、いたっちゃいたけど、俺以外は論外だな。」


ルシュが質問を畳み掛ける。
「闇は?今と同じような魔物なんですか?」


「いや、もう質問は俺の話聞いてからでもよくない?」
「まあ戦ってた闇は魔物かって言われたら魔物かな。」
「俺達と同じ姿はしてたから今とは違うけど。」
「まあそういう姿をしていた時からキーブレード戦争はずっとつづいてる。」
「今もな。」
「闇との戦いは過去から今も一度も終わったことはない。」
「もうすぐ起きるのはキーブレード戦争の開戦ではない。」
「むしろこれでようやく終われるのかもしれない。」
「闇は常に姿を変える。」
「それこそ人間の中にだって隠れる。」
「長くつづくキーブレード戦争がいまだに終わっていない理由はそこにある。」
「今度の戦いで世界は一度終わる。」
「この世界から何もかも消え、別の世界線上に逃れたキーブレード使い達がバラバラになった世界の光を回収する。」
「そうして世界はもう一度再生するんだ。」
「子供達の心の中に残る物語、世界、それを消すことはできない。」
「彼らの心に光が残っていれば世界はそれを標として再生される。」
「それと同様に闇を消すことはできない。」
「ただ一時的にでも休戦状態にはできる。」
「もう疲れた。俺もしばらく休みたい。」
「ただの傍観者としてな。」


ルシュが言う。
「休みたいって・・」
「それより他の世界線上で再生を実行する者たちは、かなり世界の命運を握ってるってことですよね。」


「ああ。だからこそアヴァに優秀な子たちを集めるように言ったんだ。」
「始点のχ、訓練のアンチェイン、実行のユニオンクロス。」
「彼らは世界再生のための重要な礎となってくれるはずさ。」


ルシュが言う。
「礎?」
「彼らはその他の世界線上から再生された元の世界に戻れるんですよね?」


「んー。まあ、全員は難しいかな。」


エフェメラが管理室に戻ると、ブレイン、スクルド、ラーリアム、ヴェントゥスが揃っていた。
皆に状況を報告する。
「俺達がいるこの現実の世界、デイブレイクタウン。」
「キーブレード戦争前にデータ世界にもコピーされ、同様に他の様々な世界もデータ化された。」
「キーブレード戦争の影響で現実世界では消滅しバラバラになった世界でも、データ世界線上ではいまだに繋がっていて行き来できる。」
「でもそれはあくまでデータ世界だからだ。」


ブレインが言う。
「データ世界だから他の世界といまだに繋がっていられた。」
「でもこの現実世界に新たな世界が繋がった。」
「強制的にね。」


エフェメラが言う。
「俺は友人と一緒に黒装束を追ってその世界の調査をしてたんだけど、こっちの世界で出現してた敵は、どうやらその新しい世界から侵入してきたらしい。」
「理由はわからないけど、黒装束が誘導していた可能性が高いね。」


ヴェントゥスが言う。
「あとは円卓の間で予知者様のノイズも見たよね。」


ラーリアムが言う。
「ノイズなら街の中にも現れてたみたいなんだ。」
「妹のストレリチアのノイズも。」
「ブレインなら何か解き明かせるんじゃないかと思ってここに戻ってきたところだったんだ。」


ブレインが言う。
「エフェメラの話だと新たに繋がった世界の住人は、自分達がデータ世界に存在することを自覚している。」
「そんなデータ世界側からもこちら側に侵入できる。」
「ヴェン、スクルドが見た予知者のノイズ、そしてラーリアムの妹さんのノイズ。」
「俺達は現実世界側のデイブレイクタウンにいるものだと思ってたけど、どうやらここもデータ世界側ってことだね。」


エフェメラが聞く。
「現実世界のデイブレイクタウンはあるんだよな?」
「デイブレイクタウンまで消えたわけじゃないよな?」


ブレインが答える。
「今は確認のしようがないからまだ何とも言えないね。」
「少なくともこうなる以前は現実の世界に存在してたと思う。」


スクルドが聞く。
「現実の世界のデイブレイクタウンには戻れないの?」
「このまま私達もデータの一部になるってこと?」


「戻ってるつもりが戻ってなかったわけだからね。」
「いつもの手順では戻れないのは確認したけど、もう少し調べてみれば何かわかると思うよ。」
「きっとこれは誰かが仕組んでいたことだと思う。」
「意図は不明だけど、最初からこのデータ世界は現実世界と分断させられるようになってたんだろうね。」
「そもそも意図があるのかないのか、別の目的のために起きてしまったことかもしれないし。」


ラーリアムが言う。
「大戦を回避して飛び込んだら実は檻の中だったって?」
「皮肉な結果だね。」


エフェメラが言う。
「アヴァ様は先の時代に光を繋ぐために俺達を集めたんだ。」
「陥れるようなことをするはずがない。」


ブレインが言う。
「今となってはそれもわからない。」
「アヴァ様がこのことを知ってたのかも不明だよ。」
「誰がこのプログラムを仕組んだのか。」
「前にも言ったはずだよね。」
「俺はプログラムを書き換えるウイルスになると。」
「先に部屋に戻るよ。」
ブレインは管理室を出ていった。


一人になったブレインが持っている予知書を見る。
「これには書かれてんのかなあ・・」


―約4年前―
デイブレイクタウンの時計塔が見える小高い丘の上で昼寝をしていたブレインのところに予知者マスター・アヴァがやってきた。
「ユニオンリーダー?俺が?冗談でしょ。」


マスター・アヴァが言う。
「本当よ。」


ブレインが言う。
「俺、リーダーとか向いてないでしょ。」
「どういう基準で選んでるんです?」


「マスターの任命なの。」


ブレインが驚く。
「マスターのマスター?」
「マスター・オブ・マスター?」


「そうよ、だから頑張って。」


ブレインが上半身だけ起き上がる。
「頑張ってって、そんな簡単なもんじゃないでしょ。」
「なんかめんどくさいし、他の4人って誰なんですか?」


マスター・アヴァが言う。
「それはまだ言えないの。」


「あれですか?」
「5人で揃うのは大戦の後だから、その前に5人が接触して予期しない流れになるのを避けたいってことですか?」
「でもそれじゃ、筋書きありきみたいで逆に胡散臭いですけど。」


マスター・アヴァが言う。
「さすがね、ブレイン君。」


「えー、さすがって・・それが正解ならヤバいじゃないですか。」


マスター・アヴァはブレインの隣に腰掛けた。
「もしこの世界の運命が決まってるとしたらどう思う?」


ブレインが即答する。
「最悪。」
「つまらないじゃないですか。予定通りの未来なんて。」


「でも予定通りにするってことじゃなくて、この先起きる出来事を知ってるってことなら?」


ブレインが聞く。
「予知書ですか?」


「そう。予知書に書かれてるってことは、逆に予定を変えることもできるんじゃない?」


ブレインが言う。
「まあ、確かに。」
「ん?」
「でも変えちゃったら、変わっちゃうことも本来予知書に書かれてないとおかしいですよね?」
「んん?矛盾してるなあ。」
「いや、変えた時点で書き換わるとか?」


「変えたらどうなるのかは分からない。」
「どうなるのか分からないってことは、もうそれが予定してない未来じゃないのかな?」


ブレインが聞く。
「そういう話なんですか?」


「ううん、でも私も思ってたの。」
「記された運命を変えたらどうなるんだろうって。」
「だから君にはこれも。」
マスター・アヴァはブレインに予知書を手渡した。
「5人の中の一人にだけその予知書を渡すことになってるの。」


ブレインが驚く。
「ええ?俺?」


マスター・アヴァが立ち上がり、1枚のメモを取り出す。
「マスターから渡されたこのメモに5人のユニオンリーダーの名前が書かれてて、予知書を託す一人に丸が付けられてる。」
「託された者以外、決して中を見てはいけない。」
マスター・アヴァはブレインから予知書を取り上げ、メモを予知書に挟んだ。
「あなた達の運命が記されたページにそのメモを挟んでおいた。」
「いつかページを開く時に、ブレイン君なら私からのメッセージに気づくはずだわ。」
マスター・アヴァはもう一度予知書をブレインに手渡した。


「いや、もうメッセージは受け取りましたよ。」
「でも極力、予知書は開かないですよ。」


マスター・アヴァが言う。
「うん、必要な時は君なら分かるだろうから。」


円卓の間で4年前の出来事を回想していたブレインのところにラーリアムがやってきた。
「何か思いついた?」


ブレインが言う。
「いやいや、早い早い。さっきじゃん。」


「だよね。3人はもう少し管理室にいるってさ。」
「でさ、こんな時に個人的な話で申し訳ないけど、ストレリチアの友人に会って話が聞けたんだ。」
「それで、ストレリチアが消息を絶つ前、キーブレード戦争を確信している発言をしていたらしくて。」
「前に君はダンデライオンの参加に躊躇していたストレリチアが、ダンデライオンに参加させたがっていた人がいたことに違和感を感じていた。」
「ストレリチアが変わった理由は、きっとキーブレード戦争を直前に知り得たからだ。」


ブレインが言う。
「でも大戦が起きることはダンデライオンのメンバーなら全員知り得ていた。」
「ストレリチアも躊躇していたとしても、メンバーだったら大戦のことは把握していたはずだよね。」


ラーリアムが言う。
「うん、だからだよ。」
「知っていたはずなのにどうして急に主人公を参加させようとしていたのか。」


「なるほどね。大戦は把握していた、でも何かをきっかけに確信に変わり焦っていた。」


ラーリアムが頷く。
「うん。」


ブレインが予知書を見つめる。
「もしかしたら何か分かるかもしれない。」
「少し一人で考えさせてもらっていいかな。」


「分かった。よろしく頼むよ。」
ラーリアムは円卓の間から出ていった。


その頃、デイブレイクタウンの噴水広場にマレフィセントが闇のゲートを通って現れた。
「ここがデイブレイクタウン・・」
「光に満ちた嫌な臭いのする場所だね。」
「こんな世界に私が元の時間に戻る鍵があるのかい?」


謎の男が答える。
「ああ。」


シャトルに乗ってサイ・バク・セクターを飛び出したラルフはシュガー・ラッシュという世界に迷い込んでいた。
シャトルは墜落し、シャトルにくっついていたサイ・バクもシュガー・ラッシュの世界に消えていった。


ゲームセントラルステーションでフェリックスとカルホーン軍曹が話をしている。
「おーい。聞いてきたよー。」
「ラルフが他のゲームに行ってしまったのは間違いないみたい。」
「多分、このシュガー・ラッシュという所。」


カルホーン軍曹が言う。
「こんなもの、サイ・バクにかかったらタカに襲われるニワトリのように食われてしまうぞ。」
「分かってないのか?」
「あのシャトルにサイ・バクが乗ってたんだ。」
「サイ・バクが何なのかも知らないのか?」
「サイ・バクはウィルスと同じだ。」
「自分がゲームの中にいるとも知らず、ひたすら繁殖する。」
「ビーコンで止めなければ奴らはシュガー・ラッシュどころかゲームセンター全体を食い尽くしてしまうだろう。」
「自分のゲームの外へ行き、そこで消えたらもう復活できない。」
カルホーン軍曹とフェリックスはシュガー・ラッシュの世界に入っていった。


その様子を見ていた主人公のチリシィが言う。
「サイ・バクってハートレスとは違うみたいだけど、世界を侵食するってことは闇の一種なのかなあ。」
「ともかく僕たちはブロックノイズの原因かもしれないラルフを追いかけよう。」
主人公もシュガー・ラッシュの世界に入っていった。
ラルフが乗っていたシャトルを見つけた主人公は、近くを捜索した。
するとラルフがサイ・バク・セクターで手に入れたメダルを持った少女を見つけた。
「もう何なのよ、せっかくコインを手に入れたってのに。」
少女の体はノイズで消えたり現れたりを繰り返している。
主人公が少女に近づくとノイズが消えた。
「ふー、やっと治まった。」
「あんだかあんたと一緒だと落ち着くみたい。」
「あたしヴァネロペ。よろしくね。」
「こう見えても生まれながらのレーサーなのよ。」
「ねえお願い。もうすぐレースが始まっちゃうの。」
「この森を抜けた先にあるレース会場に連れて行って!」
主人公はヴァネロペと一緒にレース会場に向かった。


レース会場に着くと、始まっているはずのレースが何故か始まっていなかった。
大量のハートレスが発生し、レースの開催ができなくなっていたのだ。
ヴァネロペに頼まれた主人公は、ハートレスを全て倒してあげた。


「今のうちに・・」
ヴァネロペは巨大な優勝カップの中に持っていたメダルを投げ入れた。
これによりレースへの参加権を手に入れたヴァネロペが喜ぶ。
「やったー、参加できる!」


そこにラルフがやって来た。
「おい!俺のメダルを返せ!今すぐに!」


主人公はヴァネロペに襲いかかろうとしたラルフを倒した。


そこにキャンディ大王がやってくる。
「いやー、助かったよ。」
主人公はハートレスについて説明した。
「ほう、ハートレスと言うのか。」
「一時はどうなることかと思ったが、お前のおかげで被害は最小限に食い止められた。」
「開店時間までにはレースの準備も整えられそうだ。」
「礼を言うよ、ありがとう。」
「お前はヴァネロペとは知り合いなのか?」
「そうか。出会ったばかりだったと。」
「ヴァネロペはこのゲームのちょっとしたトラブルメーカーでな。」
「保護しようとしていたところなんだ。」
「すぐにでも追いかけたいところだが、私はレースの準備をしなければならない。」
「そこでお前の腕を見込んで、ヴァネロペを捜してきてはもらえないだろうか。」
「頼んだぞ。」
「さて、こいつの取り調べがあるんでな。これで失礼するよ。」
キャンディ大王はラルフを連れていった。


―デイブレイクタウン・円卓の間―
予知書を読み終えたブレインが呟く。
「やっぱりな。」
「チリシィ。」


ブレインのチリシィが現れた。
「すごく久しぶりじゃない?」


「ああ。でもずっと近くにいるんだろ?」


チリシィが答える。
「まあね。」


「早速だけどさ、頼みがあるんだ。」


デイブレイクタウンの噴水広場に現れたマレフィセントが謎の男に言う。
「さっきから人の気配を感じないけど、ここもデータの中なんだね?」


謎の男が答える。
「ああ。この先にある塔を目指すんだ。」


「あそこに元の時間に戻る方法があるのかい?」


謎の男が答える。
「あの塔から現実世界に戻り、現実世界の塔の奥に隠された箱舟を探すんだ。」
「箱舟は元々、異空の海への脱出用として造られた。」
「しかし製作途中で放置され未完成のまま。」
「未完成だからこそあんたに必要なんだ。」
「行先は異空の海じゃなく未来の世界。」
「未完成が故にスピードに生身の体が耐えられない。」
「つまり乗れば肉体を失い、心だけが箱舟に残る。」
「心だけになって光速で時間の壁を破ることになる。」
「行く先の未来に自分の肉体を形成できる媒介、そして自分を記憶する者達、これらが存在すれば心は再び自らの肉体を形成しその器へと戻るはずだ。」
「保証はある。」
「予知書では、あんたは未来に存在する。」
「全てではないが、予知書の内容を知っているんだ。」


時計塔が見える小高い丘の上に呼び出されたエフェメラ。
「こんなところに呼び出すなんて珍しいね。」


ブレインが言う。
「二人で話したいことがあってさ。」
「俺はこの丘でアヴァ様からユニオンリーダーになるように言われたんだ。」


「そうなんだ。俺もここだったよ。」


ブレインが言う。
「アヴァ様は予知者様達の中でも変わった人だったね。」
「何ていうか、こう、話しやすかった。」
「実はエフェメラ君には話しておかないといけないことがあってさ。」
「ユニオンリーダーの5人の内、一人にだけ予知書を託すことになっていたらしいんだ。」
「予知者様達がいなくなった世界でも他の世界を形成して光を集められるようにね。」


「でも他の世界は事前にデータに移されてたんじゃないの?」


「そう。だから万が一の保険みたいなものだね。」
「データに問題が発生した場合のマスターデータのようなもの。」
「実際まったく使わずにここまで来た。」
ブレインは予知書をエフェメラに見せた。


「え?ブレインが予知書を持ってるの?」


ブレインは予知書に挟んであったメモをエフェメラに見せた。
「予知書よりこのメモなんだけど、ユニオンリーダーに任命される5人の名前と予知書を託すべきリーダーに印が付けられている。」
「そう、本来予知書を託されるべきリーダーは俺じゃない。」
「その入れ替えだけじゃなく、リーダーにも入れ替えが起きてる。」
「ストレリチア。」
「ラーリアムの妹が本来ユニオンリーダーの一人になるはずだった。」
「そして、予知書を託すべきリーダーを入れ替えたのはアヴァ様なんだ。」
「あえて予知書を託すリーダーの入れ替えを行うことで決められた未来が書き換わる可能性に賭けたかったんだ。」
「アヴァ様のせめてもの運命への抵抗。」
「俺はそう受け取ってる。」
「でもユニオンリーダーの入れ替えはアヴァ様の意図ではないと思う。」
「だから直接聞きたいと思ってね。」
「本来リーダーではなく、入れ替わった人物に。」


橋の上で話をしているスクルドとヴェントゥスのところにブレインのチリシィが現れた。
「あー、いたいた。」
「塔の中を捜しちゃったよ。」
「ちょっと来てほしいんだけど。」


主人公はヴァネロペを捜しだし、キャンディ大王に保護するように言われていることを伝えた。
「保護って何?レースに出られないってこと?」
「絶対やだ。」
「だって参加料も払ったし、エントリーされてるんだもん。」
「だからあたし絶対レースに出る。」
そこにハートレスが現れ、ヴァネロペのカートを壊してしまった。
主人公がハートレスを追い払うと、キャンディ大王から逃げ出してきたラルフが現れた。
「このどろぼう娘め。」
「あのメダルはヒーローズ・デューティで取ったんだ。」
「さあ、今すぐ返してもらおうか。お嬢ちゃん。」


ヴァネロペが言う。
「カートがあればいつでも取り返してあげるよ。」
「ねえ、あんたはメダルが欲しい。あたしはレースに出たい。」
「だから考えたんだけど、新しいカートをゲットするの手伝ってくれたら優勝してメダルを取り戻してあげる。」
「いいじゃない。友達なんだから手伝って。」


「友達になった覚えはない。」
「だが、絶対勝てよ。」
ラルフはヴァネロペに協力すると約束し、握手をかわした。


「よし、カート工場を目指して出発!」
主人公、ヴァネロペ、ラルフの3人はカート工場に向かった。


時計塔が見える小高い丘の上で話をしているブレインとエフェメラ。
「連れてきたよー。」
ブレインのチリシィがスクルドとヴェントゥスを連れてくる。


「ありがと。」
「ちょっと聞きたいんだけど。」
「ユニオンリーダーを君たちに命じたのは?」


スクルドが答える。
「アヴァ様よ。」


ヴェントゥスが頷く。
「うん、アヴァ様だった。」


エフェメラが言う。
「いや、これ違うな。」


ブレインが聞く。
「アヴァ様にはどこで?」


スクルドが答える。
「ここだったわ。」


ヴェントゥスが言う。
「俺は・・」
「塔の近くだった。」


ブレインが言う。
「そうか。」
「実はアヴァ様から俺だけ受け取っていたものがあるんだ。」
「予知書さ。」
「でも問題はそこじゃない。」
「この予知書にアヴァ様のメモが挟んであって、そこにはユニオンリーダー5人の名前と本来予知書を託されるはずだったリーダーに丸が付けられている。」
「俺に印が付いていないのは予知書を託される時に察していた。」
「アヴァ様は予知書に書かれた未来を変えたくて本来託される予定だったリーダーじゃなく、俺に予知書を託したんだと。」
「でももう一つ。」
「問題はユニオンリーダーの名前の方だ。」
「5人の中の一人に、今のユニオンリーダーの中にいないラーリアムの妹、ストレリチアの名前があった。」
「俺はアヴァ様が入れ替えたんじゃないと思ってる。」
「ストレリチアは知ってのとおり行方不明。」
「おそらく彼女の身に何かが起きたんだろう。」
「ユニオンリーダーの入れ替えがアヴァ様の意思によるものならこのメモを最初から俺に渡す必要はなかったし、ストレリチアの消息に関してもアヴァ様の関与が疑わしくなるけどアヴァ様がそんなことをするとは思えない。」


スクルドが聞く。
「ストレリチアに何か起きたから他の人をユニオンリーダーに任命したとか?」


「ストレリチアが最後に目撃されたのはキーブレード戦争開戦を告げたあの鐘の前。」
「ダンデライオン入りさえ躊躇していたストレリチアが主人公をダンデライオンに誘おうと躍起になっていた。」
「おそらくアヴァ様からユニオンリーダーに任命され、キーブレード戦争について聞かされたからだろう。」
「そんな短時間でアヴァ様周知の交代劇があれば、誰かにその事実を伝えたはずだ。」
「少なくとも運命を変えて予知書を託した俺には。」


エフェメラが言う。
「ラーリアムの名前はあった。」
「ラーリアムはストレリチアの件もあるから事実がもう少しわかってから話すつもりだ。」


ブレインが言う。
「さっきの質問で、本人に入れ替えの自覚があるかないかを確かめさせてもらった。」
「だから事実を知っても俺達の関係は変わらない。」
「それを決めるためにエフェメラと話してたんだ。」


エフェメラが頷く。
「本人に自覚はないんだろうと思う。」
「だからむしろこうなってしまった謎を解明するために、これまでどおり仲間として協力してほしいと思ってる。」


ブレインがヴェントゥスの肩に手を置く。
「ヴェントゥス、君の名前はメモにはなかった。」


「でも・・俺は本当にアヴァ様に言われたんだ。」
「ユニオンリーダーにって。」


ブレインが言う。
「君が嘘をついてるとは思ってないよ、ヴェン。」
「おそらくラーリアムの妹、ストレリチアは残念だけどもう存在していない。」
「ユニオンリーダーになるはずだった彼女はダンデライオンには参加していたはずだ。」
「でもダンデライオンに彼女はいない。」
「もし入れ替えがアヴァ様によるものだったとしても、何も伝えずに大戦に向かわせるはずはない。」
「彼女が存在しないことがアヴァ様の意図じゃない証拠だ。」
「俺たちはなぜダンデライオンに選ばれた?」


エフェメラが答える。
「先の時代に光を繋ぐため、だろ?」


ブレインがなおも聞く。
「光だけが先に進む、それを許さないのは?」


「闇。」


「闇は姿を隠す。」
「人にさえ。」


スクルドが聞く。
「闇がアヴァ様を装ったと?」


ブレインが頷く。
「ヴェントゥス。君がアヴァ様に会った時、何か変に思うことはなかった?」


「うん・・どうだったかな・・」
「アヴァ様はユニオンリーダー5人の一人になってほしいと・・」
「それで掟の書を手渡されて・・」
「全てが終わって決戦の地に行けば他の4人が待ってるからと。」
「最初は薄暗い空き家に呼び出されて・・」
「最初は空き家で、その後塔の近くまで歩きながら話したんだ。」
「あの日、俺はアヴァ様に呼び出された。」
「空き家に行って、その時にアヴァ様が来て一緒に空き家を出て・・」
「塔までの道すがら、さっき話した会話をしたんだ。」
「多分アヴァ様だと思うんだけど・・」
「アヴァ様が来て、その家を出るまでのことは記憶になくて・・」
「でも会ってすぐに家を出たんだと思う。」


ヴェントゥスの頭に横たわったストレリチアの姿がよぎる。
頭を抱えるヴェントゥス。


ブレインが言う。
「とりあえず塔に戻ろう。」


マレフィセントが時計塔の中に入ってきた。
「まったく、警備が手薄な場所だねえ。」


謎の男が言う。
「本来侵入が禁止されていて誰も入らないからな。」


「箱舟に関してもそうだけど、あんたはやけにこちら側の勢力に関して詳しいじゃないか。」
「いったいどういう関係なんだい?」


謎の男が答える。
「古い古い知人さ。」


「で、その古い古い知人がどうして私に元の時間に帰ってもらわないと困るんだい?」


謎の男が答える。
「標になってもらうためさ。」
「あんたにさっき説明しただろう?」
「時間を超えるために必要なものは、肉体を形成する媒介と自分を記憶する者。」
「元々この世界にいる住人にはそれらが未来にはない。」
「だからあんたに未来に帰ってもらえばこの世界の住人の標になってもらえる。」
「この世界の住人が未来へ行くために。」
「どの道あんたは元の時間に帰るしかない。」
「それ以外のことはどうでもいいだろう。」


「フン、まあいいさ。」
マレフィセントが謎の男に言われた部屋に入ると、そこには巨大な装置があった。
「これかい?」


「ああ。」
「早速帰るなら中に入ってくれ。」
謎の男がカプセル状の装置に入るように促す。


「いや、そうもいかないねえ。」


謎の男が言う。
「いらぬ詮索はせずに帰ったほうがいいぞ。」


そこにラーリアムがやってくる。
「なぜあなたがこんな場所に?」
「要件によっては倒させてもらうよ?」
ラーリアムはキーブレードをマレフィセントに向けた。


マレフィセントが言う。
「そうかい、おまえたちも閉じ込められたんだね。」


ラーリアムが言う。
「あんたは招待リストに入ってないなあ。」


「ああ。だから出ていかせてもらうのさ。」
「どうやらあんたは知らないようだね。」
「この部屋が何なのか。」
「どんな檻でも出口は用意するもの。」
「このデータの檻にもね。」
「それがここ。」
「だから私はお前の望み通り出ていくのさ。」
「ここではある研究をしていたらしい。」
「そしてその研究の残骸が置き去りにされた。」
「これで私は出ていかせてもらうよ。」


ラーリアムはマレフィセントを止めようと襲いかかるが返り討ちにあってしまう。
ラーリアムは意識を失って倒れ込み、マレフィセントはカプセル状の装置で元の時間に帰っていった。


主人公、ヴァネロペ、ラルフの3人はカート工場に到着。
ラルフとヴァネロペは協力してミニゲームをクリアし、最高のカートを作り上げた。
そこにキャンディ大王が現れる。
「そこを動くな、ヴァネロペ!」
3人はカートに乗り込み逃げ出した。


無事逃げ切ることができたヴァネロペとラルフは新しいカートでレースの練習を始める。


カルホーン軍曹に置いてけぼりを食らったフェリックスはキャンディ大王の城に迷い込んでしまい、すぐに捕らえられてしまった。


ラーリアムは夢を見ていた。
「お兄様。」
花畑で寝ているラーリアムのところにストレリチアがやってくる。
「やっぱりここでしたか。」
「またお昼寝ですか?」


起き上がるラーリアム。
「もう今日の分のルクスは集め終わったんだよ。」
「午前中には終わったのさ。」
「簡単すぎるんだよ、魔物を倒すなんて。」


「まったく!お兄様の天才っぷりに開いた口が塞がらなくなってしまいました。」
「私なんて今日も魔物に追い回されて大変だったのに。」


ラーリアムが言う。
「でもストレリチアの魔力は俺以上なんだから、落ち着いて対処すれば午前中には終わるよ。」


「それはなかなか。」
「お兄様が前衛で私が後衛ならねー。」
「一緒に行っちゃ駄目なのかな?」


ラーリアムが言う。
「それじゃストレリチアの為にならないからな。」
「もっと強くなって俺を守れるくらい強くなったら考えるよ。」
「俺を乗せて飛べるくらいね。」
「それよりダンデライオンの件だけど、まだ決められない?」


「今の仲間と離れちゃうのは寂しいし・・」
「それに仲間ではないけれど話してみたい人がいて。」
「その人がもしダンデライオンじゃなかったら・・」
「いやいやいや、そういうんじゃないんです!」


ラーリアムは笑い出した。
「あははは。ストレリチアは周囲を明るくする。」
「それはきっとみんなの為に必要な大きな力になる。」
「自分に自身を持って。」
「退屈で飽き飽きしてたけど明日も頑張ろうって思える元気がでたよ。」
「まあもしストレリチアに何かあれば俺がすぐ駆けつけるから。」


「それは駄目です。」
「せっかくお兄様からいただいた試練、私はお兄様を乗せて飛べるくらい強くなって見せます!」


「!」
意識を取り戻したラーリアムはゆっくりと起き上がった。
「ストレリチア・・」
「そうか・・俺は魔女と戦って・・」
「逃がしたか・・」
「ストレリチア・・俺は・・」


ヴァネロペは大王がプログラムを消そうとするまではレーサーだった。
なぜプログラムを消そうとしたかはわからない。
大王が住人の記憶を封じ込めてしまったからだ。


キャンディ大王はヴァネロペをレースに出られないよう牢屋に閉じ込めてしまう。


主人公とラルフはヴァネロペを救出するためにキャンディ大王の城に乗り込んだ。
フェリクスとヴァネロペを救出した主人公とラルフは無事脱出に成功。


一方、マレフィセントはデータの世界から現実の世界への移動に成功していた。
「ここは・・現実の世界?」


謎の男が言う。
「ああ、おめでとう。」
「無事脱出成功。」


「元の時間なのかい?」


謎の男が答える。
「いや、時間は過去のまま。」
「データの世界から現実世界に帰還しただけだ。」


「まどろっこしいねえ。」
「じゃあどうやって元の時間に戻るんだい?」


謎の男が答える。
「このポッドに乗って。」


「はあ?」
「だったら一度ここに戻らずにそのまま元の時代に戻ればよかったんじゃないのかい?」


謎の男が答える。
「さっきはデータと現実の世界を移動しただけだ。」
「時間を超えようとしたわけじゃない。」


「一緒にはできないのかい?」


謎の男が答える。
「そこまで万能ではない。」
「前に話した通り、本来は異空の海を渡り他の世界に移動する為のものだ。」


「ふん、まあいいさ。」
「ともかく今度は元の世界に戻れるんだね。」
「ところであんたは来ないのかい?」
「肉体を持たないあんたなら、さっきみたいに一緒に乗り込めるんだろ?」


謎の男が答える。
「あんたにこれ以上闇は必要ない。」
「それにまだここでやることがある。」


―デイブレイクタウン・円卓の間―
円卓の間にはエフェメラ、スクルド、ブレインがいる。


エフェメラはスクルドに聞いた。
「ヴェンは大丈夫そう?」


「部屋に寝かせてきたけど・・」
「ショックが大きかったのかベッドで眠ってしまったわ。」
「ずっと頭を抱えてたから急激な真実の記憶にまいってしまったみたいね。」


スクルドがブレインに聞く。
「ヴェンも被害者ってことなんだよね?」
「何かわかっていることがあったら教えて。」


「明確に事実がわかっているわけじゃない。」
「でもヴェンの話から推測するとストレリチアは消され、その場にヴェンがいた。」
「それが誰の思惑によるものか・・」
「闇・・」
「どうやら俺たちが思っていた以上に闇は身近で活発に動いていたのかもしれない。」


―過去―
マスター・オブ・マスターがルシュと話をしている。
深い溜め息をつくルシュ。
「はあ〜」
「結局闇は消せないからって世界を一度終わらせたりこの世界から脱出する方法まで。」
「闇には勝てないってことですよね?」


「なんだ、闇に勝てないのが不満なのか?」


ルシュが言う。
「そりゃあそうですよ。」
「我々キーブレード使いは闇と戦う為に存在しているのに結局勝てないからって逃げるだけなんて。」
「世界を変えても結局はまた逃げるしかなくなる。」


「逃げるって人聞き悪いなあ。」
「ルシュ君さあ、君には特別目を掛けて色々教えてきたつもりだけど、何もわかってないねえ。」
「何かと複雑に考えすぎ。」
「自分で難しくして結論づけたりもして、その持論こそがさも答えかのように憤る。」
「もしくは自分が理解できないことを答えが無いことだと結論づけて憤る。」
「答えはいずれ解るさ。」
「前に進んでるんだからどこかには辿り着くさ。」


ルシュがまた溜め息をつく。
「はあ〜」
「いつになるかわからない結果を待つだけなんて納得できないですよ。」


「君は結果のわかった人生を歩みたいの?」
「闇に勝つ方法はあるよ。」
「でも簡単じゃない。」
「時間も段取りも必要だ。」
「それは人生の一つや二つじゃ足りない。」
「だからこの世界を出る。」
「世界を終わらせる。」
「時間も捨て、世界の垣根も捨てるんだ。」
「すべて闇に勝つためだ。」


ルシュが聞く。
「マスターは闇と話したことはあるんですか?」


「あるよ。」
「何か会話にならないと言うか、意思疎通ができないと言うか、普通の人間の思考じゃないからな。」
「一応言葉は通じるよ。」
「あいつらずっと俺らのこと見てるから。」
「さすがに俺たちには簡単に近寄らないけどね。」
「実際、ダンデライオンの子たちが闇と対峙することになったら厳しいね。」
「会話も戦闘も一筋縄にいく相手じゃないし。」
「あいつらさ、精神攻撃が一番得意だから。」
「闇は純粋な心を嫌う。」
「だからそういう子たちを集めた。」
「危険だけど闇が一番苦手な存在でもある。」
「理解できないんだよ。人間の心や思いが。」
「だから人間が何をしようとしているかはわかっても、なぜそうしようとしているのかは理解できない。」
「わかるのは人間が嫌悪すべき対象だってことだ。」
「だからこそ闇の行動も意味不明なのさ。」
「そういうわけで相容れない存在だってことだよ。」
「闇とは理解し合えないからね。何がしたいのかもわからないよ。」


ルシュが言う。
「その子達、ますます心配だけどなあ。」


「予知書には先の時代は存在する。」
「大丈夫だろ。」
「長い時間の記憶だから、個人がどうなったとかそういう細かな部分は見ていないからさ。」


ルシュが言う。
「でも大事なこの先を託す子たちですよね?」


「やけに心配するねえ。」
「まあ君の使命は見ることでもあるから、そんなに心配なら彼らを見守ってあげればいいよ。」
「ただし手出しは無用ね。」


―デイブレイクタウン・寝室―
ベッドで寝ているヴェントゥスは夢を見ている。
ストレリチアが殺害された時の夢だ。


空き家に入ってくるストレリチアとチリシィ。
「この前の通りで見たなら、後はこの空き家くらいしかないけど。」


チリシィが言う。
「うん・・見間違えだったのかなあ。」


「こんにちはー、誰かいますかー。」
「いないみたい。」
「また噴水広場に戻ろうか。」


その時、何者かにストレリチアが殺された。
「お兄さま・・」


ヴェントゥスに語りかける殺害者。
「それを拾って。」
ヴェントゥスはストレリチアが持っていた予知書を拾い上げた。


殺害者がヴェントゥスに言う。
「さあ、行こう。」
その場を立ち去る時、外の光が殺害者を照らした。
殺害者は、予知者マスター・アヴァだった。


ヴェントゥスは眠りから目覚め、飛び起きた。


レースが始まった。
サイ・バクが増殖してレース会場を埋め尽くす。
女性の兵士・カルホーン軍曹も加勢し、サイ・バクを殲滅した。


キャンディ大王がヴァネロペのレースを妨害する。
キャンディ大王の体がノイズに包まれ、レーサーに姿を変えた。
「私はターボ。」
「史上最強のレーサーだ。」
ターボは新しいゲームの人気に嫉妬してそのゲームを乗っ取ろうとしているようだ。
そのせいで不具合が生じ、ターボは両方のゲームを故障中にしてしまった。
それ以来、自分の役割を変えようとしてプログラムをめちゃくちゃにすることをターボするって言うようになったという。


ラルフと主人公はヴァネロペを助け出し、サイバグの増殖を阻止するためビーコンの破壊に向かった。


主人公とラルフはビーコンの前に立ち塞がるターボを倒し、ビーコンの破壊に成功した。
破壊されたビーコンから強烈な光が放たれ、増殖したサイバグたちが光に吸い寄せられていく。
光に吸い込まれたサイバグたちは消滅した。


チリシィが言う。
「結局何だったんだろう。」
「もしかして黒装束はキーブレード使いに引き寄せられてた?」
「どうやらこの世界の不具合は取り除かれたようだし、ブロックノイズも解消したんじゃないかな。」
「それに黒装束のことも報告しないといけないし、僕たちはデイブレイクタウンに戻ろうか。」
「黒装束の狙いが主人公でもエフェメラでもないとしたら一体・・」


―デイブレイクタウン・円卓の間―
円卓の間でエフェメラ、スクルド、ブレインが話をしている。
「闇が、もし闇が身近に潜んでいるとして、攻撃を仕掛けてくるわけでもなく一体何をしようとしてるの?」
「私達を探って仕掛ける機会を伺ってるとか?」


スクルドの問いにブレインが答える。
「闇の所業であるかはあくまで推測に過ぎないけど、少なくともヴェントゥスの話からはそれくらいしか考えつかない。」
「そして身近に潜み、今こうしてその存在を認識されたならもう表立って動き始めてると思う。」
「いつ仕掛けてきてもおかしくない。」
「既にストレリチアには仕掛けてきたのかもしれない。」
「何が目的でストレリチアを消したのかはわからない。」
「ただ・・」


そこに傷だらけのラーリアムが部屋に入ってきた。
「今、何と言った?」
「俺の傷はどうでもいい。ストレリチアを消したって?」
「ストレリチアがどうしたんだ!ブレイン!」


胸ぐらを掴むラーリアムにブレインが言う。
「そうか。」
「推測は確信になった。」
「闇の目的はこれだ。」
「不安、恐怖、疑心、怒り。」
「俺たちの心を乱し、心の繋がりをバラバラにする。」


ヴェントゥスが円卓の間に入ってきた。
「俺が・・彼女を消したんだ。」
「ラーリアム・・」
「君の妹を消したのは俺なんだ。」
「ううう・・」
「・・俺は・・違う!」


ヴェントゥスは倒れ、体の中から闇が現れた。
「ようやく認識したな。」
「我々を。」


ブレインが言う。
「まさか、こんな子供が絵に描いたようなものが闇の正体だなんて思いもしなかったよ。」


「正体・・」
「今は実体がないのは確かだな。」
「本来なら目にも見えないが。」
「まあ、この声もこの色も言わばサービスだ。」
「目的なんてものはない。」
「ただ寄り添っているだけだ。」
「我々を理解することは難しい。」
「お前たちとは別の存在だ。」
「何かを成し遂げたいといったような人間の思考は持ち合わせていない。」
「彼女を殺したのは彼が望んだからだ。」
「彼は彼女を知らなかった。」
「望んだのは力だ。」
「だから手に入れさせてやった。」
「ユニオンリーダーという力の象徴を。」
「我々には彼がどのように力を手に入れたいかというのはどうでもいいことだ。」
「犠牲は彼女である必要はなかった。」


ブレインが言う。
「いくつか聞きたい。」
「まず何故ヴェンを選んだ?」


「決まっているからだ。」
「彼が闇を宿す存在だと。」
「闇の器は決まっている。」
「運命の子は予知書に記されている。」
「我々にとってどうでもいいこと以外は見させてもらった。」
「書いているのを見ていただけだ。」
「マスター・オブ・マスターとは古い友人でね。」
「人間と仲間になる必要はない。」


ブレインが言う。
「もう一つ聞く。」
「今まで息を潜めていたのにどうして今現れた?」


「別に息を潜めていたわけではない。」
「我々はずっと活動している。」
「お前たちは気づいていなかったが、こうして現れたのはお前たちが我々を認識しただけだ。」


ブレインが言う。
「最後の質問だ。」
「ずっと言ってるけど、我々ってどういうこと?」


「闇は光より多い。」


ブレインが言う。
「じゃあもう一つ追加。」
「この部屋にはあんただけ?」


「ああ。」


「OK、わかった。」
ブレインはキーブレードを構えた。
「エフェメラ、スクルド!過去一強敵だ!本気出せ!」


ブレイン、エフェメラ、スクルドは闇との戦闘を開始した。


デイブレイクタウンの時計塔が見える小高い丘の上でマスター・オブ・マスターが一人つぶやく。
「もう時間がないぞ、ダンデライオン・・」


マスター・オブ・マスターはルシュとの話を思い出していた。
「箱を持って、身を隠して、後は5人にこれから起きることをちゃんと自分の目で確認すればそれが合図だから、君は旅立って使命を果たして下さい。」


ルシュが聞く。
「この箱は?」


「やっぱり気になっちゃう?」
「でもなあ、中身はなあ・・」
「これ、絶対開けちゃいけないやつなんだよなあ・・」
「じゃあ特別に君にだけ教えるから。」
「この先絶対開けちゃ駄目だし、中身を他言するのもNGね。」


「・・・・・・・・」


ルシュが驚く。
「なぜそんな?」


「サプラーイズ。」
「ノリ悪いなー、ルシュくんは。」
「じゃあ君には無事にいてもらわないと困るから一つ注意ね。」
「朝焼けの空を闇が覆う時が来てしまったら、箱舟の旅立ちによってこの世界は役目を終える。」
「もしその時が来たら君は終わりを見届け、速やかに回廊を通って他の世界に旅立つんだ。」
「前にも話した通り、今は闇に勝つ手段はない。」
「だからこの先の時代、闇を倒す選ばれし者へとキーブレードを繋ぐ為に多くのキーブレード使いたちを育てる時間が必要だった。」
「未来に撒く光の種、ダンデライオン。」
「この世界はその種を撒くまで闇を足止めする世界。」
「そして落葉を迎えることのない夜明けもいずれ陽は沈み眠りにつく。」
「それで今回の計画は完成だ。」


マスター・オブ・マスターの前に闇が現れた。
「今回のこの世界はどうする気なんだ?」


「薄明の時はやがて終わり、新たな1日が始まる。」
「この世界は三段階の構成で考えてみた。」
「多くのキーブレード使いを集め、ふるいにかける始点。」
「指導者を失い、疑心と不安の中で自立の術を見つける訓練。」
「そして残った者たちが、閉じ込められた世界で闇と対峙した時、何を選択し実行するのか。」
「7つの箱舟の旅立ちのこの世界は終末を迎える。」


闇が言う。
「終わらせる為にこの世界に居を構えたのか?」


「まあ、終わらせるのが目的じゃないからね。」


闇が言う。
「予知書があれば、もはや万物の理を得たようなものだろう。」
「面倒な手順や時間すら必要ないと思うが。」


「予知書が万能だと思ってるの?」
「ないない。」
「そんな重要な物ならお前らの覗き見を見てみぬふりして放置しとくわけないだろ。」
「予知書と言っても未来の全てを見てるわけでも書いてるわけでもないし。」
「ルシュに託したキーブレードが辿った場所、事象しか未来を知り得ない。」
「さらにその辿った中から情報を選んで記してる。」
「が、実際問題、予知書の内容などどうでもいいことだ。」
「必要なのは内容ではなく、予知書を書く為に辿った点、未来への標。」
「未完成の箱舟を使って時間を超えれば、いったんはその肉体を失う。」
「しかし行く先の未来に自分の肉体を形成できる媒介、そして自分を記憶する者たち。」
「これらが存在すれば心が再び自らの肉体を形成し、その器へと戻る。」
「予知書に書いたのはその標だ。」
「全て標のため。」
「記憶はルシュ、媒介は自分の目。」
「それが未来に向かって点となれば、線で繋ぐように先の時間へと移動できる。」


闇が言う。
「自分が未来に行くために弟子や予知書を用意したのか?」


「最終目的ではないが、過程としては大事な目的だ。」
「それに標を辿るのは俺だけじゃない。」
「俺に連なる者たちも。」


闇が言う。
「7つの箱舟か。」
「それとも7つの王冠か。」


「7つの光だからな。」


闇が言う。
「弟子を含めた7人・・」


「さあ?」
「誰が箱舟に乗るかは先の時間でのお楽しみだ。」


闇が言う。
「どこまでも食えない男だ。」


「それ、お互い様な。」
「お前ら闇も何か企んでるんだろ?」


闇が言う。
「そうだな。」


「でもまあ、お前らの戦いに飽き飽きしていた俺に気になる事象が見えたんだ。」
「未来に見えた、俺が知り得ない世界。」


円卓の間で闇とのバトルを繰り広げるエフェメラ、ブレイン、スクルド。
「終わりか?」


エフェメラが答える。
「そうだな、さすがにしんどいな。」
「あんたに攻撃が通ってるのかもわかりづらい。」


「では、終わりにするか。」


ブレインが言う。
「あんたは目的がないと言った。」
「でもそれは嘘だ。」
「急に姿を現し、俺達の本気に必死で抵抗している。」
「闇にプライドや死の概念があるのかは知らない。」
「でもここで退くわけにはいかない。」
「理由があるはずだ。」


「ふん・・」
「感染だ。」
「情報伝達は電気信号によって行われる。」
「それはお前たち人間の脳内、心も同じ。」
「電気信号の世界は軽視できない、むしろこの世界は闇の伝達には好都合だ。」


ブレインが言う。
「だからデータの世界に紛れ込んだと?」
「じゃあなぜヴェンに隠れる必要があったんだ?」


「決まっていたと言ったはずだ。」


スクルドが言う。
「予知書を見た?そう書いていた?そんなのどうだっていい。」
「ヴェンを乗っ取り、ラーリアムの妹さんを手にかけた。」
「私達の目の前にいるこいつはただ倒すべき存在。」


「我々は全であり個だ。」
「しかし個でありつづけるには意思が必要だ。」
「一度彼と同化し完全な闇と光に分離したことで我は意思を持つ純粋な闇の個となった。」
「必要な犠牲だ。」


ラーリアムが起き上がった。
「ではストレリチアの件はヴェンじゃなく、お前ってことでいいんだな。」
「1人増えれば少しは変わるか?」


「1人増えようが同じだ。」


「じゃあもうひとり増えたら?」
主人公がエフェメラたちに加勢した。


「お前たちがいくらあがいても、仮に我を倒してもこの戦いはお前たちの負けだ。」


ラーリアムが言う。
「いや、お前を倒して現実の世界に戻る。」
「それで僕たちの勝ちさ。」


「どうやって帰るんだ?あの箱舟か?」


ラーリアムが言う。
「ああ、魔女もそうやって帰ったんだろ?」


「何も知らないんだな。」
「現実の世界に戻っても、デイブレイクタウンは闇に飲まれる。」


エフェメラが聞く。
「お前の仲間が現実世界で何かしてるのか?」


「我々ではない、もともと決まっていたことだ。」
「箱舟の起動によって、この世界は闇に飲まれる。」
「既に1隻目が起動したことでこの世界の終わりは始まっている。」
「箱舟は我々との戦いに備えて用意された最終手段。」
「もしこの戦いで我々に勝てないと判断した場合、我々ごと世界に閉じ込め封印する。」
「そしてこの世界から箱舟が旅立った時、そのシステムが起動することになっている。」
「魔女が旅立ったことで世界の終わりは始まっている。」


ラーリアムが言う。
「じゃあ最初から俺たちは捨て駒だったと言うのか?」


エフェメラが言う。
「いや、そんなはずはない。」
「俺たちを集めたのはアヴァ様だ。」
「他のマスターがどう考えようが、アヴァ様だけは俺たちを見捨てるためにダンデライオンを集めるはずがない!」
「行くぞ、みんな!」


エフェメラたちは闇を倒した。


「肉体を持たない我に消滅はない。」


黒装束を着たハートレスが複数現れ、ヴェントゥスを取り囲んだ。。
「お前だ・・」


主人公が言う。
「黒装束が捜していたのは・・」


ヴェントゥスが目覚めると同時に黒装束を着たハートレスが消滅した。
闇に近づくヴェントゥス。
「お前が純粋な闇なら、俺は純粋な光。」
「お前は俺と一体となり、自我を持つ純粋な闇の個として生まれ変わった。」
「お前に肉体がないのなら、もう一度俺が姿を与えてやる!」


闇に近づこうとするヴェントゥスをラーリアムが止める。
「お前まで失うわけにはいかない。」


「ありがとう、ラーリアム。」
ヴェントゥスはラーリアムを振りほどき、闇に向かって突撃した。


箱舟がある部屋で闇がモニターを眺めている。
「あとはデータの動きがどうか・・」


「お前たちは闇という一つの意思体じゃないのか。」
ルシュが白いローブを着た人物を抱えてやってきた。
「全ではなく、また個として動き始めた。」
「そういうことかな?」


闇が言う。
「この世界には既にマスターは存在しないはず・・」
「お前は誰だ?」


ルシュが答える。
「留まる者。」


「ルシュか。」


ルシュが答える。
「さすが、中途半端に予知書を見ただけあって、中途半端に知識があるな。」


闇が言う。
「お前の使命は見ているだけだろう、なぜ現れた?」


「あんたらの友人、いや、俺達の師であるマスターに言われた。」
「心配なら見守ってやればいい、ただし手出しは無用と。」
「見守るだけで手出しはできない。」
「いつも変なことしか言わない人だったけど、この意味をずっと考えていて、ようやく答えを思いついた。」


闇が言う。
「見続けなくてはいけないお前がそれを使ったら、お前たちの計画は失敗だろ。」


ルシュは抱きかかえた白いローブを着た人物を箱舟に乗せた。
「未来に撒く光の種・・」
「真のダンデライオンだ。」


スクルド、エフェメラ、主人公の3人は、ヴェントゥスが休んでいる部屋の前にいた。
「大丈夫かなあ。」


スクルドが答える。
「多分・・」


「ヴェンのせいじゃないって分かってくれたよね。」
「二人にさせてほしいって、大丈夫だからって言ってたラーリアムを信じよう。」


スクルドが聞く。
「闇が言ってた世界の終りって本当だと思う?」


「俺たちはこの世界について知らないことだらけだ。」
「いや、世界だけじゃない。」
「マスターや闇についても。」
「でもアヴァ様が言ってたよな?」
「世界が闇に飲まれるのは眠りに落ちることだって。」
「もし世界の終わりが本当だとしても、最後の瞬間まで希望は捨てない。」
「俺は少なからずダンデライオン結成に責任がある。」
「だから俺はみんなを助けたい。」
「今はそれしか言えない。」


スクルドが言う。
「エフェメラの責任じゃない。」
「みんなエフェメラを信じてる。」
「ブレインも言ってたでしょ?」
「ただそれだけだよ。」


「ありがとうスクルド、いつもそばにいてくれて。」
エルレナがやってきた。
「あれ?君は?」


ベッドの上で休んでいるヴェントゥスにラーリアムが話しかける。
「ヴェントゥス、すまなかった。」
「君のせいではない、それは理解している。」
「ただ闇という漠然とした存在を憎しみの対象とするのは難しくて、どうしても君という存在に闇を重ねてしまった。」
「それが自分勝手な感情だとしても、どこかに矛先を向けないと耐えられない感情もある。」
「あの闇は本当に消えてしまったのか?」
「それとも君の言っていた通り、やはり再び君と同化してしまったのか?」
「もし君の中にあの闇がまだいるなら俺は・・」


ストレリチアの声が聞こえる。
「憎しみも怒りも悲しみも闇の思惑通り。」
「そんな気持ちは捨ててしまってください。」
「優しいお兄様に戻って。」


「ストレリチア?」


エフェメラがドア越しに声をかける。
「ラーリアム、お客さんだよ。」


ラーリアムが部屋の外にでるとエルレナが待っていた。
「エルレナ、どうして?」


「実はチリシィが。」
「本当かどうかわからないですが、つい最近ストレリチアを見たと。」
エルレナのチリシィが言う。
「ストレリチアだったかどうか確証はないんだけど、2、3日前、黒いコートを着た人と一緒に丘の方から街に向かって歩いている姿を見かけて。」


皆で円卓の間に集まった。
一通りの話を聞いたブレインが言う。
「うーん。」
「それだけでは確証はないけど、興味深い話ではあるよね。」


エルレナのチリシィが言う。
「あのコートを着ていたのはマスター・オブ・マスターかルシュ様だけだね。」


「消えたはずのマスターがなぜ・・」
「しかもデータの世界で・・」
「んん?待てよ、もしかして・・」
「このデータの世界はそもそも何のために作られた?」


スクルドが言う。
「世界のバックアップでしょ?」


「そう、キーブレード戦争前の世界をバックアップとして保存していた世界。」
「つまりこの世界にはストレリチアのデータも存在していたはず。」


ラーリアムが言う。
「人間のデータも?」
「いや、ここでは世界のデータしかないだろ?」
「もしそんなものがあるなら、この世界に今俺達も二人存在してることになる。」


ブレインが言う。
「世界を丸ごとバックアップしたはずだから、俺達のデータは解凍されていないだけでデータとしては存在していてもおかしくない。」
「実際エルレナもノイズ混じりのストレリチアを目撃してるし、今回のチリシィの目撃も本当にストレリチアだとしたら何者かが解凍して取り出したということかもしれない。」


「ストレリチアのデータを?」
「なぜストレリチアのデータを?」
「そのデータがあればストレリチアは復活するのか?」


ブレインが言う。
「わからない。」


スクルドが言う。
「でも一体誰がストレリチアのデータを取り出したの?」
「マスターはもう誰もいないはずじゃ?」


ラーリアムが言う。
「現実の世界に戻れば手掛かりがあるんじゃないか?」


ブレインが言う。
「それなんだけど、ラーリアムが報告してくれた地下のポッドの並んだ部屋、闇が言ってた通りならそれを使って現実世界に戻れる。」
「でも本当に闇が言う通り、世界の終わりに紐付いているとしたら・・」


エフェメラが言う。
「今は悩んでる時間はない。」
「とりあえずその部屋に行ってみよう。」
「ヴェンはまだ動けない、頼んでいい?」


ラーリアムが頷く。
「ああ。」


現実世界の箱舟ポッドが並ぶ部屋でルシュと闇が話をしている。
「誰を送り出したのか知らないが、これで箱舟は残り5つか。」
「誰が生き残るか・・」


ルシュが言う。
「その部分の予知書は見てないの?」


闇が答える。
「ああ、興味はない。」
「我らは増えることしか考えていない。」
「お前たちはなぜわざわざ育てたキーブレード使いたちをデータ世界に閉じ込めて見捨てる?」


ルシュが答える。
「あの人の考えなんて誰も理解できないよ。」
「全て理解できないってわけじゃないけど、そうなるかな?」
「でも、こういう考えじゃないかな、とかは分かるさ。」
「確かなこともある。」
「闇が嫌いってことさ。」


闇が言う。
「嫌いか。」
「確かにそれは我らもそうだな。」
「光は嫌いだ。」


「一つ聞くけど、お前はここで何をする気だ?」


闇が答える。
「データ世界側は電気信号として増幅し、我はここに戻る選ばれし者と共に先の時代へと進み増殖する。」


「増えることしか考えてない、か。」
「世界や時間を超えても常にお前たちと共にある。」
「ゾッとするねぇ。」


闇が言う。
「ん?手出し無用だったのでは?」


「ああ、あの子達の為じゃない。」
「俺の目の前にいるのは俺の敵だから。」


闇が言う。
「肉体を持たない我に消滅はない。」


「知ってる。」
ルシュが闇に近づく。


「ならば無駄なことはやめておけ。」


ルシュが言う。
「でもいつまでも姿のない意思だけの存在じゃ、いずれは個としての自我は溶けて消えてしまう。」
「お前たちはマスターの少年時代には姿があったんだろ?」
「でも光に勝つために姿を捨てた。」
「それによって闇という全の意思体となった。」
「だがそれではやがて個としても全としても意思は消え、単なる闇という状態になってしまう。」
「そこで考えた。」
「やはり姿は必要だと。」
「お前たちの言う、感染だの増えるだのという行為は、心を持つ者に巣食い、その姿を奪うということだ。」
「さも仰々しく語るくせに実に間抜けで浅ましい。」
「お前たちはマスターの本当の計画に気づかなかったみたいだな。」
「この世界に残ってる個として意思を持つ闇はお前以外にあと5体。」
「少なくとも1体はデータ側にいる。」
「で、あと4体はどこだ?」


「詳しいんだな。」
「我を含め大戦後残った個は6体。」
「気づけば全てデータ世界にいた。」


ルシュが言う。
「だがお前は魔女と共に現実に戻った。」
「つまり他5体はまだデータ世界なんだな?」


「ああ。」


ルシュが言う。
「じゃあ、お前だけ厄介だ。」


「お互い様だ。」


エフェメラ達が箱舟ポッドが並ぶ部屋にやってきた。
「箱舟は6つ。」
「1つは魔女が使った。」
「ここにいるのは7人。」
「1つ足りない・・」


ブレインが言う。
「いや、1つ壊れてる。」
「使えるのは5つだ。」
「このデータ世界はすでに壊れかけている。」
「時間がない、早く5人を選ぼう。」
「ここに残されるダンデライオンのメンバー達はコンピュータのスリープ状態、眠った状態になるんじゃないかと思う。」
「ユニオン時代、アヴァ様から教わったはずだ。」
「闇に飲み込まれた世界は眠りに落ちる。」
「マスターはこうなることを予知し、世界のバックアップを考えた。」
「それがこのデータ世界。」
「そしてデータ世界自体をシェルターとして俺達も閉じ込めた。」
「もしこのデータ世界が外的要因で停止した場合、再起動すれば停止した状態で世界は復帰する。」
「おそらくデータ世界の終わりは現実世界の終わりとは違い、眠りのようなものだ。」
「データ世界より現実世界の方が危険ということだ。」
「ここで箱舟に乗り込んだとしても、一度現実世界に戻ってそこからまた箱舟に乗ることになる。」
「そしてその先、どんな世界に辿り着くのかもわからない。」
「本当に脱出することが正解なのかどうか。」
「ただ誰も現実世界に戻らなかったら、このデータ世界で眠りについたことを知る者も、残った者を助ける可能性も失われる。」
「ここでキーブレード使いを絶やすわけにはいかない。」
「俺とエフェメラは分かれた方がいいと思ってる。」


エフェメラが言う。
「俺もそう思っていた。」
「ここに残る者の可能性を繋ぐ為にもブレインには現実世界に戻ってもらいたい。」


「わかった。」


スクルドが言う。
「唯一確実な生存ルートは現実世界で箱舟に乗ること。」
「こうなったのは私達の責任。」
「むしろエルレナやヴェン、主人公は現実世界で箱舟に乗ってもらわないと。」


エフェメラが言う。
「ブレイン、主人公、エルレナ、ヴェンの4人は乗ってくれ。」


スクルドが言う。
「あと1つはラーリアムが乗って。」
「ラーリアムは妹さんが戻る可能性が出てきた。」
「あなたは待つ側ではなく、妹さんを迎える側でいたほうがいい。」
「ストレリチア目撃の真相も、現実世界で調べた方がいいと思うわ。」


エルレナが言う。
「やっぱりあたしが邪魔なのかな。」


ヴェントゥスを背負ったラーリアムが言う。
「いや、君のお陰で僕は希望が生まれた。」
「できれば僕と行動を共にしてほしい。」


ブレインが言う。
「どの道、今は脱出の方法も人数も限られてる。」
「俺が現実世界に戻ったら、生き延びてみんなを助ける方法を探す。」


「ああ、今は時間がない。」
「まずはここにいるメンバーを優先しよう。」


主人公が言う。
「だったら自分は残るよ。」
「そもそもダンデライオンでもない。」
「ただエフェメラの友人としてここにいるんだ。」
「エフェメラが残るなら一緒に残る。」
「それにもう待たされるのはごめんだ。」


スクルドが言う。
「私だって二人を残しては行けない。」


ブレインが言う。
「わかった。」
「じゃあ使える箱舟は一旦1つ残そう。」
「俺が現実世界に戻ったら、3人を一緒に戻せるかもしれない。」
「考えがある。」


エフェメラが言う。
「じゃあ急ごう。」
「ラーリアム、ヴェンを箱舟に寝かせて君も箱舟に入って。」
「エルレナも。」
「ブレイン、みんなを頼んだぞ。」


「ああ、そうだ。」
「これを持っていてくれ。」
ブレインはエフェメラにキーブレードを渡した。
「本来、君が持つべきキーブレードだ。」
「これも。」
ブレインはエフェメラに予知書を渡した。
「俺は使うことはなかったけど、もしこの先、君が道に迷ったら躊躇せず開いて。」
「生き延びる術があるはずだ。」


「わかった。」
「でも預かるだけだ。」
「君が持っておくことに意味があって、アヴァ様は君に預けたはずだから。」


ブレインが言う。
「予知書、ずっと見たかったんでしょ?」
「アヴァ様からそう聞いたよ。」
「きっとこういう使い方をする為にアヴァ様は俺に渡したんだ。」
「鍵が導く心のままに。」
「俺は心に従ってる。」
「きっと助けるよ。」


ブレイン、スクルド、主人公の3人はデータ世界に残った。
「主人公、本当に良かったの?」


「うん、運命を共にするなら君たちがいい。」


「みんな、どうか無事で。」
エフェメラは機械を操作し、ブレイン、ラーリアム、ヴェントゥス、エルレナの4人を現実世界に送り出した。


ルシュがマスター・オブ・マスターとの会話を思い出す。
「この世界の終わり?」


「前にも話した通り、今は闇に勝つ手段はない。」
「だからこの先の時代、闇を倒す選ばれし者へとキーブレードを繋ぐ為に多くのキーブレード使いたちを育てる時間が必要だった。」
「未来に撒く光の種、ダンデライオン。」
「この世界はその種を蒔くまで闇を足止めする世界。」
「そして洛陽を迎えることのない夜明けも、いずれ陽は沈み眠りにつく。」
「それで今回の計画は完成だ。」


ルシュが言う。
「では、行ってまいります。」


「あ、そうだ。」
「最後に言っとく事があるんだ。」
「前にも話したけど、闇とはずっと戦ってる。」
「長い戦いの中で闇は姿を持たなくなり、物理的な攻撃から人の心を攻撃するようになった。」
「それによって多くの仲間を失った。」
「一方、闇も姿を捨てた代わりに自らの意思を失うことに気づいた。」
「そして今の時代になる。」
「7は全てを満たす数とされ、13は非調和な忌み数とされた。」
「この言葉どおり、始祖となる闇は13。」
「その13の闇は自らと同じく姿を持たない闇を増殖させていき、個から全となった。」
「さらに増殖し、派生した姿を持つ闇がハートレスだ。」
「そして姿を持たない集は個となり、強い心の持ち主に巣食う機会を待っている。」
「姿を持たない闇は倒せない。」
「闇を倒すには強い心を持つ器が必要だ。」
「だから君たちを育てた。」
「そう聞くとひどいことのように聞こえるだろうが、君たちを単なる器として育てたわけじゃない。」
「心に闇が巣食ったとしても、闇に負けない心を持つ者にしたかったんだ。」
「忘れてはいけない。」
「これは人と人ならざる者の戦いだ。」
「感傷に目的を曇らせるわけにはいかない。」
「お前たちを信じたからこそ人の運命を託した。」
「主要な闇は13体いる。」
「その中でもさらに強力な7体は我々7人の心に閉じ込め、各々が引き受けた闇は各自がバラバラに行き着く場所で倒す。」
「そのためのキーブレード戦争だ。」
「ユニオン同士の裏切りやキーブレード戦争も必要だったんだ。」
「予知書にあった裏切り者の記述を利用した。」
「疑心や不和といった負の感情に闇は巣食う。」
「皆が本気で心にその感情を抱く必要がある。」
「多くの感情の衝突によって、より一層感情は増殖され、13体の中でも強力な7体は我々の心に宿す。」
「そして残る6体。」
「それは我々が消えた後のユニオンリーダー5人と、あとの1体はこの世界に閉じ込める。」
「言ったはずだ。」
「感情に目的を曇らせるわけにはいかないと。」
「闇に心を奪われた者の末路は、遥かに悲惨で残酷だ。」
「多くの愛する者たち、仲間たちを闇に奪われた者をこの目で見てきた。」
「これは光と闇との戦いなどという英雄譚ではない。」
「心を持つ者の尊厳の問題だ。」
「犠牲が前提ではない。」
「助かる手段は用意している。」


ルシュは黒い箱を引きずり、立ち去った。


マスター・オブ・マスターがつぶやく。
「鍵が導く心のままに・・」
「何を思い、何を考える・・」
「お前が全ての鍵になる。」
「期待しているぞ、裏切り者のルシュ。」


現実世界に戻ったブレイン、ラーリアム、エルレナ、ヴェントゥスの4人。
箱舟を操作する機械の前でエルレナがブレインに聞く。
「何とかなりそうですか?」


「うーん、元々現実とデータ側を行き来していたシステムで一気に全員を戻せないか調べてみたけど、時間的に難しいみたいだ。」
「でも、もう一つ手がある。」
「ダンデライオンのメンバー全員は難しいが、残った3人は戻せると思う。」
「その前に二人は方舟に乗って。」
「エフェメラたちを戻せるかは時間との戦いだ。」
「先に君たち3人をこの世界から脱出させる。」
「そして残りの2つの箱舟をデータ側に戻す。」
「これなら時間も掛からず3人をこっちに戻せる。」
「今はできることをやるしかない。」
「二人は早く乗って。」
「ラーリアム、今確実にこの世界から脱出できるユニオンリーダーは君だけだ。」
「エフェメラから俺、俺から君。」
「先の可能性を繋ぐ為にも、君たちの旅立ちは見届けさせてほしい。」
「どの世界、どの時間に辿り着くかはわからない。」
「でも心に標を、自分が成すべきことを刻んでおいてほしい。」


ラーリアムが言う。
「僕はストレリチアのデータを見つけられず、人間のデータは保存されていないと思ってしまった。」
「でもそれは違っていた。」
「今こそ見つけ出すよ。」


「きっとその思いが標となって導いてくれる。」
「妹さんと再会できることを願ってるよ。」


「君とまた再会できると信じてる。」
ラーリアムとブレインは握手を交わした。
「鍵が導く心のままに・・」


ラーリアム、エルレナ、ヴェントゥスの3人はブレインの手により別の世界に転送された。


「誰だ?!」
ブレインの前にルシュが現れた。


「君だけなのか?」
「俺はマスターの弟子の一人、ルシュ。」
「君はユニオンリーダー?」
「君しかいないってことは、他のユニオンリーダーたちは?」


ブレインが答える。
「一人は脱出しましたが、あとの二人はまだデータの中に。」


「うん?君をいれて4人だ。」
「あとの一人は討たれたのか?」


ブレインが答える。
「はい。」


「なるほど。」
「では君がこの箱舟を使うんだね?」


ブレインが答える。
「いえ。」
「データ側にはダンデライオンの仲間がもうひとりいて、ここにある2つをデータ側に送って向こうの1つと合わせて3人に使ってもらうつもりです。」


「君はどうする気なんだ?」


ブレインが答える。
「俺はこの時代で生き延びて、データ世界に残る多くのダンデライオンのメンバーを目覚めさせるつもりです。」
「闇に飲まれた世界は眠りにつくとマスター・アヴァ様に教わりました。」


「確かに眠りにつく。」
「だが、あのデータ世界は違う。」
「あれは闇を閉じ込める檻。」
「この世界が闇に飲まれれば、もう出すことはできない。」
「もう一つ、君等が使っている未完成の箱舟は、辿り着く先に肉体を形成する媒介と、その者を記憶する者が存在しなければならない。」
「知っていて使ってるの?」
「策はあるの?」


ブレインが答える。
「自分がこれからの人生を賭して成すべきことだと。」


「君は優秀だね。」
「君の人生を、この一度で終わらせるのは惜しいよ。」


データ世界に残されたエフェメラ、スクルド、主人公の3人。
「みんな無事に現実世界に戻れたかな。」


エフェメラが答える。
「ブレインがいる。大丈夫さ。」


「本当に世界が終わるなんて信じられないね。」


突然、主人公達の前に闇が4体現れた。
「緊張する必要はない。」
「我々は戦いに来たわけじゃない。」
「お前たちがここを去る前にゲートを開いてもらいたい。」
「最初に戦った闇が言っていただろ?」
「我々の目的は感染。」
「ポータルを通り、様々な世界へと伝染していく。」
「拒んでも無駄だ。」
「我々の強さは知っているだろ?」
「もしくはその身を乗っ取ることもできる。」
「それとも目の前で仲間が奪われ、後悔と屈辱で扉を開かされるほうがいいか?」


エフェメラとスクルドがキーブレードを構える。
「主人公、俺達が戦い始めたらすぐに箱舟に乗り込め!」
「お前だけでも生き延びるんだ。」


「愚かだな。」
「これだから人間は闇に勝てないんだ。」
主人公はエフェメラたちに襲いかかった。


闇が言う。
「主人公の心は闇の深淵へと堕ちた。」
「もう声は届かない。」
「肉体を持たない我に消滅はない。」
「そう言ったはずだ。」
「扉を開けば返してやってもいい。」


エフェメラが言う。
「駄目だ。」


闇に乗っ取られた主人公はエフェメラとスクルドを倒した。
「箱舟に乗っておけばよかったものを。」
「我を憎め、エフェメラ。」
「それがまた糧となる。」


エフェメラはゲートを開き、闇4体と主人公をゲートの中に追いやった。
そしてゲートの鍵を閉めた。
「本当にごめん・・」


エフェメラとスクルドの前に2つの箱舟が出現した。
「一緒に戻ろう。」


エフェメラとスクルドは箱舟に乗り込んだ。


ゲートをくぐった4体の闇と主人公。
「うまくやったな。」
「怒りを利用し、ポータルを開かせるとは。」
「ここを通れば様々なデータ世界へと行ける。」
「お前もそろそろその肉体を捨てろ。」
「脆い人間の身体と共に消滅するぞ。」


主人公が笑う。
「闇を欺くのは案外簡単だね。」
「それとも個体差か?」
「実体がない代わりに鍵を鍵を開けてもらわないと通れない。」
「不便な奴らだな。」
主人公はゲートの鍵を閉めた。
「エフェメラは鍵を閉めた。」
「この先も同じく鍵は閉じられた。」
「あんたたちはもう、このポータルケーブル内から出ることはできない。」
「最初からそのつもりで闇に巣食われたふりをしたんだ。」
「今更気づいても遅いよ。」
「俺たちの勝ちだ。」
「チリシィ、ごめんよ。巻き添えにして。」


現実世界に転送されたエフェメラとスクルド。
「みんな脱出したのかな。」
「外を見てみよう。」
そこははまだデータの世界で、崩れかけていた。


エフェメラとスクルドは再び箱舟に乗り込んだ。
「エフェメラ、ありがとう。」
「最後が一人じゃなくてよかった。」


「最後の瞬間まで諦めちゃ駄目だよ、スクルド。」
箱舟の扉が閉まり、塔が崩れ始めた。


マスター・オブ・マスターと闇がデイブレイクタウンの時計塔が見える小高い丘の上で話をしている。
「お前たちの行動は理解不能だ。」
「いや、お前だけか。」


マスター・オブ・マスターが答える。
「理解したいの?」
「お前たちが?お前が?」
「マス目に覆われたゲーム盤は小さな世界だ。」
「世界が小さければ小さいほど支配は容易い。」
「では次におとぎ話の一冊一冊の世界を並べるように、少しずつ世界を広げてみよう。」
「そして本を一冊また一冊と増やしていけば世界は無限に拡張され続ける。」
「しかし世界には光の届かない場所はあっても闇の届かない場所は存在しない。」
「大勢の命を使い、多くの人生を費やし、幾重にも世界を拡張し、どこまでも世界を広げようと闇も同様に広がり続ける。」
「圧倒的に闇が有利だ。」
「どこまでも闇の存在しない世界へと逃れようが、お前たちはどこまでも一緒だ。」


闇が言う。
「友人だからな。」


「時には一人になりたい時もある。」


闇が聞く。
「お前はどこの世界に姿を消すつもりなんだ?」


「見たこともない、知り得ることが不可能な世界。」
「そこは光も闇も支配し得ない。」
「人間とその他の生命の明確な違いは何か。」
「人間はその存在が消えても、まだその先の世界があると信じたい生き物だ。」
「俺もぜひ信じてみたい。」
「想像する命の先の世界。虚構の世界。」


闇が聞く。
「虚構?」
「それはデータの世界ではないのか?」


「人間の想像であっても、具現化させてしまえば現実側だ。」
「俺は知り得ることが不可能な世界だと言ったはずだ。」
「目も声も届かない。・・・の世界。」


主人公が精神の世界でチリシィと話をしている。
「僕たちは君たちキーブレード使いの心と繋がる存在。」
「君たちの心が消える時は共に消え、眠りに落ちる時はその眠りを守る存在になるんだ。」
「眠りにつくか、それは君次第だよ。」
「眠りを拒めば新しい心に溶けることになる。」


主人公はスカラ・アド・カエルムで女性がフードを被った老人に赤子を預ける夢を見た。
フードを被った老人はデスティニーアイランドで赤子が青年になるまで見届けた。
その青年はゼアノートだった。
ゼアノートは、再びスカラ・アド・カエルムに戻ってきた。
主人公がつぶやく。
「まだ旅は続きそうだ。」


何もない海が広がる世界に流れ着いたエフェメラ。


ラーリアム、エルレナ、ヴェントゥスはそれぞれ別々の場所に転送されていた。
謎の荒野で気を失っているヴェントゥスの元にゼアノートが近づいていく。


黒い箱を引きずるルシュはフードを外した。
ルシュの正体は、若き日のエラクゥスだった。


目を覚ましたブレインの元にシグルドという人物が近づいてきた。
「あなたはブレインですね?」
「やはり間違いなかったみたいだ。」
「私はシグルド。」
「本部にお連れします。」
「あなたがデイブレイクタウンの崩壊を逃れ、今日ここに来ることは決まっていました。」
「我々があなたを迎えることも。」
「これから本部のほうで詳しく説明します。」
「この時代に来たのはあなただけです。」
「混乱されるのは仕方ないです。」
「ともかく行きましょう。」
噴水広場の前で立ち止まった。
エフェメラがキーブレードを構える像がある。
「彼がこの街、スカラ・アド・カエルムを造った初代キーブレードマスター。」
「マスター・エフェメラです。」